作品一覧
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-臓器と違って目には見えない精神の疾患を、はじめて分類・体系化し、〈精神病〉を発明したエミール・クレペリン(1856-1926年)。無意識を発見したフロイトと偶然にも同じ年に生まれ、フロイトと並んで現代精神医学の基礎を築きながら、その名は忘却され、彼が築いた分類と体系だけが、所与であるかのように、世界中で広く使用される診断マニュアルの土台となっている。 冷酷非情である一方、純粋で情熱的な面もあわせ持つ複雑な人物の半生を辿り、葛藤と煩悶を繰り返して生み出された体系の功罪を描き出す。精神医学誕生秘史! 「汝が名は忘却の淵に沈めども その業績は永遠なり」――。クレペリンが眠るハイデルベルクの墓碑にはそう刻まれている。 心臓や肝臓などの内臓の疾患は、その器官の病変や症状から、病を特定し治療にあたることができる。しかし、どこでどのような異常が生じているのか目で見ることのできない精神の疾患は、何をもって同じ病、あるいは違う病であると診断し、治療にあたるのだろうか。 同じ症状を呈しているからと言って、同じ病とは限らず、まったく違う症状でも同じ病ということもありうる。そもそも分類自体が可能かどうかさえ疑問だった時代に、悩みながらもそれらを分類し、体系化した人物こそエミール・クレペリンにほかならない。その成果は今、日本はもちろん世界でも広く使用されているDSM‐5やICD‐10と呼ばれる精神疾患診断マニュアルの土台となった。目に見えない精神の病を分類・体系化することで、言わば「精神病」を発明したともいえる。 奇しくも無意識を発見したフロイト同年に生まれ、フロイトに匹敵する影響を残しながら、フロイトとは対照的に、皮肉にも墓碑銘のとおりその名が忘却されたクレペリン。その「発明」は葛藤と煩悶のうちになされ、晩年には、それまでとまったく違う方向を模索しさえしていた。 またドイツ留学中の斎藤茂吉を冷たくあしらい傷つけたクレペリンは、ユーモアを介さない陰鬱な人物として語られてきた一方、その自伝をひもとけば、少年のような純粋さと情熱も秘めている。 今や自明のもののように扱われている診断基準は、一体どのような人間がいかにして創り上げたものなのか。クレペリンの半生をたどりつつ描かれる、知られざる精神医学誕生の歴史。 【本書の内容】 はじめに――なぜ、いま、クレペリンを問うのか 序 第1章 誕生と助走(一八五六―九一年) 第2章 創造と危機(一八九一―一九一五年) 第3章 静かなる浸透(一九一五―二六年) 第4章 〈精神医学〉制作あるいは〈精神病〉発明の途上にて(一九二六―八〇年) おわりに
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3.0
ユーザーレビュー
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Posted by ブクログ
本書は、精神分析学の創始者と言われるジークムント・フロイト(1856~1939年)が、死の直前に発表した作品である。
松岡正剛氏は、「千夜千冊895夜」(2003年11月)で本書を取り上げ、「これは恐ろしい本である。引き裂かれた書である。しかも、これはフロイトの遺書なのだ。人生の最後にフロイトが全身全霊をかけて立ち向かった著作だった。」と述べているが、ユダヤ教をはじめとするアブラハムの宗教に関わる人びとにとっては、衝撃の書であろう。
モーセは、アブラハムの宗教において、最重要な預言者の一人とされ、伝統的には旧約聖書のモーセ五書(トーラー)の著者であるとされている。その中の一つ『出エジプト記』に -
Posted by ブクログ
ユダヤ民族の解放者にして立法者であり、宗教創始者でもあったモーセ。
フロイトはそのモーセがユダヤ人ではなくエジプト人であったという仮説を立てます。
フロイトは、エジプトに一神教をもたらした古代エジプトのファラオ、イクナトンの業績に着目し、ユダヤ人のエジプト脱出はイクナトンの宗教改革が失敗に終わった結果、行われたものだと考えます。
しかし、もしそうだすれば、モーセがセム人の神に対する信仰をユダヤ人にもたらしたという歴史家たちの研究と矛盾してしまいます。その矛盾を説明するために、フロイトは、モーセが実際には二人いたという大胆ですが単純な仮説を立てました。
一人目のモーセは、エジプトの神アトンに