消えゆく町についての本を書こうとしている男が、穴が生じて消えてしまう町や名無しの都市をガラス越しに見ているような小説だった。英国人とは違う、オーストラリア人の孤独というか、白人入植者とアボリジニの間の問題のようなものを感じた。この本自体が「消えゆく町」について書かれた本であるから、作中で完成させられなかった「消えゆく町についての本」になるような構造が面白いと思った。自らの住む日本に引き寄せて考えると、都市はいわゆる「東京」だろうか。でもオーストラリアでしか書かれえないテーマで、そこがまた面白いと思えた。