作品一覧

  • 読書セラピスト
    3.6
    1巻2,200円 (税込)
    悩める人々に読むべき本を処方する、読書セラピーを始めたヴィンチェ。ある日、彼のスタジオの階下に住む婦人が失踪、状況証拠から夫が殺人の容疑をかけられる。読書家の彼女が残した本のリストからヴィンチェは真相を探る……。彼女はどこに消えたのか? 本当に夫に殺されたのか? 「失踪」「別の人生」「入れ替わり」といったテーマの読書歴のある彼女の真実は? シニカルで文学的で不思議な味わいのビブリオ・ミステリ。本書は、イタリアのミステリの賞・シェルバネンコ賞を受賞している。
  • 19世紀イタリア怪奇幻想短篇集
    3.3
    1巻1,045円 (税込)
    野生の木苺を食べたことがきっかけで、男爵の心と体が二重の感覚に支配されていく「木苺のなかの魂」、〈真実の口〉ドン・ペッピーノの忠義心が試練の数々に直面する寓話風の「三匹のカタツムリ」ほか、世紀をまたいで魅力が見直される9作家の、粒ぞろいの知られざる傑作を収録。全9作、本邦初訳。
  • プラハの墓地
    3.9
    1巻3,666円 (税込)
    イタリア統一、パリ・コミューン、ドレフュス事件、『シオン賢者の議定書』……すべてに関わるひとりの男がいたとしたら? 知の巨人が描く憎しみのメカニズム。ユダヤ人嫌いの祖父に育てられ、法学を学んだ青年、稀代の美食家シモーネ・シモニーニは、祖父の死後、ある公証人のもとで遺言書等の文書偽造の仕事を任されるようになる。陰謀渦巻く、混沌とした19世紀ヨーロッパを舞台に、偽造の腕を買われた彼は各国の秘密情報部との接点を持つようになり、その守備範囲は遺言書や証明書等の個人的な書類から政治的な文書へと広がっていく。そして、行き着いたのは史上最悪の偽書と言われる『シオン賢者の議定書』だった。捏造であることが判明した後も、ナチのホロコーストの根拠とされ、アラブ世界ではいまだに読まれつづけているというこの文書の陰に、シモーネ・シモニーニの存在が……。本書の登場人物中、彼以外はほぼ全員、実在の人物である。
  • 鏡の前のチェス盤
    3.0
    1巻792円 (税込)
    10歳の男の子が罰で閉じ込められた部屋で、古い鏡に映ったチェスの駒に誘われる。不思議な「向こうの世界」に入り込むと、そこには祖母や泥棒、若い男女らがいて……。哲学対話のようでもあり、語り手の「マッシモ」のとぼけた語り口と、鬼才セルジョ・トーファノの挿絵との貴重なコラボが実現した、20世紀前半イタリア文学を代表する異世界幻想譚。
  • 読書セラピスト

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    後半ではミステリー要素が漂うものの、ほぼ全編に文学的素養が詰め込まれ、実に豊かな読書体験となりました。これほど教養の何たるかを突きつけられたことはありません。このような会話をしてみたい、と心底思ったし、膨大な読書経験の中からこれと思う場面が引き出せるヴィンチェは尊敬しかできません。たくさん本を読んできましたが、自分の人生を象ってはいないなあ、としみじみ思ってしまいました。ミステリーばかり読んでるから仕方ないんですけどね。ヴィンチェの語りで文学の素晴らしさを改めて感じました。文学を学んでいた学生時代も思い起こされ、素敵な余韻に浸れました。こういう作品も読んでいきたいな、と思えています。そして、私

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    2022年03月21日
  • プラハの墓地

    Posted by ブクログ

    内容としては、文書偽造技術を持つ主人公シモーネ・シモニーニの日記によるさまざまな事件の回想を語り手と読み進めていくもの。1830年~1898年の記録なので、2つの世界大戦前、革命を経てナショナリズムが広まった時代です。イタリア統一、ルイ・ナポレオン、ドレフュス事件、さらにシオン賢者の議定書等世界史に詳しくない私でも知っている事件の裏に一人の人間が関わっていたというエンタメ性もあり一気に読み進めてしまいました。この本からエーコにハマっています。
    個人的には語りの技術が抜群に好きです。どんどん語り手とともに深淵にのめり込んでいく感覚で読み進めました。フィクションと歴史との混ざり具合もまた真実味を増

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    2021年02月03日
  • プラハの墓地

    Posted by ブクログ

    ウンベルト・エーコの遺作となってしまった小説だけに、今年ラストの55冊目として読ませてもらった。感想は、、、最高!『フーコーの振り子』と、『前日島』と、『バウドリーノ』を足して、3で割って、10掛けたように刺激的な時間だった!まさにエーコの集大成。こんな小説を読めるなんて、おれは幸せ者だ。来年はエーコの評論も読んでみよう。あぁ、いい一年だった。皆さん、良いお年を。

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    2016年12月27日
  • プラハの墓地

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    [偽の蝕み]「偽書」でありながら、反ユダヤ主義の言説に決定的な影響を与え、ヒトラーも引用をした『シオン賢者の議定書』。この文章を執筆した人物のみを架空の設定とし、『議定書』がいかに著されていったかに迫った歴史小説です。著者は、イタリアの小説家であり記号学者でもあるウンベルト・エーコ。訳者は、京都外国語大学で教授を務める橋本勝雄。


    これは小説なのかそれとも小説という形式だけを借りた思想史叙述なのか......。凄まじいディティールと時代描写で、近代ヨーロッパの暗い側面の歩みが透けて見える異色作だと思います。テーマ的にも、分量的にもかなり重い読書にはなりますが、陰謀や偽説というものがいかに創り

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    2016年10月31日
  • プラハの墓地

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    史実の中に巧みに虚構を立ち上がらせるのは、ウンベルト・エーコの得意とするところ。しかしそれを単純に虚構だと割り切って読むことが出来ないのもまたこの作家ならではのこと。そのことを肝に銘じて読まねばならないと自戒しつつ読み進める。

    「薔薇の名前」を初めて読んだのはもう四半世紀以上前のこと。歴史の中の「もしも」を推理小説風に描いた作品は単純にエンターテイメントとして面白く、ショーン・コネリー主演の映画も素晴らしかった。しかし時を経て読み返すと、輻輳し縦横に入り組んだ話の全体像、あるいは、小さなエピソードが意味する暗喩を一つ一つ受け止めるには文字を追う必要があると、思い直した。映像はともすれば勧善懲

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    2016年09月05日

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