2011年はどういう年だったかってもう今は2013年なので
去年はどういう年だったかというと2012年なのである
2012年篇が出てから読むよりましだけれど
もう2012年のことなんて覚えていないぞ
2011年はいろいろあったからともかく
小川一水『宇宙でいちばん丈夫な糸 The Ladies who have amazing skills at 2030』
毎度おなじみ作者
副題とおり『妙なる技の乙女たち』連作中のひとつ
これだけきりだしても面白がりがたい
カーボンナノチューブのSFとの現実味どあいはそうだと思う
庄司卓『5400万キロメートル彼方のツグミ』
指示が音声入力なのもすごいが
なぜツグミなのかわからない 意味ないのか
ライトノベルに侵されすぎてジュブナイルの純がどんなだったか
文章はしばしに無駄を感じる
恩田陸『交信』
同選集過去最短(たぶん)1ページ
「はやぶさ」盛り上がっていただけるは
宇宙開発事業としてまこと結構だが
なぜ「はやぶさ」だけ
「かぐや」もがんばったんだよ
爆発迷走墜落しないとお涙頂戴できませんか
題名と内容だけあって置いておくと
そのうちなんだかわからなくなる1ページ
堀晃『巨星』
「バビロニア・ウェーブ」というと
「リフレクト・フォース」と同じにきこえる程度に
何が書いてあるかわからない
小松左京作品はあまり読んでいないので
オマージュというフランス語と同じ
『明日泥棒』の「直列二気筒」は
大学生のとき初めて沼袋駅のスーパーのレジが
そうなっているのを発見して興奮
さすがはなのみやこだいとーきょーと思い出
瀬名秀明『新生』
こちらはパスティーシュでリスペクトらしい
小松左京作品にはぜんぜんもんくないのだが
SF選集「2011年傑作編」を買ったのに
それはおいても良い作品だから載せたのだろうけれど
はやぶさや小松左京や福島で爆発しなくても
2011年は2011年
とり・みき『Mighty TOPIO』
マンガは絵が使えるのでずるい
映像作品だとさらに効果よく音をかけ合わせられて
さらにずるい
文章でしかのものもあるしたいていなんとかなるけれど
やはり文章でしかない
川上弘美『神様 2011』
この選集初(たぶんたぶん)の「著者のことば」なし
ジャンル「文芸」文章芸
うしろに術がつくとなぜかありがたい日本語
神林長平『いま集合的無意識を、』
「ついったー」は商標登録 R.P.G
伊藤計劃作品や
ネットワークに日々多くのひとがつないで費やしていることに対する
SF作品についての随筆とか評論
集合的無意識を生成するということが
これまでの歴史が想像できる範囲を超えて
想像できなかったものを想像できえるのか
とりあえず宇宙飛行士にはならずとも月から地球をみてみたいが
それほど人間には期待していない
まったくしていないのではないにせよ
伴名練『美亜羽へ贈る拳銃』
面白がれる娯楽作品が読みたい派としては
これくらいの長さで短編小説という気
脳マッピングがそこまで再現性あるなら
ミステリにならないのではだが
こまけえこたぁいいんだよ
例によってもちろん『ハーモニー』のことも
すっかりさっぱりまるきり全然少しもまったく覚えていないのが
(例えば主人公の性別も答えられないくらいに)
この作品は娯楽小説として作り物じみて面白い
ただ上と矛盾しないが短編小説としては長めに感じる
石持浅海『黒い方程式』
そういえば今回はこの選集恒例のこれのどこがSFだとの文句がなかった
『冷たい方程式』はミステリにおける
説得力ある「意外な結末」ものにおける
「最初に書いたもの勝ち」で感心させられたが
ミステリでもSFでも「説得力ある」の部分を
読者がどれくらい興深く感じてくれるかは技術の外にあって難しそうだ
この作品に限ったことでもないけれど
宮内悠介『超動く家にて』
「ほぼぎりぎりSFといえなくもなくもないかな」なミステリ
『すべての夢~』が「マニア向け過ぎはしないかと思った」わりには
これは良いのがよくわからない
ミステリの限界突破をSF畑からうらやましがってるだけなのでわ
黒葉雅人『イン・ザ・ジェリーボール』
これも風変わりな舞台立てのミステリでSFとしてはなんとも
ミステリとしてはおとなしめ
参考文献のひとはミステリでなくとも読めて
ミステリでないと読めないのとは違うと思う
木々津克久『フランケン・ふらん -OCTOPUS-』
この作者の作品は
「ひとあじちがう価値観」心をくすぐるが
『ブラックジャック』でなく『夢幻紳士』路線で
ひとつ上の作品と同じく力量に差がありすぎる
作品として劣っているからといって各人の好みとはまた別だけれど
三雲岳斗『結婚前夜』
嫁ぎ先の状況と親元との対比に
読むこちらの心境が一方偏りすぎで効果薄
先行作品の黄金則を反転させたのだろうけれど
あまりうまくいっていない
大西科学『ふるさとは時遠く』
「どんどん高い塔を建てていくと先端は光速を超えるんじゃね」
の麓を眺めた舞台設定発想
天円の描写は地上のスペースコロニーでとても面白いが
つじつま合わせるのがすごく大変そうで
郷愁に浸っているどころでない気がする
そのずれたのんきさが作者の持ち味と思うが
あんまり明るい話でなくいまひとつ
新井素子『絵里』
「子供が親に感慨を持ってくれないなら親が負担を負うことはない」
という意見へまともに反対するのはとても困難だが
「予定外着床」という「事故」の責任は誰にあるかと
「子供が親をどう思うか」と「親が子供を育てなければならない」関係を
混ぜてはいけないのでは
SFかどうかとかでなくお話としてしっくりこない
円城塔『良い夜を待っている』
別格過ぎて他の作品が霞む
理山貞二『〈すべての夢|果てる地で〉』
いかにも「出し惜しみなく詰め込んだ」作品
前向きにSFらしいSF活劇
ロバートの愛称がボブらしいのが不思議
オーウェル効果はヴェルヌウェルズの昔から
その反証のほうが多い気がしてしまうので
もう少し踏み込んで欲しかった
アイデア盛りだくさんだけれど
「活劇」なのでもうすこし華麗なまとまりだともっと良かった
どの短編を取捨選択するかにもよるだろうけれど
神林円城のお二方ととり・みきのお一人は別格として
その他は上と比較して残念
しいてあげると伴名石持大西理山といったかたがた
各作者様には名もなき一読者の感想などと関係なく頑張っていただきたい(えらそう)