かれこれ30年以上前、映画館でリンチ版の映画「砂の惑星」を観た後に旧訳版を読みましたが、今ひとつ訳がこなれていない感じがあり、その頃から新訳版が出ないかと、漠然と思っていました。
という割には、新訳が出てからの積ん読期間が長く、読むのがヴィルヌーヴ版「砂の惑星Part2」を観た後にになってしまいまし
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酒井さんの訳は一読して明瞭というべき分かり易さであり、登場するキャラクタと情景が頭の中に生き生きと立ち上がってきます。
もしかすると旧訳の分かりにくさの中に哲学的な奥深さを感じていた人もいたかもしれませんが、個人的には新訳を断然支持します。
さて、上巻は、新たな統治領アラキスに到着したばかりのアトレイデス公爵が、ハルコンネン男爵の襲撃を受け、ジェシカとポールの母子が辛くも砂漠へと逃亡するところで終わります。
覚えていなかったのですが、この時点で既にポールはほとんど覚醒していたようで、後に命の水(砂蟲の”死に水”)を飲むのは儀式にすぎなかったのでは、と今にして思います。
また、ポールが覚醒した時に見たヴィジョンは、量子論でいう多世界解釈に影響されているように思われることも興味深かったです。
そういえば、ゲーム「STEINS;GATE」は、主人公がヒロインを救うために、何度もやり直して何とかその世界線を探り当てる話でしたが、本書の主人公ポールは、未来を視る力(万能ではないようですが)を使い、犠牲を最小限にしつつアトレイデス家再興・ハルコンネン家殲滅を達成できる世界線を探り、進んで行くことになります。