作品一覧
-
4.0
-
3.5
ユーザーレビュー
-
Posted by ブクログ
夏に読むべき本。といいつつ、長谷川博己様信者なので映画のビジュアルから入った不純な動機で読み始めました。
戦争末期の物語というと悲惨さが際立つものが多いけれどこれは戦争末期をそれぞれの生き方で行き過ぎる人間模様を描いた小説だった。
妻子を疎開させたアラフォー男子の市毛、母子家庭となり伯母と母の仲を取り持ちつつ生きる里子。裏表紙のあらすじにもある通り二人が通じあっちゃうわけなんだけれど、
それがメインの不倫メロドラマというわけでもなく、ただ、昭和の男女関係という雰囲気は漂う。勝手ともいえず一途でもない。戦時下という特殊な状況でそれでも人の生きる力はすごい。
この関係の捉え方が二人とも全然違っ -
Posted by ブクログ
太平洋戦争末期の東京・杉並に暮らす19歳の里子の日常が、淡々と粛々と綴られる。すっかり最近(……というのは少なくとも平成)の作品かと思っていたんだけど、読むのも終盤になってから1983年に発表された作品だったことを知った。それがわかると何となく、小説らしい小説だなと思いながら読んでいたのの裏づけがとれたような気がする。
「小説らしい小説」とは、三人称で書かれていること、情景や心情の描写が多く占めること、「 」(会話)が延々と続くことがないことといったところだろうか。悪く言い換えれば古くさい小説ということになってしまうだろうけど、きちんと練られたストーリーと書きぶりに、淡々・粛々としていながらあ -
Posted by ブクログ
ネタバレ北の河がほんとうに読んでよかった作品だった。言葉にならない部分を情景(東北の冷たい河)が補う。そういう意味で完璧なバランスの上に成り立っていたように思う。起こってしまったこと(戦争によるそれまでの生活の崩壊)をそういうものだと受け取れる15歳の僕と、これまでとは明らかに変わってしまったと考える母。この決定的な違いを話の中に見れた気がした。だから母は息子とふたりで生きていかなければならないこの先について耐えられなく思い、命を絶つ。15歳の僕にはどうしようもできない。そのどうしようもなさが手に取るように分かる。描かれているすべての情景や空気感が、この話の核を包括している。あるべくしてある小説だこれ