今村信雄作品一覧
-
-長屋住まいの孝行娘おつるは大名にみそめられ男子をもうけて大出世。兄の八五郎をお城へ呼んだ。礼儀もなにも知らない八五郎は天衣無縫に振る舞って気に入られ、石垣杢蔵源蟹成(いしがきもくぞうみなもとのかになり)という名前を頂戴した。あるとき馬に乗っての使者に遣わされたが…
-
-戦前から戦後まもないころにかけての落語の全盛期、速記によってまとめられた「落語全集」が底本で、全154編を上中下の3巻にまとめて収録した決定版。このため独特の「古風な味わい」の残る語り口が身上となっている貴重な遺産です。
-
-人情噺 「明烏後真夢(あけがらすのちのまさゆめ)」の発端である。噺の中のクスグリをサゲにして、一席の落語にしてある。
-
-王子には昔たくさんきつねの穴があったそうである。そうして王子は江戸庶民が四季おりおりに訪れた場所でもあった。もとは「高倉狐」という上方のはなしである。
-
-町道場に通う熊五郎、剣術にこって商売を怠け、質においた蚊帳(かや)さえ受けだせない。女房に悪態をつかれて先生に「道場をしばらく休みたい」と相談すると、「蚊の大群など恐れるに足りない」と先生は言い、撃退の謀計(はかりごと)をさずけてくれた…
-
-碁がたき同士が「きょうは待ったなしでいこう」と決めて打ちはじめると、さっそく相手が「待った」。「そりゃねえだろ」からはじまっての言いたい放題の喧嘩わかれ。だが雨降りが続くと何となく碁が打ちたくなって…
-
-円朝作の三題噺〔客から適当に三つの題をもらい、一席の噺にする〕という。題は毒消し、鉄砲、たまご酒であった。落語中の大物とされている。
-
-「サアサアご用とお急ぎのないお方はゆっくりとお聞きなさい…」という口上で有名。「高田の馬場」という題でやることもある。
-
-講談のほうでは佐々木小次郎に同様のがあるので、このような題名をつけたのであろう。続き話のごとく重々しく振り込んで軽く落とすところ、真打ちのやるべき大物である。
-
-長屋の家主幸兵衛は世話好きだが、小言ばかり言ってうるさい。貸し家札を見て、次々と借家人がやってくるが、口頭試問は辛らつ。そこを無事通過しても、幸兵衛の想像力の飛躍はとどまるところを知らない。
-
-運びに無理がなく明朗でおかしくて構想の奇抜なところ、まことに代表的な名作。作者の二代目正蔵の前身は僧侶だったという。
-
-これは元三題噺である。酔っぱらい、芝浜、財布の三つをまとめたもので、現在のような名作落語に作りあげたのは円朝である。海で拾った革財布を腹がけの丼にしまうものと、財布を盤台へ投げ込むものと、また前を略して、家へ帰って来たところから始めるものと、いろいろの型がある。
-
-殿様の将棋は傍若無人、都合がわるくなると、その歩を取り払えとか、飛車が金銀を飛び越えて相手陣へ成りこむ。これならもちろん連戦連勝、おもしろくないので「負けたやつには鉄扇をお見舞いする」と宣言したが…
-
-にせ物の幽霊の噺も少なくないが、この話に出るねじべえは珍らしい善人である。雛の箱についている樟脳の匂いを嗅いで樟脳玉の燃える匂いを思い出し、魂を連想したところなどは、あっぱれ作者の働きで、名作である。
-
-初めての子に縁起のいい名前がほしい…坊主に相談してつけた名は「じゅげむじゅげむ、ごこうのすりきり、かいじゃりすいぎょのすいぎょうまつ……」前座の口ならしに格好のはなし。諸地方の民話に似たものがあるという。
-
-「婚礼に御用捨」は「巡礼に御報謝(ごほうしゃ)」にかけたもの。上方では「…このうらふうねェに帆を上げてェ……助け船ヤーイ」」でサゲている。
-
-演者によっては、田之助の弟子の沢村田之紀という、やはり親孝行な芸人のことにして話す。孝行の徳が幸福を得たというのだから感じがよい。
-
-佃祭の実話を小噺を着けてサゲたものである。これは立派な真打ち噺で、信心などをマクラをつけて、長い高座にしている。
-
-これはとくに解説をいれることもない。明るく、素直にやれば、たいへんおもしろい。知ったかぶりをする人をうまく描いている。
-
-およそ落語家で、道灌を演(や)らぬものはほとんど無かろうというくらい、前座咄の中での王様にも当たる。
-
-原話は江戸期の「醒睡笑(せいすいしょう)」(安楽庵策伝著)などの江戸小咄からに見られる。上方では単に「床」と言っている。名作である。
-
-この噺の落ちはいく通りもある。町内の鳶頭(とびがしら)の家へ行き、宝船の図を見て「いい六だなァ」と褒めると「ナーニ七福神だ」とさげる。これが一番古いらしいが、ほかにも「これァ六だろう」「ナーニ質の流れだ」というのもある。江戸小噺から取ったものだが「膝栗毛」にも使われている。
-
-道楽のすえに勘当された若旦那は、船宿に居候するうち、船頭になろうという気を起こす。浅草の四万六千日に蛮勇をふるって船を出したのだが……
-
-前に奉公していた男が上方からもどり、役者になったと挨拶にくる。「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)」で熊谷直実の馬の足で舞台に立つという。旦那はよろこび店の連中総出で見物にゆく。さてその結果は?
-
-以前からあったちょっとした話を、幕末・明治期に活躍した円朝(えんちょう)がこれだけにまとめあげたものだといわれ、円朝得意の人情噺(にんじょうばなし)である。
-
-中国の「笑府」に出るはなし「饅頭」がもとになっている。談州楼焉馬(だんしゅうろうえんば)編の「落噺(おとしばなし)」中には、東南西北平作として出ている。
-
-小網町の質屋の息子半七は碁か将棋のため遅くなって帰宅、父親に締め出されてしまう。一方、隣の船宿の娘お花も夜遅くなって締め出しを食う。半七は霊岸島の伯父のところに泊りに行くが、お花は無理矢理くっついていく。酸いも甘いもかみわけた伯父は二人を二階へあげてしまう。
-
-仰々しい馬乗りのいでたち、駈けっこの末の空腹とさんまの匂い、百姓の啖呵、大名どうしのやりとり、誰も目黒がどういうところかまったく知らない世間知らず……文字で追うと、また格別のおもしろさがある。