集英社文庫作品一覧

  • 書楼弔堂 破曉 探書壱 臨終
    5.0
    1~12巻176円 (税込)
    明治二十年代中頃、東京の外れに佇む三階建ての灯台のような異様な本屋「書楼弔堂」。無数の書物が揃うその店で、時代の移り変りの中で迷える人々と彼らが探し求める本を店の主人が引き合わせていく。変わりゆく時代の相克の中で本と人の繋がりを編み直す新シリーズ。電子分冊シリーズ第1弾! ※本電子書籍は『文庫版 書楼弔堂 破曉』の電子分冊になります。
  • 短篇セレクション ノスタルジー篇 夢のかたみ
    5.0
    一枚のモノクローム写真に秘められた懐かしくいとおしい日々の記憶。人生の晩年を迎えようとしている女性随筆家は、愛した男への思いを胸に生きてきた。だが、小さな出来事が平穏な生活にさざ波をたてる……。表題作「夢のかたみ」ほか、再会の一夜のドラマを綴る「チルチルの丘」など、遠い日のエロスを溢れるノスタルジーで描く。失われた時間への哀惜と感傷に満ちた5編。
  • 師父の遺言
    5.0
    京都祇園の料理屋に育ち、歌舞伎役者と親戚で、幼い頃から芝居に親しんだ著者。早稲田大学で演劇を学ぶうち、稀代の演出家にして昭和の怪人、武智鉄二に出会う。やがて“跡継ぎ”と見込まれ、弟子として武智の演出助手を務めるようになるが……。毀誉褒貶ありながら鬼才として名を馳せた反骨の師が、全身全霊で教えてくれた人生の闘い方とは! 恋愛に似た師への想いと波乱の青春を描く自伝文学の傑作。
  • 花埋み
    5.0
    女に学問はいらないという風潮が残る明治初期、医学の道を志した女性がいた。日本最初の女医・荻野吟子である。夫に膿淋をうつされた屈辱と痛みから、同じ悩みをもつ女性を救うべく、かたくなな偏見と障害を乗り越え、医師の資格を取得し、医院を開業。やがて、婦人問題に取り組む社会活動にも参加していく。数奇な運命に満ちた愛と苦悩の生涯を医師出身の著者が、情熱と共感をもって描く評伝小説。
  • 星のあひびき
    5.0
    昭和を生きた知の巨人、丸谷才一。日本の文学、文化に多大な影響を与えた著者が、小説、音楽、戦争、食など、多岐に亘るジャンルから、その時代背景や歴史の一幕を覗き見る。『源氏物語』から『ドラゴン・タトゥーの女』に至るまで、様々な作品を取り上げた書評や吉行淳之介についての随筆、井上ひさしへの追悼文などを含む、膨大な知識としなやかな感性が生み出す珠玉のエッセイ集。
  • ポケットマスターピース01 カフカ
    5.0
    カフカの文学は、映像的であるという印象を与えながらも一つの映像に還元できないところに特色がある。『変身』のグレゴール・ザムザの姿も言語だけに可能なやり方で映像的なのであって、映像が先にあってそれを言語で説明しているわけではない。……読む度に違った映像が現れては消え、それが人によってそれぞれ違うところが面白いのである。この機会にぜひ新訳でカフカを再読して、頭の中の映画館を楽しんでほしい。(多和田葉子・解説より)
  • めぐり糸
    5.0
    終戦の年に生まれた“わたし”は九段の花街で育った。家は置屋から芸者を呼ぶ料亭「八重」。母も評判の芸者で、客として訪れた父は母と知り合い、わたしが生まれた。踊りや唄の練習に励み、幼くして芸者になることを夢見たわたしは、小学二年生のときに置屋「鶴ノ家」の子、哲治と出会う。それは不可思議な運命の糸が織り成す長い物語のはじまりだった。数奇な人生と燃え上がる情熱を描く長編。
  • 夢みる妹たち
    5.0
    長女涼子。ひとりっ子の舞とともに別居生活を始めたばかり。舞を名門幼稚園に通わせるためで夫と離婚する訳じゃない。次女美雪。大学受験を控えて上京。独り住いの義兄の家に居候中。ただならぬ恋の予感を感じている。そして三女由香。オテンバな高校受験生。不思議な恋人ができたようだ。美しい三人の姉妹をめぐる恋模様が次々と波瀾を呼び奇妙な事件が巻き起こる。家族と愛とサスペンスの物語。
  • 箱根たんでむ 駕籠かきゼンワビ疾駆帖
    5.0
    東海道随一の難所、箱根路。箱根山を越えて西を目指す旅人で賑わう小田原宿で、ひときわ威勢のいい駕籠かきが侘助と漸吉の二人組だ。年の頃と背丈が近いという理由で親方に組まされた二人だが、とにかく息が合わず、喧嘩ばかりの問題児。そんな二人が、商売敵と「箱根一」をかけて勝負することになり――。箱根を舞台に、少年たちの成長と友情を生き生きと描く青春時代小説。
  • 公園通りの午後
    5.0
    【渡辺淳一文学賞創設記念電子化!】脊髄の腫瘍で数日のはかない命とも知らず、少女が語る無限の未来――。癌患者に真実を伝えるべきか。そして最後まで果敢に死の恐怖と戦う人間の姿――。その存在にかぎりない心のゆとりを与えてくれる母への思い――。作家であり医師である著者が、人を愛するが故にみせる冷酷な目、虚無的な目、優しい目が行間にちりばめられた珠玉のエッセイ。
  • 老いの戒め
    5.0
    自分の年齢は、自分が決める。他人様から老いを見つけられてはならない。年齢を言い訳にせず、努力を始めよう。年をとったら、相手を包み込む度量、心の大きさ美しさを意識したい。自分の生き方に責任をもって、潔く老いるのだ。他人に期待せず、自分に期待して生きたい――。日常のおしゃれ、言葉遣い、しぐさから、この世を去る時の思いまで、自分を戒め器量よしになる43の提案。珠玉のエッセイ。
  • 働くことと生きること
    5.0
    天職とは最初からあるものではなく、働きながら育った人格があとから見出すもの、心のあり様次第のもの――。僧侶、販売員、役所勤め、中国での苦力監督、代用教員、新聞記者など様々な職業を体験した著者。棺づくり下駄直しなど生活のために働く父母、一品に心をこめる竹人形職人達。職に徹する人々を見つめ続けて感じた誇りをもつ明るさ。仕事から教えられる幸せと人生を綴る、珠玉のエッセイ。
  • 星の王子さまの恋愛論
    5.0
    永遠の名作『星の王子さま』は、実は恋の再生を描いた物語だった――。かんじんなことに気づかず、一度は想った相手を捨てて旅に出てしまった王子さま。たくさんの出会いを経て、彼が最後にたどり着いた真実の愛とは……。孤独な人生を送った原作者が、身を切るような思いで作品にこめたメッセージを丁寧に読みときます。愛に迷ったとき、『星の王子さま』が大切なことを教えてくれます。
  • トマトケチャップの青春
    5.0
    彼は学校へ行かなくなった。食事も1日に1度、すべての料理にあふれるほどトマトケチャップをかけ、皿まで真っ赤にして食べる――。そんな彼がやがて結婚し、子供をつくり、流行作家になった。妻や子供との日常生活に、ふと昔の自分の姿を思い出す。深い思索の中に苦いユーモアをちりばめた私小説。
  • 父親学入門
    5.0
    「女性は子供を生めば母親になるが、男性は子供が生まれたからといって父親になるのではない」。子供に将来のビジョンと希望を与え、同時に交渉可能な他者としての存在感を示さねばならない。ふたりの息子を育てた経験を背景に、その戸惑いの中から掴んだ真理を具体的に解きあかす。父親とは何か? 父親が果たさねばならぬ役割とは何か? 芥川賞作家が全ての父親と父親予備軍に贈る必須の一冊。
  • 虹列車・雛列車
    5.0
    青年よ、旅に出よ――。大学生の「僕」は、学園祭で講演に来た「花村」という作家にそそのかされて、北への独り旅に出かけた。旅先の下北半島で「僕」は様々な光景に出会い、成長していく。一方、作家である「私」は沖縄をさまよっている。ユタと出会い、色街を歩き、娼婦たちと関わり…。北へ、南へ、旅を続ける男たち。神宿る風景を素描し、「私小説」を擬態した傑作短編集。
  • 韃靼の馬 上
    5.0
    【第15回司馬遼太郎賞受賞作】正徳元年(1711)、徳川幕府は29年ぶりに朝鮮通信使を迎える運びとなった。対馬藩士、阿比留克人(あびるかつんど)は通信使の警固を務める傍ら、ある極秘任務を請け負う。監察御史の柳成一(ユソンイル)、旅芸人のリョンハンらを含む通信使一行は、対馬上陸から大坂、名古屋を経て江戸へ。道中、柳は克人の行動を不審に思い監視を始めるが……。世界を股にかけて活躍した男たちを描く歴史巨編。
  • 春楡の木陰で
    5.0
    世界的免疫学者である著者が、初の留学で住んだ1960年代のデンバー。下宿先の老夫婦との交流、ダウンタウンのバーに通って知った豊かなだけではない米国の現実。戦争花嫁だったチエコとの出会いと30年に及ぶ親交。懐かしくもほろ苦い若き日々――。回想の魔術が、青春の黄金の時を思い出させる。そして脳梗塞となって、その重い病との闘いのなかから生まれる珠玉の言葉。自伝的エッセイ。
  • 京都の祭に人が死ぬ
    5.0
    “鞍馬の火祭”が終った境内に転がっていた黒焦げの死体を身代わりに、巧みな戸籍操作で逃げていたはずだったが……。意外な結末にアッと息をのませる「鞍馬の火祭」ほか、祇園祭、時代祭、くらやみ祭など、歴史と伝統を誇る京都の祭を舞台に、トリック・メーカーの第一人者が、意外性を充分に愉しませる推理傑作7編を収録。
  • 湖畔亭
    5.0
    温泉地の老舗旅館に、ひょっこり現れた初老の小笠さん。悠々自適の湯治客と思ったら、ある日、湯番を買って出た。湯かげんはもとより、料理、笛に新内、なんでもイケて、物腰もやわらかく、にこっと笑えば名推理。難事件をつぎつぎ解決し、人助けに精を出す。そんな「小笠さん」の正体は……? たっぷりのお湯と美味とユーモアで、心の底から温まる連続小説。
  • 砲艦銀鼠号
    5.0
    ある大きな戦争で崩壊した近未来世界。金も居場所もなくなった元戦闘員の三人組が、偶然、手に入れたオンボロ戦艦「銀鼠号」で海賊稼業を始めることになった。用心深く情に篤い灰汁(あく)、冷静沈着で陽気な可児(かに)、短気であくどい鼻裂(びれつ)。勢い込む三人だったが、戦艦は超低スピード、肝心の機関砲が使えない……。プロペラ巨人、泥豚、雲人間など未知なる生物が次々現れるシーナのドキドキ海洋大冒険SF。
  • 雪燃え
    5.0
    茶道・綾小路流の若宗匠との出会いは、薄幸な萩乃の運命を大きく変えた。天性の美貌と才智を武器に、数かずの男性遍歴をかさね、野望は次第にふくらんでゆく……。嘘と虚栄の渦巻く茶の湯の世界を舞台に、艱難辛苦の末、ついに家元の後見人にまで昇りつめた一女性の哀歓を、流麗なタッチで綴る長編力作。
  • 少女と武者人形
    5.0
    屋根裏部屋の武者人形が持つ剣に血が噴き出した時、家族が死ぬ。彼女はそう信じ込んでいる。揺れ動く思春期の少女が入り込んだ心の迷路と夢魔の世界。不気味な結末の表題作をはじめ、いつまでも回り続ける大きな回転扉の向こう側の世界を描く「回転扉」や、死ぬまで街中を競歩し続ける男が主人公の「ねじおじ」など、風刺が冴える奇妙な味の幻想譚12編を収録。
  • 吉原螢珠天神
    5.0
    将軍家の元お庭番の許へ届いたのは井伊直弼暗殺の依頼だった。しかし井伊公は幽界の家康が乗り移った玉の命で動く、不思議な黒衣の集団に守られていた。元お庭番の活躍を描く表題作のほか、朝鮮で覚えたキムチの味が忘れられない剣術使いの、すべてを捨てて漬物作りに熱中する「辛うござる」など3編。卓抜した着想が光る鬼才の初の幻想時代小説集。
  • 脳の力こぶ 科学と文学による新「学問のすゝめ」
    5.0
    日本の教育はどうあるべきか。第一線で活躍する脳科学者と文学者が縦横無尽に語り合う。「早期英語教育は危ない」「IT教育は害ばかり」「子供には退屈させよ」etc…。深い知見と良識から引きだされた数々のメッセージは、世間に流布する固定観念をことごとく論破する。豊かな人間性と知性へとつながる本物の「脳の力こぶ」はどのようにして育まれるのか。悩める親世代、必読の一冊。
  • はるかな町
    5.0
    友達の姉さんへ寄せた淡い想い、夏期休暇の映画会、放課後の図書室、校庭のポプラの樹々……。過ぎ去った少年の日への懐かしみを、詩人、作家である著者が磨かれた感性で豊かに綴る青春の日の讃歌。“はるかな町”へあなたを誘う創作集。33編収録。
  • 出撃 海軍航空隊決戦記
    5.0
    太平洋の乱雲をついて日本本土に侵入する“空の要塞”B29爆撃機。緊急発進、果敢にこれを迎え撃つ零戦、雷電、紫電改。太平洋戦争の終幕をつげる泥沼の消耗戦を、資料を駆使しドキュメンタリー・タッチで描く「本土防空戦」「紫電改戦闘機隊」。終戦時、徹底抗戦を主張して帝国最後の抗命事件となった「厚木航空隊の反乱」など、日本航空戦力の劇的な末路を活写する空の戦記秀作五篇。
  • 君に訣別の時を
    5.0
    中古車販売業を営む元レーサーの立花新太郎。自分のもとから姿を消した悠子からの救いを求める手紙を受け取った。東北、三陸海岸の田舎町に飛び、画家の野口が妻と営むスナックを訪ねるが、野口夫婦は面倒事を抱えていた。立花は何者かに襲われたり、地元の人々に無視されながらも、自分でもわからない何かを確かめるかのように躰を張り、無茶を続けるのだった。疾駆する男の姿が眩しい力作長編。
  • 看護婦物語
    5.0
    1~2巻495円 (税込)
    S大学病院看護婦舞川苑子は、看護学校を卒業して3年。脳神経外科の織田医師に恋したが、彼は苑子を捨て、同僚の看護婦と結婚した。失恋の痛手は大きく、病院をやめると、故郷の産婦人科病院に勤めた。「特異体質」の従妹の出産に関わるが、母子を死に追いやってしまう。愛する人を失い看護婦としての自信を失ってしまった苑子。――看護とは何か、人間とは何かを追求したドキュンタリー小説。
  • わらべうた
    5.0
    けんかならこい、わるくちうた、おならうたなど、遠い日の子ども心をよび戻す素朴で、抒情あふれるかぞえうたの数かず。人間をいとおしむ詩人による現代の楽しいわらべうた。
  • 人斬り弥介 その一
    5.0
    享保年間、江戸は禄を求める浪人であふれていた。版木職人・小田丸弥介は、深川界隈の浪人がひとり、またひとりと姿を消していることに気づく。浪人同士の斬り合いが、何者かの意志のもとで行われているらしい。かつては“人斬り”と異名をとった弥介も、百造と名乗る謎の男から浪人を斬るよう強要されるが…。
  • 罅・街の詩
    5.0
    1~2巻440~550円 (税込)
    30歳を前に商社を辞めて転職した。やくざまがいの探偵稼業。それまでの自分は投げだした。なぜこんなことを始めたかも、考えないようにしていた。そして、汚れた都会の罅の間から聞こえてくる人々の呻きに耳を傾け、その声を胸底に深く沈めてきた。女に言われた。街に詩を書いている。人の心が綴る詩を書いている。探偵、浅生。32歳。哀切で情感あふれる北方ハードボイルドの名編。
  • 入院を愉しむ本 ジョイフル患者学
    5.0
    人間ドックから、生死の境を彷徨う入院まで、入院生活もさまざま。家族や親しいかたや、あなた自身が入院することになったら――。医者や看護婦さんに気をつかい、他の患者さんにも気兼ねする。入院している時ぐらい、他人に迷惑をかけずに、自由気ままに振る舞ってはいかが、病気の回復につながります。より快適な入院生活を送るためのコツと知恵が満載。いざという時のための必読の書。
  • 銀の朝、金の午後
    5.0
    浮気な夫と死別してお楽しみはこれからの初代・67歳、如才ない話術で世渡り上手の未亡人トヨノ・70歳、定年まで独身をつらぬいて働いてきた春子・65歳。ひとり暮らしの女たち三人が集まれば、噂話に花が咲く。老いらくの恋、他人の遺産の行方、健康のこと……。本音を出したり隠したり、好奇心旺盛な彼女たちの行くところ、話題と事件にはことかかず。コミカルで、ちょっぴり切ない女の友情物語。
  • 跳べ、ジョー! B・Bの魂が見てるぞ
    5.0
    ダンクシュートとは、ジャンプ一番、バスケットリングの上からスナップを効かせてボールを叩きこむシュートのことだ。ミサワ基地のジョーは、黒人の誇りをダンクを決めることに賭けた。ああ、神さま、ちびの黒人にでっかい羽根をください! スポーツ小説の幻の傑作と言われるデビュー作がここに復活! アイスホッケー短編「新顔」も収録。還ってきた名手の再編集スポーツ小説傑作集。
  • 娘と私の部屋(「娘と私」シリーズ)
    5.0
    男にも生理がある??……妊娠もするし、赤ン坊も産むわけ???? 講演に対談に、深夜の原稿執筆に多忙をきわめる佐藤愛子センセイが、ふとみつけた娘との小さな時間……。珍説・怪説続出、痛快無比の才気あふれる親子の対話は今日もつづく。抱腹絶倒! 心温まる異色エッセイ集。
  • アルセーヌ・ルパン 世界の名探偵コレクション10(2)
    5.0
    怪盗が名探偵に変身。太陽光線を利用した暗号の謎を解く「太陽の戯れ」、宝石細工師に化けたルパンが、かつての恋人の危機を救う「結婚指輪」、セーヌ河で発見されたショールから、異常な事件をかぎつけたルパンが殺人事件に巻きこまれる「赤い絹のショール」など7編を収録。痛快アクションの魅力と謎解きの面白さを満喫させる冒険ミステリー。
  • 江戸の怪人たち
    5.0
    平賀源内、鼠小僧次郎吉など江戸時代に活躍した怪人たち18人が登場。独特なキャラクターとパフォーマンスで世間を騒がせた人々だ。その行動はじつにユニーク。ときの政治を陰で操る権謀術数、喜々とした偽系図づくり、独自の理念を貫く熱烈行動、飄々と雲流のような生きかた、など。摩訶不思議な時空間の大江戸ならではの「怪人列伝」。
  • 青雲を行く(上)
    5.0
    文久2年、薩摩藩士・中村半次郎――のちの桐野利秋は、西郷隆盛の人格に魅せられ上洛する。「邪魔立てする者は斬る!」烈々たるその決意で人斬り半次郎の異名を馳せた。慶応3年、幕府崩壊。しかし、徳川方の権力は健在で、市中に睨みをきかせている。半次郎は西郷らとともに、真の王政復古を求めるならば実力をもって彼らを追い払うべきだと説く。維新回天にかけた男の青雲の客気を描く長編。
  • 牙

    5.0
    ふとしたことで事件に巻き込まれた石本一幸、19歳。謎の女が残したシガレットケース。その中には巨悪の証拠を示すフィルムが! そして祖父が襲われ、死んだ。いまわのきわに残した「牙をなくしちゃなんねえ。いざという時にゃ、牙をむけるのが、男ってもんだ」の言葉を胸に、迫りくる組織の魔手、陰にひそむ大物に、一幸の復讐が始まる。
  • 吉良忠臣蔵(上)
    5.0
    江戸城中・松の廊下の刃傷事件の背後には、冷酷無比な罠が張りめぐらされていた! 浅野家、吉良家、上杉家、そして将軍綱吉の側用人・柳沢吉保に、赤穂藩家老・大石内蔵助。権謀術数渦巻くパワーゲームを迫力豊かに描き、独自の歴史観で組み立てなおす実像忠臣蔵ロマン。
  • 続 会津士魂 一 艦隊蝦夷へ
    5.0
    会津鶴ヶ城、落つ――。藩主松平容保が京都守護職を拝命して六年。幕府への忠誠を誓い正義を貫いた戊辰戦争は無惨にも敗北したが、榎本武揚率いる旧幕軍艦隊に加わった者は、新たな戦いを挑むべく蝦夷地をめざす……。故郷を奪われた会津藩士達を描き、勝者に歪められた事実を敗者から検証する。明治百年を経た今こそ必読の現代日本再生の示唆に富んだ歴史大河小説。
  • 恋人と逢わない夜に
    5.0
    男友達には言えても、恋人には絶対に言えないことばがある。逆に恋人の前ではかまわなくても、男友達に対しては許されないふるまいがある。女と男はフクザツ怪奇、愛の表現も百人百様、ショート・コントを通して、女には女の魅力を、男には男の美学を教える“知的悪女”のソフト・エッセイ。単行本未収録のオリジナル版。
  • 薄墨の桜
    5.0
    樹齢1200年、幹の回り11メートル余、万朶に咲いた薄墨の桜は、天空に広がりみごとというより他なかった。20年ぶりに蘇った名木は波瀾の人生を歩んだ料亭の女将と、美貌の養女とその恋人との複雑な人間模様を、妖しくも美しく浮き彫りにした。格調高い文章で綴った著者会心の作「薄墨の桜」。他に「八重山の雪」収録。
  • ほんわか介護
    5.0
    8年前、突然始まった夫の母との暮らしは、戸惑いと混乱だらけだった。記憶がポロポロこぼれ落ちてしまう認知症の母は、自分だけ会話の仲間はずれにされたかと不安になり、「知らなかった」「初めて聞いた」と同じ質問を繰り返す。ならば母が思い出しやすいよう、日々の出来事を文字で残すことに――。笑顔の絶えない介護エッセイ。家族の似顔絵をまじえ、語りかけるように綴った日記も一部公開。
  • 男に大人なんていない!?
    5.0
    結婚とセックスで失敗しないための、女性に向けての助言集。「未熟男性」を見抜くための傾向と対策、避妊方法の解説、別れ上手になるために…など、オトコとオンナのアノ話を辛口に語ります! 内田春菊のエッセイ漫画も見ごたえ十分。健康と笑顔と楽しいセックスがあれば幸せはすぐそこ! 男性諸氏は身につまされるお話ばかり、怖いもの見たさで読んでみる?
  • 好きなのに淋しいのはなぜ
    5.0
    好きだけどうまくいかないかもしれない。そんな不安、誰でも経験あるはず。そこでやめてしまったら、次の恋でもきっと同じ悩みの繰り返し。初めから100%理想の相手などいるわけがないから、時間と手間をかけて彼を自分の理想に育ててみては?「依存症とマメな男を見分ける」「無神経な男は気弱と知る」「浮気は時間と金を抑える」など、豊富な具体例とともに、悩める女性にエールを送る恋愛エッセイ。
  • はやぶさ 遥かなる帰還
    5.0
    2003年、5月9日。内之浦宇宙空間観測所から、小惑星探査機「MUSES-C」が打ち上げられた。「はやぶさ」と名付けられたその探査機は、小惑星「イトカワ」のサンプルを持ち帰ることを目標に、長い宇宙の旅へと出発する。「はやぶさ」は「地球スウィングバイ」を経て順調に航行していくが、「イトカワ」到着の前後に、リアクションホイールが故障、エンジンも不調をきたし、次第に満身創痍となっていく。果たして、「はやぶさ」は星のかけらを採って、無事に地球に帰ってくることができるのか――。
  • プリンセスはご・入・学(南条姉妹シリーズ)
    5.0
    南条家の星、サッちゃん(幸子)が、名門四ツ葉学園小学校にご・入・学! 母・麗子や、その双子の妹・美知をはじめ、南条一家はお祭り気分。ところが、麗子が父母会長に選ばれた途端、殺人事件が……。父母たちの人生模様を織り込みながら、四ツ葉学園をめぐる怪事件を軽快なテンポで描くユーモア・ミステリー。大好評「南条姉妹シリーズ」第4弾。
  • 誇り高き週末
    5.0
    べらぼうな財産を代々相続する柳原家の当主、柳原一馬は今年で70歳。妻を亡くして40年、独身で子供もない彼が、突然再婚を宣言する。相手はなんと28歳! さまざまな思惑を抱いた一族がこの週末に、大富豪の花嫁披露パーティに山荘に集まることになった。そこに28歳で死んだ、柳原の妻、早苗が幽霊となって現れた…。愛と殺意の週末を描く表題作。盗聴趣味の中小企業社長に起きる週末の悲喜劇、他1編。
  • 黒鍵は恋してる
    5.0
    高校一年生のあかねは夏休み最後の夜、向かいのマンションで起こった殺人の瞬間のシルエットを目撃した。同じ夜、階上に越してきたピアニスト志望の女の子、真音と知り合い、二人はたちまち友達になる。翌日、あかねは刑事の訪問を受け、殺された女性は誰かの愛人で、部屋の持ち主は人気ロックシンガーであることを知って、好奇心と恐怖でいっぱいになるのだった…。危険な恋と友情の長編ミステリー。
  • 哀愁変奏曲
    5.0
    ハープの調べに愛がめばえ、シンバルの響きに、幼い日の残酷な思い出がよみがえる。ピアノのささやきは作曲家を夢みて、やがて挫折した青春の日々の追憶に誘う。懐かしきイングリッシュホルンの音色に女の哀しい人生模様が込められる。音楽と楽器を巡って奏でられる、愛と哀しみと恐怖のメロディ。連作ホラーサスペンス。
  • スクールバスは渋滞中(南条姉妹シリーズ)
    5.0
    ご存知、南条家の双子姉妹。外見は瓜ふたつ、ライフ・スタイルと性格は正反対。姉の麗子は純粋培養型箱入り奥さま。妹の美知は“暗黒通り”の女ボス。4歳になった麗子の娘・サッちゃんが通う名門幼稚園のスクールバスに爆弾がしかけられた。裏で糸を引くのは学園の土地乗っ取りを企む悪いヤツ。南条家のプリンセスの無事救出をめぐって一家が大活躍する、シリーズ第3弾。
  • ベビーベッドはずる休み(南条姉妹シリーズ)
    5.0
    南条家の双子姉妹。顔はそっくりだが性格は正反対。のんびり屋の姉・麗子は結婚して一児の母となったが、妹・美知は相変わらず“暗黒通り”の女ボス。赤ん坊のサッちゃんを囲んで順風満帆の南条ファミリーを狙う不審な影、影、影。ある日、邸の地下室から若い女の死体が発見され、サッちゃんが消えた…。一家を襲う怪事件に立ち向かう双子コンビの冒険がはじまった…。
  • あの角を曲がって
    5.0
    19歳の女子大生の涼子はエリートサラリーマン・内島と不倫の関係にあったが、その関係が彼の妻・通江にばれてしまう。涼子は「必ず彼を奪ってみせる」と心の中で決意する。涼子を慕うが想いを告げられぬ田辺は同級生の彰子に苛立ちをぶつける。一方涼子の妹・淑子は田辺に恋している。錯綜する愛の行方を描くラブロマンス。
  • 駈け落ちは死体とともに
    5.0
    駈け落ちを決行した哲と明子のトランクからナント死体が! 新生活を夢みて出発したのに、とんだことから殺人事件に巻き込まれた恋人たちをユーモアタッチで描く表題作。学歴偏重主義のひずみが思春期の少年を倒錯した世界へと追いつめてゆく「交換日記」。マザコン係長が部下のOLに自殺予告する「命のダイヤル」など全8編収録の、青春ミステリー作品集。
  • ハムレットは行方不明 上
    5.0
    大学の写真部顧問、衣笠教授は三年前に兄を交通事故で失い、やがて兄の未亡人を妻に迎え教授の地位も受け継いだ。父の事故死に疑惑を抱いた息子の久志は失跡し行方不明…。ある日、女子大生・綾子が新宿の歩行者天国で撮った一枚の写真を見て衣笠教授は顔色を変えた。そこには失跡中の義理の息子、久志が写っていたのだった。久志は何故姿を現わしたのか。青春ミステリーの前編。
  • 風に舞う
    4.8
    俺の求めているのは本物のブルースだ――。本当にやりたい音楽のために、売れ筋の人気バンドを解散し、ビル清掃のバイトで食いつなぐミュージシャン・武史。彼はある日、作家志望の生意気で美しい女子大生・操と出会う。決して妥協せず、理想を追いつづける苦悩の日々。そして烈しく求め合う愛の行方は……。芥川賞作家・花村萬月が凛々しく描く青春音楽小説の傑作。
  • 金鯱の夢
    4.8
    天正10年。山崎の戦いの直後、羽柴秀吉に嫡子・秀正誕生。慶長5年、秀正・徳川家康連合軍、石田三成を関ヶ原に破り、大坂城の異母弟・秀頼を倒す。時に慶長8年。秀正は将軍となって名古屋に幕府を開く。そして日本の公用語は名古屋弁となった! 江戸ならぬ名古屋で花ひらく文化は、政治は、経済は…!? 泰平と狂乱の「名古屋時代」260年。日本史を縦横無尽にパスティーシュした長編歴史小説。
  • マスク
    4.8
    スポーツジャーナリストの水野は、家族を捨てたプロレスラーの父が死んだと聞き、メキシコの街セントロへ向かう。太陽のように崇められた人気仮面レスラー“エル・ソル”とは、どんな男だったのか。プロレスが唯一の娯楽という貧しい街で、孤児達をかわいがったという父。なぜ、彼は私を捨てたのか――。街で暮らしながら、関係者の証言を集めていく水野が知った父の実像とは……。熱血青春小説。
  • 桜のような僕の恋人
    4.7
    美容師の美咲に恋をした晴人。彼女に認めてもらいたい一心で、一度は諦めたカメラマンの夢を再び目指すことに。そんな晴人に美咲も惹かれ、やがて二人は恋人同士になる。しかし、幸せな時間は長くは続かなかった。美咲は、人の何十倍もの早さで年老いる難病を発症してしまったのだった。老婆になっていく姿を晴人にだけは見せたくないと悩む美咲は……。桜のように儚く美しい恋の物語。
  • 寂聴源氏塾
    4.7
    『源氏物語』の本当の主人公はプレイボーイの光源氏ではありません。藤壷、葵の上、紫の上、夕顔、朧月夜、六条の御息所、浮舟などなど、恋に生き、愛に苦しむ女君たちの心情と迷いを、作者である紫式部は描きたかったのでした――『瀬戸内源氏』を訳しきった著者ならではの解釈に充ち満ちた「千年の名作」の最高のガイドブック。
  • キューバ紀行
    4.7
    「祖国か、死か、われらは勝つ」至るところで見受けられるこの標語には、キューバ革命の切実さがこめられていた。独特の人種構造と砂糖生産に限定された経済構造。それがつくりだしたキューバの人々の気質。政治的にも経済的にも大国の影響下にあった国家の、宿命からの脱出の歴史に、20世紀後半の最大の特徴を見る。国家と国家の支配関係における本質的な問題を見据えた紀行文学の最高峰。
  • 【合本版】終わらざる夏 全3巻
    4.7
    【第64回毎日出版文化賞受賞作】1945年、夏。すでに沖縄は陥落し、本土決戦用の大規模な動員計画に、国民は疲弊していた。東京の出版社に勤める翻訳書編集者・片岡直哉は、45歳の兵役年限直前に赤紙を受け取る。何も分からぬまま、同じく召集された医師の菊池、歴戦の軍曹・鬼熊と、片岡は北の地へと向かった――。美しい北の孤島で、再び始まった「戦争」の真実とは。終戦直後の“知られざる戦い”を舞台に「戦争」の理不尽を描く戦争文学の新たなる金字塔。巻末に「浅田次郎刊行記念インタビュー」を特別収録。※本電子書籍は集英社文庫「終わらざる夏 上」「終わらざる夏 中」「終わらざる夏 下」の合本版です。
  • 目撃者ご一報下さい
    4.7
    夫を轢き逃げ事件でうしなった妻が新聞にだした「目撃者ご一報下さい」の広告には、どんなトリックが仕組まれていたのか? 夫の重大な秘密を知った妻の殺意を巧みな構成で描いた表題作。ほか、電話、高速道路、ビデオテープをつかった意表をつくトリックの面白さを満載した傑作10編を収録。
  • Masato
    4.6
    【第32回坪田譲治文学賞受賞作】「スシ! スシ! スシ!」いじめっ子エイダンがまた絡んでくる――。親の仕事の都合でオーストラリアに移った少年・真人。言葉や文化の壁に衝突しては、悔しい思いをする毎日だ。それでも少しずつ自分の居場所を見出し、ある日、感じる。「ぼくは、ここにいてもいいんだ」と。ところがそれは、母親との断絶の始まりだった……。異国での少年と家族の成長を描いた第32回坪田譲治文学賞受賞作。
  • 田中角栄回想録
    4.6
    スローガンは「決断と実行」。戦後の一時代を築き、いまも人々の記憶に残る田中角栄。日中国交回復と日本列島改造論を掲げて政界の頂点に立ち、ロッキード事件を経てからもその影響力を失わなかった。28歳での代議士初当選から法廷闘争の最中、病に倒れるまでに語られた思いや本音を、腹心の秘書であった著者が肉声を交えて紹介。不世出の天才政治家の素顔を浮き彫りにする超一級ノンフィクション。
  • 【合本版】王妃の館 上・下
    4.6
    パリはヴォージュ広場の片隅にたたずむ、ルイ14世が寵姫のために建てたという「王妃の館」。今は、一見の客は決して泊めない、パリ随一の敷居の高さを誇る超高級ホテルとなっているこのシャトーに、なぜか二組のワケあり日本人ツアーが同宿することになった。しかも、倒産寸前の旅行代理店の策略で、客室を昼と夜とでダブル・ブッキングされて……。ぶっちぎりの笑いと涙満載の傑作人情巨編。※本電子書籍は集英社文庫「王妃の館 上」「王妃の館 下」の合本版です。
  • 新選組 幕末の青嵐
    4.6
    身分をのりこえたい、剣を極めたい、世間から認められたい――京都警護という名目のもとに結成された新選組だが、思いはそれぞれ異なっていた。土方歳三、近藤勇、沖田総司、永倉新八、斎藤一……。ひとりひとりの人物にスポットをあてることによって、隊の全体像を鮮やかに描き出す。迷ったり、悩んだり、特別ではないふつうの若者たちがそこにいる。切なくもさわやかな新選組小説の最高傑作。
  • 新装版 ソウルの練習問題
    4.6
    一九八〇年代はじめ、一人の青年が、「近くて遠い」と言われた国を旅した。彼はその国の言葉を学び、街を歩き、そして恋をした――。「先進国化」以前のソウルの街区とそこに暮らす素顔の韓国人を活写し、それまでの紋切り型の報道や、卑屈と尊大を往復するだけだった日本人の韓国観を劇的に変えた紀行文学の歴史的傑作。異文化へのみずみずしく確かな視座は、今なお色褪せない。
  • 乱舞
    4.6
    日本舞踊界の中心的存在として隆盛を迎えた梶川流。将来も安泰に思えたある日、家元猿寿郎が事故死した……。そして家元の血を継ぐ隠し子たちが、未亡人となった秋子の前に現れる。妹の千春や母の寿々までもが跡目を巡り弟子たちと争いを繰り広げるなか、梶川流を守るため、秋子が選んだ道とは――。因襲の世界で懸命に生きる女たちを描いた波瀾万丈の人間ドラマ。『連舞』に続く傑作長編小説。
  • 遠い迷宮 阿刀田高傑作短編集 ミステリー
    4.5
    1~7巻605~693円 (税込)
    良家の若妻・真樹子は、そろそろ1歳の娘と朝の時間を優雅に過ごしていた。そこへ、出産の時に病院で世話をしてくれた初江が、突然訪ねてくる。表面は人のいいおばさん風だが、何か薄気味悪い感じのする女。彼女が帰った午後、刑事がやって来て……「来訪者」より。人生、男女、心など、人間が生み出す数々の謎をモチーフに描く、鮮やかで洗練された珠玉のミステリー10編。
  • 肉体のファンタジア
    4.5
    ふくらみはじめた「乳房」を意識したころ。互いに「目」を見つめあうだけでわかりあえる関係。どこか性的にひかれる「毛」。中年男性の「背中」にただよう倦怠の魅力。受話器のむこうからこぼれる吐息のような「声」。そして女しか持ち得ない「子宮」の秘密とは。肉体のさまざまなパーツに刻まれた官能の風景、記憶が鮮やかに蘇る。五感を刺激するファンタジックなエッセイ集。
  • 律子慕情
    4.5
    死者と感応するちからをもった少女・律子。小学六年生のときに大好きな叔父が自死した。中学時代、不良少年に寄せた淡い思い。高校時代、妹の家庭教師に抱いた熱い恋心。大学時代、恋人の兄に心を奪われたときのこと――。様々な理由であの世に旅立ってしまった者たち。少女から大人になる途上で律子が味わう、イノセントで美しい、しかし哀切のこもった記憶の数々を描いた傑作連作集。
  • 貧乏同心御用帳
    4.5
    独身なのに、14歳から6歳までの孤児9人を同居させているかわり者、江戸町奉行所の町方同心、大和川喜八郎・32歳。めっぽう腕は立つが、情には弱い。同僚の妻をはじめ美女が次々失踪する謎を追う「南蛮船」。巾着切が浪人者からすりとった小判には秘密があり……「埋蔵金十万両」。ほか2編の連作短編を収録。喜八郎を居候の子どもたちが助け、事件解決に大活躍する痛快大江戸人情捕物帳!
  • 呪いの花園 ミステリー組曲「幻影稼業」
    4.5
    男は、その人形をいとおしむように撫でて、「これを使えばあなたの望みは叶いますよ」と言った…(表題作「呪いの花園」)。夜の街でノッペラボーの“呪い人形”を売る男や、“悪夢”を買わせてくれと頼む黒装束の人物――この世にはあなたの知らない「幻影稼業」がうごめいている! 心の闇に潜むさまざまな願望や欲望の顛末を描いた、異色の連作ホラー6篇。そっと仕掛けられた甘美な毒にご注意。
  • 孤高 国語学者大野晋の生涯
    4.5
    名著『日本語練習帳』の著者で国語学の巨人・大野晋は、その研究に八十八年の人生を捧げた。東京下町に生まれ、小学校の時に父親から『広辞林』と『字源』を与えられ、大戦下、一高から東京帝国大学に学ぶ。還暦を過ぎてから発表した「日本語の起源はタミル語」であるという研究は、学界論争を巻き起こす。司馬遼太郎をして「抜き身の刀」と言わしめた大野晋の波瀾万丈の生涯を描いた傑作評伝。
  • きらめく星座 昭和オデオン堂物語
    4.5
    時は昭和の15、6年。浅草のレコード店・オデオン堂の家族と下宿人たちは無類の音楽好き。その音楽好きも禍いし、一時は“非国民”と貶められて、またある時は娘が傷痍軍人と結婚して“軍国美談の家”と褒めそやされて…。劇作の異才が、人間への限りない信頼を込めて描く庶民伝。
  • 恋七夜
    4.5
    戦国の余燼さめやらぬ天正期。豊臣秀吉は天下人としての威勢を示さんと北野天満宮にて空前の大茶湯を企図する。その参道の由緒ある花街・上七軒を代表する北野太夫富子は、結師・源四郎と出逢う。女には出生の秘密が、男には背負い続けた過去があった。運命の恋の行方やいかに!? 大茶湯に仕組まれた秀吉暗殺の陰謀やいかに!? 知られざる日本史の真相を、恋物語を糸に紡ぎあげた歴史小説の新機軸。
  • 田中慎弥の掌劇場
    4.5
    自殺と断定された妻を、自分が殺害したと主張する男。夫の浮気相手たちを殺す計画を立てる貞淑な妻。育児疲れの女に若い頃の自分を重ねる老婆。会社帰りに立ち寄ったバーで悪魔と隣合わせになった男。愚かで愛らしいその人々は、あなたのすぐ近くに存在するかもしれない――。何気ない日常生活が些細なことで歪みはじめる瞬間を、ブラックユーモアたっぷりに切り取った38編の掌編小説集。
  • 上海にて
    4.5
    1945年3月。東京大空襲の後、日本の敗色濃いにもかかわらず、上海に渡った青年がいた。堀田善衛、27歳。彼はこの国際都市で祖国の敗戦を経験する。国民党に徴用されて、その後1年ほどを上海で過ごした彼が見たものとは――。国民党の腐敗、勃興する共産党。迫り来る内戦、そして革命。本書は10年後に上海を再訪した著者が透徹した視座で上海と中国とを語る、紀行エッセイの歴史的名作である。
  • オリガ・モリソヴナの反語法
    4.5
    1960年、チェコのプラハ・ソビエト学校に入った志摩は、舞踊教師オリガ・モリソヴナに魅了された。老女だが踊りは天才的。彼女が濁声で「美の極致!」と叫んだら、それは強烈な罵倒。だが、その行動には謎も多かった。あれから30数年、翻訳者となった志摩はモスクワに赴きオリガの半生を辿る。苛酷なスターリン時代を、伝説の踊子はどう生き抜いたのか。感動の長編小説。第13回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞作。
  • バナールな現象
    4.5
    1991年1月17日、湾岸戦争が始まった。砂漠の戦場から遠く離れた東京の郊外で、妻の出産を待つ大学講師・木苺の凡庸な日常に突然、暗黒の陥穽が口を開く。モーセのトーラー、鴉、理不尽な暴力の予感、そして改竄される歴史。様々な謎が顕在し、現実は虚構に侵蝕されてゆく。あの日を境にして世界は変わってしまったのか? 21世紀の今日に鮮烈に屹立する、戦争と狂気の時代を黙示した問題作。
  • フィルム旅芸人の記録
    4.5
    映画「うみ・そら・さんごのいいつたえ」の製作・興行全記録。サンゴの美しい石垣島白保の真夏。情熱のクランクインから始まる悶絶の撮影の日々。そして静かにのたうち回るフィルム編集を経て完成。初めての上映会。やがてコンバット・ツアーと命名した全国巡業のフィルムかつぎ旅。とうとうやった! 銀座凱旋ロードショー。映画を愛する男たちのときめきと感動と発見の一年。完全ドキュメント。
  • 道草(漱石コレクション)
    4.5
    小雨降るある日、健三は勤め帰りに思いがけない人物を見かける。それはかつての養父・島田で、海外留学から戻り大学教師となった健三から、何がしかの援助を得ようと十数年の時を経て近づいてきたのだ。島田、島田の先妻・お常、姉・お夏、妻・お住の父。困窮する係累にあてにされ、神経症気味の妻とも気持ちがすれ違う。永遠に「片付かない」日常の苦悩を描いた自伝小説ともいえる家族の物語。語注・年譜付き。
  • 乳房のない死体
    4.5
    乳房を鋭利な刃物でえぐられた死体が、宇治川で発見された。被害者の人妻は情事でも、なぜか乳房に触れられるのを拒んでいたという……。肉体上の秘密を巧みに犯罪にからませた表題作ほか、輪姦された女子大生の復讐譚など斬新なトリックを駆使し、官能描写を豊富に加えた異色ミステリー傑作集。
  • 闇の左大臣 石上朝臣麻呂
    4.5
    天智天皇、天武天皇の時代を通じ、物部連麻呂は最下級役人だった。壬申の乱では大友皇子の側に立ったこともあり出世は望めなかった。しかし天武の没後、石上の氏族名に変わり、持統天皇、元明天皇の時代には徐々に位は上がっていった。和銅元年(西暦七〇八年)には、臣下の最高位である正二位左大臣にまで上りつめた。なぜ麻呂はそこまで出世できたのか。闇の部分に迫る古代史長編小説。著者絶筆。
  • 空気なんか、読まない
    4.5
    校長が、子供がつくる“弁当の日”を発案。保護者から歓迎されない空気が漂う。だが、弁当づくりがある奇跡を起こす。チェコで兵役拒否し投獄された過去をもつチェリスト。日本でボランティア演奏をする彼の強い信念。がんになり、患者の思いを伝えようと“命の授業”を開いた養護教諭。自分の力でまわりを動かし、あたたかな空気を作り出してきた人達の心豊かな生き方。涙の先に希望を信じるエッセイ集。
  • 全一冊 小説 上杉鷹山
    4.5
    九州の小藩からわずか十七歳で名門・上杉家の養子に入り、出羽・米沢の藩主となった治憲(後の鷹山)は、破滅の危機にあった藩政を建て直すべく、直ちに改革に乗り出す。――高邁な理想に燃え、すぐれた実践能力と人を思いやる心で、家臣や領民の信頼を集めていった経世家・上杉鷹山の感動の生涯を描いた長篇。全一冊・決定版。
  • 危険な夏 挑戦シリーズ1
    4.5
    「金に尻尾を振って集まってくる連中じゃ、勤まりそうもない仕事なんだよ」バイト学生の水野竜一に深江は言った。自室の壁にペルーの地図を貼り、いつかその地にはばたきたいと夢みている竜一は、そのひとことで心を決めた。20億円もの金に目もくれない男たちが、自らの肉体と知恵を武器に巨大企業を追いつめていく。竜一21歳、暑くて危険な夏が始まった。
  • あれは幻の旗だったのか
    4.5
    「もう檻の中の運動会はやめだ」――全共闘高揚期、茶番劇に飽きた四人の男たちが本物の銃と弾丸を用意して立ち上がった。活動家たちに、いささかヒステリックなジャーナリズムに、そして運動会そのものに“一杯食わせて”やるために……。遊びでもなく、気晴らしでもなく、本物の戦いに命をかけた男たちの鮮烈な思いを描く衝撃のネオ・ハードボイルド。
  • 逃がれの街
    4.5
    愛する女・牧子のために暴力団員2人を殺した。生々しい感触が今も幸二の掌に残っている。自分の行為に対して言い訳などなかった。終わってしまったことからは何もはじまらない……。警察と暴力団の双方が追ってくる。逃げるだけだ。公園で知り合った幼いヒロシを唯一の友に、幸二は今、“逃がれの街”を求めて雪の軽井沢へ……。
  • がんばらないけどあきらめない
    4.5
    結婚したばかりで卵巣がんになった女性。状態が悪化した時、山登りが好きな妻のために、夫が用意した“希望”。教師が、脳出血で右完全麻痺となった。療養2年で退職を迫られた時の驚きの発想の転換。筋緊張性筋萎縮症の陶芸家が、肉体の不自由を超えて作品を生み出す思い。幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せになる生き方。絶望のなかでも、自分を大切にして信じる心。幸せを呼ぶエッセイ集。
  • 死者はまどろむ
    4.5
    美しい自然に囲まれ、信仰心の厚い村人が住む夢見村に魅せられひと夏を過ごすことになった間宮亜希子の一家。小説家の夫はスランプを脱し、義母も優しくなった。幸福をもたらす魔法の土地だと思った。しかし異様な葬式の列と共同墓地を見たことから、彼らの周囲で何かが狂い始める。ざわめく木立の隙間に、きらめく光の中に使者の影が忍び寄る。幸福に浸っていた家族を恐怖のどん底に突き落とす怪奇の連続とは。長編ホラー小説。
  • 商人
    4.5
    江戸中期、日本橋瀬戸物町の鰹節商、伊勢屋にんべんの次男に生まれた伊之助。父亡き後、兄を支えて家業に精進するが、度重なる不運が伊勢屋を襲う。心身を病んでしまった兄の跡を継ぎ、三代目となった伊之助は「商人は何のために商売をするのか」という父の問いを胸に、大店の意地を捨てて苦難を乗り越え、商いの真髄を極めていく。江戸商人の心意気を描く傑作。第三回舟橋聖一文学賞受賞作。
  • あきらめない
    4.5
    働き盛りでがんになり、余命6か月と宣言されても転移に負けず、7年生き抜いた男性。思いがけない妊娠でシングルマザーとなった女子大生。あと3か月といわれながら、子供の卒業式まで生きたいと闘病を続けた母親――。辛い体験だが、病気をしたからこそ見えてくることがある。命のある限りあきらめないで丁寧に生きて欲しいと願い、あたたかな医療をめざして尽くす医師。珠玉のエッセイ集。
  • 幽霊物語 上
    4.5
    1~2巻440円 (税込)
    霧深い夜の高速道路で交通事故に遭った青年社長・山岡重治はなんと突然“幽霊”になってしまった。あっという間の自分の死が信じられず戸惑う山岡の前に、夜道で暴漢に殺された幽霊少女・郁子があらわれた。たちまち親しくなった二人は、それぞれの家庭をのぞきに行くことになった。盛大な葬儀が営まれる山岡邸には、社長のポストをめぐる陰謀の臭い。郁子の家では娘殺しの犯人を追う父親が殺されていた!
  • 答えはひとつじゃないけれど 石田衣良の人生相談室
    4.5
    「彼氏と遠距離恋愛になりそうで不安」「職場の人間がつらい」「結婚する予定の彼が暴力を振るい始めた」……恋や仕事、家族や友人関係など、今を生きる女性たちに悩み事は尽きません。そんな彼女たちの声に、石田さんが耳を傾け、時にピリリと辛口に、時にやさしく背中を押すようにアドバイス。疲れた心をほぐし、明日への元気を与えてくれる、読むサプリメントです。悩めるあなた、おひとつどうぞ。
  • 総督と呼ばれた男 上
    4.5
    1~2巻550円 (税込)
    大正の頃、木戸辰也は日本人娼婦を母にシンガポールの日本人街で育った。伯父の孝作にひきとられて、マレーの鉄鉱山で働き始めるが、労働争議に巻き込まれて孝作が殺される。辰也はただちに報復して、矯正院に送りこまれる。出所後シンガポールに戻り、辰也は暗黒街で頭角を現していく。しかし、南国をも戦争の翳が覆い始めた。流転の人生を綴る波瀾の大河冒険小説!
  • 神々の山嶺 上
    4.5
    1~2巻715~770円 (税込)
    カトマンドゥの裏町の古道具屋でカメラマン・深町は時代物のコダックのカメラを入手した。そのカメラは、英国の伝説的な登山家マロリーが本当にエベレストの初登頂に成功したかどうかという、登山史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。カメラの謎を追う深町と、厳冬期に単独でエベレストに挑もうとする登山家・羽生丈二が現地で出会った…

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