柘植書房新社作品一覧

  • アミルカル・カブラル―アフリカ革命のアウラ
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    1巻3,080円 (税込)
    欧米の現代文明人は、ヌアーに代表されるアフリカの社会状態を指して、野蛮・未開と形容し、その状態から石器・鉄器時代、あるいは農耕社会へ、さらに工業社会へ移行することを善とみなし、歴史とみなし、文化的進歩とみなしてきた。いつまでもその移行をみせないアフリカに対して、固有の文字がない、固有の歴史がない、固有の文化がないと評する。あるいは、発達の遅れたアフリカ社会には階級がない、階級闘争がないとも評する。結論として、アフリカ人に文字を教えて強化せよ、アフリカ社会を工業化し、同時にプロレタリアートを形成せよ、というスローガンが短絡的に出てきた。白石顕二(1946~2005)と共著のかたちで紹介するアミルカル・カブラルは、そのような欧米文明人の傲慢なアフリカ救済論を、はなから相手にしていない。ここに収めた白石・石塚のカブラル論には、トゥーガ(外人、ヨーロッパ人)と闘うヌアー的アフリカ民衆のみならず、トゥーガの文化を呑み込んで自らを高めようとする民衆の姿が鮮かに描かれている。(はしがきより 石塚正英)
  • エコロジー社会主義 気候破局へのラディカルな挑戦
    5.0
    生産システムの集団的・民主的再組織化だけが、真に社会的な欲求を充足し、労働時間を短縮し、不要で危険な生産を規制し、化石燃料を太陽エネルギーで置き換えることができる。こうしたことすべては、資本主義的所有の根底に手をつけること、無料のサービスと公共部門を根本的に拡大することを意味する。つまり一言で言えば、民主的でエコ社会主義的な計画を意味するのである。(序章より)
  • 親子のミスコミュニケーションを防ぐ 効果的なNLPのテクニックと五行気質分類
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    この本は、子育てで悩んで困っている、あるいは子育てに自信を無くしてしまっているお母さんに向けて書きました。 一言に「子育て」と言っても、生まれたての赤ちゃんや会話の始まるイヤイヤ盛りの2歳くらいから思春期くらいのお子さんなど、それぞれの段階に応じて、子育ての悩みは色々と変化することだと思います。 そのため本書では、「育児の正解」について重要視していません。 アメリカ生まれの実践心理学であるNLP(神経言語プログラミング)や日本に昔から伝わる東洋思想の五行論など東西の英知を用いて、子育ての様々な悩みに柔軟に対応するための方法や考え方についての内容をお伝えしていくことを目的としています。(はじめにより)
  • 関東軍特務機関員だったイタリア人の手記
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    私個人としては─この見解は本書の発行者も同じであるが─日本国民は全体としては、大部分が中国やインド、欧州の農民と同じように、忍耐強く勤勉な人々からなっていると信じている。日本の人々は、軍事財政上の支配階級の犯罪に対して責を負わされるべきではない。究極のところ、彼らは実際、中国国民自身と同じようにその犠牲者なのである。日本国民がこうした恥ずべきことに手を貸し、ほう助しているようにみえることに限っていえば、彼らがそうするのは、彼らは実際に何が起きているのか無知なためであり、また日本の名誉と覇権は同義語であると信じるようにされているためである。 (ハロルド・ジョン・ティンパーレイの本書「序言」より)
  • 乾杯の経済学 韓国のビール産業
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    1巻2,200円 (税込)
    植民地期、朝鮮独立後と続く韓国および北朝鮮のビール産業の足跡を辿った書。韓国・北朝鮮の比較研究により、2国の制度的な相違等を探ることによって、韓国経済発展のメカニズムを究明する。
  • 九電本店前に脱原発テントを張って10年目 キリスト者・青柳行信 人権擁護と反原発の闘い
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    1巻2,640円 (税込)
    本書は青柳行信さんが今までのさまざまな活動について「語り」、私・栗山はそれをできるだけ忠実に「聞き書き」して成立しています。その事情は次のようです。私は二〇一四年初めから、青柳さんが「村長」を務めている「原発とめよう! 九電前ひろば」に手伝いに行っていました。二〇一七年の秋口だったと記憶していますが、テントの中のテーブルにワープロ印字の小さな冊子が置いてありました。青柳さんに断ってめくってみると、それは青柳さんのプロフィールでした。今までのさまざまな活動をテーマ別にまとめてありました。私はそれを見てそれまでの青柳さんの諸活動を知りました。それ以降、時々青柳さんに今までの活動のアウトラインをお聞きしました。私が驚いたのは青柳さんが拘置所に約四ヵ月近く勾留されていたことでした。(本書あとがきより)
  • 『共産党宣言』からパンデミックへ 「歴史の終わり」の弁証法
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    1巻3,080円 (税込)
    本書は、理論と歴史と現在という三つの次元を往復しながらマルクス主義の古典を論じるシリーズの第三弾となる。最初が『ラディカルに学ぶ「資本論」』(二〇一六年)で、その次が『「資本論」とロシア革命』(二〇一九年)であり、本書がその三冊目である……。 世界を襲った新型コロナウイルスのパンデミックはあらゆる点で現代資本主義の脆弱性を示した。新自由主義による四〇年間に、先進資本主義諸国における人口当たりの病床数やICU病床数は半分から三分の一にまで減少し、ほとんど余裕のない状態に置かれた……。 だが今日における資本主義の問題は感染症だけではない。地球温暖化とそれに伴う大災害もまた、資本主義成立後の二〇〇年間につくり出され累積されてきた矛盾の発現でもある……。 資本主義は果たして人類と共存可能なのかという疑問が多くの人々の脳裏に浮かび始めている。若手のマルクス研究者である斎藤幸平氏が執筆した『人新世の資本論』(集英社新書、二〇二〇年)が発売からわずか半年ほどで二〇万部以上売れるという大ベストセラーになったのも、そうした危機感が背景にあると言ってもいいだろう。(本書序文より)
  • 原発立地・大熊町民は訴える
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    大地震と福島原発からの放射能被害という過酷災害を受けた福島原発直下の大熊町。前大熊町議や大熊町の明日を考える女性の会代表のインタビュー、会議メモを収録するとともに、原発事故被害者の生きる権利を訴える。現在、木幡ますみ氏は、大熊町町会議員。
  • 子どもを伸ばす共育コーチング 子どもの本音と行動を引き出すコミュニケーション術
    4.4
    1巻1,650円 (税込)
    教育現場における課題が山積みの昨今、高校生の就職支援活動に関わり始めて、私には痛切に感じるものがありました。「子どもたちはあまりに小さく扱われ過ぎている」。私が試行錯誤を繰り返しながら、子どもたちと接した事例、実際の先生がたに取材した事例を通して、関わり方ひとつで子どもたちの無限の可能性を引き出すことが可能だということをご紹介しています。
  • コモン・フェイス 宗教的なるもの
    -
    デューイの“A Common Faith”という著作は、この第一章の「宗教対宗教的なるもの」で、特定の宗教に執着しない宗教的態度を、“religion”から区別し、「調整」、「再方向づけ」、「パースペクティブ」、「自然への畏敬の念」、「情緒に触発された道徳性」、「公的な関心」などの概念として“the religious”(「宗教なるもの」)と表現したことで、ある特定の宗教の宗派教育には限定されない「宗教教育」の名著と言ってもいいのではないだろうか。(おわりにより)
  • 五十六個の赤レンガ
    -
    1巻1,650円 (税込)
    おいがだの学年は、昭和二十一年四月生まれから二十二年三月生まれまでの学年です。前の学年と比べるとうんと人数が多くて、おいがだの入学した秋田県能代市立米代小学校では前の学年が三クラスだったのに、おいがだの学年は五クラスでした。それだけではなく、一クラスの人数も多くて、おいがだのクラスは五十六人もいました。
  • 産業史からみる朝鮮韓国経済史入門
    -
    1巻4,400円 (税込)
    本書は、朝鮮・韓国経済史における主要課題および問題点を言及し、その課題や論考を踏まえ、各経済のいくつかの対象・分野への分析を行う形で、朝鮮韓国経済史研究の入門書としての役割を担うことを狙いとするものである。ただし、主要課題や論考の紹介においては、その全てを取り扱うことは到底困難であるため、重要度が高いと判断したものに限定する。各経済の分析の順番は、朝鮮経済 → 植民地朝鮮経済 → 韓国経済 → 北朝鮮経済の順となる(はじめにより)
  • 『資本論』とロシア革命
    -
    1巻2,860円 (税込)
    個々の国における諸政権の栄枯盛衰がどうであろうと(それらはしょせん歴史のあぶくに過ぎない)、世界資本主義は確実に危機と行き詰まりの様相を深刻化させている。世界的に経済的格差はますます拡大し、自然環境は致命的な水準にまで悪化し、労働力と天然資源は無制限に搾取され浪費されつづけている。……とどまるところを知らない環境悪化は、人類がますます資本主義と両立しえなくなっていることをはっきりと示している。 こうした状況の中で、資本主義の運動法則とその諸限界を明らかにした『資本論』と、世界で初めて資本主義的世界秩序に本格的に挑戦してそれを部分的に突破したロシア十月革命の偉大な経験は、今日ますます重要な意味を持つようになっている。一部の「マルクス主義者」は、一方で依然としてマルクスを称揚しつつも、十月革命とその後の社会主義建設の経験を単なる「負の歴史」や「逸脱」として抹消しようとしているが、これほど非マルクス主義的な態度もないだろう。われわれは「もう一つの世界」を実現するための教訓を両者から学ぶことができるし、学ばなければならない。本書がその一助となれば幸いである。(本書「序文」より)
  • 昭和歌謡全曲名(戦後編)
    -
    1巻6,600円 (税込)
    戦後、焼け跡から復興していく昭和21年から、SPレコードの終焉昭和41年まで。好評を博した「流行歌総覧-戦後編」の索引を兼ね、全曲をリストアップ。曲名と歌手、発売年、レーベル名を収録。曲名を調べるには最適の愛好家必携の書。
  • 昭和歌謡全曲名(戦前・戦中編)
    -
    1巻4,400円 (税込)
    日本の流行歌のバイブルとも呼ばれる「昭和流行歌総覧」の索引。戦前・戦中編は、約2万曲の曲名、参照ページ、歌手、レコード会社、発売年を一覧表で掲載。
  • 新考 織部伝四書
    -
    1巻1,980円 (税込)
    昭和の十年代に入って間もなく、二つの興味深い織部論が世に出た。桑田忠親の「古田織部」と加藤唐九郎の「古田織部正と瀬戸焼」である。それらはいずれも全集『茶道』の茶人編に載せられたものである。 また、その二書の発表の少し前の昭和八年には、奈良松屋源三郎久重編の『松屋筆記』が、松山吟松庵によって『茶道四祖伝書』の題名で翻刻された。その中に、「古織公伝書全」が含まれており、それによって古田織部の茶湯がより身近なものになっていた。 これら三書に加えて、この度(平成二十八年八月)新たに、これまで加藤唐九郎によって、「古田家譜」の名で、その一部だけが公表されていたに過ぎなかった豊後岡藩の古田家の文書の全容が、「古田家文書『本家系譜 甲 古田氏』から」というタイトルで、竹田市立歴史資料館研究報告書の特集記事として公表された。 これらの四書を、古田織部を知る上での必読書として捉え、それぞれの筆者や編者が独自に伝えようとしている事柄のいくつかに、新たに考察を加えようとするのが本書の意図するところである。(まえがきより)
  • 震災を問う 生きるいのちのメッセージ 演劇表現を通して
    -
    1巻2,200円 (税込)
    4年生が演じる震災劇が学校公開の道徳の授業として行なわれ、教室が保護者で一杯になったことも驚きだった。松本さんとしては“命のメッセージ”をこめて原発事故まで視野に入れた内容にしたかったが、子どもたちと話し合った結果、断念している。子どもたちを尊重し、共に作りあげていくアクティブ・ラーニングの理想の姿がここにあると感じた。 楢崎茂彌(立川市社会教育委員・立川市史編さん副委員長) 東日本大震災から10年の節目に、この本が出版されることは、風化させない、伝え続けていくために、大きな意味があると思う。特に心のしなやかな子どもたちがいる教育現場で日々、活動されている先生方に手にとっていただきたいと願っている。 坂本比呂実
  • 〈新版〉患者に学んだ成人型アトピー治療 難治化アトピー性皮膚炎の脱ステロイド・脱保湿療法
    5.0
    1巻2,640円 (税込)
    ステロイドを使いたくないと言っている患者の行動を「ステロイド忌避(きらいさけること)」という言葉で皮膚科医などが表現していることについて一言述べたい。私の所で脱ステロイド・脱保湿を行って1、2ヵ月経過した患者が「すべての外用を中止すれば1ヵ月ちょっとでこんなに痒みが減り、皮膚がよくなってしまった。私はこの10年間、一体何のために皮膚科に通い、ステロイドを外用してきたのかとつくづく思う。皮膚科へ行けば『きちんとステロイドを塗ってないのと違うか』『もっと真面目に治療せなあかん』などと怒られっぱなしだった。きちんと塗ってもいたし、言われた通りに保湿もしてきました。医師は私の言うことを信じてくれませんでした。だから、ときには民間療法にも高いお金を使っていました」と言う。そして、「腹は立つけど、医師に直接文句は言いにくいです」と言って自分を慰めている。忌み嫌われているのはステロイドであろうか、それとも患者の訴えを聞くことができず皮疹の変化を認識できないステロイドー点張りの医師なのであろうか。ステロイドの新しい副作用を認識できず、またその副作用の治療を知らない皮膚科医は、ステロイド外用剤を上手に使用する専門医とは決して言えない。
  • ジプシー史再考
    3.0
    1巻2,200円 (税込)
    ジプシーとされたさまざまな人間集団の実体が科学的に解明されて、それが歴史学や社会学、文化人類学その他の学問的観点から本格的に考察されるようになったのは一九七〇年前後以降のことである。欧米で多くの調査と研究が蓄積されて「インド起源説」に根本的な疑問が投げかけられ、これを否定する新しい科学的なジプシー論が提起されるようになった。「パラダイムの転換」(イタリアのジプシー研究者ピアセーレ)とも評される展開である。しかし日本では、こうした新しい科学的な議論はほとんど顧みられることなく、いまに至るもグレルマン流の旧態依然たるジプシー論が横行している。(はしがきより)
  • 世界銀行―その隠されたアジェンダ
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    世界銀行は人々の基本的人権を阻害した。その歴史を通して、世界の民衆に対し非道な振舞いを続けてきた。それだけではない。世界銀行が資金援助するプロジェクトは計り知れぬ環境破壊を生み出してきた。軍事クーデターでも独裁者でも60年以上も融資を続けてきた、そんな国際機関とは…?
  • 世界史から見たロシア革命 世界を揺るがした一〇〇年間
    -
    二〇一七年にはこの日本でも多くのシンポジウムや講演会などが企画されたが、その多くは、ロシア革命の世界史的意義を十分に評価したものであるとは言いがたいものだった。むしろ、ロシア革命否定の世界的流れに沿ったものが多かった。本シンポジウムの基本的スタンスはそのようなものとは一線を画す。世界資本主義がますますその暴力的相貌を明らかにしている今日、ロシア革命の世界史的意義を改めて見直し、その生きた教訓を汲みつくすことは、二一世紀に生きるわれわれの義務であると考える。本書がその一助になれば幸いである。(「本書の出版にあたって」より)
  • 競り場物語
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    かつて馬の競り市が行われた、広大な原っぱ。競り場と呼ばれたそこは、子どもたちの世界、天国だった。雪がとけ、芝生の薄緑色に変わる競り場の四季、山の遊び場をめぐる子ども同士のケンカなど、懐かしい子ども時代を描く。
  • 戦争巡歴 同盟通信記者が見た日中戦争、欧州戦争、太平洋戦争
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    大屋久寿雄の大量の遺稿の一部は、七十年の歳月を経てかなり劣化していた。大屋が心血を注いで執筆したであろう原稿を慎重にめくりながら読み進めて行くと、大屋が汪兆銘(汪精衛)工作に関与していく様子が克明に描かれ、引き込まれて行った。 戦後まもなく、四十代前半で亡くなった大屋久寿雄の名前を知っている人は多くはないであろう。大屋は戦前、同盟通信記者をしていた。同盟通信社は国策によって設立された通信社で、終戦直後、自主解散した。共同通信社と時事通信社の前身である。わたしが大屋について調べていたのは、『国策通信社「同盟」の興亡─通信記者と戦争』(花伝社刊)の執筆のためであった。調べているうち、大屋が同盟記者のなかで、ひときわ異彩を放つ異能の記者であることがわかった。(解説より 鳥居英晴)
  • 増補 アナフィラキシー 原因・治療・予防
    -
    1巻2,420円 (税込)
    初版が発刊されてから、4年。この間にアレルギー関連、食物関連の事象や研究にさまざまな変化がありました。 食物負荷試験や、食べる量、食べる食材の形への考慮がないまま「食べてなおす」が進められ、国外では死亡例が発生。国内でも多くの例でアナフィラキシーを発病し、重篤な後遺症を残す例が報告されました。その後、食べさせる量はかなり減らされましたが、まだ混乱の中にあります。アレルギーは健康状態を壊す毒物や化学物質を察知して避けようとする哺乳動物が進化させた高度な免疫です。無理やりアレルギーを抑えて食べさせると異常なアレルギー反応が起きたり、含まれる毒物や化学物質で病気を起こしたりしてしまいます。せっかく起こしたアレルギーです。大切に考えて対応することが必要です。…… 近年、米国やヨーロッパ諸国では農薬や化学物質が子どもたちの神経系の発達や働きを障害することを警告する宣言が出されていますが、日本では対応が遅れています。 …… そのようなさまざまな変化を今回の増補版には付け加えました。日本人の遺伝子に合った食べ方を、化学物質に注意しながら環境も含めて現代風に創生していくことが、とても大切です。アナフィラキシーは食べ方や環境の悪化への警告の叫びです。(「増補にあたって」より)
  • 対立と対話 「いじめ」の問題から「対話」の教育へ
    -
    1巻2,640円 (税込)
    本書の第一部では、さまざまな学校内の対立の中から、特に「校内暴力」「いじめ」の問題を、一つの学校の危機的状況として取り上げながら分析し、第二部ではこの問題への「問い」を通して、これからの学校現場において、いじめ対策に向けての対話がいかにして可能であるかについて、心理学、教育学、社会学、人間学など、さまざまな分野から学際的なアプローチを試みる。
  • 「知」の革命家ヴォルテール 卑劣なやつを叩きつぶせ
    4.0
    1巻2,640円 (税込)
    本書の副題名「卑劣なやつを叩きつぶせ」は、ご存知の方が多いと思うが、カラス事件を多くの人々に訴えたヴォルテールが、書簡の末尾につけたスローガンのようなものである。彼は若い頃から優れた詩人として認められたが、貴族が下僕を使って彼を棒打ちにしてから、貴族に寄生して生きる文学者の道をきっぱりと捨て、自主独立の生き方を選んだ。……最後の二十年以上は、ジュネーヴの郊外で「自分の庭を耕し」ながら、世の偏見と無知を批判し、虐げられた無実な人々のために戦った。そして最後は、パリに帰って大いに歓迎されて死ぬ。このようなヴォルテールの生涯と、そのときどきの彼の作品を見てくると、彼はその八十四年の生涯を精一杯、思う存分に生き抜いた人だといえるであろう。近代世界はこういう人たちによって創られたのである。だから彼らの生涯は波乱万丈で、伝記は読んで面白い。しかし本書では、細かい逸話にまで及べないのが残念である。 (本書「はじめに」より)
  • 天正の謎
    3.0
    天正九年九月末、美濃の国、土岐は実りの秋を迎えていた。見渡す限り、黄金色の稲穂が秋風に弄られて波打ち、百舌鳥の鋭い泣き声が時折辺りの大気を引き裂く小高い丘の中腹に座り込んで、稲田の広がりを見下ろす一人の若者がいた。本能寺の謎に絡んだ青年陶工の運命は? 痛快剣豪小説。
  • トロツキーと永続革命の政治学
    -
    1巻3,520円 (税込)
    本書序文より トロツキーの永続革命論は、何十年にもわたってスターリンとスターリニストによってとことん歪められ、ソ連崩壊後も依然としてその歪みは根強く残っている。トロツキーに対する偏見を多少なりとも脱した人でも、トロツキーの永続革命論を正しく理解しているとはかぎらない。むしろそうでない場合が多い。したがって、本書のようにトロツキーの永続革命論について正面から論じた著作は今日でも出す価値がある。 だが、人は問うだろう。そもそも、ソ連・東欧が崩壊して三〇年も経っている今日、トロツキーの永続革命論について何か書くことそれ自体に意味があるのかと。私は答える。意味はある、大いに意味がある、と。なぜなら、トロツキーがその永続革命論の構築を通じて、そしてその実践バージョンである十月革命とその後の社会主義建設を通じて解決しようとした二〇世紀的問いは、二一世紀の今日においてもなお解決されていないからである。その「問い」とは何か。それは、非エリートの一般民衆のきわめて基本的で切実な諸要求(革命前のロシアにおいてそれは、土地に対する農民の要求、人間的労働条件に対する労働者の要求、専制体制を打倒して民主共和制およびその他の民主主義的諸条件を求める民衆の要求であり、十月革命前夜においては、そこに戦争からの離脱と平和の実現が加わる)は、はたして、ブルジョアジーの支配のもとで、そしてその政治的代理人たちの手によって解決できるのかという問いである。
  • ドイツ通信「私の町の難民」 ヨーロッパの移民・難民の受入れと共生のこれから
    -
    1巻1,760円 (税込)
    押し寄せる難民の波。ドイツの何が難民を受け入れているのか―。ユーロ危機と難民問題、パリのテロと移民、ヨーロッパでのテロにみる共通点などについて論じる。2015年~2017年の『ドイツ通信』から厳選して書籍化。
  • ナディエジュダ・A・ヨッフェ回顧録 振り返る─私の人生、私の運命、私の時代
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    ロシア十月革命のレーニンと並ぶ指導者、トロツキーの生涯の同志だったアドリフ・A・ヨッフェの娘、ナディエジュダ・A・ヨッフェの回顧録。3回のシベリア流刑を生き延びた数奇に満ちた半生を振り返る。
  • 苦い花梨 マジャパヒト 元軍襲来・ジャワ戦記
    3.0
    1巻1,650円 (税込)
    初めは日本。激しい風涛に翻弄された遠征艦隊は、多大の兵員を飲み込んだまま海の底に消えた。二度めは越南(ベトナム)である。密林でのゲリラ戦に惨敗したモンゴル・元の大軍は、それ以上南進することができなかった。この二つの元寇は多くの人々に語り継がれ、物語となっている。だがモンゴル・元軍が、三度めの敗北を喫したことはあまり知られていない。フビライ・ハーンが命じたジャワ遠征の失敗である。遠く南シナ海の波涛を越え、はるばるジャワ島までやってきたモンゴル・元の遠征艦隊は、ジャワ人の巧みな策略に乗せられ、逃げるように去らざるをえなかった。(まえがきより)
  • 日本の近代化とグランド・ゼコール 黎明期の日仏交流(日仏会館教養講座)
    -
    1巻1,980円 (税込)
    この本を手にとられる読者は著者の長年にわたるこの方面での研究の蓄積という慥(たし)かな岩盤の上に、貴重な写真や資料を文字どおり「足で」探索した成果が、高山植物のように咲き競っているのを目にするでしょう。名の知られた人びとの知られざる一面もあれば、日本で立派な仕事を残しながらも記憶の底にうもれてしまった学者のこと、フランスを代表して来日した顕官の今では草に埋もれた来訪の記念碑、フランスで尋ねあてた由縁の子孫の好意で接することのできた写真の数々、など。 読者は、いろいろなエピソードを通して、日本の近代化にとって、科学・技術・産業・軍事・法制度という、社会の構造のいわば硬質な部分にかかわる領域で、フランスとの交流が実に大きな意味を持っていたことを、あらためて知るでしょう。ワインや食卓の文化から文芸・芸術一般に及ぶ、いわば軟らかな部分のことはそれとして一般にも知られてきましたが、この本を通して、日本にとってのフランス像が一段と厚味を持ったものになるでありましょう。(日仏会館教養講座 刊行にあたって より)
  • 日本語で読む フィリピン憲法 The Constitution of the Republic of the Philippines in Japanese
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    1巻2,200円 (税込)
    87年憲法は2万1661語に及んでいる。ただ、憲法がそれだけ長い分、外国人にとっても、この憲法だけ読めば、この国の仕組みの大枠と基本的な法の枠組みを理解できるとも言える。日本国憲法のような原理原則だけでなく「何でも書いてある」憲法なのだ。比で暮らす人、ビジネスをする人、比について研究、執筆する人々にとっての基本教養文献でもあるともいえるだろう。 ……本書の末尾にはフィリピンと米国間で結ばれている比米相互防衛条約、訪問米軍地位協定、防衛協力強化協定の3条約・協定も解説とともに加えた。これはフィリピンにとって最も重要の意味を持つ軍事条約・協定であるにとどまらず、日米安全保障条約や日米地位協定の問題を考えるにあたっても示唆に富む内容と考えたゆえである。(前書きより)
  • 日本帝国期の世界史
    -
    1巻4,180円 (税込)
    本書では、帝国主義という用語を「膨張」だけでなく、植民地「維持」もふくめて使用することにする。したがって植民地を放棄するまで、その本国は帝国主義国であり、帝国主義の時代がおわるのは第二次世界大戦後であるとする。また植民地として支配すること、すなわち領土化 = 完全な政治支配だけでなく、保護国や委任統治領という形での政治支配も帝国主義であるとみなす。 そして『日本帝国期の世界史』と題する本書は、一八八〇年頃から第二次世界大戦に日本が参入する一九四一年までの東アジアを除く世界の歴史を、全体的、体系的に記述することをめざしている。他の帝国主義国の動向を知り、それとの比較によって日本帝国主義の公平な評価のひとつの糧にしたい。(序章より)
  • 熱帯の多人種主義社会 ブラジル文化讃歌
    -
    ブラジルはフェイジョアーダ社会であり、同時にシュラスコ社会ともなる。ブラジルをブラジルたらしめているものは何か。現代を代表する人物、映画、文学を通してその社会を描く。『ラティーナ』連載に書下ろしを加え単行本化。
  • 能代 出船抒情
    -
    1巻1,540円 (税込)
    石川岩七が能代にやってきたのは、明治三十四年。日清戦争の終了から六年、日露戦争の開始まで三年という時期である。北方への開発に一段と拍車がかかるという時代的な背景もあって、空前の繁栄が能代にもたらされている時であった…。
  • 働くママと子どもの〈ほどよい距離〉のとり方
    4.0
    三歳児神話や母乳主義など数々の呪縛をぬぐい去り働いているからこそとれる、親子の“ほどよい距離”を成長別に提案する、今までにない働くママへの応援本!
  • 八田外代樹の生涯 台湾に東洋一のダムを作った八田技師の妻
    -
    台湾に東洋一の烏山頭ダムを造った日本人技師・八田与一。その快挙の陰には、夫を支えた妻・外代樹の存在があった――。外代樹夫人の実像を残された子どもたちの証言から鮮やかに描き出す。
  • ビートルズと旅するインド、芸能と神秘の世界
    -
    ビートルズとインドとのかかわりを話のきっかけとして、インドの音楽や舞踊などの様々な芸能とそれに深くかかわる神話や宗教を解説。ビートルズの音楽にインド音楽や宗教思想がどのような影響を与えたかについても考察する。
  • 振り返らないで Think out of the box
    -
    1巻1,540円 (税込)
    なごやかな夕食もほぼ終わった頃、大久保がスーツの上着に再び袖を通したかとおもうと、あらたまった口調で、「お食事中失礼しますが、聴いていただきたいのです」ときりだした。同時に通訳はぬきでいいよとばかり、ゼスチャーで輸出担当の大田に合図を流している。 「プロジェクトの営業責任者に先日中国視察から帰国した岩崎譲治君を推したいのですが、みなさん、如何でしょうか」大久保の口もとに目を凝らしていた全員が、譲治に視線を移す。唐突でいかにも大久保らしい。A社の参加者が当惑を隠せないのももっともである。何しろ人事の話である。 譲治、否、すべての参加者を「アッ」といわせた。青天の霹靂とは、こういうことか。(本書 第2章より)
  • 古田織部と徳川家康 慶長四年吉野の花見
    -
    1巻3,850円 (税込)
    徳川家康はなぜ、織部一人にとどまらず、織部一家、かれの血を引く男系一族の全ての子息や孫に至るまでを死なせてしまったのか。謎解きの旅は、多彩な織部人脈のキーパーソン細川幽斎から丁寧に解きほぐし、家康の悲願「和子入内」に行き着く。
  • 北欧教育の秘密 スウェーデンの保育園から就職まで
    3.0
    1巻1,980円 (税込)
    スウェーデンは、人が楽(らく)しているのに、なぜ豊かで住みやすいのか。私的な世界七不思議だ。 子どもの頃はあまり勉強しないし、大人になってもあまり働いていない。受験も学習塾も存在しないから、勉強時間が少ない。社会人は残業をしないし有給をたっぷり取るから、労働時間が少ない。五時にはオフィスから人影が消え、夏休みはスウェーデン中が機能しなくなり、この時期に病気をするなと言われる(病院に医者がろくにいないからだ)。 別に恵まれた環境でもなく、隠れてずるいことをやっているわけでもなさそうだ。スウェーデンは鉱石と森林を除けば資源は貧しく、気候は先進国で最悪だ。影の武器産業はあるが、雀の涙にもなっていない。おまけにたった九百万人の小国だ。しかし、こんな貧弱で楽している人たちが、国際競争力、IT競争力、潜在競争力、住みやすさ、報道の自由度、生活の豊かさ、教育水準、平和指数、福祉の充実など、各種ランキングの上位を占める優秀な国を築いている。おまけに治安もよく、格差も少ない。豊かで競争力が高いかわりに、格差が大きく、治安の悪いアメリカとはまったく違った繁栄の仕方をしている。 (まえがきより)
  • 香港雨傘運動 プロレタリア民主派の政治論評集
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    1巻3,520円 (税込)
    2014年9月末から12月まで、香港の政治経済の中心地や繁華街の大通りを大規模にオキュパイ(占拠)して民主化を求めた「雨傘運動」。香港在住の左派活動家・區龍宇による「雨傘運動」についての論評を集成。
  • 文在寅政権期の韓国社会・政治と日韓関係
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    1巻4,400円 (税込)
    本書は、日韓間の政治・外交関係が音を立てて崩れた、2018年末からの韓国の社会と政治を定点観測した記録が中心である。日米中などとの対外関係、北朝鮮との関係についても詳述した(第I部)。韓国メディア報道の問題点、大統領の対日観・対中観、核に対する意識、日本人の「嫌韓」に関する論も掲載した(第II部)。 韓国の主要メディアの論調や青瓦台の発表文なども多数引用、紹介している。巻末資料として、両国の政府関係文書と日韓関係をめぐる年表も掲載した。索引も充実している。
  • ラディカルに学ぶ『資本論』
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    1巻2,200円 (税込)
    マルクスの『資本論』は歴史上何度目かの復活を遂げつつある。 われわれの生きている世界を根底から理解し それを変革するという意味での「ラディカル」さは、 『資本論』そのものに対しても発揮されなければならない。(本書より)
  • 冷戦時代世界史
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    1巻4,180円 (税込)
    1945年に第二次世界大戦がおわってから1991年にソ連が崩壊するまでの46年間を冷戦時代という。冷戦が終結しソ連が崩壊してからすでに15年以上が経過した。冷戦時代、すなわちアメリカ合衆国とソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)という2つの超大国が対立し、2つのイデオロギーが真っ向からぶつかり合う特殊な時代は、もはや過去の歴史となった。それでもなお、現在にもっとも近いこの一時代は、現在の国際政治、国際経済、社会、文化、各地域を考えるうえで役立つ多くの知識と示唆をあたえてくれる。本書は冷戦時代の世界全体の歴史を概観するものである。
  • 歴史を見つめる 日韓の大切な人たちとともに
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    1巻1,980円 (税込)
    「冬のソナタ」に始まる韓流ブームは、それまで「近くて遠い国」だった韓国を一気に近づけ、その後もK-POPや韓国ドラマの人気など、日本では今でもブームが続いています。 しかし一方では書店に嫌韓本があふれ、国同士の関係が悪化するたびに韓国人や韓国社会に対する非難がマスコミでも声高に報道され、ヘイト・スピーチの土壌をつくっています。そしてヘイトは日本に暮らす朝鮮半島ルーツの人たちに向けた現実の攻撃となってあらわれ、在日朝鮮人集住地域の京都ウトロでの放火事件にみられるように、ヘイト・クライムの様相をみせてきているように思います。 私の祖国であり子どもたちの一方のルーツである日本社会に差別が蔓延し、少数者を攻撃していることを伝え聞くにつれ、とても悲しく怒りを感じます。差別は「知らない」「知ろうとしない」ことを温床として起こります。まず歴史、そして現実社会の問題をしっかりと認識することが不可欠です。(おわりにより)
  • “私の”東大闘争 駒場解放派の光と影
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    1巻3,850円 (税込)
    のちに激動の60年代後半、「政治の季節」といわれる1967年春東大に入学。鹿児島から上京したばかりの私にとって駒場キャンパスは眩しいくらいに光り輝いていた。入学早々学生運動の最前線に立ち、67.10・8羽田闘争、東大闘争の全過程、69.10・18日本生産性本部突入ゲリラ戦をその最先頭に立って闘い抜いた。そして、その後長く、暗く続くことになる党派闘争・党内闘争-光が強ければ、影もそのぶん暗くなるのか? 東大闘争とは、党派闘争、党内闘争はどこから生まれ、どこへ放散してきたのか-あれから50年、今鋭く問い、問われる。 この本では、同時代をともに闘った、早稲田の仲間、そして高校生として闘ったお二人にも特別寄稿をいただいた。(本書あとがきより)

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