利生の人 尊氏と正成作品一覧

  • 利生の人 尊氏と正成
    4.0
    第12回日経小説大賞(選考委員:辻原登氏・髙樹のぶ子氏・伊集院静氏)受賞!  鎌倉幕府滅亡から建武の新政へ。人が生きる甲斐のある世をつくる――後醍醐帝と志を同じくする楠木正成と足利尊氏。三人はその志をかなえるためにともに戦い、志をゆがめぬために敵味方に分かれた。やがて南北朝の動乱を経て、室町幕府による武家政権に移る混沌とした世の人間ドラマを、最新の研究成果も取り込みながら描き、まったく新しい足利尊氏、楠木正成、そして後醍醐帝を造形。選考会では確かな歴史考察と文章の安定感、潔いまっすぐな作柄が評価された、歴史小説期待の新鋭の登場だ。  「利生」とは「《「利益衆生」の意》仏語。仏・菩薩が衆生に利益を与えること。また、その利益」(大辞苑)。本作では「上下の別なく、民が国を想う志を持ち寄って各々の本分を為せば、きっと日本は悟りの国になれる」と後醍醐帝と尊氏、正成は理想の世にかかげる。 <あらすじ>  時は鎌倉末期。討幕の動きが発覚し後醍醐天皇は隠岐に流されるが、幕政への不満から、治世の主体を朝廷に取り返すという近臣たちの討幕運動は幕府内にも広がっていく。幕府の重職にあった足利高氏(尊氏)が、帝方の楠木正成に呼応するように寝返り、鎌倉幕府は滅亡。後醍醐帝が京に戻り、建武の新政がはじまる。  しかし、武家も公家も私利私欲がうごめく腐敗した政治は変わらず、帝の志を実現しようと心をひとつにする尊氏と正成の運命は、陰謀に翻弄され、引き裂かれていく。
  • 和らぎの国 小説・推古天皇
    4.7
    『利生の人 尊氏と正成』で日経小説大賞を受賞した天津佳之氏の受賞第一作は6世紀末に即位した史上初の女性天皇、第33代、推古天皇を主人公に、この国の精神のなりたちに迫る野心的な作品。神代から始まる『古事記』はこの推古天皇の時代で終わっており、まさに日本が神話から歴史に移る時代の物語です。「和を以て貴しと為す」初の成文法・十七条の憲法、「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す」との国書を中国の皇帝に捧げた初の遣隋使、氏姓によらない朝廷内の官僚の序列を初めて示した「冠位十二階」……朝廷が次々と国家体制を整える改革を断行したのは、推古天皇の御代でした。摂政・聖徳太子が主導し、政治を安定させるべく仏教の興隆を進めるなか、激動する東アジアとの関係を巡って生じた軋轢をも融和させる女帝の祈りに、人々は神代の昔から続く、この国に在る真心を見ました。和らぎの国とは、はたして――奇しくも昨年2021年は聖徳太子の1400年忌にあたり、この作品にも登場する聖徳太子創建の法隆寺はじめゆかりの寺院で盛大な法要が営まれ、大阪と東京の美術館・博物館では聖徳太子をめぐる特別展覧会が開かれたばかり。本作には、聖徳太子の伝説をめぐる、あっと驚く仕掛けも隠されています。

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