e-NOVELS作品一覧

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  • 飯野文彦劇場 面
    5.0
    秋祭りの縁日で面を買った。それは20年近く前に死んだ祖父にどこか似ていた…。奇妙な面と巡り会ったその日から、作家の許に言霊が降臨する。狂気、妄想が次々と結晶化し、奇蹟のように生み出される歪んだ傑作群。しかし真の狂気、真の恐怖は徐々に作家の日常を蝕み…。面の裏に刻まれた言葉。その素材に秘められたおぞましき秘密。そしてベールの彼方から甦る少年時代の記憶。現実か妄想か? 人面の迷宮を呪われた言葉が彷徨い、鮮血と共に噴出する!
  • 飯野文彦劇場 白い人
    5.0
    「ああ、お願いだから、ちょっとの間、静かにしていて。絶対に出たりしちゃだめよ。すぐ終わるから、ねっ、ねっ」――寒い冬の夜更け、駅前にふと人通りが途絶えたとき、濃密な闇に塗り込められた街を、奇妙な白い人々が横切っていく。「誰なんです、あの連中は?」「あ、あれは……」――駅周りの店主たちが一様に畏れる禁忌(タブー)に触れたとき、男は白い人との邂逅を求めて、夜更けの街をひとり彷徨う。
  • 飯野文彦劇場 体内小人
    5.0
    奇怪な手紙に導かれ、TVレポーターは山奥の社へと向かった。そこで彼を待ち受けていたものとは? 失踪後、再び姿を現わしたレポーターの会見で全てが明らかになる!? 「ま、待ってください。本当なんです。今、世界は、人類は危機に陥っている。だんだるしあが蘇ろうとしているのです」「で、結局その、だんだるしあって、何なの?」「わかりません。しかし、その手先の〈やつら〉のことならわかります」「じゃあその〈やつら〉は、どこにいるんですか?」
  • プライベート・ビデオ
    5.0
    見知らぬ土地で真夜中近く、喉の渇きを癒そうと歩き回っている際に、偶然入った場末のバーのよう店。客は私ひとりだったが、すぐに複数の若い男女が入ってきた。彼らは店の常連らしく、マスターらしき男に、ビデオテープを渡した。まもなく、店内の大きなモニターに、彼らが海辺でたわむれるプライベートな映像が映し出されたのだが、そこに映っていたのは…。
  • 飯野文彦劇場 帰ってきた叔父
    5.0
    あれは盂蘭盆会の出来事だった。当時八歳だった私は、ひとり留守番をしていた。そこへ叔父がひょっこりやってきた。麦茶を用意している間に叔父の姿は消えていた。しばらくして帰ってきた姉たちに叔父が来たことを告げると、「叔父ちゃんは死んだでしょ?」と怪訝そうな顔をされてしまった。しかし、その直後、叔父からの電話で墓に呼び出された私は…。
  • 飯野文彦劇場 覆面試写会への招待状
    5.0
    覆面試写会にようこそ。まず、警告しておこう。この作品は怖いだけではない。危険である。あらゆる不快な出来事、恐ろしい体験を、あなたはこれから経験することとなる。もしそれがいやなら、いますぐ席を立たれることだ。それからもうひとつ。この作品についての内容、また衝撃のラストについて、けっして他言しないでいただきたい。もっとも他言したところで、他人はけっして信じようとしないだろうが……。
  • 飯野文彦劇場 女郎蜘蛛
    5.0
    「それは…」「女郎蜘蛛ですわ」「それじゃあ、そこにいるのを知っていてわざと」「こんなにしっかりと脚を立てられていて、気づかないわけがありませんわ」「取ってあげましょう」「取ってもらえるのなら」。深夜の列車に乗り合わせた、艶めかしい喪服の美女。その白い首筋には一匹の大きな女郎蜘蛛が! 柔肌を思うがままに蹂躙する七本の脚。淫らに漏れる吐息、高まる官能。誘われるまま、その胸元に手を差し入れた男に女が語った忌まわしい身の上とは?
  • 飯野文彦劇場 フィアンセは
    5.0
    年下の美青年から、ついにプロポーズを切り出された女。だが、彼は突然恥じらいながらうつむき、女口調でつぶやいた。――「はじめまして、わたしが桜見郁美です」――。幸福の絶頂から、突如意味不明な奈落の底に突き落とされた女は、彼=彼女の口から語られる奇怪な物語を受け容れられるのか?
  • 飯野文彦劇場 妖女
    5.0
    「彼女、おれがいただく」「待てよ」「なんだよ、だんまりを決め込んでいたくせに」「彼女、潮くさくなかったか」――気がつくと、潮の香りが漂っている。そんな気がした…。ディスプレイの中から微笑みかける美少女。確かに漂う潮の香りと、甘い吐息。偶然行き当たった奇妙なwebページは、男の心を激しく波立たせた。馬鹿らしい、気のせいだ…。しかし、仕事帰りに寄った居酒屋で、こちらをじっと見つめ微笑みかけてくるのは、確かにあの少女だった!
  • みんな、ここに来る
    5.0
    映画プロデューサーのマイロは、映画製作の資金を調達するために、美貌の女優を伴って資産家たちの集まるパーティに出席していた。彼はその時、不思議な声を聞く。“ブラウントゥリーに帰るよ”。それは以前父親が行方不明になる前に言っていた言葉だった。その後、資金を得て映画を製作できるようになるのだが…。ブラウントゥリーとは果たしてどんな場所なのか?
  • 飯野文彦劇場 友だちはブチ
    5.0
    1巻110円 (税込)
    生まれつきの難病のため入院していた9歳の少年・正和。学校にも行けない彼は友達もできず、いつも病室の窓から、通りを歩く少年たちを羨ましそうに眺めていた。そんなある日、窓の外にブチ柄の子犬がいるのを見つける。正和は子犬にブチという名前をつけ可愛がった。ブチは正和にできた初めての友達だったのだ。しかし、正和の病状は刻々と悪化し…。少年と犬との心温まる感動作。
  • 飯野文彦劇場 奈落の遊園地
    5.0
    実の甥に性的虐待をした挙句、怪我を負わせ逃げてきた男。酒に溺れてホームレス状態となった彼がたどり着いた先は…。【作者の言葉】ひたすら下品で汚らわしくて、目茶苦茶な話です。決してどこからも出版してくれないでしょう。こっそりと読んで、嫌な気分になってください。
  • 飯野文彦劇場 煙草屋の二階に住んでいる
    5.0
    1巻110円 (税込)
    男は、痩せこけた老婆が店番をする、古びた煙草屋の二階に住んでいた。いつも排泄は床の抜けた押入れの中から、一階の古びた浴槽へめがけて…。臭気のこもる煙草屋の中、男と老婆の狂気と愛憎の世界が繰り広げられる。
  • シンボル・ツリー
    5.0
    祖父の持っていた古いアパートを取り壊し、家を建てた私。上棟式にやってきた老人・鍬方は私に一本の木の苗を差し出した。玄関前にシンボルツリーとして植えるといいと言う。アパートの立ち退きに抵抗を示した鍬方だったので、これを植えることを承諾すれば気持ちよく出て行ってくれるのならと、私は苗を受け取った。そして五年後、住む家族も増えた幸せな家に異変が起きた…。
  • 飯野文彦劇場 バルセロナの工房
    5.0
    1巻110円 (税込)
    妻にうながされて県立美術館に足を運んだのは、暖冬とはいえ北風の冷たい一月の末のことだった――。普段はバルセロナの工房で、制作に没頭しているという老版画家のことなど、興味もなければ知りもしなかった。だが、妻に無理矢理引きずられるようにして連れて行かれた講演会で、私は彼のたたずまいに強く惹かれる。彼のいったい何に、私はこんなにも惹きつけられるのか?
  • 飯野文彦劇場 獅子と戦う
    5.0
    1巻110円 (税込)
    居酒屋での馬鹿話に、ライオンと戦って勝つ自信を高らかにぶち上げた男。すべては酒の上の冗談のはずだった。昨夜隣り合わせたTVディレクターが、約束通り訪ねてくるまでは。「あなたねえ。本気で人間とライオンを戦わせるつもりですか?」「はい」「テレビでそんなのを放映できるわけがないでしょうが」「できます。自分が責任を持って仕切ります」…。今、秘策を胸に、絶対安全な究極の異種格闘技戦のゴングが鳴る。
  • 子供という名の病
    5.0
    1巻110円 (税込)
    失われた声のような色の病室で、ぼくは恐竜の骨を抱いたまま、眠っておりました――牛乳瓶に挿した鈴蘭の花、一生に一度しか押してはいけないボタン、身体が半分の大きさになった看護婦…。夢か? 幻影か? 現実か? この病室で、いったい何が起こっているのか?
  • 飯野文彦劇場 紐
    5.0
    「ねえ、わたしが養ってあげようか」「ヒモになれってことか」――。シメタ、と思っていた――。作家崩れの屑男は、40がらみのロートル・ストリッパーの安マンションに転がり込んだ。自慢の手管でモノにして、見事ヒモに収まる。毎日、ただひたすら安焼酎をかっ喰らい、ぼんやりと怠惰に過ごす日々。だがそれは、1人の美少女が部屋を訪ねてきた時に、終わりを告げた。男が手にするのは甘い生活か、それとも――?
  • いつか見た子
    5.0
    小学校3年になる息子が苛められている…。妻からそれを聞いた秀幸の脳裏に、30年ほど前の苦い記憶が蘇った。小学校に入り立ての彼を、登下校の途中にある公園でいつも待ち伏せしていた“あいつ”。「おい、持ってきたか」。彼は、いつも同じことを言った。その度に秀幸は自分の持っている物を差し出すが、どれも彼の意に染まず、「違う! こんなもの持ってくんじゃねえよ!」と逆上して秀幸をいたぶるのだった。その記憶を前に、息子に対して何もできない自分を歯痒く思うのだが…。
  • 飯野文彦劇場 おもろい夫婦
    5.0
    1巻110円 (税込)
    私は、これといって取り柄のない老作家である。極めて遅筆で、未だに単行本は出ていない。こんな男でも、作家という肩書からか、歳を取っているというだけのことからか、近所に住む連中からは、何かと相談事を受ける。今日も、酒好きの酒屋の亭主がくだらない相談にやってきた。からかってやるつもりで、適当なことを答える私だったのだが――。まるで落語のような登場人物たちの軽妙な会話に、飯野文彦氏独特のシモネタと、笑いを織り交ぜたユーモア小説。
  • 休日探偵ムナカタ氏 第一話 消えた猫のなぞ
    5.0
    学生時代は勉強に、社会人になってからは仕事に追われ、ひたすら忙しい日々を送ってきたムナカタ氏。会社の事情が変わり、突然、閑職に追いやられてしまった彼は、暇を持て余し公園で時間を潰すことに。公園のベンチに腰をかけて観察を続けていると、平和なはずのその場所で、さまざまな事件が起きていて――。ムナカタ氏が“休日探偵”を名乗るきっかけとなった最初の事件を描く、短編ミステリー。
  • 飯野文彦劇場 作家幻想
    5.0
    1巻110円 (税込)
    壊れている。脳味噌が「酢豆腐」並に、腐っている。軽蔑され冷笑され罵倒され、蹂躙され踏みにじられ陵辱されている――ような気がする。耐えられず、今日もまた酒を飲む。飲み続ける――。二十世紀末、私はまったくもって売れない作家として、かれこれ十年近くに渡って生活を続けていた。自身の無能と自意識過剰に苛まれ、他人の眼に脅え、それらを忘れるべく酒に溺れながら。個性的なその世界観からマニアックな評価が高い飯野文彦が出版社、編集者といった枠組みを超えて綴った、異形ワールド!

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  • 桜川のオフィーリア 川に死体のある風景
    5.0
    春の川に横たわる美しい少女の死体。彼女の亡骸を囲むように浮かんだ無数の桜の花びら。その光景は驚くほどの美しさで…。英都大学の一回生、アリスこと有栖川有栖は、ふと立ち寄ったキャンパスのラウンジで、先輩の江神二郎に出会う。アリスは、そのまま江神に誘われ、ふたりが所属する推理小説研究会の創部メンバーの一人、石黒に引き合わされる。石黒は、かつて自分の郷里で起きた事件について、江神に相談を持ちかけるのだったが…。江神シリーズ第四弾『女王国の城』につながる、ファン必読の読み切り短編!!(本作は「川に死体のある風景」をテーマとする読み切り連作小説の一篇です)

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  • そして誰もいなくなった……のか?
    4.0
    H岳のスキー場で立ち入り禁止区域に入り込み、雪崩に遭遇したスキー客9名。ゲレンデに戻ろうとして道に迷い、見つけた山荘で雪が止むのを待っていた。そんな、孤立無援の彼らを殺人鬼が襲う。最初は山荘の管理人が血だらけで発見され、一人ずつ殺されていく…。後日、最後に殺されたと思われる明美の手記が発見されたが、殺人鬼の正体は一体誰なのか? 山荘には他に誰もいないはずなのに…。
  • ジュ・テーム
    4.0
    代わりばえのしない日々に倦んでいた牧村は、通勤途中にある画廊で働いていた咲子に一目惚れする。猛烈なアタックの後、七ヶ月後にやっと自分の部屋に連れてくることに成功した。ところが、ベッドに押し倒し「愛してるよ」と囁いた直後、恐ろしい異変が起きる。彼女が突然苦しみだし、首にはまるで誰かに締められたかのように、赤黒い指の跡がくっきりと浮かび上がったのだ。驚いて病院に運び、一命を取り留めたものの、彼女からは別れを告げられてしまう。諦めきれない牧村は、探偵を雇い彼女の秘密を探ろうとするが…。
  • タイヤキ 黄昏ホテル
    4.0
    1巻110円 (税込)
    中国マフィアが所有するコカインと、それを手に入れるために組が用意していた数億円が忽然と消えた。その犯人と疑われた岩男は、弟分の伸吉とふたり、銃を持った組の人間たちに追われていた。命からがら逃げる中、岩男は、まだ堅気で大工の見習いをしていた頃に、棟梁がよくしてくれた話をふと思い出す。通称「黄昏ホテル」のパン屋の片隅で売られているタイヤキを頬張りながら、棟梁がしてくれたその話は…。(本作は「黄昏ホテル」をテーマとする読み切り連作小説の一篇です)

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  • 嗤う男
    3.0
    いつもの、ありふれた朝。妻と一人息子と共に朝食をとっていた和樹の動きが止まった。テレビから流れてくる強盗殺人事件のニュース。画面には指名手配されている容疑者の男の顔が映し出されていた。和樹は、この男の顔を知っていた。「まさか、本当にいたなんて」…。和樹を襲う、悪夢の結末は?
  • 実家
    3.0
    1巻110円 (税込)
    東京の大学に進学してから、久しく帰っていなかった実家へ三年ぶりに帰省した。疲れていたので、二階の部屋でうたた寝をしていたところ、枕元を誰かが通った気がした…。そしてまた、家のどこかでぱたぱたという足音が響いて…。いったい誰が?
  • 猿駅
    3.0
    母に呼ばれた無人駅に下り立つと、そこはもう一面の猿。どこへ行くにも、猿を避けて歩くのは至難の業。約束の駅前の煙草屋に行くまでにも、数匹の猿を踏んでしまった。しかし、彼らは怒るでもなく、黙って踏みつけられるがままだった。煙草屋の脇の自販機でフルーツ牛乳を買って飲んでいると、「猿の餌、飲んだんかっ」と煙草屋の老人に怒鳴られ、何故か追いかけられる羽目に…。猿を踏みつけることにはもう構ってられない。足の裏で骨が折れ、内臓がひしゃげても構わず逃げていると…。
  • 病んだ水
    3.0
    「早いもので、あの事件からもう4ヵ月の時間が流れました。…礼子さんが誘拐されたときのことを、私は今でもはっきりと憶えています…」。産業廃棄物処分場建設に携わる会社・サンセンの社長令嬢が誘拐された。犯人が要求した身代金は五十万円。その少なさに違和感はあったものの、受け渡しを指名された社長秘書は、犯人の指示通りに行動を開始する。しかし、結果的に金は忽然として消え、その二日後、娘の礼子は無事に戻った。そして四ヵ月後、秘書が礼子にしたためた手紙に記された事件の真実とは?
  • 玉川上死 川に死体のある風景
    3.0
    「玉川上水を死体が流れている」。110番通報を確認するため、交番から現場へ駆けつけた市田。死体は背中に「R高校 秋山」とかかれたジャージを着ている。川を流れていく「秋山」を自転車で追跡する市田だったが…。川を流れる「死体」の正体、そして、そこから発展する思いも寄らない事件の結末とは?(本作は「川に死体のある風景」をテーマとする読み切り連作小説の一篇です)

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  • 殺意のかたち
    3.0
    六月十一日、錦糸町の公園で男性の死体が発見された。死因は毒死。他殺の疑いが濃厚となり、本所警察署の川添刑事は、本庁の捜査一課刑事・香坂と組んで、捜査を開始した。被害者の部屋で発見された現金書留の控えにあった、ある人物の自宅を訪ねたふたりの刑事は、そこで思いがけない事実を知るのだが…。ベテラン作家が贈る傑作短編ミステリー。

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  • 宇宙捜査艦《ギガンテス》 加筆版
    2.5
    汎用小型宇宙惑星“SV998”の地球環境居住区で地球人の親善大使の死体が発見された。この事件の捜査に捜査艦「ギガンテス」が任命された。乗組員たちは、亜空間ワープ航法で現場へと急行する。ザルルン帝国の和平のために派遣されていた大使は、なぜ無惨な死を迎えたのか? ※本作品は以前販売しておりました『宇宙捜査艦《ギガンテス》』に加筆した改訂版で、内容は徳間デュアル文庫版『宇宙捜査艦《ギガンテス》』と同一です。
  • そして天使は微笑む
    2.0
    中学1年生の弟・勝也がいじめを苦に自殺した。遺書にはいじめた奴らへの恨みが綴られていた。おれは、書かれていたことが事実であるのかを確かめるために、遺書で名指しされていた弟の同級生に会うことにした。そして、おれは、弟の死に隠された思いも寄らない真実にたどり着いてしまった…。
  • オールド・ボーイ 黄昏ホテル
    1.0
    いつの頃からか「黄昏ホテル」と呼ばれるようになったクラシカルなホテル。このホテルの3階の客室に、見るからにいかがわしい何人かの男たちが長期滞在していた。ここに数十年勤めるベテランホテルマンは、彼らが問題を起こすのではないかと危惧していたが、ついにある日、1発の銃声が鳴り響く。そして年老いたホテルマンは、3階のある一室で死んでいる男を発見するが…。哀愁漂う短編ミステリー。(本作は「黄昏ホテル」をテーマとする読み切り連作小説の一篇です)

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  • 世界線の上で一服
    -
    僕は29歳の売れない作家。没になった原稿を川に投げ捨てようとしたところを女子高生・エリスに止められた。生意気だが、不思議な魅力を持つ彼女に誘われ、神保町のある古本屋を訪ねると、店主の妻の老婦人が、おかしな夢を見たという。その話を聞いたエリスは「亜影王が来た」と呟いた。叶わなかった過去の夢を実現してくれるという「亜影王」とは何者なのか? エリスに誘われるまま、僕は、「亜影王」を追って東京中を歩き回ることに…。
  • 瀬名秀明解説全集+α
    -
    1巻660円 (税込)
    文庫本の巻末に付される「文庫解説」。これは日本独特の文化と言えるのではないだろうか。この解説を読んでから買うかどうか決める、この解説のために文庫を買い直すという人もいるぐらいだ。本作は、作家・瀬名秀明が、1995年にデビューしてから2003年までに書いた文庫解説24編に学生時代のエッセイを加えて収録。「そのときどきに考えていたことを、おそらく作品の胸を借りながら確かめるように書いてきた」という言葉の通り、ある意味個人史とも言える作品となっている。
  • 子供たちは夏の中
    -
    ある夏の昼下がり、私の妻・瑞枝は息子・高哉の夏休みの宿題である昆虫採集に付き合って、ふたりで林の中に入っていった。だが、瑞枝がふと目を離したすきに高哉は忽然と姿を消した。以来、瑞枝は心を病み、高哉を探し続けている。私は、瑞枝に高哉を諦めさせるため、中学時代の同級生であり、瑞枝の主治医でもある竹下に頼んで、ある計画を実行することを決意していた。そしてその当日…計画はうまくいったかに見えたが…。
  • 後生車
    -
    1999年の正月、小説家である私のもとに奇妙な年賀状が届いた。『1999年1月9日 覚えていますか』。手書きでたったそれだけが書かれた葉書。差出人には「斎藤」としか書かれていない。謎めいた年賀状をきっかけに過去の記憶がよみがえる。『ノストラダムスの大予言』に書かれた恐怖の大魔王による人類滅亡を回避するため、高校生だった私は、ある約束をしたのだったが…。アメリカのSF作家、ジャック・フィニイを敬愛する著者が「時間怪談」をテーマに描いた不思議な物語。
  • あたしのもの
    -
    あたしは、今、大好きなヒロシとミイナ、ショウジとケンイチと共に、車で温泉に向かっている。ヒロシは、あたしみたいなブスでノロマでバカな女なんて相手にしないとわかっていた。そんなヒロシにバカにされ暴力をふるわれても、あたしは彼と一緒にいられるだけでよかったんだ。旅館に着き、ヒロシの彼女のミイナに誘われて風呂に行くと、そこには不思議なおばあさんがいて…。不気味な旅館で、その晩あたしの目の前で起きた事件とは…。
  • 硝子の家
    -
    僕がまだ小学校に通っていた頃、下校途中に見つけた「硝子の家」。赤く衰弱した陽光に照り映えたその屋敷の入り口には『お入りください 入場無料』の看板が立てられていた。入るかどうか迷っていた僕は背中を何かに押され、気づけば鏡の林の中に紛れこみ、迷っていた。泣きながらやみくもに駆けまわって、もう二度と外へ出られないと思ったその時、気づけば出入り口に辿りついていた。そして、月日が流れ「硝子の家」のことを忘れかけていた僕は、再びあの家の前に立っていた…。
  • 百八燈
    -
    1巻110円 (税込)
    映画監督の彼は、同業者の父の再婚相手、自分より年下の義母・塁子の口ずさむ歌に、18世紀半ば、イタリアで夭折した作曲家が死の直前に作った聖母哀傷の曲を重ね合わせ、映画を撮ろうとしていた。しかし、資金繰りは難航し、予算1億のところ半分を出資してもいいという映画会社は見つかったが、後の半分が工面できない。そんな彼に出資者を紹介したのは累子だったが、その資金をあろうことか彼の父親が攫っていった…。累子が口ずさむ魂送りの歌が送ったのは…!?
  • 奴らは絞首刑の絵葉書を売る
    -
    本作は「ラヴ・マイナス・ゼロ/ノー・リミット」という中編連作シリーズの第一話、短編バージョン。近未来の都市・シャンティータウンのノースエリア。大通りをリサイクル資源である“死体”を回収する車が通りすぎ、地上は歩くことがはばかられるほど頽廃しているこの場所で、おれは、“死体製造”つまり、賞金稼ぎを生業としていた。そんなおれの命を狙うクローン人間。誰が、なんのためにクローン人間を仕向けたのか?
  • 二重露出
    -
    その公園に面した場所で営業していたのは、加倉喜直の蕎麦屋と、麻井春樹の喫茶店。二人とも長年持ち続けてきた夢を叶えた結果の店だった。それなりに充実した日々を送る二人の幸せは、ある日を境に揺さぶられることになる。それは、公園のトイレに住み着いたホームレスだった。10m先にまで届くほどの異臭を放つホームレスが、両店の客足を途絶えさせたのだ。追い詰められた二人は、自らホームレスを排除することを決意するのだが…。
  • 決定的な何か
    -
    アニメ『時闘鬼 多々恵』で声優を務める谷川浅理。今日は共演者で、大物の声優、左京民子との顔合わせの日でもあった。出演者の誰もが緊張する中、付き人の優佳と共にやってきた左京民子は、若々しい声で見事に役を演じきった…かに見えた。民子のアフレコに違和感を感じた浅理と同じく、脚本家・石井琢郎も違和感をおぼえていた。収録の帰り道、ふたりの後ろには民子の付き人、優佳が立っていて…。異形コレクションと題したシリーズに書き下ろされた、世にも不思議な物語。
  • 逃げ水姫
    -
    大学生の僕は、下宿へと帰る道すがら、野菜売りのおじさんからトマトをひと皿買った。部屋に着くと、それに塩を振りながら缶ビールを2本のみ、その後はまぐろのフレーク缶をつまみにウィスキーの水割りをちびちびとやっていた。特にしたいことがあるわけでもなく、あと1、2年はこんな毎日をぼんやりと過ごすのだ。これでいいと思っていたのだ、その時までは…。冷蔵庫で冷やした水割り用の水を入れた瓶の中に不思議な光景を見つけたことから、僕の人生に変化が起きて…!?
  • 飯野文彦劇場 茶の魔
    -
    もうすぐ八月の声をきこうというある日、私のもとに、作家仲間のFから長文の手紙が送られてきた。性格的に問題があり、いつしか仲間内からも距離をおかれ、郷里に帰ったと風の噂に聞いたFからの手紙。そこにはアルコール依存症だったFが手に入れた「魔法のお茶」によって、酒を断つにいたった話、そしてそのお茶を飲むようになってFの目の前に現れた「あいつ」の話が…。
  • 飯野文彦劇場 陰歯
    -
    都落ちして郷里に戻ってきた怪奇物作家の井之は、ある日、地元のさびれた神社に面白いものがあるという噂を耳にする。それはなんと、陰部に歯のはえた女の木乃伊だった…。そこに添えられた古い手記には、木乃伊となった女の悲しくも驚きの運命が綴られていた。やがて、その木乃伊に魅了された井之は…。
  • 飯野文彦劇場 裏長屋の住人
    -
    小説家である私の実家の裏には、人が住まなくなって久しいぼろ長屋があった。ある日その大家である私の両親のもとに、ぜひ長屋を貸してほしいと申し出る男が現れたという。風雨にさらされ、とても人が住める状態ではないと念押ししたにも関わらず、強引に引越してきた老人とその妻…。そんなある日、私のもとに不気味な手紙が送られてきて、その老夫婦の元を訪ねることになるのだが、彼らが語り始めたのは驚くべきことで…。
  • 飯野文彦劇場 揉みほぐされる脳
    -
    雨の蒸し暑いある日、売れない作家・井之妖彦は、自分の脳が誰かによって揉みほぐされていることに気づく。だから、すぐに感情的になり、ねちねちと細かいことにこだわり、優れた才能を見いだされず不遇のまま過ごしているのだ。すべてそれで納得がゆく。誰だ、誰が私の脳を!? 男の精神が壊れていく過程を、つぶさに、執拗に描ききった奇作。
  • 飯野文彦劇場 ないものの子
    -
    主人公の「私」が小説家である事を知り「実は私も小説を書いたことがあるの…」と自作をメールで送ってきた憧れの女性。その内容は、彼女の清楚な外観からは想像もつかない淫らで、破廉恥な官能小説。いやはや、作中話として全文が掲載されているこの小説がまた本格的で、思わず生唾を飲みこみたくなるような内容。地位も名声もある夫人が、銀座の公衆トイレで繰り返す痴態…。これだけでも読み応えがあるのだが、さらに本作は驚くべき結末へと進んでいく。官能小説と言うべきか、ホラー小説というべきは、はたまた…。
  • 飯野文彦劇場 肝田めし
    -
    落語好きの著者がどうしても聴きたい落語会のために出向いた大阪。いつものごとく、居酒屋で軽く一杯ひっかけよう…としたのがいけなかったのか!? 落語の書き下ろしも手掛ける著者ならではのひねりの利いた一席、とくとご堪能ください!! しかし、ここまでいってもやっぱり井之妖彦は、酒をやめられないんですね~。
  • 飯野文彦劇場 痛み
    -
    1巻330円 (税込)
    目を覚ますと、佳奈子が目を大きく見開いて立っていた。わかっているのに、酒を飲むといつもやってしまう…。「覚えていないんだ、どうか許してくれ」と頭を下げる私の脳裏に浮かんだのは、幼い頃、兄妹のように育った従妹の幹枝との、思い出。最初は好奇心からキスをしただけだった。やがていけない遊びはエスカレートし…。
  • 飯野文彦劇場 まつりの準備
    -
    作家を志しながらも、現実の厳しさに挫折しかけている青年。夢を諦め、東京を離れて郷里へ帰るしかないのか? そんな彼の前に現れた一人の女性。誰からも愛され、くったくのない笑顔を見せる彼女に、いつしか青年は…。姿を見るだけで胸がキュンと締めつけられるような淡く切ない思い、清らかで真っ直ぐな恋心――恋するっていいなぁ。
  • 飯野文彦劇場 深夜の授業
    -
    幼い頃から暴君だった父。ある日、酔った父が私の部屋に入ろうとしたのを止めようと、咄嗟に体当たりをした。父はあやまって階段から転落…。幸い、大事には至らなかったが、一方的に暴力をふるわれる関係は終わりを告げた。今までの鬱憤を晴らすかのように、私は母に、そして父にも暴力をふるうようになった。そして…。果たして主人公がたどり着くのは?
  • 飯野文彦劇場 一人多い生徒
    -
    紆余曲折を経て、40歳で小学校の教員となった私。生徒数は8人と少ないが、可愛い子供ばかり。しかし、私はある日、生徒が一人増えている事に気づいた。しかも、その少年は私の記憶の中の懐かしくも切ない思いを呼び起こし…。子供の頃の純真で深い友情。それでいて大人になったら相手の存在すら忘れてしまっている残酷さ。それらが呼び起こすキュンと胸が締めつけられるような想いを、奇才・飯野文彦が見事に操り、私たちを不思議な世界へ誘う…。感動と切なさ、そして恐怖をともなう秀作です。
  • 飯野文彦劇場 女体の中に
    -
    「昔、SM雑誌でライターをしていたときに経験した不思議な出来事を、一編の小説にまとめてみました。くわしいことは差し障りがあるので、ここには書けません。それは本編の中で……。ご愛読のほど、なにとぞよろしくお願いいたします」(著者:飯野文彦)取材先の肛門科で聞いた、世にも不思議なお話し!
  • 飯野文彦劇場 地獄のランチタイム
    -
    1巻330円 (税込)
    私立探偵…とは名ばかりの何でも屋のおれは、一か月前にアルのママから「あたしのかわいい坊やを連れもどしてちょうだい」という依頼を受けた。東京砂漠を愛車でぶっ飛ばしながら、アルを探すおれだったが…。荒んだ近未来の東京で繰り広げられる、バイオレンス劇! 飯野文彦節全開の、エロ、暴力ありの和製スプラッタパンク!
  • 飯野文彦劇場 鰻女
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    先輩作家に紹介されたアメリカ帰りの美女は、酒も下ネタもいける口。ふたりきりで酌み交わす安焼酎が気分をハイにし、豪快なH体験談が甘く下心を誘う。すっかり機嫌良く次の肴を頼もうとしたとき、突然「やめてください」! いったい何が悪かった? 鰻の肝で精力つけて、という下心が見透かされたのか?「駄目なんです、わたし、鰻が。三年前――」。鰻嫌いの陰に隠された、驚くべきトラウマ体験。果たして現実か妄想か? 異常な告白は、留まるところを知らずに大暴走する。いったい何なんだ、この女!? 身も心も引きずり回されたその果てに、作家が辿り着いた場所とは? 悪酔い必至の酒の夜語り、妄想から妄想へ今夜はハシゴ!
  • 飯野文彦劇場 人魂
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    作家である私は、ある日、仕事場にある「あるモノ」が妙な光を発していることに気づいた。その光を見つめているうちに、自分の口からも同じような光が飛び出していた。それは…人魂だった。人魂に意識が乗り移った私は、ふわふわと宙を飛び、扉をすりぬけ…そして妻の寝室で目にしたのは…。妻の情事を知った私がとった行動は!?
  • 飯野文彦劇場 神代桜
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    近所のラーメン屋で昼食を済ませ、自宅に帰ったらリビングに見知らぬ老人が居た。「昨日、訪ねてきてくれたでしょう。そのとき、この人だと思ったんですよ」と言う老人は、私の願い事を2つかなえてくれる代わりに、自分の願いも1つ聞いてほしいと言う。この老人、実は私が昨日ふと訪れた神社の樹齢千年を超えるという神木――神代桜だったのだ。彼が持ちかけてきた取引とは? そして、老人と話すうちに明らかになった驚愕の事実!!
  • 飯野文彦劇場 鰻屋
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    1巻220円 (税込)
    十年余り前。じめじめと蒸し暑く、金も当てもないまま夜な夜なK町を冷やかし歩いていた私の心にも、カビならぬいつも以上にしみったれたものが巣くいはじめた梅雨間近のころである――。その鰻屋を見つけたのは、裏通りのディープな一角だった。〈鰻を食べると。一・元気になります。二・若返ります。三・セックスが強くなります。四・死人がよみがえります。〉カレンダーの裏紙にマジックで書いたような稚拙な張り紙には、確かにそうあった。曇りガラスはいつも閉ざされて出入りする客もなく、鰻の匂いすら漂ってこないその店の奥で、いったい何が調理されているのか? 好奇心の虜となった私はある日、ついに意を決して暖簾を潜った…。
  • 飯野文彦劇場 へんげ
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    Y県とN県の県境に、突如なぞの巨大生物が出現した!? 厳戒態勢がひかれ、立ち入り禁止となったそのエリアに侵入した男が拾った巨大な紙片には、驚くべき事実が綴られていた!! 果たして巨大生物の正体とその運命は? 奇才・飯野文彦が描く怪獣モノの、ちょっと普通ではない驚愕の結末。
  • 飯野文彦劇場 談春を聴きにいった名古屋で謎の美女と遭う
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    贔屓にしている落語家の独演会を聴きに、山梨から名古屋まで長距離バスで出かけた私。ところが、バスを降りた途端、見知らぬ美女に声をかけられた。彼女は私の事を知っている様子だが、こちらには何の覚えもない…。そんな事はお構いなしの彼女に、強引に手を引かれ私が連れて行かれた先には!?
  • 飯野文彦劇場 性根
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    1巻220円 (税込)
    私が佐山外雄と出会ったのは、今から二年ほど前のことだ。その頃、すでに彼の性根は、残念ながら腐っていた――。先輩作家とのトークライブにファンとして現われた男は、にこにこと土産の焼酎を差し出した。三度四度と回を重ねるにつれて、男は馴れ馴れしく、いや図々しく、こちらの領域へと踏み込んでくるようになる。疎ましい男を何とか突き放そうとして、ますますその神経を磨り減らす気弱な私。だが、ようやく突き放しに成功したと思ったとき、男は新たな貌を露わにした。のっぴきならない状況に追い詰められた私が、機先を制するべく打った奇策中の奇策とは? 狂乱の宴が、今始まる!
  • 飯野文彦劇場 浜の老人
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    ある日、妻が仕事中の私の書斎の扉を開けて、「あの人がやってきた!」と慌てた様子で言う。あの人とは、5年前、新婚旅行先の宮崎の海岸に死んだように横たわっていた老人のこと。しかも彼は、痩せた体にそぐわぬ巨根を見せびらかすかのように全裸だったのだ。まるで二人の心の内を見透かしたようなことを言う老人に興味を持った新婚の妻に、私は思わず殺意さえ覚えるが、次の瞬間、老人の姿は忽然と消えた…。エロと狂気のスペクタクル…そして驚天動地の結末が!?
  • 飯野文彦劇場 汚れちまった悲しみ
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    40も半ばを過ぎた売れない小説家の私は、妻に去られ、今は田舎の年老いた両親の面倒を見ることで、いくばくかのお小遣いをもらって生活をしている。そんな私の頭の中を閉めている妙なフレーズがあった。「ゆやん、ゆよん、ゆや、ゆよん。ゆやん、ゆよん、ゆや、ゆよん」。何の音かわからない。わからないながら、ふとした瞬間、それを呟いている私がいた…。それが、もしかしたら、幼い頃、何かのドラマで耳にした中原中也の詩「汚れちまった悲しみに」の一節ではないかと思い当たった私は、それを確かめに図書館へと向かったが…。
  • 飯野文彦劇場 留守電
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    留守電に吹き込まれていたメッセージは、見知らぬ若い女性からの間違い電話だった。そこに込められている切なる想いは、しかし相手には永遠に届かないのだ。それを知っているのは自分だけ。哀れさと焦燥に胸を焦がしながらも、どうすることもできない私は、日夜悶々としていたのだったが、ある日ついに二度目のメッセージが。そこに吹き込まれた相手の番号を前に、極限まで膨らんだ様々な想いが迸るとき、いったい何が起きるのか!?
  • 飯野文彦劇場 きょうこ
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    両親の死以来10年、兄妹は爛れた背徳的な「性」活を送ってきた。兄のどんな歪んだ要求にも、白痴の妹は笑顔で応える。外界との接触を断ち、ありとあらゆる欲望を追求する日々。しかしある日、彼らの許をひとりの紳士が訪れた。「妹さんの噂を耳にしまして。どうか、妹さんを見せてほしいんですが。怪しい者ではありません。わたしはただ妹さんと……。お金なら払いますから」。求めに応じて妹を貸し出したときから、ふたりの間の危ういバランスは崩れ始め…。
  • 飯野文彦劇場 地下の少女像
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    妻と訪れた「風林火山博」で、退屈した私は、今は寂れたこの会場がデパートだった頃のことを思い出す。やがて、とりとめのない追憶の中から浮上してくるひとつの記憶。「誰だ、この子は……」。地下フロアーの片隅に、ひっそりと閉じられた不思議な扉。鬱屈した受験生の日常は、常に鍵をかけられた扉の向こうへの好奇心を爆発寸前にまで高める。そして、ついに我慢の限界を超えた少年の前で、扉はあまりにもあっさりと開かれた。そこに待っていたのは…。
  • 飯野文彦劇場 夏の女
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    愛する美しい妻に優しくされればされるほど、わたしは冷たい態度を取ってしまう。寂しさと後悔の念が、わたしを苛む。だが、拭えないのだ。妻に対する違和感を、そして恐怖を。結婚して15年、2人の子供をもうけてなお、美しく若々しい妻。誇りであり、自慢の種だったそんな妻に対して、一冊の本が疑念をもたらした。――いつまでも若く美しい妻は、かつて雪山で出会った雪女だった――有名な民話が、自身の生活に重なる。わたしの妻も…。
  • 飯野文彦劇場 インターホンに見える
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    周囲の喧噪に耐えきれず、発作的な怒りに身を任せて暴れ回る男。ついに暴れている最中に意識を喪い、病院に担ぎ込まれるに至って、医者に勧められ辺鄙な郊外の一軒家へ転地する。水商売に出かける女を見送った後は、何をするでもなくただ庭をながめる日々。その生活が一変したのは、古屋の中でそれだけが真新しいインターホンの存在に気づいたときだった。その小さなモニターの中に、男はいったい何を見出すのか!?
  • 飯野文彦劇場 団地に出た男
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    サークルの先輩が、連日のように泊まりに来る。私のアパートに来ない日も、他の友人宅を泊まり歩いて、自分の部屋にはほとんど帰っていないらしい。とうとうある日、たまりかねて問い詰めた私の前で、先輩は泣き崩れた「だめだ。もう限界だ」「どうしたんですか?」「出るんだ」――。いったい部屋に何が出る?
  • 飯野文彦劇場 山でやったとき
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    ヤリたい盛りの高校生カップルが、人けのない山の高台で乳繰りあっていたとき、そいつは現われた。「なぜ今日は脱がない、脱げ、脱げ! いつもみたいにすっぽんぽんになって見せろ!!」。毛むくじゃらの獣のような男は興奮の雄叫びをあげ、少女をさらって山中に姿を消した。やつは何ものだったのか?
  • 飯野文彦劇場 どんクリ
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    深夜の子供部屋に響いた壮絶な悲鳴。「傷口は接合しましたから。出血していますが、二、三日もすれば元気になるでしょう。しかし…事情が事情だけに、警察に連絡しなければなりません」「おっしゃってください。花恵は何をされたんですか!?」。ようやく授かった娘を襲った凶事が、母の精神を責め苛む。誰が何のためにこんな酷いことを? 護らなければ、この愛しい我が娘だけは。襲い来る悪意に敢然と立ち向かう母。その先に、血みどろな修羅の地平が広がる!
  • 飯野文彦劇場 サシと女
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    「エロの極限を描いた、めちゃくちゃしてるやつが見てえって言ってるだろうが」――酔った勢いで買ってきたアダルトDVD。そのあまりのエグさに、男の魂は凍りついた。魂にぽっかり空いてしまった黒い穴。闇に食い尽くされた太陽。その中から、コロナのように吹き上がるのは、記憶の奥底に封印されていた三十三年前の奇怪な出来事だった――。病的な虫嫌いの少年が、あの日河原の石の下に見出したものは、白くてつるつるした――。
  • 飯野文彦劇場 奇妙な初体験
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    初体験の話をしよう。私の場合、それはダブルの初体験だったのである。女性との性体験と同時に、もうひとつ別の初体験をしてしまった――。街ですれ違った美女との、熱く濃厚な一夜。しかし彼女はそれきり姿を消した。「聞こえたら、答えてください。会いたい。会いたい……」必死の祈りが天に通じたか。ついに彼女の応える声が! 「私も会いたいわ。でも、すぐには無理。これから私が言うことを実行できる?」。かくして、涙ぐましい修行の日々が始まった!
  • 飯野文彦劇場 御札のあるスナック
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    友人に無理矢理連れて行かれた、寂れたスナック。女たちとの弾まぬ会話に耐えきれず、半ば自棄になって怪談話をせがんだところ、雰囲気は一変。「なんで、そんな話するわけ」。いたたまれない空気の中で、ふと見上げた柱の上には、一枚のお札が貼られていた。「だいじょうぶよ。御札が貼ってあるから」それから一年、自身を襲った生々しい悪夢に衝き動かされて、ホステスのひとりにメールしたところ、戻ってきたのは奇怪な返信…。
  • 飯野文彦劇場 花
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    密かに想いを寄せていた同僚とのささやかだが幸福な一夜。だが翌日、出社した私を待っていたのは衝撃の事実だった。抜け殻となって帰宅すると扉の前に、一鉢の花が。「ありがとう。どんな形にしろ、君が私のところに来てくれたんだからね。もう決して君を離しはしない。これからは二人でいつまでも、いっしょに暮らしていこう」。閉ざされた室内に濃密な匂いと温気が満ち、蕾から涙の雫が滴り、やがて徐々に開き始める…。
  • 飯野文彦劇場 己の死を知りながらも
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    池袋の安アパートに、その老婆は死してなお住んで、いや棲んでいた。外に出ることも出来ず、ただ壁と一体となって佇む日々。だが、ひとりの女が新たな入居者として引っ越してきたとき、外界のすべてに無関心だった老婆の心に小さな灯がともった。「さみしかったでしょ。ずっと独りで」。古いアパートの一室で、孤独なふたつの魂が触れ合い、一体となる。そして――開かれる新たな目眩く世界! 女神か聖女か淫乱天使か!?
  • 飯野文彦劇場 残存性欲の女
    -
    「やさしいんですね。これから行っても良いですか?」「明日の晩も、来てもいい?」。毎晩、彼女はやってくる。汗にまみれ快楽に溺れ、わたしはもはや彼女なしではいられない。いかに浅ましかろうと、昼も夜も常に彼女のことを求め、胸は高鳴り肉体は火照る。しがない作家に初めて訪れた我が世の春。恋の、いや情欲の炎に激しく生命を燃やして、男はこの世ならぬ悦楽に浸りきる。夜ごとの美女の訪問は無上の愛か、異界の罠か。
  • 飯野文彦劇場 山で魔物と会う
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    怪奇作家を出迎えた旧友は、グロテスクな変貌を遂げていた! 彼の身も心も変えた「尋常ならざる経験」とは? 南アルプスの山奥に棲む、恐るべき魔物との遭遇。貪り食われるよりもおぞましい運命が、彼を待っていた!
  • 飯野文彦劇場 白磁の壷
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    ある日、近づいてきたアブナそうな女が押しつけたのはアヤシげな小冊子。その中には、彼女が実際に遭遇したというUMAの記録が綴られていた。「最大最高のUMA」とは、県立博物館にある壷? 翌日、博物館に行こうと押し掛けてくる女に恐れをなした作家は、先手を打ち自ら博物館を訪れるが…。作家稼業は、またも電波を呼び寄せる。何もかも田中啓文が悪いのか!? 知りたくなくてももう遅い。知らずにすめば幸せだった。あなたの身の周りにもUMAは存在する!
  • 飯野文彦劇場 霊界ラジオ
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    初めて訪れる場末の居酒屋で私の耳に、ジジジ、ジジジジジジジ、とどこからともなく、いや自分の中から雑音が響く。そして、あの男が話しかけてきた。「それはちがうでしょう」――だが、私は気づく。相手は私の心の中の言葉にまで応えている…。気味悪くなった私に、男は小さな“ラジオ”を取り出した。飛んでくる飛んでくる、次々電波が飛んでくる。性格の歪みが磁場となり、毒の電波を引き寄せる。たまった電波で磁場はますます歪み、私の頭を狂わせる!
  • 飯野文彦劇場 老女の怪
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    今日もわたしは、ひとりひなびた田舎へと車を走らせる。新鮮な空気を吸ってリフレッシュするため――ではない。長閑な風景の中、欲情に血を滾らせる私が求めるのは、老女の萎びた皺だらけの肉体。そう、わたしは“老女マニア”なのだ。最初は拒む老婆もやはりひとりの女。本気で押せばなよなよと崩れ落ち、ご先祖様の見ている前であられもない声を張り上げる。孤独な老女に功徳を施すべく、今日も今日とて当てもなく田舎を流すわたしの前に現われたのは?
  • 飯野文彦劇場 AE
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    これから私が話すのは、全編蟻の話なんですよ。ちょいとばかり長くなるかも知れませんが。飲んだくれの父に施設から引き取られ、郊外の山中に建てられた団地に引っ越してきた少年。新築でありながら荒れ果てた、廃墟のような建物は人間の屑の吹き溜まり。内部の探索を始めた少年の前に、やがて悪夢のようにおぞましい光景が! 人形のように美しく、しかし奇妙な少女が語る祠の祟りとは? かつてこの地に、いったい何が封じ込められていたというのか!?
  • 飯野文彦劇場 子を連れて
    -
    1巻220円 (税込)
    傾きかけたボロ家の二階で、腐ったように暮らす私小説作家のなれの果て。その傍らにいつも寄り添うのは、あどけなく健気な幼い子。「俺には六つになる息子がいるが、毎晩●●●●を吸わせてる」ああ、嘘だ嘘なんだ。なぜ優しくしてやれないのか。たった一人の肉親であり、たった一人の話し相手であり、たった一人の父であるのに。世界が彼を責め苛む。それから逃れるために、酒に溺れ妄想に溺れ…。粘り着くような孤独の中で、子供だけが、子供だけが彼の…。
  • 飯野文彦劇場 悲しき父
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    1巻330円 (税込)
    「ここは潰して駐車場にすることになったから、一カ月以内に出ていってくれ。すべては身から出た錆だろうが。てめえが飲んで暴れて、どれだけ苦情が来てることか」「お父さん、気にしないで。どうか、こらえてください」「おまえまで、誰の味方―」。いけない、いけない、この子を巻き込んではいけないのだ。酒が腐らす小宇宙を、陰鬱な苦悩の呻きが澱ませる。行き場のない孤独な作家の魂は、愛するがゆえに責め苛まずにはいられない子供をひたすら彷徨する。
  • 飯野文彦劇場 六本木にて
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    六本木の裏通りにひっそりとそびえ立つ洋館。奇怪な因縁の伝わるその幽霊屋敷に、暑気払い気分で出かけた作家一行。酒で恐怖を紛らせていた私は、二階の窓に不気味な少女の姿を見た。それが恐怖の始まりだった。瞼を閉じれば、その闇の中に浮かび上がる白い少女の姿。電話の向こうで、嗚咽を押し殺して囁く声…。酒が見せる幻覚か、それとも!? 恐怖に怯える私は、憧れの美人作家と手に手を取って、怪異と対峙すべく敢然と再び廃墟に立った!
  • 飯野文彦劇場 栄子狂乱
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    内気で影の薄い、小柄で童顔の女はしかし、凄艶な色気で男の嗜虐心を刺激しながら、いつのまにか主導権を握って思うがままに自らを責めさせる、天性のマゾヒストだった。SM雑誌の編集者すら我を忘れるほどの、巧みで激しく妖艶な痴態。だが、とある田舎の廃屋で撮影をしたときから、何かが変わった。ふたりをさらなる深淵へと引きずり込んでいくのはいったい――?
  • 飯野文彦劇場 笛
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    少しまとまった金が手に入った。昔の文士を気取り、温泉に籠って短篇でも…と、わたしは旅に出た。道を逸れ迷い込んだ山中で、ふと耳にした笛の音が桃源郷へと誘う。木々の生い茂る山奥、霧に覆われてひっそりと佇む温泉宿。妖艶な若女将と、清楚な妹――美貌の姉妹による献身的なもてなし。徐々に点る官能の火は、やがてこの世のものとも思えぬ、奇怪な悦楽の音色を奏で始める! 異才が高らかに吹き立てる、エロティックでグロテスクな異形の音楽。
  • モルグ街で起こらなかったこと または起源の不在
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    1巻330円 (税込)
    第4回創元推理評論賞を受賞。探偵小説研究会会員でもある著者が、史上初の推理小説と言われる『モルグ街の殺人』の著者でもあるアメリカを代表する文豪、エドガー・アラン・ポオの作品に迫る評論!(必要上『モルグ街の殺人』『盗まれた手紙』の犯人やトリックに言及しておりますので、読まれる方はご留意ください)
  • 飯野文彦劇場 茶碗
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    ある日、大学時代の友人山崎と居酒屋で飲んでいると、彼が木箱に入った茶碗を取り出した。趣味で骨董でも始めたのかと思いきや、近所の瀬戸物屋の百円均一で買ったものだという。山崎は、その茶碗にビールを入れて飲んでみて、もしわたしが、驚かなければ今日の飲み代を奢ってやるという。その言葉に背中を押され、古びた茶碗でビールを一気飲みすると、私の体に…。落語にある「はてなの茶碗」ならぬ、「欲情の茶碗」を手に入れ、淫乱地獄に堕ちたわたしは…。
  • 飯野文彦劇場 おのこの缶詰
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    私はある本を読んだことをきっかけに部屋を片付け始めた。不要なものを全部捨ててしまおうと思ったときに、段ボール箱から転げ落ちたのは、直径10cm、高さ15cmほどの缶詰。側面には「おのこの缶詰」と書いてあり、「使用法・ホルマリンに漬けてあるので、何か透明な器にうつして、鑑賞すべし」とも併記されている。思い起こすこと10年ぐらい前、仕事仲間との飲み会で、二次会へと向かう途中に出会った屋台で、半ば無理矢理に買わせられたものだったのだ。瓶を買ってきて、缶を開けて中味を移し替えてみるとそれは…。
  • 飯野文彦劇場 同じ穴の
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    東京から甲府へ帰る電車の中で遭遇した奇妙な男。酒と金と女をエサに、彼に懇願され途中下車した私は、人里離れた山奥の彼の家にたどり着く。そこで私を快く迎え入れてくれた男と、その娘。しかし美しい娘の頬には髭が、そしてお尻には尻尾が!? 狸に化かされていると知りつつも、気づかぬふりをして一夜を過ごした私に、狸親子はあるお願いをするのだが…。狸に化かされる話といえば、どこか滑稽でほのぼのしている…と思われたなら大間違い。鬼才・飯野文彦が、そんな風に物語を終わらせるわけがない! 奇想天外、毒にまみれた展開に思わず中毒となるか!?
  • 飯野文彦劇場 友人の妹と…
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    大学時代からの友人の義弟・佐川が失踪して一ヵ月。ある日、佐川の消息がわかったらしいという報告をうけた藤沢は、とても正気ではいられなかった。なぜなら、佐川は藤沢がその手で…。“鬼畜”という言葉がこれほどぴったりな作品があるだろうか? やがて非道ぶりを尽くした藤沢の耳に届いた怨嗟の声…。戦慄の結末までノンストップでお届けする奇作!! しかし、因果応報にしても酷すぎます…。
  • 飯野文彦劇場 再会
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    その夜、私は落語を聞くために三鷹へと足を運んでいた。会が終わり、駅へと向かった私は、帰りの電車で楽しむために、缶ビールや缶酎ハイを買い込む。三鷹駅でビールを一本開け、立川行きの電車に乗り込んで缶酎ハイに手をつける。すると、段々数が減っていく乗客の中に、恩人の先輩作家Nさんの姿を見つけた。しかし、実はNさんは半年前に病気で他界しているので、ここにいるわけがない。そうは思いつつも、あまりに似ているたたずまいに、酒の酔いも手伝って、思わず私は彼に話しかけてしまうのだが…。
  • 飯野文彦劇場 Mさんの父
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    近所に住むKさんが訪ねてきたのは、ゴールデンウィーク間近となった四月の下旬、穏やかな平日の昼下がりのことだった――。「昨日の夜、河原にMさんのオヤジさんがいたんだよ」。まさか。だって…。「しゃがれた声で『息子を呼んできて欲しいんだが』って言うんだよ」。でも、Mさんのオヤジさんは半年ほど前に…。飲み仲間の奇態な言動に正気を疑いつつも、断り切れずに深夜、Kさんに連れられて問題の河原に向かった私だったが――。
  • 薔薇の残り香を嗅げ
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    核戦争でもなく、原発の事故でもなく、核燃料輸送トラックの交通事故による「クラッシュ」が首都圏を襲う。首都の中枢機能は失われ、「外」の世界は限りなく荒廃するが、「内」の世界、「ゾーン」と呼ばれる領域は、完全に死に絶えたわけではなかった…。近未来の荒廃した世界を舞台に、賞金稼ぎの男を主人公にしたハードボイルド・シリーズの第二話。彼が追いこまれた殺しの回廊は、どこまで続くのか?
  • 飯野文彦劇場 霊の笑い
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    小さな祠がある曲がり角に、今日も狂気を呼び起こす忌まわしい笑いが谺する。ボクと早智枝は幼い頃から、その笑い声に、そしてそれが生む狂気と死に魅せられてきた。「幽霊の笑い声よ。幽霊が相手を見て、こいつならって思ったときに笑うみたい」。やがて、狂気が爆発する現場を目の当たりにしたとき、ふたりの中でも何かが弾けた。他人の狂態を覗き見ながら、自分たちもまた繰り広げる痴態。歪んだ刺激の行き着く先には? 曲がり角には気をつけろ!

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