国内小説 - 新潮社作品一覧

  • アイガー北壁・気象遭難
    3.4
    取りつき点から頂上まで1800メートルの巨大な垂直の壁に挑んだ2人の日本人登山家の実名小説『アイガー北壁』。2人のパーティーが白馬岳北陵で吹雪にあい、岩陵から姿を消す『気象遭難』。冬期の富士山で、不吉な予測が事実に変って主人公の観測所員が滑落死する『殉職』。他にヨーロッパ・アルプスを舞台にした『オデットという女』『ホテル氷河にて』など、山岳短編の傑作全14編を収録する。

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  • 愛さずにはいられない(新潮文庫)
    4.0
    1巻1,155円 (税込)
    1960年代後半。芳郎は東京で下宿生活を送る高校生だ。酒や煙草、夜遊びに耽る毎日だが、その心には母への憎悪が深く影を落としていた。童貞を捨てた彼は性にのめりこみ、やがて運命の女、由美子に出会う――。無軌道な少年時代と実母との確執とを赤裸々に描き、「この作品こそ自分自身」と著者に言わしめた唯一の自伝的作品であり、遺された数多の作品世界の原点ともいうべき特別な長編小説。(解説・小池真理子)
  • 愛する人達
    3.6
    母の死後、母の初恋の人、佐山に引きとられた雪子は佐山を秘かに慕いながら若杉のもとへ嫁いでゆく――。雪子の実らない恋を潔く描く『母の初恋』。さいころを振る浅草の踊り子の姿を下町の抒情に托して写した『夜のさいころ』。他に『女の夢』『燕の童女』『ほくろの手紙』『夫唱婦和』など、円熟期の著者が人生に対し限りない愛情をもって筆をとった名編9編を収録する。

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  • 愛ってなに?
    -
    1巻715円 (税込)
    “愛ってなんでしょうか”中年に達した男の心にふとよみがえる若い女の声……。男女の機微とサラリーマン生活の哀歓を鮮やかにとらえた表題作はじめ、『罐蹴り』『鳩胸の鳩』『葛の花』等、さまざまな愛のかたち――そのはかなさ、にがさを、優しく透明なユーモアに包む珠玉の名編15選。『翡翠の色』ほか本書初収録の作品を加えて、短編小説の名手山口瞳の全貌を明らかにする。
  • あいつと私
    4.0
    堅実な家庭に生れ育ち、柔軟な感受性と豊かな包容力とにめぐまれた浅田けい子と、暗い出生の秘密に加え変則的かつ無秩序な家庭生活の影響から、ニヒリスティックな性格の持ち主となった黒川三郎。――この、あまりにも対照的な“あいつと私”を中心に、現代の学生風俗と明るい学園風景、そして、若い愛情の波に洗われる若者たちの体験を爽やかなタッチで活写する、石坂文学の傑作。
  • 愛と死の書
    -
    これは、三つの親しい者の死にめぐりあった女性の、やり場のない愛情の悲しみを書いたものである。作者は「この長編小説ほど喜びと悲しみをもって書いた小説は私にはない。この小説ほど愛着をもつ小説も、他にない」とこの作に寄せる思いを語っているが、何人にも共通な感情のうちに、深刻な愛情の問題を扱っている点に、本書の高い評価が存在する。日中戦争さ中の昭和14年刊。
  • 愛と資本主義
    4.0
    1巻1,320円 (税込)
    新宿のホストクラブ-それは金に飢えた男と愛に飢えた女が、狂ったダンスを踊る異空間、ある種の絶望的な「愛」の形。夜毎繰り広げられる狂宴を、妖しい月夜の明かりで照らし出した長編小説。
  • 愛と知と悲しみと
    -
    作者がパリ留学時代に逗留した、アナーキスト一家として高名なルクリュ家の人々との、三十年にわたる友情を描いた自伝的作品である。ことに、幼時より音楽的才能を嘱望されながら、第一次大戦で指を傷め、ピアニストとしての将来を失った、ジャック・ルクリュの半生が中心に描かれた本編は、戦争、革命、愛と死をめぐる現代人のテーマを掘り下げた、静かなる慟哭の書である。
  • 愛なんて嘘(新潮文庫)
    4.3
    恋人の家に転がり込んできたのは、とっくの昔に離婚したはずの彼の元妻だった。ひとつの場所にとどまることのできない女の存在が二人の関係を変える(「夜を想う人」)。一度は別れを選び、それぞれが新しい伴侶を見つけ、子供も授かった元夫婦の約束とは(「二人のプール」)。裏切りに満ちたこの世界で、信じられるのは私だけ? 平穏で幸福な愛の“嘘”に気づいてしまった男女を繊細な筆致で描く六篇。
  • あいにくあんたのためじゃない
    3.4
    1巻1,760円 (税込)
    過去のブログ記事が炎上中のラーメン評論家、夢を語るだけで行動には移せないフリーター、もどり悪阻とコロナ禍で孤独に苦しむ妊婦、番組の降板がささやかれている落ち目の元アイドル……いまは手詰まりに思えても、自分を取り戻した先につながる道はきっとある。この世を生き抜く勇気がむくむくと湧いてくる、全6篇。
  • あいにくあんたのためじゃない 無料お試し版
    無料あり
    4.0
    1巻0円 (税込)
    過去のブログ記事が炎上中のラーメン評論家、夢を語るだけで行動には移せないフリーター、もどり悪阻とコロナ禍で孤独に苦しむ妊婦、番組の降板がささやかれている落ち目の元アイドル……いまは手詰まりに思えても、自分を取り戻した先につながる道はきっとある。 この世を生き抜く勇気がむくむくと湧いてくる、全6篇を収録。 『BUTTER』が大きな話題を呼び、社会の変化を敏感に掬い取りながら第一線を走り続けてきた作家の2024年3月新刊から、「めんや 評論家おことわり」を特別無料配信します。 *本稿は校了前のデータをもとに作成しています。そのため、刊本とは一部内容が異なる場合がございます。予めご了承ください。

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  • 愛に乱暴(上)(新潮文庫)
    3.6
    1~2巻539円 (税込)
    初瀬(はせ)桃子は結婚八年目の子供のいない主婦。夫・真守の両親が住む母屋の離れで暮らし、週に一度、手作り石鹸教室の講師をしている。そんな折、義父の宗一郎が脳梗塞で倒れた。うろたえる義母・照子の手伝いに忙しくなった桃子に、一本の無言電話がかかる。受話器の向こうで微かに響く声、あれは夫では? 平穏だった桃子の日常は揺らぎ始め、日々綴られる日記にも浮気相手の影がしのびよる。
  • 愛の年代記
    4.2
    かくも激しく美しく恋に身をこがし、生きて愛して死んだ女たち――歴史資料の片隅に、わずかに残されたその華麗な生の証しをもとに、欲望・権謀の渦巻くイタリアの中世末期からルネサンスにかけて、《恋の歓び、哀しみ、憤り》など、さまざまな愛のかたちを抽出する。『大公妃ビアンカ・カペッロの回想録』『ドン・ジュリオの悲劇』など、胸ときめく恋の物語9編を収録。
  • 愛のひだりがわ(新潮文庫)
    4.0
    幼いとき犬にかまれ、左腕が不自由な小学六年生の少女・月岡愛。母を亡くして居場所を失った彼女は、仲良しの大型犬デンを連れて行方不明の父を探す旅に出た。暴力が支配する無法の世界で次々と事件に巻き込まれながら、不思議なご隠居さんや出会った仲間に助けられて危機を乗り越えていく愛。近未来の日本を舞台に、勇気と希望を失わずに生きる少女の成長を描く傑作ジュヴナイル。
  • 愛のむこう側
    5.0
    1950年夏、11年ぶりにパリを訪れた紀川紗良の胸裏に、青春の日々がよみがえってきた――16歳での結婚と離婚。その傷心を束の間のフランス留学に癒して美しい娘時代をとりもどし、新しい友情と恋が芽ばえてくる。明日のない激しい恋愛。そして戦争に、恋人を夫を奪われたこの一人のブルジョワ娘が、やがて自由と平和に目覚め《自立した女》に成長するまで。自伝的長編小説。
  • 愛慾・その妹
    -
    自分の眼となっている妹を手放すことに怯える貧しく盲目の作家広次が、世間からも人間からも疎外されていく悲劇を描いた「その妹」。兄と妻が通じたことで人間不信に陥る画家英次の苦悶の心理を描く「愛慾」。肉体へのコンプレックスが招く孤独と暗い運命に翻弄されながらも、そこからの密かな救済を暗示させる、作家の個性が光る2つの戯曲。
  • 愛より速く
    3.4
    このまま私の中にいて。もっと深く突き刺してよ――エロスの王道を歩む23歳の女子大生・“斎藤綾子”のセックス遍歴は、売りに援交、SM、輪姦、乱交、不倫、同性愛……。時に髭もないツルツルのボーヤを舐めまくり、時にフツーの恋がしたくてセックスを我慢してみたりする。だって、私は男が好き。特にペニスは大好物――。「処女を装うとき」「追い詰めて、犯して」「十五歳で輪姦されて」「オナニーの秘儀」など、全19編を収録した、女の子のための超過激なエッチ小説。

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  • あ・うん
    3.3
    喧嘩をしても、まるで「あ・うん」の狛犬のように息が合い離れない男の友情――門倉修造と水田仙吉は、20年来の友達だが、見かけも気性も財力も正反対ときている。門倉は仙吉の妻の秘めたる色香をひそかに愛している。そんな大人の関係を不思議な思いで見ていた仙吉の娘さと子の恋人に召集令状がきた……。昭和10年代の愛しい一途な日本人像を浮彫りにする著者最後のTVドラマ。

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  • 蒼い乳房
    3.0
    身体は日ごとに成熟してゆく。胸も豊かに色づいてきた。だが、彼女は外の世界をまだ恐れていた。ロシアの血をひくその容貌が、好奇の視線を集めてしまうから。薫、あなたは恋を知らぬ少女だった。『海猫』を甦らせた表題作をはじめ、現在まで描いてきた短編より選びぬいた、オリジナル作品集。純粋さ、喪失感、静謐な喜び、癒えぬ哀しみ……。恋愛にはきっと、人生の全てがある。
  • 青い鳥
    4.6
    1巻737円 (税込)
    村内先生は、中学の非常勤講師。国語の先生なのに、言葉がつっかえてうまく話せない。でも先生には、授業よりももっと、大事な仕事があるんだ。いじめの加害者になってしまった生徒、父親の自殺に苦しむ生徒、気持ちを伝えられずに抱え込む生徒、家庭を知らずに育った生徒──後悔、責任、そして希望。ひとりぼっちの心にそっと寄り添い、本当にたいせつなことは何かを教えてくれる物語。
  • 青い光
    -
    津田信雄と園子は共働きの貧しい夫婦だが、平凡な生活の中にささやかな幸福を見出している。信じ合う若い二人の間にひびが入り始めたのは、園子の勤める病院に流行作家の田辺が入院してからだった。田辺はそのころ、人妻の愛人と同棲していた。二組の男女の愛憎のもつれは意外な方向へと展開して行く──。〈現代人は愛する者のために命を棄てることができるか〉を問う長編恋愛小説。
  • 蒼い描点
    3.9
    若い編集者椎原典子は、女流作家村谷阿沙子の原稿催促に出向いた箱根で、顔見知りのフリーライターの変死にぶつかる。死者と村上女史に謎の繋がりを感じた典子と同僚崎野は、やがて女史には代作者がいたという確信を持つ。女史の夫と女中の相次ぐ失踪、女史の精神病院への逃避、そして第二の殺人と、事件は意外な方向へ発展する……。心理の微妙な起伏と情景の描写が光る推理長編。

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  • 蒼き狼
    4.0
    1巻781円 (税込)
    風の如く蹂躙せよ。嵐の如く略奪せよ。世界史上未曾有の英雄、成吉思汗即位八百年! 遊牧民の一部族の首長の子として生れた鉄木真=成吉思汗(テムジン=チンギスカン)は、他民族と激しい闘争をくり返しながら、やがて全蒙古を統一し、ヨーロッパにまで及ぶ遠征を企てる。六十五歳で没するまで、ひたすら敵を求め、侵略と掠奪を続けた彼のあくなき征服欲はどこから来るのか?――アジアの生んだ一代の英雄が史上空前の大帝国を築き上げるまでの波瀾に満ちた生涯を描く雄編。
  • 青空チェリー
    3.7
    ベッドの上でからみあうふたりの脚。きれいに塗られたパールピンクの爪。その足指が、ときおりぎゅうとねじ曲がる。開く。曲がる。開く。……。予備校の隣にラブホが建った。以来、あたしは屋上から、のぞきみちゃんな日々。ゆるしてちょうだい、だってあたし十八歳。発情期なんでございます。ある日、誰も来ないはずの屋上に男の子がやってきた――!! それ以来、あたしは彼と、“一緒に”のぞいて、“お互いに”オナニーすることに……。栄えある第1回R-18文学賞・読者賞受賞の表題作を収録した、女の子のための3つのストーリー。

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  • 青にまみえる
    3.0
    1巻1,408円 (税込)
    酒にではない、お茶に酔ったのだ。中国有史五千年のはるか以前より、福建省の深山に自生し続ける、大地自然の気をたっぷり吸い込んだ悠久の茶。この、水に次ぐ命の飲み物に酔った時から、「私」の運命はゆったりと動き始め……。混迷を深める人の世の底なしの泥沼に、疲れはてた心と体を温かくうるおす、大人のための小説。

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  • 蒼猫のいる家(新潮文庫)
    3.5
    家庭で居場所を失ったキャリアウーマンが年下の男と出会って……。意外な成り行きに大人の孤独がにじむ表題作の他、未体験の快感と美容効果を保証する、謎の無脊椎動物が巻き起こす騒動を描く「ヒーラー」、借金まみれのカメラマンが山奥で雌犬の“ヒモ”となる「クラウディア」など。濃厚な物語世界に、動物たちの凜々しさや人間の愚かさを凝縮した絶品の五篇。『となりのセレブたち』改題。(解説・田中兆子)
  • 青べか物語
    4.1
    根戸川の下流にある、うらぶれた裏粕という漁師町をふと訪れた「私」は、“沖の百万坪”と呼ばれる風景が気にいり、ぶっくれ船“青べか”をテもなくかわされてそのままこの町に住み着いてしまう。その「私」の目を通して、町の住人たちの生活ぶりを、巧緻な筆に描き出した独特の現代小説。

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  • あかあかや明恵
    4.0
    1巻2,090円 (税込)
    武家に生まれた明恵は、八歳で父母を亡くし、十六歳で出家。その学才を見込んだ東大寺、神護寺からの要請を断わる一方、釈迦のご遺誡を体現するために右耳を切り落としさえした。承久の乱で朝廷軍をかくまったが、その教えに打たれた幕府軍の総大将・北条泰時が後に帰依したことでも知られる、華厳宗中興の祖を描く傑作歴史長篇。
  • 赤い星々は沈まない
    NEW
    -
    1巻1,870円 (税込)
    老人介護施設のマドンナ・キヌ子は、いまだ枯れずに「女」を振りまいている。夫とのセックスレスに悩む看護師のミサは、介助しながらその言動を複雑な思いで見ているが……。今の大人の女性たちが抱える「ままならなさ」を真っ向から、時にユーモアも交えて描いた「女による女のためのR-18文学賞」大賞作家デビュー作。
  • 朱く照る丘―ソナンと空人4―(新潮文庫)
    3.8
    1巻649円 (税込)
    輪笏(わしゃく)の領主としての未来を断たれ、ソナンは祖国トコシュヌコで都市警備隊の一員として勤勉に働く。五年の月日を経て士官へと昇進し、父シュヌア将軍が暮らす生家へと戻ることに。弓貴(ゆんたか)での日々は、一夜の夢だったのか――。だが、この国に常駐する弓貴の使者の名前を知り、ソナンは激しく動揺する。ひとりの青年とふたつの国の運命が絡み合う、激動のクライマックス。奇蹟の英雄物語、堂々完結!(解説・瀧井朝世)
  • アカペラ(新潮文庫)
    3.8
    身勝手な両親を尻目に、前向きに育った中学三年生のタマコ。だが、大好きな祖父が老人ホームに入れられそうになり、彼女は祖父との“駆け落ち”を決意する。一方、タマコを心配する若い担任教師は、二人に振り回されて――。奇妙で優しい表題作のほか、ダメな男の二十年ぶりの帰郷を描く「ソリチュード」、独身の中年姉弟の絆を見つめた「ネロリ」を収録。温かくて切ない傑作小説集。
  • 明るい夜に出かけて(新潮文庫)
    4.1
    富山(とみやま)は、ある事件がもとで心を閉ざし、大学を休学して海の側の街でコンビニバイトをしながら一人暮らしを始めた。バイトリーダーでネットの「歌い手」の鹿沢(かざわ)、同じラジオ好きの風変りな少女佐古田(さこだ)、ワケありの旧友永川(ながかわ)と交流するうちに、色を失った世界が蘇っていく。実在の深夜ラジオ番組を織り込み、夜の中で彷徨う若者たちの孤独と繋がりを暖かく描いた青春小説の傑作。山本周五郎賞受賞作。(解説・朝井リョウ)
  • 秋津温泉
    -
    この秋津の町へ私は十七の初夏、伯母に連れられはじめてやって来た……。自然豊かな秋津の温泉宿を舞台に繰り広げられる、激しくも切ない愛の日々を描ききった作品。1962年に岡田茉莉子と長門裕之が主演し、吉田喜重監督の手で映画化された永遠の名作。
  • 商う狼―江戸商人 杉本茂十郎―(新潮文庫)
    3.7
    江戸の金の流れを握る。それはお上を動かす力になる――。甲斐の農家から出て江戸で名を挙げた茂十郎は、永代橋の崩落事故で妻子を失ってしまう。だが悲嘆を糧に、茂十郎は立ち上がる。大胆不敵な資金集め、流通の構造改革、旧弊の刷新。すべては江戸の繁栄のために――。既存の枠を超えた発想と、強引なまでの辣腕で「狼」と畏怖され、歴史の闇に消えた謎の経済人を描く。新田次郎賞受賞。(解説・本郷和人)
  • アクシデント・レポート
    4.3
    1巻2,728円 (税込)
    御巣鷹山の悲劇は空前絶後ではなかった。しかも今度は一機だけでなく、ブラックボックスが見つからず真相は闇に覆われる。事故関係者と遺族、生存者の証言から浮かび上がる人間模様、政府と企業の体たらく、文化芸能、沖縄・原発の問題、そして隠されたこと。刊行自体が「アクシデント」な劇薬小説。
  • 悪女について
    3.7
    《自殺か、他殺か、虚飾の女王、謎の死》――醜聞(スキャンダル)にまみれて謎の死を遂げた美貌の女実業家富小路公子。彼女に関わった二十七人の男女へのインタビューで浮び上がってきたのは、騙された男たちにもそれと気付かれぬ、恐ろしくも奇想天外な女の悪の愉しみ方だった。男社会を逆手にとり、しかも女の魅力を完璧に発揮して男たちを翻弄しながら、豪奢に悪を愉しんだ女の一生を綴る長編小説。
  • 芥川症
    3.6
    父の死因とは一体何だったのか? 食い違う医師・看護師の証言。真相を求め、息子はさまよう(「病院の中」)。多額の募金を得て渡米、心臓移植を受けた怠け者の男と支援者たちが巻き起こす悲喜劇(「他生門」)。芸術を深く愛するクリニック院長と偏屈なアーティストが出会ったとき(「極楽変」)。芥川龍之介の名短篇に触発された、前代未聞の医療エンタテインメント。黒いユーモアに河童も嗤う全七篇。
  • あくびノオト
    -
    1巻506円 (税込)
    夢想の世界に遊ぶ主人公の、現実とのくいちがいに生ずる悲哀をユーモラスに描いて苦い笑いを誘う『第三惑星ホラ株式会社』『少年と狼』『活動写真』等の物語。他に、なまけものやホラ吹きへの共感、沖縄紀行、医学生時代の思い出や精神科医としての体験、子供マンガへの愛着と無理解な大人への抗議、等々、あわただしい現代社会への批評の眼を、爽やかな笑いに包んだエッセイを収める。
  • 悪魔のいる天国
    3.8
    1巻550円 (税込)
    ふとした気まぐれや思いつきによって、人間を残酷な運命へ突きおとす“悪魔”の存在を、卓抜なアイデアと透明な文体を駆使して描き出すショート・ショート36編を収録する。人間に代って言葉を交わすロボットインコの話『肩の上の秘書』未来社会で想像力にあふれた人間を待ち受ける恐怖を描く『ピーターパンの島』など、日常社会、SFの世界、夢の空間にくりひろげられるファンタジア。
  • 悪魔の羽根
    3.5
    日本の銀行マンと結婚したフィリピン女性が転勤で、九州から新潟へ移った途端に経験した、雪国という未知の空間。ふさいだ気分が周囲への憎悪に変わる様子を描いた表題作「悪魔の羽根」。早春、恋愛中の女性が突然、姿を消した謎に季節特有の悩みを絡めた「はなの便り」など、四季の風景を織りまぜながら、男女の心模様、友人同士の心のズレを浮き彫りにする。ちょっぴり恐い7つの物語。
  • アケルダマ
    4.0
    1巻1,144円 (税込)
    キリスト再臨のときが訪れた! 古(いにしえ)より長らえてきた使徒が日本に眠る主のもとに集結。その目的は世界を地獄へ変えること――?! 異能力を持つ女子高生転毘巴(ころびともえ)は運命に従い、光と闇の決戦に挑む。彼女を助けるのはオカルトマニアの青年、沢田瞬。謎めく生徒会、頻発する吸血事件、イエス渡来伝説、そして“背信者”ユダの真実。伝奇ジュヴナイルの熱気と興奮、今ここに完全復活。
  • 朱を奪うもの
    -
    朱の色を侵蝕する紫にも似た、女の成熟の秘密……。性のめざめから、冒険的恋愛の嵐たる青春をへて、見合い結婚の初夜にいたるひと筋の道程で、女の中に着実に形成されてゆく、妖しい美しさや恐ろしさを、あたかも肌に感じさせるかのように、明確な筆にとらえてゆく。冷然と凝視し、大胆で香り高い自伝的長編小説であり、発表されるや、ひときわ当時の文壇の注目を集めた作品。
  • あこがれ
    3.5
    1巻1,650円 (税込)
    ――そうか、もう、あっちにいるのか。この飛行機は、棲み馴れたあの世から、これから生きていくこの世に着いたということか――。飛行機であの世へ到着したという設定の「星座のひとつ」。ハアちゃんと呼ばれた子どもの頃にまだ見ぬ町や人に憧れた記憶を描いた表題作など17篇。99歳で大往生した著者の最後の小説集。
  • あこがれ(新潮文庫)
    3.9
    おかっぱ頭のやんちゃ娘ヘガティーと、絵が得意でやせっぽちの麦くん。クラスの人気者ではないけれど、悩みも寂しさもふたりで分けあうとなぜか笑顔に変わる、彼らは最強の友だちコンビだ。麦くんをくぎ付けにした、大きな目に水色まぶたのサンドイッチ売り場の女の人や、ヘガティーが偶然知ったもうひとりのきょうだい……。互いのあこがれを支えあい、大人への扉をさがす物語の幕が開く。
  • 朝顔の日
    3.8
    1巻1,232円 (税込)
    その日に死んでしまふ気がするのです──。昭和十六年、青森。凜太はTB(テーベ)を患い隔離病棟で療養する妻を足繁く見舞っている。しかし病状は悪化、ついには喉の安静のため、若い夫婦は会話を禁じられてしまう。静かに蝕まれる命と濃密で静謐な時。『指の骨』で新潮新人賞を受賞した大注目作家のデビュー第二作。芥川賞候補作。
  • 朝が来るまでそばにいる(新潮文庫)
    3.5
    火葬したはずの妻が家にいた。「体がなくなったって、私はあなたの奥さんだから」。生前と同じように振る舞う彼女との、本当の別れが来る前に、俺は果たせなかった新婚旅行に向かった(「ゆびのいと」)。屋上から落ちたのに、なぜ私は消えなかったのだろう。早く消えたい。女子トイレに潜む、あの子みたいになる前に(「かいぶつの名前」)。生も死も、夢も現(うつつ)も飛び越えて、こころを救う物語。(解説・名久井直子)
  • 浅草紅団
    -
    昭和初期の浅草を、その時代の渦の中にありながら観察しつつ書かれた小説である。おそらくは著者自身が接したのであろう、界隈に集まる「不良」たちを中心に、浅草でなくてはあり得ないさまざまな現実の事象を丹念緻密に描く、貴重な時代の記録。

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  • 浅草鳥越あずま床
    -
    下町浅草鳥越に、生れ育って六十年、幼なじみの六人の、いずれ劣らぬ老悪童、寄ればたちまち持ち上がる、思いもかけぬ珍事件。色と欲には目もくらみ、甘い話に乗せられて、いつも騙されコケにされ、それでも懲りないくじけない。恥も喜びも分ちあい、清く正しく生きて……いるかどうかは知らないが、情あふれるこの男たち、笑ってやって下さい、しめて八編連作滑稽譚。
  • 浅草日記
    -
    三味線の棹よりも脆く折れそうな門付女お染、傷ましい朗らかさを持つ妹千枝子、鉄火な姉おれん、裏町に住む3人姉妹のいじましいまごころを綴る『浅草の姉妹』。そのほか「虹」「浅草日記」「浅草の九官鳥」の計4編を収録。

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  • 朝ごはんぬき?
    3.8
    私、明田マリ子、ハイ・ミス。OLのとき年下の男に失恋して、いまは有名な女流作家、秋本えりか先生の家でお手伝い兼秘書兼イヌの散歩係。月末になると、いろんなタイプの編集者が原稿催促におしかけてくるが、なかでも美青年編集者鈴木ノボルクンがくると、先生は仕事そっちのけでウロウロソワソワ……。人気女流作家の私生活と、ハイ・ミスの複雑な心境をユーモラスなタッチで描く。
  • 朝日のようにさわやかに
    3.7
    1巻671円 (税込)
    葬式帰りの中年男女四人が、居酒屋で何やら話し込んでいる。彼らは高校時代、文芸部のメンバーだった。同じ文芸部員が亡くなり、四人宛てに彼の小説原稿が遺されたからだ。しかしなぜ……(「楽園を追われて」)。ある共通イメージが連鎖して、意識の底に眠る謎めいた記憶を呼び覚ます奇妙な味わいの表題作など全14編。ジャンルを超越した色とりどりの物語世界を堪能できる秀逸な短編集。
  • あした来る人
    -
    1巻880円 (税込)
    大貫克平は、山と妻とどちらが大切かと聞かれて、迷わず「山」と答えるほど登山に打ち込んでいる。夫の内面生活からはじき出された妻の八千代は、カジカの研究に明け暮れる曾根二郎に心をひかれていく。一方、克平も美貌のデザイナー山名杏子と恋愛関係に陥るが、杏子は克平が自分の庇護者の婿であることを知る……。あしたの可能性を抱きながら、今日を生きる人々を爽やかに描く。
  • あしたの官僚
    4.0
    1巻2,090円 (税込)
    厚生労働省キャリア技官の松瀬は、個性的過ぎる部下や同僚の尻拭いに奔走しながら、国会議員、関係省庁との板挟みに苦悶する日々を送っていた。そこに突如、新潟県で謎の公害病が発生。孤立無援のまま原因究明に追われるが、ある謀略により「忖度官僚」として国民の非難の的となり……。切実すぎる新時代の官僚小説。
  • 明日のマーチ
    4.3
    解雇。それは張り紙一枚の出来事だった。ある日突然、僕らは年収200万円の生活からも見捨てられた。どうしよう。どこに行って、何をする?──歩く。それが、僕らの決断だ。クビを切られたカメラ会社がある山形から、東京へ。600キロ。4人で始まった行進は、ネットを通じて拡散し、メディアを賑わし、遂には政府が動き出す。僕らの青春を等身大(ありのまま)に描いた、傑作ロードノベル。
  • あしたの名医―伊豆中周産期センター―(新潮文庫)
    4.5
    産婦人科医の北条衛は、伊豆中央病院に異動を命じられた。予期せぬ都落ち、しかも鬼の老教授が医局を支配していると聞く。着任早々、その教授と手術を行うはめになった衛。彼は、地域の命の砦を守る重責を感じつつ、個性ゆたかな先輩医師に学びながら成長してゆく。激務に疲れた衛に活力を与えるのは、伊豆半島の海と山の幸だった。現役医師が描く、興奮と感動の医学エンターテインメント。(解説・杉江松恋)
  • 阿修羅ガール(新潮文庫)
    3.6
    アイコは金田陽治への想いを抱えて少女的(ガーリッシュ)に悩んでいた。その間に街はカオスの大車輪! グルグル魔人は暴走してるし、同級生は誘拐されてるし、子供たちはアルマゲドンを始めてるし。世界は、そして私の恋はどうなっちゃうんだろう? 東京と魔界を彷徨いながら、アイコが見つけたものとは――。三島由紀夫賞受賞作。受賞記念として発表された短篇「川を泳いで渡る蛇」を併録。
  • 阿修羅草紙(新潮文庫)
    3.7
    1巻1,100円 (税込)
    最高の忍びタッグ誕生! 無駄な殺しはしないくノ一・すがると、手段を選ばない伊賀忍者・音無。正反対の考えを持つ二人は奪われた「呪いの巻物」を取り返すため、陰謀渦巻く京の都に向かう。伝説の忍びとの死闘や大名家への潜入を通して、徐々に真相に近づいていく二人。そして明かされた驚愕の真実と二人の想いとは……。任務のために陰で命を捧げた忍者たちを描く一気読み必至の傑作長編。
  • 阿修羅のごとく
    3.9
    阿修羅。三面六臂を有するインドの魔族。猜疑心強く互いに事実を曲げ、他人の悪口を言いあう……。妻子ある男を愛人に持つ長女、夫の浮気に悩む次女、オールドミスで潔癖性の三女、売れないボクサーと同棲中の四女。阿修羅のイメージにのせて、四人姉妹のそれぞれの人生を、繊細に、辛辣に、そして限りなく温く描き出す、悲しくも愛すべき物語。著者のシナリオにおける代表的作品。

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  • 亜シンメトリー
    3.7
    1巻1,815円 (税込)
    バスの中で知り合った女性から、ゲームを持ちかけられた亜樹。シンメトリーな文字に強いこだわりを持つ彼女の人生に興味を持ち始めるが、何度か会う内、その言動にどこか違和感を覚え……(「亜シンメトリー」)。張り巡らされた緻密な仕掛けに気づいた時、世界は突然、姿を変える。めくるめく謎と驚きに満ちた全四篇。
  • アスクレピオスの愛人
    3.7
    感染症の最前線で働く、WHOのメディカル・オフィサー、佐伯志帆子。世界中を飛び回るその凛々しい姿は、後進の医師や医学部に通う一人娘の憧れの的であった。だが仕事を離れた彼女は、奔放に恋を楽しむ、どうしようもなく妖艶な女――。医術の神・アスクレピオスに、数多の男たちに、狂おしいほど求められる美しき女神が、本当に愛したのは……。林真理子が初めて挑んだ医療小説。
  • あすなろ物語
    3.9
    1巻572円 (税込)
    天城山麓の小さな村で、血のつながりのない祖母と二人、土蔵で暮らした少年・鮎太。北国の高校で青春時代を過ごした彼が、長い大学生活を経て新聞記者となり、やがて終戦を迎えるまでの道程を、六人の女性との交流を軸に描く。明日は檜になろうと願いながら、永遠になりえない「あすなろ」の木の説話に託し、何者かになろうと夢を見、もがく人間の運命を活写した作者の自伝的小説。
  • 阿蘇・長崎「ねずみ」を探せ
    2.7
    生放送直前、女性旅行ライターがテレビ局内で殺された! 同じく出演予定だった男が失踪。姿を消したのは、悠々自適に暮らしていた、かつての有名カーデザイナー、秋山清一郎だ。事件の鍵を求め、十津川警部と亀井刑事は、秋山夫妻が住む阿蘇へ。しかし二人は不在。そして秋山のパソコンには奇妙な文章が残されていた。十津川の推理が封印されていた幾つもの“過去”を甦らせる。
  • あたしたち、海へ(新潮文庫)
    4.0
    有夢と瑤子と海は、いつも好きなアーティストの話で盛り上がる親友同士。しかし私立女子中学校に進学後、関係が一変する。クラスを仕切る女子に反発した海に対し、報復のいじめが始まったのだ。有夢と瑤子も次第に抗いきれなくなり――。海の母親、担任ら、大人の視点からも浮かび上がる理不尽な社会の「仕組み」。心を削る暴力の輪に組み込まれ、もがく全ての人に、一筋の光を照らす長編小説。(解説・鴻巣友季子)
  • 新しい十五匹のネズミのフライ―ジョン・H・ワトソンの冒険―(新潮文庫)
    4.0
    1巻1,045円 (税込)
    大銀行の地下金庫から、トンネルを掘って金貨を盗み出そうとした「赤毛組合」事件。ホームズの名推理で一件落着に見えたのだが、裏にはどんでん返しの計画が潜んでいた! 事件後、薬物を乱用するホームズは頼りにならず、途方に暮れるワトソンには大事件が降りかかる。堅牢な刑務所から囚人はなぜ消えたのか、「新しい十五匹のネズミのフライ」の謎とは。巨匠が贈るパスティーシュの傑作。(解説・日暮雅通)
  • 新しい天体
    -
    1巻385円 (税込)
    予算の残りを食いつぶすために生れた《景気調査官》。彼の役目は文字通り各地の食物を試食し、景気に関する“実感的レポート”を作製することにある。銀座のたこ焼きをふり出しに、知床半島から鹿児島まで、あり余る“取材費”にものを言わせて、主人公はただひたすら食いまくる……。官僚主義への痛烈な諷刺を軸に、一瞬にして消え去る美味の本質を見事に捉えた異色の食味小説。
  • 当り屋ケンちゃん
    4.0
    プロの当り屋、赤木圭一郎は、今を去ること十年前、当り屋専門学院の講師、当り屋文左衛門が言った言葉を思い出した。「幻の少年カスパー・ハウザーを見た日、あんたは当り屋をやめなあきまへん」。そして圭一郎は見た、幻の少年が、車の前へ身を躍らせるのを……。場外馬券売り場のガード下からアンスバッハのしらゆきつもる公園へ。母と子の愛憎が交錯する悲しくも美しい妄想の純文学。戯曲「小指の思い出」原作。
  • 仇討検校(新潮文庫)
    3.3
    1巻1,100円 (税込)
    鍼灸道を確立し、五代将軍綱吉の御殿医にまで登りつめた鍼聖・杉山検校。じつは、贋者だった!? 一度でも人を斬り殺したものは、血塗られた仇討の連鎖からは逃れられないのか。怨念の呪縛に囚われ、自らを偽り、仕込み杖を携え盲目を装い、因果の大渦から逃げ続けた恩讐の彼方に、その目が見たものは――。目眩くほど壮絶な八十五年の生涯を描く、一気読み必至の大作。『見返り検校』改題。(解説・細谷正充)
  • あだし野
    4.5
    頽廃の淵にありながら、一顆のレモンのように涼しい顔をした男、壬生七郎――。その、むごく鮮烈な愛ゆえに、女は自殺をはかり、妻は精神に錯乱を来たした。無明の歳月は流れ、今や悪性の腫瘍を宣告された彼の赴く先は? 仮借ない自己分析と、透徹した美意識のうちに、生と死の凄惨な闘いを映し出し、この世の無常を見据えて、比類なき〈精神の勁さ〉を明かす、立原文学の秀作。
  • アッコちゃんの時代
    3.5
    金と力のある男の欲望を受け止めてやるのは、若く美しい女の義務なのだ。私はそれに忠実だっただけ――。「地上げの帝王」と呼ばれた不動産会社社長の愛人を経て、女優を妻に持つ有名レストランの御曹司を虜にし、狂乱のバブル期の伝説となった女性、アッコ。彼女は本当に「魔性の女」だったのか。時代を大胆に謳歌し、また時代に翻弄された女性を描く、煌びやかで蠱惑的な恋愛長編。

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  • あつあつを召し上がれ(新潮文庫)
    3.6
    1巻473円 (税込)
    この味を忘れることは、決してないだろう――。10年以上つきあった恋人との、能登へのお別れ旅行で味わった最高の朝食。幼い頃に、今は亡き母から伝授された、おいしいおみそ汁のつくり方。何年か前に家族みんなで並んでやっとありついた、天然氷でつくった富士山みたいなかき氷……。ときにはほろ苦く、ときには甘く優しく、身も心も温めてくれる、食卓をめぐる7つの感動の物語。(解説・松田哲夫)
  • 安土往還記(新潮文庫)
    4.3
    1巻572円 (税込)
    争乱渦巻く戦国時代、宣教師を送りとどけるために渡来した外国の船員を語り手とし、争乱のさ中にあっても、純粋にこの世の道理を求め、自己に課した掟に一貫して忠実であろうとする“尾張の大殿(シニョーレ)”織田信長の心と行動を描く。ゆたかな想像力と抑制のきいたストイックな文体で信長一代の栄華を鮮やかに定着させ、生の高貴さを追究した長編。文部省芸術選奨新人賞を受けた力作。(解説・饗庭孝男)
  • あとかた
    3.9
    1巻539円 (税込)
    実体がないような男との、演技めいた快楽。結婚を控え“変化”を恐れる私に、男が遺したもの(「ほむら」)。傷だらけの女友達が僕の家に住みついた。僕は他の男とは違う。彼女とは絶対に体の関係は持たない(「うろこ」)。死んだ男を近くに感じる。彼はどれほどの孤独に蝕(むしば)まれていたのだろう。そして、わたしは(「ねいろ」)。昏(くら)い影の欠片が温かな光を放つ、島清恋愛文学賞受賞の恋愛連作短編集。
  • あと少し、もう少し
    4.4
    陸上部の名物顧問が異動となり、代わりにやってきたのは頼りない美術教師。部長の桝井は、中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを募り練習をはじめるが……。元いじめられっ子の設楽、不良の大田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、後輩の俊介。寄せ集めの6人は県大会出場を目指して、襷をつなぐ。あと少し、もう少し、みんなと走りたい。涙が止まらない、傑作青春小説。
  • アトラス―天命探偵 Next Gear―(新潮文庫)
    完結
    4.0
    全1巻825円 (税込)
    次の犠牲者は、警察庁警備局公安課のトップ、そして、これまで共闘してきた上司――。眠り続ける志乃の予知夢を可視化する〈クロノスシステム〉の映像に、真田らは絶句した。忌まわしい未来を変えるべく、真田や黒野ら〈次世代犯罪情報室〉の面々は危険な作戦に身を投じる。そこへ因縁の敵・アレスが姿を現し……。冴え渡る頭脳戦と怒濤のアクションが加速する大人気シリーズ、堂々完結!!(解説・大矢博子)
  • 穴

    3.8
    仕事を辞め、夫の田舎に移り住んだ私は、暑い夏の日、見たこともない黒い獣を追って、土手にあいた胸の深さの穴に落ちた。甘いお香の匂いが漂う世羅さん、庭の水撒きに励む寡黙な義祖父に、義兄を名乗る知らない男。出会う人々もどこか奇妙で、見慣れた日常は静かに異界の色を帯びる。芥川賞受賞の表題作に、農村の古民家で新生活を始めた友人夫婦との不思議な時を描く二編を収録。
  • あなた
    3.0
    1巻1,540円 (税込)
    あなたを見守り、また見送るなかで、二人ともに過ごした夫婦の時間は、行きつ戻りつしながら、記憶にさらに深く刻まれ、やがて新たに繋がり始める――沖縄に暮らす日々が、しずかに、ゆたかに、語りだされる。九十二歳の日常と沖縄の現状を綴り、生き抜いてきた時代を書き留める「御嶽の少年」等六篇を収録する最新作品集。
  • あなた(上)
    3.7
    1~2巻583円 (税込)
    秀明はやや軽めの明るい浪人生。明るいといっても二浪目に突入したのだから、多少の屈託もないわけではない。しかし、女子大生の彼女もちゃんといて、携帯メールを間断なくやりとりして、にやけてみたり、ふて腐れてみたり……。受験の年の元日の未明、秀明の身体を異変が襲った。胃を握り潰されるかのような激しい吐き気、強烈な圧迫感。それは底なしの恐怖の序章に過ぎなかった。
  • あなたが、いなかった、あなた
    3.6
    ※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。 ここで読者は「彼方(あなた)」の世界に住む、もう一人の「貴方(あなた)」に出会う。ノルマンディ地方の美しい風景の中で静かに辿る「『フェカンにて』」。経済のグローバル化のただ中で、途方に暮れる一夫婦を描く「慈善」など、語りの常識を易々と覆し、変容する現実を再定義する11の物語。長く電子書籍化困難といわれた幻の作品集、遂に配信! ※この商品は固定レイアウトで作成されており、タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
  • あなたという国―ニューヨーク・サン・ソウル―
    3.8
    1巻1,320円 (税込)
    孤独の街(ニューヨーク)で、二人は出逢った。ミュージシャンとして成功を夢見る拓人と、脚本家となり夢の物語を紡ごうとするユナ。互いの心の隙間を埋め合った二人は、日本人と韓国人の障壁も乗り越え世界を共有していく。だが拓人の道が開けかけた時、運命の日が訪れた――9・11を体験した作家が描く、心がちぎれるほど切ないラブストーリー。
  • あなたの人生、逆転させます―新米療法士・美夢のメンタルクリニック日誌―
    3.6
    1巻1,232円 (税込)
    就活に失敗し、個人経営のメンタルクリニック院長助手になった美夢。しかし、変人だと思っていた院長は伝説の名ドクターで、ベッドタウンにあるクリニックは心の病のデパートだった! 毒親の連鎖、高度潔癖症、風俗店中毒、そして病の根源にあるものとは……『愛着障害』の岡田尊司が別名で描く、新人療法士の成長物語。
  • あなたの右手は蜂蜜の香り(新潮文庫)
    3.3
    1巻781円 (税込)
    私があなたを、檻から助け出す。どんなことをしてでも、必ず――。幼い私を守った銃弾が、あなたからお母さんを奪った。あの日から、あなたの声が聞こえる。「ここからだして、かえりたい」。人生のすべてを懸け、血のにじむ努力を重ね、ついにあなたのそばに辿り着いた雨子は、その唯一つの願いを叶えられるのか。真っ直ぐな想いに言葉にできない熱い涙がこみ上げる。少女(あたし)と子熊(あなた)の、愛の物語。(解説・藤田香織)
  • あなたはここにいなくとも
    3.9
    1巻1,705円 (税込)
    恋人に紹介できない家族、会社でのいじめによる対人恐怖、人間関係をリセットしたくなる衝動、わきまえていたはずだった不倫、ずっと側にいると思っていた幼馴染との別れ――いまは人生の迷子になってしまったけれど、あなたの道しるべは、ほら、ここに。もつれた心を解きほぐす、ぬくもりに満ちた全五篇。
  • あなたはここにいなくとも 無料お試し版
    無料あり
    3.6
    1巻0円 (税込)
    どれだけ辛くても、わたしひとりの苦しみではない。この苦しみを慈しんでくれるひとが、遠くに待ってくれている。 恋人に紹介できない家族、会社でのいじめによる対人恐怖、人間関係をリセットしたくなる衝動、わきまえていたはずだった不倫、ずっと側にいると思っていた幼馴染との別れ――いまは人生の迷子になってしまっているけれど、あなたの道しるべは、ほら、ここに。もつれた心を解きほぐし、本当の自分を取り戻すための全五篇。 2021年に本屋大賞第一位となり、常に新刊を心待ちにされる著者による2023年2月刊行の短篇集のなかから、「おつやのよる」を特別無料配信します。 *本稿は校了前のデータをもとに作成しています。そのため、刊本とは一部内容が異なる場合がございます。予めご了承ください。 町田そのこ(まちだ・そのこ) 1980年生まれ、福岡県在住。2016年「カメルーンの青い魚」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。17年、同作を含む短編集『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。『52ヘルツのクジラたち』で2021年本屋大賞を受賞。他の著書に『ぎょらん』『うつくしが丘の不幸の家』『星を掬う』『宙(そら)ごはん』「コンビニ兄弟」シリーズがある。

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  • 兄おとうと
    3.0
    1巻1,056円 (税込)
    「民本主義」を唱え、国民を基とした政治を希求する大正デモクラシーのリーダー吉野作造。その弟で、官僚として順調に出世していく信次。時代の変転とともに、信頼しあっていた兄弟の間にすきま風が……。みんなの願い「三度のごはん きちんとたべて 火の用心」を実現するための先人の苦闘を、歌と笑いに包んで描く評伝劇。
  • アニバーサリー
    3.7
    1巻737円 (税込)
    母親との確執を抱えて育ち、望まれない子を妊娠、たった一人で出産を迎えようとするカメラマンの真菜。七十歳を過ぎても、育児中に始めたマタニティスイミングの指導員を続ける晶子。あの日、あの震災が、二人を結びつけた――。食べること、働くこと。子供を産み、育てること。世代の違う二人の物語を丁寧に紡ぎつつ、時代とともに変わりゆく女性たちの生を凝視した渾身の長編小説。
  • 兄よ、蒼き海に眠れ
    4.0
    1巻1,496円 (税込)
    生命を惜しむということは、死を怖れることではない。大義のための死なら貴い。しかし……。瀬戸内の基地で「回天」特攻隊員として出撃を待つ兄は、たぎる想いと葛藤の日々を、日記と弟への手紙に綴った。学童疎開先から返事を書き続ける弟。だが東京大空襲で父母を、そして疎開先で妹を失う――著者渾身の書下ろし長編小説。

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  • あの歌がきこえる
    3.9
    1巻605円 (税込)
    意地っ張りだけどマジメなシュウ、お調子者で優しいヤスオ、クールで苦労人のコウジは、中学からの友だち同士。コウジの母親が家出したときも、シュウがカノジョに振られたときも、互いの道を歩き始めた卒業の日にも、三人の胸にはいつも、同じメロディーが響いていた。サザン、RC、かぐや姫、ジョン・レノン……色あせない名曲たちに託し、カッコ悪くも懐かしい日々を描く青春小説。
  • あの子とQ
    4.1
    1巻1,760円 (税込)
    普段は吸血鬼であることを意識せず過ごす高校生・嵐野弓子の前に突然現れたトゲトゲのばけもの。「Q」と名乗るそいつは、弓子が人の血を吸わないか監視しにきたという。でも、考えてみ? 人間社会に溶け込む現代の吸血鬼が、血を吸うなんて絶対ない! だが、思いがけない事件が起こり――。ミラクルな展開が待ち受ける、青春×吸血鬼ストーリー!
  • あのころなにしてた?
    3.4
    1巻1,430円 (税込)
    感染者数の増減に一喜一憂したりと深刻さと楽観視がくるくる入れ替わる心理状況は、まるで洗濯機のなかで洗浄モードと脱水モードが繰り返され、生地がすり減っていく洗濯物みたいだ――。コロナ禍による創作への思わぬ影響、家族との生活の変化、めまぐるしい世界の動きを、パンデミック収束への願いをこめながら綴った2020年の日記。
  • あのひとは蜘蛛を潰せない
    4.0
    ドラッグストア店長の梨枝は、28歳になる今も実家暮し。ある日、バイトの大学生と恋に落ち、ついに家を出た。が、母の「みっともない女になるな」という“正しさ”が呪縛のように付き纏(まと)う。突然消えたパート男性、鎮痛剤依存の女性客、ネットに縋る義姉、そして梨枝もまた、かわいそうな自分を抱え、それでも日々を生きていく。ひとの弱さもずるさも優しさも、余さず掬う長編小説。
  • あの日の僕らにさよなら
    3.4
    桜川衛と都築祥子。共に17歳。互いに好意を抱きつつも、一歩踏み出せずにいた。ある夜、家族不在の桜川家を訪ねた祥子は偶然、衛の日記を目にする。綴られる愛情の重さにたじろいだ祥子。何も告げず逃げ帰り、その後一方的に衛を避け続け二人の関係は自然消滅に……。あれから11年。再会を果たした二人が出した答えとは──。交錯する運命を描く恋愛小説。『冥王星パーティ』改題。
  • あの夕陽
    -
    1巻385円 (税込)
    少年時代、敗戦によって夢が破れた経験をもち、それが元で人生の総てに投げやりになってしまった私。成人して新聞記者になり、なんでも唯々諾々と言いなりになる妻と坦々とした日々を過ごしている。私はソウル特派員時代に知り合った李という女性のことが忘れられない。虚無感を夕陽が照らすようにくっきりと描き出した秀逸な短編。芥川賞受賞作品。ほかに『野の果て』『無人地帯』『対岸』『遠い陸橋』を収録。
  • アブラクサスの祭
    3.4
    東北の小さな町の寺に勤める僧・浄念は、躁鬱に苦しみつつ薬と酒の力を借りて法要をこなす毎日。不惑間近となったいま、学生時代にのめり込んだバンドへの情熱が心を占める。やっと実現にこぎつけたライブのステージで、強烈な恍惚感とともに降りてきた啓示の正体は……。精神を病みロックに没入する僧が、祝祭の只中で感じた歓喜と安らぎ、心のひそやかな成長を描く芥川賞受賞第一作。

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  • アマノン国往還記
    3.6
    モノカミ教団が支配する世界から、幻の国アマノンに布教のため派遣された宣教師団。バリヤの突破に成功した唯一の宣教師Pを待っていたのは、一切の思想や観念を受け容れない女性国だった。男を排除し生殖は人工受精によって行われるこの国に〈男〉と〈女〉を復活させるべく、Pは「オッス革命」の遂行に奮闘するが……。究極の女性化社会で繰広げられる、性と宗教と革命の大冒険。
  • 雨

    -
    「行方不明の旦那様」にうり二つと、羽前国平畠藩の紅花問屋の当主にまつり上げられた金物拾いの浮浪者徳。莫大な財産と美貌の新妻を目のあたりにして、本物の当主になりおおすべく、色と欲との二股かけた必死のお芝居の始まり。東北弁もマスターし、邪魔者は消して、大願成就と思いきや……。根なし草の主人公を襲うどんでん返しの運命。
  • 雨のち晴れ、ところにより虹
    4.5
    人を好きになったら、相手にも同じように想い返してほしい。それって、奇跡を望むことなのかな? 小さなことがきっかけですれ違った夫と妻。母の恋人の存在をうたがう女子高生。思春期の頃にひどく傷つけてしまった女の子の記憶に悩む、余命いくばくもない男。由比ヶ浜、鶴岡八幡宮、江ノ電、逗子マリーナ……潮騒の町を舞台に、離れた心と心が再びつながる瞬間を描く、湘南・六つの物語。
  • アメリカ最後の実験(新潮文庫)
    3.8
    音楽家の父を探すため、アメリカの難関音楽学校を受験した脩。癖のある受験生や型破りな試験に対峙する中、会場で「アメリカ最初の実験」と謎のメッセージが残された殺人事件が発生。やがて第二、第三と全米へ連鎖していくその事件に巻き込まれた脩は、かつて父と仲間が音楽によって果たそうとした夢こそが事件に深く関わっていたと知る。気鋭の作家が描く全く新しい音楽小説、ここに誕生!(解説・吉田隆一)
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    4.0
    昭和20年9月21日、神戸・三宮駅構内で浮浪児の清太が死んだ。シラミだらけの腹巻きの中にあったドロップの缶。その缶を駅員が暗がりに投げると、栄養失調で死んだ4歳の妹、節子の白い骨がころげ、蛍があわただしく飛び交った……戦後どれだけの時間が過ぎようと、読む度に胸が締め付けられる永遠の名作『火垂るの墓』をはじめ全6編を収載。

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  • アメリカン・スクール
    4.2
    占領下の時代に、アメリカ人の学校を参観しに出かけた日本の中学校教員の、貧しく、それゆえにも滑稽な姿を描いて、芥川賞を受賞した「アメリカン・スクール」。ほかに、現代の複雑な世相を、批評精神に貫かれた知的感覚で捉え、人間ドラマを深味のあるユーモアと鋭く深く屈折した諷刺で描いた小島文学初期の傑作「汽車の中」「燕京大学部隊」「小銃」「星」「微笑」「馬」「鬼」を収める。
  • あやまちは夜にしか起こらないから(新潮文庫)
    4.8
    1巻605円 (税込)
    私の二番目の恋人(セカンダリー)になってください――自由な校風の私立学園の新任教師・佐竹は妖艶な音楽教師・万輝と一夜の関係を持つが、彼女の一言で運命が狂っていく。癒し系の家庭科教師・雪乃の性戯を愉しみながらも、万輝が忘れられない佐竹。やがてその学園にはポリアモリーという性愛が横行することが判明。その渦に巻き込まれていくが、快楽の極みは悲劇の幕開けだった。官能ロマンの衝撃作!

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