ビジネス・実用 - ちくま学芸文庫作品一覧

  • 精講 漢文
    4.5
    初版刊行以来、長年にわたり受験生から支持されてきた参考書を復刊。最大の特徴は、無味乾燥になりがちな文法事項をあえてまとめて解説せず、すべて例文の説明のなかにちりばめている点にある。例文は「論語」や李白・杜甫といった受験の定番から、歴史書、小説、そして日本の漢文学までを幅広くカバー。それらを読むことによって、文法の知識だけでなく中国の歴史や思想・文化をも体系的に学べるようになっている。おとなの学び直しに最適の一冊。
  • 人間の条件
    4.4
    条件づけられた人間が環境に働きかける内発的な能力、すなわち「人間の条件」の最も基本的要素となる活動力は、《労働》《仕事》《活動》の三側面から考察することができよう。ところが《労働》の優位のもと、《仕事》《活動》が人間的意味を失った近代以降、現代世界の危機が用意されることになったのである。こうした「人間の条件」の変貌は、遠くギリシアのポリスに源を発する「公的領域」の喪失と、国民国家の規模にまで肥大化した「私的領域」の支配をもたらすだろう。本書は、全体主義の現実的基盤となった大衆社会の思想的系譜を明らかにしようした、アレントの主著のひとつである。
  • 重力と力学的世界 上 ――古典としての古典力学
    4.5
    1~2巻1,155~1,265円 (税込)
    私たちが自明としている力学的世界観の成立には、古典力学と古典重力論にもとづく天体力学、とりわけ“重力”概念の確立が大きな影響を与えている。本書は、“重力”理論完成までの思想的格闘の足跡を原典に則して丹念に辿りつつ、誤りや迷いといった紆余曲折までも含めて詳らかにする。先人の思考の核心に「同時代的」に肉薄する壮大でドラマチックな力学史。上巻は、ケプラーにはじまり、ガリレイ、デカルトをへてニュートンにいたる力学方程式確立の歴史、オイラーの重力理論までを収録。
  • 理工学者が書いた数学の本 線形代数
    -
    「線形代数は理工学のすべてに通ずる基本です。その論理は、電気回路、振動、力のつりあい、微分などなど、ごく直観的に理解できる現象の中にも本質的に表れています」(「著者からひとこと」)。問題の解決にあたっては、既成の形式化した数学を当てはめるのではなく、本質的な構造に適合するように数学を創り、再構成する態度が必要であると本書は説く。“線形代数の基本概念や構造がなぜ重要であり、どういう状況で必要になるか”を工学や物理学の例を多く用いて、直観的な理解を目指すユニークな応用数学教科書。
  • 乱数
    -
    「乱数」とは、サイコロを振って出る目のように「規則性のない数字(の列)」のことである。フォン・ノイマンは、コンピュータを使って乱数らしきもの(疑似乱数)を作り出す方法を考案した。疑似乱数は、数値実験や標本抽出などの統計的諸手法にとっては、数の頻度分布の「一様性」が満たされていれば十分である。本書は、このような意味での乱数列の作り方や、正規分布などの頻度分布に従う乱数列への変換法、さらに得られた乱数列が実用上許容できるものかどうかの統計的検定法を基礎的理論から実用的な計算法までをバランスよく記述した「乱数」を体系的に学べる日本でほとんど唯一の入門書。
  • 現代の古典解析 ──微積分基礎課程
    4.0
    古典的な微積分の基礎課程を、見晴らしのきく小高い現代的な立場から眺め渡した、読みきり22講義。「不等号と論理」「極限と連続」「実数の基本性質」に始まり、「指数関数と三角関数」「収束の一様性」「曲線と曲面」を経て「複素変数関数」「フーリエ変換と超関数」「偏微分方程式」に至る、解析学メインルート。講義の最中、時折もらす森一刀斎のつぶやきは、濃い霧の中を行く初学者にとって、そのむこう、ゆるやかに広がる景色と地形を髣髴とさせる。「そうだったのか!」とひざを叩かせる、解析学の秘伝公開。
  • 増補 性と呪殺の密教 ──怪僧ドルジェタクの闇と光
    5.0
    性行為の歓喜が心身の力を極限まで高め、究極の智恵をもたらすという理論を根拠に、修行に導入された「性的ヨーガ」。不正義の人が悪事を成す前に、浄土に送り届けることは救済にほかならないという思想に基づく「呪殺」。チベット密教には、いまだ秘匿された教義が数多く存在する。なぜそうした奥義がチベットで歓迎されるに至ったのか。その背景を解き明かしつつ、知られざる神秘に迫る。国や地域と時代を問わず、宗教にあまねく内在する暴力とエロティシズムの原理にまで鋭く切り込んだ一章を増補。宗教の本質を抉り出す驚異の密教入門書。
  • 晩酌の誕生
    NEW
    4.0
    万葉の昔からはじまり、江戸時代に花開いた日本人の家飲み。当初健康のため、安眠のために飲まれていた「寝酒」は、灯火の発達とともにゆっくり夜を楽しむ「内呑み」へと変わっていく。飲まれていたのは濁酒や清酒、焼酎とみりんをあわせた「本直し」等。肴は枝豆から刺身、鍋と、現代と変わらぬ多彩さ。しかも、振り売りが発達していた江戸の町では、自分で支度しなくても、家に居ながらにして肴を入手することができた。さらに燗酒を売る振り売りまでいたため、家に熱源がなくても燗酒が楽しめた。驚くほど豊かだった日本人の家飲みの歴史を繙く。
  • 日本の歴史をよみなおす(全)
    4.2
    日本が農業中心社会だったというイメージはなぜ作られたのか。商工業者や芸能民はどうして賤視されるようになっていったのか。現代社会の祖型を形づくった、文明史的大転換期・中世。そこに新しい光をあて農村を中心とした均質な日本社会像に疑義を呈してきた著者が、貨幣経済、階級と差別、権力と信仰、女性の地位、多様な民族社会にたいする文字・資料の有りようなど、日本中世の真実とその多彩な横顔をいきいきと平明に語る。
  • 工学の歴史 ──機械工学を中心に
    4.4
    工学とは「ものつくりの科学」である。動力を効率よく伝達する歯車の歯型はどのような曲線なのか。蒸気機関が出せる動力と効率は何によって決まってしまうのか。オイラーは伸開線によるインボリュート歯車を、カルノーは熱の理論を樹立した。「ものつくり」は科学に問いを課し、また科学から方策を授かってきた。本書は、その工学の歴史を、おもに機械工学と力学の話題を中心に展開した。技術開発や研究が最先端に達し、もはや参考となる文献・資料がなくなったとき、その解決のヒントは歴史のなかにある。幕末維新や近代日本に関する研究成果も意欲的に取り入れた力作。資料・図版を多数収録。
  • 社会思想史講義
    4.5
    社会思想は、その時代の社会がかかえる問題を解決しようと、思想家が格闘しつつ生みだすものである。本書はルネサンス以降の歴史を、3つの流れで捉える。すなわち、民主主義・資本主義社会はいかなる思想的過程で形成されたか、近代社会に顕在化した問題を解決するためどのような社会思想が生み出されたか、そして20世紀以降どのような問題が発生したか。著者が指摘する「現代社会の問題」とは、個人の自立性を押しつぶす官僚制化・大衆社会化・管理社会化であり、さらに資本主義社会の矛盾・弊害の克服を目指したはずの社会主義諸国の行き詰まりまでを含む。長らく読み継がれてきた簡潔で定評ある入門書。
  • 史記1 本紀
    3.8
    中国の古典中の古典ともいうべき『史記』の全訳。「本紀」は、黄帝から秦の始皇帝の全土統一を経て、漢の武帝時代にいたる、歴史における帝王の系譜。中国史進展の大筋を「五帝」「夏」「殷」など十二巻で述べる。
  • 米・百姓・天皇 ──日本史の虚像のゆくえ
    4.0
    日本とはどんな国なのか、なぜ米が日本の歴史を解く鍵なのか、通史を書く意味は何なのか。きわめて枢要でありながらも、これまであまり語られてこなかった興味深い問題の数々。先鋭的な現代日本史学の泰斗、網野善彦、石井進が、古代律令制から明治時代に至るまでを、エキサイティングに、そして縦横無尽に語りつくす。対談形式のため、高度な内容であるにもかかわらず、読者にも理解しやすく、読み進むにつれ、この日本という国の真の姿が眼前に立ち現われてくる。今までイメージされてきた国家像や、定説とされていた歴史観に根本的な転回を迫る衝撃的な書。
  • ケガレの民俗誌 ――差別の文化的要因
    4.5
    被差別部落の白山信仰、血穢の性差別、非常民の世界、民俗概念としてのケガレ。これまで日本民俗学が避けてきた問題、ケガレと差別の底に潜むものは何か。ハレ・ケ・ケガレの民間信仰の意識構造のなかで、ケガレが不浄なるものへと変化する過程を究明し、経血にまつわる女性差別の要因である血穢の虚構をあばく。また、死穢というもっとも大きな不浄観はどのような時空間で発生するのかなど、その基底にある民俗儀礼の奥底を明らかにする。ケガレとはたんなる汚穢ではなく、ハレを喚起する力なのだ。日本民俗の深層に根付いている不浄なる観念と差別の問題を考察した先駆的名著。
  • 偉大な数学者たち
    4.3
    ガウスは50桁ぐらいの計算はものともしなかった。むしろ楽しみですらあった。しかも数字に異常な記憶力があり、いちど計算したことのある数は自在に取り出すことができた。整数の研究にも熱情を注ぎ、法則の発見のために独力で大きな数表をつくった。素数の表、二次剰余・非剰余の表、1000以下の素数の逆数の表……。このように数学の神に導かれたガウスもいたし、一生を数学に生きたオイラーもいた。狂熱に引きまわされ短い生涯を駆け抜けたアーベルやガロアもいた。他にアルキメデス、ニュートン、ライプニッツなど全20人が登場。天空を舞うような彼らの高揚感を熱くつづった「数学者物語」。
  • 須弥山と極楽 ――仏教の宇宙観
    -
    須弥山とは、高さ約56万キロメートル、天神らが暮らす想像上の高峰である。5世紀頃インドで書かれた仏教論書『倶舎論』はこの須弥山を中心とする壮大な宇宙を描き出し、仏教が宇宙をどう捉えたかを詳細に解説した。本書は、『倶舎論』を基礎に他説も参照し、仏教宇宙観を簡明に記す。人間より優るが欲望の虜である天神とはいかなる存在か。「蛆虫に骨をうがたれる」といった地獄の責苦、世界を構成する四大と極微、宇宙の消滅と生成のサイクルなど、幅広く解説。後代に現れる極楽浄土の思想をも取り上げて、人生を苦とし、輪廻と解脱の思想を根底とするこのユニークな体系の変遷をたどる。長年読み継がれてきた入門書。
  • 新しい自然学 ──非線形科学の可能性
    3.5
    非線形科学──それは近代科学が久しく避け続けてきた「自然の生きた姿の記述」に挑む新しい科学だ。例えばホタルたちの明滅が揃う同期現象や、物質の濃淡が形作る自己組織化のしくみはこの科学によって解き明かされる。本書では、非線形科学を一つの切り口としつつ、この分野の第一人者がより豊かでみずみずしい科学の可能性を探る。そして、科学知をも超えた新しい時代の知のあり方にまで思考の翼を広げる。
  • 古代史おさらい帖 ──考古学・古代学課題ノート
    3.5
    考古学的な知見と、『日本書紀』『古事記』などの文献資料を織り合わせてはじめて、古代の真の姿が浮かび上がる。この考えから「古代学」を提唱する学界の重鎮が、古代の読み解き方を根本から問い直し、「土地」「年代」「人」の見方をめぐって、具体的かつ革新的な方策を提案する。「土地」の見方では変貌する河内と摂津から国生み神話の鍵などを考察。「年代」の見方では銅鏡の「年代」や「暦」を通して、古代人が時間をどう記述したかを探る。「人」の見方では、倭人=「呉の太伯」の後裔伝承の重要性などを提議。未解明の謎の数々や、古の人びとの心に想いを馳せながら、古代史を総ざらいで生きる入門書。
  • いかにして超感覚的世界の認識を獲得するか
    4.4
    霊学研究の諸成果に関心を寄せる人々の中には、そのような人生の高次の謎を口にする者が一体どこからその知識を得たのか、という点に疑問をもたざるをえない人もいるであろう。本書はまず第一にこのような人のために役立ちたいと望んでいる。霊学は人生の高次の謎の本質に深く係わろうとする。この霊学からの発言の根底にある諸事実を吟味しようとする人は自力で超感覚的な認識を獲得しなければならない。本書はそのための道を記述しようとしている。四大主著の一冊。
  • 気流の鳴る音 ──交響するコミューン
    4.4
    「知者は“心のある道”を選ぶ。どんな道にせよ、知者は心のある道を旅する。」アメリカ原住民と諸大陸の民衆たちの、呼応する知の明晰と感性の豊饒と出会うことを通して、「近代」のあとの世界と生き方を構想する翼としての、“比較社会学”のモチーフとコンセプトとを確立する。
  • あいだ
    4.0
    自己が生命の根拠に支えられて世界と出会う行為的原理である「あいだ」。その構造を、ゲシュタルトクライス理論に拠りつつ、ノエマ・ノエシスの円環的関係を西田哲学の「行為的直観」と関連づけて、多面的に解き明かす。自己が主体として生きるということは、生命一般の根拠の「おのずから」の動きにかかわると同時に、間主体的な世界を維持することではないか。ユクスキュル、ブーバー、レヴィナスらへの言及を通じて自他の関係を考察し、ダブル・バインド仮説の可能性を改めて問う。独自の学問的地平を切り拓いた著者の世界をわかりやすく示す。
  • アイデンティティが人を殺す
    3.9
    集団への帰属の欲求とは何を意味するのか。この欲求が他者に対する恐怖や殺戮へとつながってしまうのはなぜなのか――。グローバル化の進展は、さまざまな文化の保持者たちの基盤を揺るがし、時に偏狭で排他的な帰属意識を生み出してしまう。複数の国と言語、そして文化伝統の境界で生きてきた著者は、本書のなかで新しい時代にふさわしいアイデンティティのあり方を模索する。鍵となるのは、「言語」だ。言語を自由に使う権利を守ること、言語の多様性を強固にし、生活習慣のなかに定着させること、そこに世界の調和への可能性を見る。刊行後、大きな反響を呼んだ名エッセイ、ついに邦訳。文庫オリジナル。
  • アイヌ歳時記 ──二風谷のくらしと心
    4.0
    アイヌ文化とはなにか、彼らはどのようなくらしを営み、どんな世界観をもっていたのか。本書では、史上初のアイヌ出身国会議員であり、その文化の保存・継承に長年尽力してきた著者が、みずからが生まれ育った二風谷(にぶたに)の四季の生活を振りかえりながら、その模様をやさしく紹介していく。食文化、住まい、儀礼、神話・伝承、習俗、自然観や死生観……。それらの記述を通して浮かび上がってくるのは、自然と調和し共に生きようとするアイヌの心である。いまなお日本人に広く知られているとはいえない先住民族アイヌの世界。その全貌を知るための基本書となる一冊。
  • アインシュタイン回顧録
    -
    「想定外に当たっていたね」。アインシュタインの理論を、現代の物理学者はおおむねそう評価する。実験機器と実験法の進歩につれ、ただの予想かと見えた理論が次々に実証されてきたからだ。独創の極致ともいえる理論を彼は、いったいどうやって生み出したのか? 幼少期から執筆時までの約70年間を振り返り、何をどう考えてきたのかを語り尽くす、アインシュタイン唯一の自伝。生い立ちと哲学、19世紀物理学とその批判、量子論とブラウン運動、特殊相対論、一般相対論、量子力学に疑義を呈した真意、統一場理論への思いが浮き彫りになる。貴重な写真を多数収録。達意の新訳による文庫オリジナル。
  • 青色本
    3.9
    「語の意味とは何か」ーー本書はこの端的な問いかけから始まる。ウィトゲンシュタインは、前期著作『論理哲学論考』の後、その根底においた言語観をみずから問い直す転回点を迎える。青い表紙で綴じられていたために『青色本』と名付けられたこの講義録は、ドラスティックな思想転回が凝縮した哲学的格闘の記録である。
  • 阿含経典1
    4.7
    ブッダはなにを語り、どのように説いたのか。その教えを最も純粋なかたちで伝える最古層の重要な仏教経典の集成。阿含=アーガマとは伝承されてきた聖典を意味する。これらの経典群のなかには、あらゆる宗派を超えた仏教の原初のすがたがあり、その根本がある。本書は厖大な阿含経典群のなかから、よく古形を保ち、原初的な経と判定される諸経をとりあげ、パーリ語原典からの現代語訳と注解で構成。第1巻は、ブッダの悟りの内容を示す「存在の法則(縁起)に関する経典群」と、その法則に即して人間をかたちづくる要素を吟味した「人間の分析(五蘊)に関する経典群」を収録する。
  • アメリカ言語哲学入門
    4.0
    20世紀後半の現代哲学に、最も先鋭的かつ重要な潮流をなした、アメリカ言語哲学。その最前線を形づくってきた、サール、クリプキ、デイヴィドソン、クワイン、ローティら哲学の巨人の思想を、言語行為論、指示理論、根本的解釈説、メタファー論、反表象主義などの主要な議論から精査する。その考察から、彼らの視点には、実はデカルトやロックらの近代観念説やヨーロッパの解釈学とも通底するものがある、という事実が明らかになってくる。西洋哲学全体の流れの中で最先端のアメリカ言語哲学の核心に迫る、絶好の一冊。
  • アレクサンドロス大王物語
    3.0
    アレクサンドロス大王の事績は史実としてだけでなく、物語としても後世に大きな影響を与えた。中でも、「アレクサンドロス・ロマン」と称された本書は、聖書についで読まれた本とされる。基本的な史実を踏襲しつつ、鮮やかな戦闘場面、ペルシア王やインド王との書簡のやりとり、エジプトに由来する血統、裸形の哲学者との対話、アマゾネスや怪物との邂逅などを織り交ぜて、多くの一般大衆を長きにわたり魅了した。「物語」本篇に加えて、ラテン語で書かれた「アレクサンドロスからアリストテレス宛ての手紙」も収録。
  • 維新の夢 ──渡辺京二コレクション1 史論
    5.0
    『逝きし世の面影』の著者渡辺京二は、日本近代史の考察に、生活民の意識を対置し、一石を投じてきた思想家である。その眼差しは表層のジャーナリズムが消費する言説の対極にある。本巻には、西欧的な市民社会の論理では割り切ることのできない、大衆の生活意識にわだかまる「ナショナル」なものを追求した「ナショナリズムの暗底」、明治国家への最大の抵抗者としての西郷隆盛を常識的定説から救抜する「逆説としての明治十年戦争」、北一輝と日本近代の基本的逆説の関連を問う「北一輝問題」など、日本近代史を根底から捉え返すことを試みた論考を集成する。
  • 異説 数学者列伝
    3.5
    数学の歴史をつくった大数学者30人の生涯。しかし、そこは森先生、エライ人ばかり登場する「数学主義史観」の本は大きらい、「ボロボロ史観」で迎え撃つ。彼らはみな、悲劇的で喜劇的なのである。数学者を序列化して30番までを選ぼうなどという趣味はないので、その選択はかなり恣意的である。各篇はまったく独立で、関心は数学者たちの“数学”にではなく“人間”のほうにある。数式は出てこないから、ご安心。昨今の理科ばなれ、学力低下を嘆くあなたには、きっとキツイ一服に。そんな異色の数学者列伝。
  • 位相のこころ
    5.0
    位相は“近い”という日常感覚を数学的に厳密にとらえ直したもの、といってよく、現代数学において最も基本的で重要な概念の1つである。歴史的には、18世紀から19世紀末にかけて解析学が進展していくなかで、極限・収束・連続性などをめぐる議論から位相空間論が生まれ、20世紀における関数解析学の展開によって、より抽象的に定式化されていった。本書は、数学の意味・こころを語る達人である著者が、1950年代、60年代、70年代に、位相をめぐって書き綴った「位相解析入門」「位相用語集」「位相構造」という3つの文章からなる。著者の名調子に乗せられて、位相のこころを体感してみよう。
  • 一揆の原理
    4.3
    一揆といえば、虐げられた民衆が農具や竹槍を手に極悪非道な領主たちに立ち向かう、そんなイメージを抱きがちだ。しかし、それは戦後歴史学が生み出した幻想に過ぎない。史料を丹念に読み解くなかで見えてくるのは、革命や暴動といった固定観念とはほど遠い、権力者とのしたたかな折衝のあり様だ。一揆とは、暴発的な武装蜂起ではなく、既成の社会関係では対応できない危機に直面した人々が「契約」によって生みだした、新たな社会的つながりなのだ──。これまで語られてこなかった一揆の実像と、現代の社会運動にまで連なる結合の原理を、新進の中世史家が鮮やかに解き明かす。
  • 一百四十五箇条問答 ──法然が教えるはじめての仏教
    -
    法然が登場する以前、仏教は驚くことに、一部のエリートのためだけに存在する宗教だった。漢文で書かれた難解な経典が読めること、日常生活を気にせず修行に打ち込めること、が条件だったからだ。しかし実際に苦しみ、救済を必要としたのは、文字も読めない市井の人びとに他ならない。そこで法然は、誰でも、いつでも、どこでも実践可能な「念仏」を柱とする浄土宗を打ち立てた。この『一百四十五箇条問答』は、法然の教えに惹かれながらも、従来の仏教との違いに戸惑ったり、生活を改めなければならないのかと不安に思った人びとの145の疑問に、法然がやさしく答えたもの。浄土仏教や法然その人を理解するための、またとない入門書となっている。
  • 意味とエロス ――欲望論の現象学
    4.0
    現象学こそがわれわれがとりうるもっともラディカルな哲学態度であり、そして、その可能性をさらに推し進めることのなかにこそ、現代思想の混迷を突破する道がある。著者の哲学的デビューの書であり、その原点をいまもくっきりと指し示す本書は、読者に哲学することの意義と歓びを感じさせずにはおかない。
  • イメージの歴史
    4.5
    有名芸術家の名作はもとより、版画や挿絵、広告や記念碑に至るまで、美術作品が、何のために、どのように描かれてきたか──それが「イメージの歴史」だ。ここではさまざまな学問領域を自由に往来し、ポスト・コロニアル的かつジェンダー的な視線で従来の美術史を書き換える。絵画と社会のかかわりや画像の解釈方法などの理論を踏まえ、さらに西欧文化が繰り返し描いてきたイメージにメスを入れ、その精神的・社会的な背景を明らかにする。レイプを描き続けたのはなぜか、新しい政治形態はどのような画像を生んだか──人間の想像力に新たな光を当てる美術史の誕生。
  • イメージを読む
    3.9
    絵画は美しいのみならず、描かれた時代の思想・宗教観を密かに映し出している。ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナ・リザ』、デューラーの『メレンコリア』、ジョルジョーネの『テンペスタ(嵐)』。世界の名画のなかでもとくに謎に満ちたこれらの作品から、絵画の隠された謎をさぐる。画家が本当に描きたかったのは何か、何に託してその意図を伝えたか? 美術研究の成果を存分に駆使しながら、絵画に描かれた思想や意味を鮮やかに読み解くスリリングで楽しい美術史入門。
  • インテリジェンス ――国家・組織は情報をいかに扱うべきか
    4.1
    ますます過剰化、多様化する情報の渦のなかを国家は、組織は、そして国民はどう生き抜いていけるのか。意思決定者や軍が正しい行動をとるために、情報機関にいま必要とされていることはなんなのか?気鋭の防衛省の研究官が、「インテリジェンス」の歴史から、各国情報機関の組織や課題を詳述。イランクが大量破壊兵器を保持しているという、なんの根拠もない「事実」が信じられるに至るまでの情報の誤った伝達や歪曲、スパイ・ゾルゲの活躍の裏側など、著名な歴史的事件をはじめ、豊富な事例を通して易しくわかる、インテリジェンス入門の決定版。
  • インド大反乱一八五七年
    4.0
    東インド会社の傭兵シパーヒーの蜂起に端を発し、インド亜大陸全体へと飛び火した大反乱。ムガル帝国皇帝を擁立した反乱軍はデリーに政権を樹立して闘争を繰り広げるが、内紛と分裂を経て、やがて大英帝国による直接統治という結末を迎える。この反乱を支えたのは、いったい何であったのか。農村社会の変容、ヒンドゥー教・イスラム教ほかの宗教、カースト制度など、本書は複雑なインド社会の根幹部分を丹念にすくいあげて分析しながら、そこに携わった多様な人々のリアルな姿も活写。20世紀の独立へと持ち越された、インド民族運動の真実の姿を描きだす。
  • インドの思想
    3.0
    長い歴史と多数の異なった民族から成り、広大な地域の中で様々な伝統文化を併存させている国インド。日本人には想像もできないほど人々の考え方の振幅は大きいが、その精神的豊かさには瞠目すべきものがある。多様でありながらインドの底流をなす思考方法とは何か。本書では、国名「インド」の由来やインダス文明の興隆から説き起こし、ヒンドゥー教、ジャイナ教、仏教、『マハーバーラタ』と『ラーマーヤナ』の二大叙事詩、論理学など、インドを特徴づける主要な思想のエッセンスを、仏教・インド哲学研究の泰斗が解説する。
  • インドの数学 ──ゼロの発明
    -
    サンスクリット文化圏の数学は、多様性と創造性に溢れ、数学史においても大きな足跡を残してきた。「ゼロの発明」はとりわけ有名であるが、それにとどまらない。本書は、ヴェーダ祭式の祭場設営に由来する最古層の幾何学に始まり、ジャイナ教徒の数学と哲学・世界観との関係、数学と天文学、7世紀以降のアルゴリズム数学と代数の確立など、各時代に開花した数学を概観し、その発展の過程を探る。終章では、三角関数、ホロスコープ占星術、筆算法、和算などのトピックを通して、インドと他文化圏との数学の伝播を考える。
  • インド文化入門
    3.6
    遠くインダス文明にまでさかのぼり、異文化が交錯する要衝の地として繁栄してきたインド。そのため現在も多様な民族、言語、宗教が混在する。また古来よりカースト制が敷かれてきたことから、社会階層も多様に存在している。しかし、どの地方、どの民族のカレーを食べてもカレーとしてのカテゴリーに収まっているように、インド文化圏は多様な中にも統一性が保たれている。それはいったいなぜなのだろうか? 映画、新聞広告、絵画、物語、遺跡、陶磁器、食べものといった身近なテーマを切り口に、インドの文化と歴史を丸ごと理解する、世界的権威によるまたとない入門書。
  • インド洋海域世界の歴史 ──人の移動と交流のクロス・ロード
    -
    グローバル経済の起源は大航海時代にあると言われる。しかしそれよりはるか前、インド洋海域世界には二千年以上もの間、様々な民族、人種、宗教が交じり合う自由で自立した大経済圏が存在していた。季節風を利用した航海技術の確立により長距離交易が盛んに行われ、アフリカから地中海世界、西アジア、インド、東南アジア、中国にわたる広大な地域が一つに結ばれていたのだ。しかしレコンキスタ終結後、この経済網はヨーロッパ人に破壊され、奪われていく。イスラームの影響下で栄えた大経済圏・文化圏の全体像を、膨大な史料とフィールドワークをもとに描き出す、海域史研究の記念碑的名著。
  • 英語類義語活用辞典
    -
    類義語・同意語・反意語の正しい使い分けが、豊富な例文から理解できる定評ある辞典。思わぬ誤解や失礼をしないための使用例が、卓越した日本語と英語の語感をもつ著者により解説される。(1)意味がほとんど同じで、どちらを使っても大した違いのないもの。mistakeとerror、bigとlargeなど。(2)使い方をまちがえるとコミュニケーションに重大な齟齬を来たすもの。doubtとsuspectなど。(3)漠然と類義語だと信じられているがその実、異質な言葉。fortunateとhappyなど。「なるほど」と腑に落ちる効果的な使い方が、わかりやすく習得できる、学生や教師・英語表現の実務家の必携書。
  • 映像のポエジア ──刻印された時間
    5.0
    「それ独自の事実のフォルムと表示のなかに刻み込まれた時間――ここにこそ、私にとって芸術としての映画の第一の理念がある」。その理念が有機的統一をもって結晶する“イメージ”。『惑星ソラリス』『鏡』『サクリファイス』など、生み出された作品は、タルコフスキーの生きた世界の複雑で矛盾に満ちた感情を呼び起こす。俳優や脚本のあり方をはじめとする映画の方法は、現代において涸渇した人間存在の源泉を甦らさんとする意図とともに追求された。戦争と革命の時代である20世紀に、精神的義務への自覚を持ち続けた映画作家の思考の軌跡。
  • 英米哲学史講義
    3.7
    英米哲学の諸潮流は、「経験」を基盤に据えるという発想に導かれている。それは、ロックやヒュームらの「経験論」を共通の源泉とするためだ──。ベンサム、J.S.ミルに発する「功利主義」。フレーゲとラッセルを先駆に、ウィトゲンシュタイン、クワインをへて現代に連なる「分析哲学」。パースが提唱しアメリカを体現する思想となった「プラグマティズム」。そして、ロールズやノージックらの「正義論」。本書は、こうした英語圏の哲学的系譜を、経験論を基点として一望のもとに描き出す。主要哲学のつながりを明快にとらえる、入門書決定版!
  • 江戸 食の歳時記
    3.0
    和食の原型は江戸時代に形作られた。そう聞くと江戸の料理は素朴なものだったと思われるかもしれないが、さにあらず。魚は天然、野菜は有機、その上調理方法にも技巧が凝らされており、江戸の食文化はとても豊かだった。例えば刺身一つとってみても今はたいてい醤油を添えるが、江戸時代は魚の種類ごとに煎り酒や生姜酢などの各種調味料を使い分けていた。薬味もわさびだけでなく、からし、おろし大根、蓼など多様だ。本書ではそんな豊かな江戸の料理と食材を季節ごとに紹介し、各種行事食の由来も解き明かす。第一人者による人気連載を初書籍化。江戸時代の図版も約150点収録。
  • 江戸の坂 東京の坂(全)
    5.0
    東京は坂の街。「その名は江戸っ子気質そのままで、単純明快、即興的で要領よく、理屈がなくて、しかもしゃれっ気があふれている」。富士を眺められる坂は「富士見坂」、海を望む坂は「潮見坂」、墓地のそばの坂は「幽霊坂」、赤土の坂は「赤坂」、急な坂は「胸突坂」…。東京の坂道と、その名前を見つめると、江戸庶民の暮らしと心が浮かび上がる。東京中を隈なく歩き、古書や古地図を渉猟して、坂道に織り込まれた歴史を辿る。「坂道」研究というジャンルを確立し、いまなお坂道ファンのバイブルと親しまれる古典的名著。本書を片手に散歩すれば、いまも江戸を垣間見られる。
  • 演習詳解 力学 第2版
    -
    「力学の原理に差はないのだから、教養課程の学生が専門課程に相当する部分まで進んでいけない理由はない。進めるだけ進め、少なくとも道は開いているほうがよい、行く先で解けるようになる面白い問題に展望があるほうがよい」。本書で提供される問題は、机上で考えられたものだけではなく、実際の自然現象に即して創られたものも多く含まれる。それらは難解な問題もあるが、話題は広く、古典力学の豊かさを余すところなく示している。経験豊富な執筆陣が、一切の妥協を排して世に送った類書のない力学演習書。練り上げられた刺激的な問題と詳細な解説で、力学の高みへといざなう。
  • 王の二つの身体 上
    -
    ユダヤ系でありながら熱烈な愛国者にしてゲオルゲ派。迫害と亡命。二十世紀の矛盾そのものを生きたかのような著者の法外な学殖と情熱は、王権表象の冷徹な解剖に向けられた。王は死んでも王位や王冠、王朝は存続する。その自然的身体とは独立して存在するように見える王の政治的身体は、いかにして産出されたのか。王権の政治神学的・象徴的基盤は西欧の歴史の中で、どのように編制されたのか。本書には、問題提起とシェイクスピア『リチャード二世』論に始まり、キリスト論との類比、法学的思考の浸透とその影響、王を神秘体の頭と捉える政体有機体説に説き及ぶ、第五章までを収録する。全二巻。
  • 沖縄の食文化
    4.3
    沖縄学の権威による沖縄食文化史入門。著者は『おもろそうし』などの古典文学をもとに琉球文化の源流を探る研究に取り組んできたが、最後の著書となった本書では、食を素材に、沖縄の歴史が描き出される。ヤマトとは異なる食材・料理・飲食風習を対外関係史から説明し、沖縄料理の中にある東南アジア文化、中国文化の影響を解説。そして、食の思い出とわかちがたく結びつけられた戦前・戦中の記憶をつづる。取り上げられるのはラフテーやゴーヤチャンプルーなどよく知られた料理から、今では幻となった伝統菓子にいたるまで幅広い。食が語る沖縄の歴史。
  • 「おのずから」と「みずから」 ──日本思想の基層
    -
    日本語において「おのずから」と「みずから」は、ともに「自(ずか)ら」とあらわす。成ることと為すこと、物と自己、自然と自由を意味するが、截然と分けられず、両者には交差・共和・相克する「あわい」がある。そこに見られる日本人の基本的発想とは何であり、それはまたどのような思想文化を育んできたのか。本書は、思想・宗教・文学・芸能の諸領域を広く深く行き来しながら、日本人の自然と自己との相関的認識、超越と倫理との関わり、そして無常観と死生観を根源から問いなおす。倫理学者・日本思想史家である著者の代表作。
  • オリンピア 遺跡・祭典・競技
    -
    オリンピック発祥の地・オリンピア。そこは、古代ギリシアを代表する体育競技の場であっただけでなく、広く古典古代史の結節点でもあった。ゼウス神へ献ずる宗教儀礼=オリンピア祭はいかにして始まり、そこでの競技とはどのようなものであったのか。本書は、オリンピアの発掘史と遺跡の概要を述べた後、興味深い逸話を交えつつ競技祭典の実像に迫る。碩学が明快な筆致で描いた古代ギリシア史の名著。
  • 絵画を読む ──イコノロジー入門
    3.0
    絵画のもつ意味、それを“解釈”するにはどうしたらよいか──。その基礎的方法論のひとつとして挙げられるのが図像解釈学(イコノロジー)である。本書は、カラヴァッジョ『果物篭』、ボッティチェッリ『春』、ブロンズィーノ『愛のアレゴリー』、ブリューゲル『バベルの塔』等、重要な名画12作品を取り上げ、関連作品と比較しつつ、その背後にある思想や意味世界への接近を試みる。イメージの読み解きによって、美術の深みと無限の感受性への扉を開ける、美術史入門書の決定版。
  • 解禁昭和裏面史――旋風二十年
    -
    日々戦争へと雪崩込んでいった昭和前期。そこでは何が企てられ、何が起きていたのか。本書は激動のさなかにあって報道に従事した著者が、その間に蒐め得た一級の情報と新聞人としての良心と技法によって著した史的報告書。張作霖爆死、さまざまな国家改造運動、二・二六事件、中国侵略の内幕、枢軸外交の失敗、日米交渉の真相、敗戦……。歴史を大きく動かした出来事でありながら、公表できなかった事実を敗戦直後、一気に発表。真実に目隠しされていた国民は一斉にとびつき、貪り読んだ。戦後ベストセラーの嚆矢にして、貴重な歴史の証言。
  • 改訂増補 古文解釈のための国文法入門
    -
    一語一語、その語意について豊富な用例をもとに粘り強く吟味する──。この基本姿勢に貫かれながら、古典文(主に奈良・平安期の作品)を正確に読み、親しむための基礎知識を詳述したのが本書。助動詞、助詞、敬語を中心に、個々の用例の置かれた文脈への丁寧な読み込みとともになされる解説は、優れた文学者による良質な注釈書のような趣をもつ。作品を読み進める持久力も涵養されることから、学習者の絶大な支持を得た往年の名参考書。
  • 「科学者の社会的責任」についての覚え書
    4.3
    科学の発展は、科学では解決できない問題を生み出す歴史でもあった。本書は平和を希求する科学者の集まり、パグウォッシュ会議に触発されて書かれた。会議の姿勢は評価しつつも、科学の発展そのものが文明や人類を破壊しうるという認識が科学者の側には足らないと指摘する。二十世紀を代表する批評家が遺した警世の書。
  • 科学的探究の喜び
    5.0
    私たちの周りにあるたくさんの不思議。先入観なく幼児がつぶやく質問、大人の持つ疑問。「何を知りたいか」、「いかにして答えを出すか」。どんな仕事も、ここから探究の喜びが始まる。科学者は自然界にある難問を明らかにしようと、疑う自由から生まれる想像力を武器に探究し、結果は「論文やレポート」によって知識となり、技術として社会に貢献する。生物のエネルギー産生・消費のメカニズムに、先駆的・独創的研究をしてきた生化学者が、自身の経験と知識をもとに問いの発見から解決、発表までのプロセスをつぶさに語る。文庫オリジナル。
  • 科学哲学への招待
    4.3
    古代・中世のアリストテレス的自然観を克服し、信仰や迷信から独立することで17世紀に近代「科学」は誕生した。しかしパラダイム転換はくり返され、20世紀には科学技術に伴うリスクも叫ばれるようになる。科学哲学の第一人者がこうした決定的な転換点に光をあてながら、知の歴史のダイナミズムへと誘う。科学神話が揺らぐ今だからこそもう一度深く掘り下げる、入門書の決定版。
  • 科学と仮説
    4.5
    数学はなぜ科学といえるのか、連続体や幾何学空間の概念はどこから生まれたか、仮説にはどういう役割と種類があるか、科学は自然に対してどういうスタンスをとるべきか――。「ポアンカレ予想」の提唱者としても名高い科学者が、数学・物理学を題材に、関連しあう多様な哲学的問題を論じる。「幾何学の公理や物理学の原理は、人間が自由に決めた定義、あるいは人間の精神が創った規約である」という「規約主義」の立場を打ち出した。科学の要件に迫り、刊行時大反響を呼び、アインシュタインら若き科学者たちを「何週間か呪文をかけられたように」高揚させたという科学哲学の古典。オリジナル新訳。
  • 科学の社会史 ──ルネサンスから20世紀まで
    5.0
    科学(science)──それはもともと「知ること」を意味する。哲学や宗教を包含した知的営みであった中世以前の科学は、やがてルネサンスの訪れを機に次第にその姿を変えていく。啓蒙主義、フランス革命、産業革命、そして世界大戦といった政治的・文化的出来事の影響を受けた科学は、社会的位置をたえず変化させながら「制度化」の道をたどってきたのだ。複雑にからみあうさまざまな社会的要素を解きほぐし、約400年にわたる西洋科学の変遷を明快にまとめた定評ある入門書。図版多数。
  • 確率微分方程式
    4.0
    自然界や社会における偶然性を伴う現象は、いかにして定式化されるのか。確率過程をめぐる研究は20世紀前半にウィーナーやレヴィ、そしてコルモゴロフらによって進められ、なかでも伊藤清が確立した確率解析のための基本的手法は、「伊藤積分」の名で広く知られている。本書はそうした伊藤の定式化によりつつ、マルチンゲール的手法に重点を置いた確率積分を展開。物理学・数理ファイナンスなど幅広い応用をもつ理論の基礎をあざやかに示した名著。
  • 確率論入門
    5.0
    確率をめぐる数学的考察は、賭け事に関してパスカルとフェルマが交わした往復書簡に始まると言われる。組み合わせの概念に基づく古典的確率論は、20世紀になるとボレルやコルモゴロフの手により、集合論に基礎づけられた「現代数学」へと大きく飛躍した。本書はその確率論の古典と現代とを橋渡しする目的で書かれており、トランプやサイコロ投げといった初歩的な具体例を豊富に示しつつ、抽象的な数式の意味を読者にわかりやすく説く。高校数学で習う確率を、より深く学び直すことのできる入門書。
  • 河童の日本史
    3.0
    水辺に出没する日本の妖怪・河童。本書は、民間伝承や文献に出現するこの空想生物を、時代ごと地域ごとに精査。そこから、近世の潅漑用水発達と鎖国にともない内陸の河沼へ目が向けられたこと、ワニやスッポンなど水棲生物を祖型としつつ、水死者・被差別民・処刑キリシタン等のイメージが多元的に重なって河童となったことが浮かびあがる。民俗学と科学史を横断した異色の生物学者による実証分析的空想生物学の著作。その底流には、日本人の生命観へのアプローチが満ち満ちている。
  • カトリックの信仰
    5.0
    人間が神の知恵と愛に与るとはいかなることか──。近代日本のカトリシズムを代表する司祭・岩下壮一が、豊かな学殖と明晰さでキリスト教の真理を闡明した記念碑的名著。公教要理(カテキズム)の概説書としていまだ類例がないだけでなく、深遠で難解な神学は本書により日常の信仰の糧へと一変した。時に表出するプロテスタンティズムや近代哲学への峻烈な批判は、人間精神を主観性の牢獄から解放し、再び霊的実在へ開かんとする著者生涯の意図から発しており、それは神の恩寵の賜物=カトリックの信仰においてこそ実現すると説く。
  • カニバリズム論
    3.6
    カニバリズム(人肉嗜食)は人類の根源的タブーのように思われながら、実のところその痕跡は古来より無数に残されてきた。著者の専門は中国でありながら、古今東西の記録・小説を博捜し、ときに舌鋒鋭く、ときに諧謔と皮肉をもってカニバリズムを縦横無尽に論じる。人間の薄っぺらな皮膚を両手で思い切りめくり上げ、曝し、目を背けたくなるようなものを直視することで、「近代合理主義精神」なるものの虚構を暴き、「良識」を高らかに嗤いとばす。人肉嗜食、纏足、宦官……。血の滴るテーマで人間の真実に迫る異色の作品。
  • 貨幣論
    3.8
    資本主義の逆説とは貨幣のなかにある!『資本論』を丹念に読み解き、その価値形態論を徹底化することによって貨幣の本質を抉り出して、「貨幣とは何か」という命題に最終解答を与えようとする。貨幣商品説と貨幣法制説の対立を止揚し、貨幣の謎をめぐってたたかわされてきた悠久千年の争いに明快な決着をつける。
  • 鎌倉仏教
    4.0
    法然、栄西、親鸞、道元、日蓮、一遍―彼らを開祖として鎌倉時代に相次いで勃興した新たな宗教運動は、日本思想史上の頂点をなすと広くみなされている。「鎌倉(新)仏教」と呼ばれるこの潮流は、民衆を救済対象に据えたという点において、とりわけ高く評価されてきた。だが、新仏教の意義は、はたしてこの民衆的性格に言い尽くされるのか? 本書では、旧仏教との異同を深く掘り下げて考察することで、鎌倉仏教の宗教的特質の核心をあざやかに浮き彫りにする。思想家である前につねに実践の人であった偉大な宗教者たちの苦悩と思索の足跡をたどり、中世仏教の生きた姿をとらえた好著。
  • 柄谷行人講演集成1995‐2015 思想的地震
    3.5
    われわれは、もはや脱構築ではなく、建設をこそ語らねばならない──。あらゆるものが瓦解したこの20年間に、思想家・柄谷行人は、はたして何を考え、語ってきたか。本書は、その崩壊が誰の眼にも明らかとなった1995年以降の講演を著者みずから精選した、待望の講演集である。近代文学の使命とその盛衰を反照的に論じた「近代文学の終り」、日本にいつしか根づいた特異な民主主義観を、近代における個人化という根源から再考する「日本人はなぜデモをしないのか」など、計11本の講演を収録。その言葉には、いま最も必要とされる強靭な思想が確かに宿っている。学芸文庫オリジナル。
  • 柄谷行人講演集成1985‐1988 言葉と悲劇
    -
    ソシュールからウィトゲンシュタインへ、西田幾多郎からスピノザへ──。1980年代後半の代表的講演を収録した本書で、柄谷は哲学、文学、宗教、言語学、経済学、数学など多様な領野を自在に行き来しつつ議論を繰り広げる。そこで執拗に追求されるのは、言語コミュニケーション(交換)における人間の悲劇的条件であり、他者との交通を可能にする普遍性がいかに生み出されうるかという問いである。いまなお多くの示唆に満ちたこれらの講演は、後の柄谷理論の展開を予感させるのみならず、批評という営み自体をも再審に付す魅力的な内容となっている。旧版の内容を再構成し、改稿を加えた決定版。
  • 樺太一九四五年夏 ――樺太終戦記録
    4.0
    第二次大戦における沖縄戦が「国内唯一の地上戦」と語られることがある。しかし実際にはもう一つの熾烈な地上戦があった。旧日本領南樺太へのソ連侵攻である。1945年8月9日朝、ソ連軍は突如日ソ中立条約を破棄し、日本軍の軍事施設、警察施設を攻撃する。侵攻を想像しなかった日本側には、戦車の鋼板を打ち破れる火砲は数門あるのみ。残された手段は破甲爆雷を背負って飛び込むしかなかった。満足な武器もない兵士たちはわが家の見える丘の上で死んでいき、守る者のいない市民は地獄の苦しみに突き落とされた。わずか2週間で4千人以上の戦死者を出した悲劇の記録。
  • カルロス・カスタネダ
    3.5
    「呪術師ドン・ファン・シリーズ」の著者、カルロス・カスタネダはその実在すらが疑われ、著作の内容も常に毀誉褒貶にまみれていた。カスタネダとは一体何者だったのか? 著述の内容をつぶさに検証し、仮面の下に潜む素顔とその思想を白日のもとに曝す。カスタネダ神話を脱構築し、新たな相貌の獲得を目論む挑発的な試み。
  • 関数解析
    5.0
    関数解析学は微分方程式や積分方程式などの問題を解くための方法として、20世紀初頭に誕生した分野である。現代では偏微分方程式のほか、数理経済学や数値解析など幅広い方面に応用範囲をもつ。本書はバナッハ空間の解説から始まり、一様有界性定理・開写像定理・閉グラフ定理などの基本定理を証明。そして話題はボッホナー積分や線形作用素の半群にまで及ぶ。証明の式変形は非常に丁寧で、論理展開を追いやすいように書かれている。関数解析の基礎を過不足なくおさえた名教科書。
  • 監督 小津安二郎〔増補決定版〕
    4.5
    「残された作品の画面に何が具体的に見えるか、そしてそのイメージが、見るもののフィルム的感性をどのように刺激するかを論じてみたい。つまり、現実のフィルム体験として生きうる限りの小津安二郎の作品について語ってみたいと思う」(本書序章より)。人々がとらわれている小津的なるものの神話から瞳を解き放ち、その映画の魅力の真の動因に迫る画期的著作。本文庫は、小津の生誕百年(2003年)を機に旧版へ三章を増補した決定版である。名キャメラマン厚田雄春と『美人哀愁』の主演女優井上雪子へのインタヴューほかを併録。
  • カント入門講義 ――超越論的観念論のロジック
    -
    我々が生きている世界は、心の中の世界=表象にすぎない。その一方で、しかし同時に「物自体」はある、とも言うカントの超越論的観念論。そのカラクリとして、基本的なものの見方・考え方の枠組みが人間の心にはあらかじめセットされているとカントは強調したわけだが、この点を強調することによって、その哲学は、後年の哲学者達の思想的転回に大きく貢献したと著者は説く。平明な筆致で知られる著者が、図解も交えてカント哲学の要点を一から説き、各ポイントが現代の哲学者に至るまでどのような影響を与えてきたかを一望することのできる一冊。
  • 官能美術史 ──ヌードが語る名画の謎
    3.8
    恥じらいながら、生まれたばかりの透明な素肌を露にする愛の女神ヴィーナス、恍惚としてひとり横たわるマグダラのマリア、近代をとりこにした東洋の女奴隷たちの妖艶な姿態―西洋美術の世界を彩る美しいヌードが大集結。性のモラルの厳しいキリスト教社会で裸体を描くことがどうして可能だったのか? その多くが神話や聖書を題材とするのはなぜか? ボッティチェッリ描くヴィーナスのお腹が膨らんでいるわけは? いくつかの鍵を用いて読み解くと、魅惑的な姿に秘められた謎があざやかに浮かびあがる。カラー多数。200点以上の図版とともに楽しくアートの世界へ誘う極上の美術案内。
  • 漢文入門
    4.0
    漢文を学ぶときに大切なこと、それは文法を覚える前に「漢文とは何か」を考えることだ。一口に「漢文」と言ってもいくつもの種類があり、私たちが学校で習う中国の古典的な文はもちろん、日本人が書いた漢詩や、候文で書かれた手紙もまた中国語のように書かれている。漢文の本質的な特徴は、中国語で書かれた文を、中国語でなくいきなり日本語として読むという点にある。漢文の読み方は時代とともに変化し、日本語と歩を揃えて進化してきた。訓読の方法と歴史に光をあて、日本人が漢文といかに付き合ってきたかを平明に説いた名著、待望の復刊!
  • 概説文語文法 改訂版
    -
    傑出した国語学者・言語学者であった著者による古典文法の概説書。文法がどのような組織を持っているか総体として受けとめ、たんに作品解釈のためだけではなく、それ自体、教養として学ぶことを提唱する。大きく「文」「語」「付属語」「表現」に分けて解説。
  • 学習の生態学 ──リスク・実験・高信頼性
    -
    医療現場、原子力発電所等、一つ間違えば大きな事故が生じうる組織において、学習はどのようになされるか――。失敗を含む「日常的実験」の繰り返しこそ、現場での学習の資源である。本書では、このリスクを伴う試行錯誤を許す空間を「学習の実験的領域」と呼び、法的・経済的諸条件に影響され、組織ごと、状況ごとに変動するその不安定なありようを明らかにする。フィールドワークや豊富な民族誌的資料をもとに、学習を社会科学のテーマとして扱い、状況的学習論といった従来の理論モデルを超える新たな枠組みを示した。事故と安全、科学技術、組織といった具体的文脈のもとでの学習を考える、数々の概念装置を与える書。
  • 記号論
    4.0
    文字、数字、音符、絵画、人の表情や動作、空に浮かぶ雲のたたずまい……人間にとって世界は膨大な記号の集積だ。世界を解読するのにも、表現するのにも、記号は不可欠のツールであり、われわれは日常においてそれを疑うことなく用いている。しかし記号の使用は、無制限にいつも成り立つものなのか? こう問い直すことで世界や人間の営みを解明する糸口が開ける。たとえば、心をめぐる謎を解く手がかりも、記号と心についての常識を疑ってみるところから得られるのだ。さまざまな領域における記号の構造を解説し、それを読み解く最強の技術、論理学の基礎へと、最小限の道具立てで易しく誘う。
  • 「きめ方」の論理 ──社会的決定理論への招待
    3.8
    ある集団のなかでみんなの意思がうまく反映された決定を下すには、どうすればいいだろうか。特に、各人の考えがバラバラで、にもかかわらずそれらを集約して一つの判断を下さなければいけないとき、望ましいきめ方とはどんなものだろうか。これを探究するのが社会的決定理論という分野である。様々な投票方式が生み出す矛盾から、アローの一般可能性定理、さらにはセンの自由主義のパラドックスやゲーム理論まで、この理論が含みもつ広範な内容をかみ砕いて丁寧に解説。社会的決定における「公正さ」「倫理性」とはどのようなものか検討する。最良の入門書として長年親しまれてきた比類なき名著。
  • 旧約聖書の誕生
    5.0
    旧約聖書はユダヤ教・キリスト教の正典であり、また、その宗教的権威を離れても広く人類の文化のなかで大きな影響を与えてきた。しかし、その中身はそれぞれが矛盾し錯綜したテキストの集合であり、多くの現代人にとっては通読することすら困難だというのが現実だろう。本書は、旧約聖書をその歴史的状況の中に置き直し、「創世紀」「出エジプト記」「ヨブ記」「雅歌」…等々の文書が成立した時代とそれらが背負っていた思想的課題からの解読を試みる。各文書の個性から、なぜ旧約聖書というまとまりのある書物が成立し権威を持ったのかまで、イチからよくわかる旧約入門の決定版。
  • 近代日本思想選 九鬼周造
    4.0
    〈媚態〉〈意気地)〈諦め〉という三つの契機から、日本的美意識「いき」の構造を解明した九鬼周造。ハイデッガーやベルクソンらに師事し、豊かな方法的視座を身につけたこの哲学者にとって、人と人とのめぐり逢いの謎は、自身の実存ともあいまって生涯を覆うものであった。「偶然性」の哲学の誕生だ。のちにそれは、日本文化論における「自然」の思想においてひとつの帰結をみる。没後、時代ごとに異なる光が当てられてきた九鬼の哲学。本書は、自伝的エッセイからヨーロッパでの講演、人生観、晩年の詩論まで、その全体像と独創性を一冊で提示する。
  • 近代日本思想選 西田幾多郎
    -
    東洋思想の絶対無を根底に据え、それを理論化して西洋哲学と融け合う独自の哲学を打ち立てたとされる西田幾多郎。「純粋経験」「場所」「非連続の連続」「永遠の今の自己限定」「行為的直観」「絶対矛盾的自己同一」――。それら中心概念はいかにして生まれ、いかなる変転を遂げていったのか。その理論的変遷と射程を追跡できるように、本書には、『善の研究』をはじめ、西田哲学のエッセンスとなる最重要論考が収められる。西田におけるナショナリズムを照射する「日本文化の問題』と、生命哲学への道を開く未完の論考「生命」は文庫初収録。
  • 近代日本思想選 福沢諭吉
    -
    近代日本を代表する思想家であり、その体現者でもあった福沢諭吉。本書では、彼の思想の広がりとその今日的意義を明らかにすべく、『学問のすすめ』『文明論之概略』については最重要箇所のみの抄録とし、それ以外の多種多様な著作群から幅広く論考を精選。『通俗民権論』『国会論』などの政治論から「尚商立国論」のような商業論、「瘠我慢の説」「明治十年丁丑公論」といった時事評論、さらには天皇論や婦人論までをバランスよく配置した。政治思想史・政治哲学を専門としてきた編者ならではの観点から編みあげられた清新な福沢像。文庫初収録論考多数。
  • 近代日本思想選 三木清
    -
    活動的に哲学するとはいかなることか―。戦前日本を代表する知性として思想界を牽引した三木清。非業の死によりその哲学は未完に終わったが、それゆえに今日なお可能性を示唆してやまない。ハイデッガーからの決定的影響、マルクス主義の哲学的掘り下げ、そこから前景に浮かび上がる歴史という問題、そして同時代の政治への関与。三木の思考には時代との格闘の跡が生々しく刻印されている。本書は、主著『歴史哲学』などを中心に、1920年代の前期から30年代以降の後期まで、三木哲学の新たな読解に資するテクストを精選して構成。未来の思考を切り拓く力をいまここに伝える。
  • 近代日本とアジア ──明治・思想の実像
    3.0
    近代日本の対外論は、「アジア主義」対「脱亜論」という図式によって描かれてきた。前者は欧米のアジア侵略に東アジア諸国とともに対抗しようとする立場であり、後者は欧米列強の一員としてアジア進出に参加すべしという主張だ。福沢諭吉、山県有朋、陸羯南、青木周蔵ら、少なからぬ政治家・思想家が、この二つの対外思想の間で揺れ動いたと理解される。だが、そうした論理の使い分けは、第一次世界大戦後に欧米の中心がイギリスからアメリカに移り、アジアにおける中国の存在感が増すにつれ、通用しなくなっていく──。日本外交を規定する構造とその変化を明らかにした記念碑的論考。
  • 近代ヨーロッパ史
    3.8
    ヨーロッパの近代はその後の世界を決定づけた。現代の繁栄も混迷も、21世紀になってなお世界が解決に苦闘する難題もここに源をもっている。近代ヨーロッパの重大事件、アメリカ合衆国の独立やフランス革命などは現代世界にどのような影響を与えているのだろうか。複雑な歴史を解き、近代ヨーロッパの意味と深さを考える。
  • ギリシア文化史1
    5.0
    現代のさまざまな国家形態、政治思想、さらに哲学、弁論、文学・芸術の諸ジャンルにおける精神活動は、原型をほとんど古代ギリシアに見いだすことができるだろう。この天才的な民族の創造物にあらゆる面から深い考察を加え、文化史家としての力をすべて結集することで、ブルクハルトの『ギリシア文化史』は成立した。その史観の類を見ぬ深刻さ、厳しく率直な人間観、深い洞察力と広い視野により、古今の史家の試みをはるかに凌駕して、この畢生の大著は歴史の真実に肉薄する。第1巻は、ギリシア人とその神話、ポリスとそこで展開された僭主制や民主制を語る。
  • 議論入門 ──負けないための5つの技術
    3.8
    人を納得させる議論には「型」がある。「定義」「類似」「譬え」「比較」「因果関係」──たった五つの論法さえきちんと使いこなせれば、誰だって自分の考えを的確に表現できるようになり、一見もっともらしい相手の主張の弱点も見えてくる。教育現場でディスカッションなどを指導する際の手引きとして書かれた本書には、議論に欠かせないこれらの技術の使い方と、それに対する反論の仕方といった、私たちが身につけておくべきイロハが明快に論じられている。豊富な実例を通して論証・反論の技術を磨く、確かな修辞学的知見に裏打ちされた入門書。『議論の技を学ぶ論法集』文庫版。
  • 空海入門 ──弘仁のモダニスト
    5.0
    真言宗の開祖であり、傑出した思想家・芸術家。唐代の新しさを日本へ移入し、「個人」と「自由」を発見した“モダニスト”。それが空海である。9世紀、弘仁時代の先鋭的表現ともいえるこの人物は、生涯にわたり自らの探求心につき動かされていた。高野山が空海にとって特別な地であり続けた理由も、そのことを無視しては理解できない。空海における自己探求とはどのようなものであったのか? 本書では、『性霊集』『三教指帰』『請来目録』など、空海自身の著作の読解と足跡の探訪を通して彼が生きたであろう時空を共有し、その実像に迫る。稀有な個性の魅力と同時代性を深い共感とともに伝える入門書。
  • クオリア入門 ――心が脳を感じるとき
    3.6
    人間を世界のほかのあらゆるものと区別するのは「心」の存在だ。そして、われわれの心の中のすべての表象は、クオリアというそれ以上分割できない単位からできている。風にそよぐ木々の動きや葉の色、鼻孔をふるわす芳香――さまざまなクオリアたちを表象する〈心〉が、脳内にいかにして現象するか。さらにクオリアと「私」の心を結ぶ「志向性」の新たな展開とは? 脳科学の現在から「私の心」の見取り図へ。模索する独創的思考の息づかいが感じられる格好の入門篇。
  • クレオール主義
    4.7
    「クレオール主義」とは、なによりもまず、言語・民族・国家にたいする自明の帰属関係を解除し、それによって、自分という主体のなかに四つの方位、一日のあらゆる時間、四季、砂漠と密林と海とをひとしくよびこむこと――。混血の理念を実践し、複数の言葉を選択し、意志的な移民となることによってたちあらわれる冒険的ヴィジョンが、ここに精緻に描写される。「わたし」を世界に住まわせる新たな流儀を探りながら、思考の可能性を限りなく押し広げた、しなやかなる文化の混血主義宣言。一大センセーションを巻きおこした本編に、その後の思考の軌跡たる補遺を付した大幅増補版。
  • 啓蒙主義の哲学 上
    4.0
    啓蒙主義は、すでに乗り越えられた浅薄な思想なのか。のちの思想家たちから「反省哲学」「過去の思想」という烙印を押されてきたが、はたしてそうか。18世紀啓蒙主義の「明るい鏡」を現代批判の鏡として位置づけ、自らそれとの内面的対決を果たした著者は、批判精神に満ちた鋭い洞察力で、啓蒙主義の思考形式から「美学」の誕生までの諸側面を余すところなく分析し、その統一的結びつきを解明する。哲学者カッシーラーが従来の批判を排し、啓蒙主義思想の再評価を打ち立てた古典的名著。文庫化にあたり全編改訳。上巻は啓蒙主義の思考形式、自然観と自然科学、心理学と認識論、宗教の理念を収録。
  • 憲法で読むアメリカ史(全)
    4.2
    建国から二百数十年、自由と民主主義の理念を体現し、唯一の超大国として世界に関与しつづけるアメリカ合衆国。その歴史をひもとくと、各時代の危機を常に「憲法問題」として乗り越えてきた、この国の特異性が見て取れる。憲法という視点を抜きに、アメリカの真の姿を理解するのは難しい。建国当初の連邦と州の権限争い、南北戦争と奴隷解放、二度の世界大戦、大恐慌とニューディール、冷戦と言論の自由、公民権運動――。アメリカは、最高裁の判決を通じて、こうした困難にどう対峙してきたのか。その歩みを、憲法を糸口にしてあざやかに物語る。第6回読売・吉野作造賞受賞作の完全版!
  • 〈権利〉の選択
    4.5
    “right”に「権利」という訳語があてられたとき、そこには特殊日本的な背景が作用し、それ自体が一つの独自な解釈を表すものとなった。「力と利益」の意味を含む日本の“権利”の思想は、「正しいこと」を意味する西洋の“ライト”の思想とどの程度異なり、また、どの点で共通しているのか。この問いを考察の糸口として、我々が「権利」と呼ぶ思考装置の問題点と限界を明かし、その核心に迫る。福沢諭吉、西周、加藤弘之ら日本の思想家をはじめ、ロック、ドゥオーキン、ロールズ、セン、ニーチェらを導き手とし、理念と力の錯綜した関係を解きほぐした著。
  • ゲルマニア アグリコラ
    NEW
    4.0
    力強く簡潔な文体と精彩あふれる描写で知られるタキトゥスの2つの小品を収める。『ゲルマニア』は、当時ローマ帝国に北方から脅威を与えていたゲルマニアの諸部族に関する民族誌。風土、習俗、制度などについての概説と各部族の記述からなる。野性に満ちて強力なゲルマニア人と、文明化し過ぎ頽廃・衰亡への道を歩むローマ人を対比し、警告を発する。『アグリコラ』はタキトゥスの岳父を描いた伝記。暴君のもとでの貴族の生き方を示すとともに、ブリタンニア(古代イギリス)の地理や民族を詳しく記す。
  • 言語学を学ぶ
    4.0
    外国語など言葉にまじめに向き合おうと思ったら、避けて通れないのが言語学。だが、「音韻論」「比較言語学」「方言学」「言語類型論」など、言語学を学ぼうとすると押さえておかなければいけない分野は多岐にわたる。もちろんそれぞれ奥が深く、それを一朝一夕で習得することは困難だ。そこで本書では、言語学において知っておくべき事柄をキーワードごとに解説し、その全体像が一気にわかるように構成した。加えて読書案内もあるため、さらに学習しようとする人にもタメになる。古くて新しい入門書。
  • 原始仏典
    4.3
    仏教経典を片端から読破するのはあまりに大変だが、重要な教えだけでも知りたい―本書は、そうした切実な希望にこたえるものである。なかでも、釈尊の教えをもっとも忠実に伝えるとされる、「スッタニパータ」「サンユッタニカーャ」「大パリニッバーナ経」など、原始仏教の経典の数々。それらを、多くの原典訳でも知られる仏教思想学の大家が、これ以上なく平明な注釈で解く。テレビ・ラジオ連続講義を中心に歴史的・体系的にまとめたシリーズから、『原始仏典1釈尊の生涯』『原始仏典2人生の指針』をあわせた一冊。
  • 現代語訳 応仁記
    4.0
    日本史上類を見ない泥沼の長期戦となり、京中を焼き尽くすに至った応仁の乱。『応仁記』は、乱が終結してほどなく書かれたとされる軍記物である。作者は現在も未詳だが、戦乱勃発の背景から文明5年(1473)の山名宗全の死に至るまでの過程を克明に描いたその筆致は、「あの戦いはいったい何であったのか」という、当時の人々が抱いたであろう虚無感を現代にまで伝えている。応仁の乱を知るうえで欠かせない、貴重な第一級史料。
  • 現代語訳 信長公記(全)
    4.0
    『信長公記』(しんちょうこうき)は、織田信長の家臣であった太田牛一が著した、信長の一代記である。足利義昭を奉じて上洛してから本能寺の変に斃れるまでの15年間の足跡がとりわけ詳細に書き記されている。しかもその記録はきわめて正確で、歴史研究が進み従来の信長像が大きく塗り替えられようとしている現今においても、本書は第一級史料としての地位を失っていない。戦国時代を駆け抜けた信長の生きざまが現代によみがえる!

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