小説・文芸 - 創元推理文庫作品一覧

  • 星を拾う男たち
    3.5
    1963年に第2長編『死の内幕』を上梓した天藤真は、第3長編『鈍い球音』が刊行される71年までの8年間、中短編のみを発表することになる。4時起きで仕事に向かう勤勉な拾い屋コンビが出くわした朝一番の収穫は、二階屋の窓から落ちてきた死体だった――表題作「星を拾う男たち」のほか、旧〈宝石〉終刊号を飾った“史上最も完全な予告殺人”を描く「極楽案内」や、シリーズキャラクターのひとり、中央探偵社の仙石達子部長が登場する「密告者」「重ねて四つ」など、短編集成2巻目となる本書には、63年~66年発表の11編を収める。【収録作】「天然色アリバイ」「共謀者」「目撃者」「誘拐者」「白い火のゆくえ」「極楽案内」「星を拾う男たち」「日本KKK始末」「密告者」「重ねて四つ」「三匹の虻」
  • コブの怪しい魔法使い
    4.1
    故郷の田舎町、テキサス州コブに戻って三カ月、ドラゴンや邪悪な魔法使いの襲撃を心配する必要のない日々が続いている。あこがれのオーウェンと互いの気持ちを確かめ合ったのも束の間、彼の最大の弱点が自分だという、ロマンス小説のヒロインのような立場に立たされてしまったケイティ。魔法の悪用を企む一味との戦いの足手まといになるまいと、ニューヨークをあとにしたのだった。ところが、魔法とは縁のないはずのコブの町で、魔法のにおいのする事件が発生。ケイティは(株)MSIに助けを求める。大家族が繰り広げるてんやわんやをさばきつつの大奮闘、果たしてその結末は? おしゃれでロマンチックなファンタジー第4弾。
  • 天国通り殺人事件
    3.0
    刑事時代、逃走する犯人の車輛の前に立ちはだかったことから、集団自殺するというネズミにちなんで“レミング”と呼ばれているヴァリシュ。ある日、カフェで見知らぬ男に絡まれる。店を出て路地に逃げ込むと、そこには白い手袋をつけピストルを握った男がいた。白手袋の男は、カフェから“レミング”を追ってきた男の頭を撃ち、“レミング”にピストルを渡して立ち去った。このままでは殺人犯にされてしまう! 真相を突き止めるため、“レミング”は被害者が勤めていた療養所に患者として潜入するが……。ブルグドルファー・ミステリ大賞受賞作。
  • 影の歌姫 上
    4.0
    アリーことアルキュオネー、レマン湖のほとりに建つおとぎの城のような館〈アトランティス〉で育った血の繋がらない六人姉妹の次女、フルート奏者にして、ヨット選手。父の死の知らせを聞いたとき、アリーは最愛の人と、地中海の島の湾に錨をおろしたヨットの上にいた。父が死んだ? だがアリーはその前日、父の豪華ヨット〈タイタン号〉を目撃したばかりだった。いったい何が起きていたのか。悲しみをこらえ、前に進もうとするアリーにさらなる悲劇が襲いかかる。世界的ベストセラー作家が謎に満ちた姉妹の運命を描く、好評シリーズ第2弾。
  • 猫の姫、狩りをする
    4.2
    我ら猫のあやかしの、人のそばにいたがるものの多いことよ。人とはそれほどに良いものであろうか。ならば試してみようではないか。そう言って王蜜の君がやってきたのは、なんと太鼓長屋の弥助のところ。気まぐれな妖猫族の姫の居候に、弥助べったりの千弥がいい顔をするはずはなく、小妖の玉雪に至っては、弥助の家に近づけなくなる始末。そんななか、弥助の周辺で猫絡みの事件が頻発、おまけに子猫を狙う不気味な女が出現するに至って、猫の守り手たる王蜜の君は放っておけず、事件の裏を探り始める。猫だらけのお江戸妖怪ファンタジー第6弾。
  • 晴れ時々、食品サンプル
    3.8
    ショッピングサイト《ほしがり堂》を経営する深町ユリオは、古い家電や顔ハメ看板など、ガラクタにしか見えないモノをほしがるマニアックなコレクター。しかしそれらに価値を見出して、お宝として売り捌く彼は、事件を解決する名探偵でもあった! カウボーイグッズを身につけた男が落馬めいた死を遂げた事件、判じ絵ネタをする芸人宅で発見された、被害者の傍にあった道具に隠されたメッセージ、食品サンプルコレクターの告別式で食品サンプルがばらまかれた謎など、全5編を収録。謎解きもお宝にまつわる雑学も楽しい、ポップな連作ミステリ。
  • 海賊島の殺人
    3.5
    〈王国〉の海域を荒らす海賊たちを討伐した功績で名を馳せる海軍提督バロウズ卿が、海賊連合〈南十字星〉の首魁アルバート・リスターに誘拐された――提督救出の密命を受けた若き海軍大尉アランは、天才を自称する元役者の中年男ソープの助力を得て海賊に変装し、〈南十字星〉への潜入を試みる。それぞれ個性豊かな海賊の長たちを束ねる謎の青年リスターらに囲まれた状況下での困難な任務に留まらず、アランたちは〈南十字星〉の本拠地の孤島で起きる連続殺人事件を解く羽目に陥ってしまう。鮮やかな謎解きと爽快な読後感の海洋冒険ミステリ!/解説=宇田川拓也
  • おせっかいなゴッドマザー
    4.2
    あこがれの彼と晴れて両思いになったケイティ。ところがはじめてのデートの朝、待ち合わせ場所に現れたのはおせじにも有能そうには見えないフェアリーゴッドマザー。よりによって生涯でいちばん必要のないときに「本物の恋を見つける手助けをする」とは。なんとかお引き取り願ったものの、肝心のデートは緊急事態発生でお流れ。前途多難だ。一方、魔法の悪用を企む一味が派手な広告戦略に打って出たため、対策を講じることになった(株)MSI。ケイティはまたしても危険な任務につくはめに。だが、それがふたりの仲に早くも亀裂を生じさせることになろうとは……。おしゃれでロマンチックなファンタジー。好評シリーズ第三弾。/解説=妹尾ゆふ子
  • ねじまき片想い
    3.9
    浅草にある老舗おもちゃ会社で働く富田宝子は、楚々として控えめな外見とは裏腹に、好きなものに対するパワーと想像力の豊かさを以て、敏腕プランナーとして活躍している。彼女は取引先のデザイナー西島に恋をしているが、5年も想いを伝えられずにいた。何の因果か次々に災難に見舞われる彼のため、持ち前の機転と自社のおもちゃを駆使しSPのごとくトラブルを解決していく宝子。けれど西島は宝子の奮闘にはまったく気がつかず?! 同僚や同居人も巻き込んで、宝子の恋が向かう先は――。ひとりの女性が大切な気持ちと向き合うまでを描く物語。/解説=松井ゆかり
  • 遭難信号
    3.7
    アイルランドの小さな町で、ハリウッドを夢見て脚本を書き続けてきたアダム。恋人のサラが仕事でバルセロナに出張し、まったく連絡がとれなくなってしまう。だが出発から数日後、アパートにサラのパスポートが郵送されてくる。それには「ごめんなさい――S」とサラの字で書かれた付箋が貼ってあったが、封筒の文字は別人のものだった。彼女に何があったのか? アダムは恋人を追い、手がかりをもとに地中海クルーズ船に乗り込む。千以上もの客室を持つ豪華客船で暴かれる、予想外の真実。巧みな構成力と謎解きの妙味を味わえる衝撃のサスペンス!/解説=穂井田直美
  • ガイコツは眠らず捜査する
    3.0
    大学講師のジョージアと高校生の娘マディソン、それに動いて喋る骸骨シドの三名が愉快に暮らすサッカリー家。マディソンが所属する演劇クラブの『ハムレット』公演に、シドも(頭蓋骨だけ)出演することになった。ところが練習中のある日、彼女はうっかりシドの頭を学校に置いてきてしまう。翌日、無事に回収されたシドは、意外なことを言いだした。夜、何者かの口論と“殺人”の音を聞いたというのだ。その後それらしき死体は見つからないが、ジョージアはシドのため“事件”を調べることに……。母娘と骸骨の絆が魅力の、痛快ミステリ第2弾。/解説=大矢博子
  • 魔導の黎明
    4.3
    内乱から十年、ラバルタ国内での魔導士への迫害は増すばかりで、〈鉄の砦〉も未熟な若者を集めなければ成り立たなくなっていた。そんなある日ひとりの魔導士が奇妙なことに気づいた。〈鉄の砦〉に入ってきた人数と在籍している人数が数百人単位で合わないのだ。それだけの魔導士がいったいどこに消えたのか。同じ頃、エルミーヌで魔導士の指導にあたっているレオンの元に、かつての弟弟子グレイが訪ねてきた。そしてその日から、レオンは姿を消してしまう……。謎を解く鍵はレオンの師が研究していた禁術。感動と共感を呼んだシリーズついに完結。
  • 海泡
    4.0
    暑く長い夏休み、2年ぶりに小笠原へ帰省した大学生の木村洋介。難病を抱え、次第に弱っていく初恋の女性・丸山翔子に会うに忍びなく、帰りにくかったのだ。竹芝からフェリーでおよそ26時間、平和で退屈なだけが取り柄だったはずの島では、前村長の娘で中高の同級生・一宮和希がストーキングされていると噂が立ち、島一番の秀才と謳われ、医学部を目指していた藤井智之は不可思議な言葉を呟く。どこか不穏な空気が漂うなかで、二つの事件が続けざまに起こる――。常夏の島を舞台に、名手が伸びやかに描いた青春ミステリが、大幅改稿、決定版で登場。/解説=千街晶之
  • 望月のあと 覚書源氏物語『若菜』
    3.8
    平安の都は盗賊やつけ火が横行し、乱れはじめていた。だが、そんな世情をよそに、藤原道長は「この世をばわが世とぞ思う……」と歌に詠むほど、栄華を極めていた。紫式部はといえば『源氏物語』の人気に困惑気味の日々。そんななか、式部が訪れたあるお屋敷に、道長が瑠璃という謎の姫君を密かに住まわせていることを知る。式部はこの瑠璃姫と道長になぞらえて物語を書きはじめたものの、次第に現実と物語が重なってきて……。瑠璃姫とはいったい何者なのか? 式部が時の権力者に対して仕掛けた雅な意趣返しとは? 『源氏物語』をめぐる謎を解き明かす、平安王朝推理絵巻第3弾!/解説=荻原規子
  • 松風の記憶
    4.0
    巡業先の広島の古刹で変死した、歌舞伎俳優・浅尾当次。その報を竹野記者から受けた雅楽は、親友である当次の死に疑問を持つ。一方、女子高校生の仲宮ふみ子は、修学旅行で当次の亡くなった古刹を訪れていた。数年後、ふみ子は、当次の長男・当太郎と運命的に出会う――著者の初長編『松風の記憶』。美しい演出家未亡人と若き劇団員が絡み合う、劇団ツバメ座で起こったふしぎな事件の真相を、竹野記者の手記のみから雅楽が推理する『第三の演出者』。戸板康二が遺した雅楽もの長編を完全収録。資料も充実の《中村雅楽探偵全集》シリーズ最終巻。【収録作】「松風の記憶」/「第三の演出者」/中村雅楽エッセイ=戸板康二/徳間ノベルズ版『松風の記憶』 あとがき=戸板康二/講談社文庫版『松風の記憶』 後記=戸板康二/創元推理文庫版編者解題=日下三蔵
  • 劇場の迷子
    4.3
    「千駄ケ谷の小父さん」と、敬愛の念を抱いて訪ねてくる後輩役者や竹野記者が持ち込む、様々な謎を解いてみせる老歌舞伎俳優・中村雅楽。長い人生経験、舞台経験に裏打ちされた老優の推理力は、その芸に劣らず一流で、歌舞伎の世界で起る難問を芸道指南よろしく、鮮やかにそして優雅に解決していく。歌舞伎座で迷子になった、能楽師の一人息子が巻き込まれた事件を描く「劇場の迷子」をはじめ、女形と舞踊家の弟子との恋模様にまつわる「家元の女弟子」、著者最晩年の作品「演劇史異聞」に加え、単行本未収録作「元天才少女」「留め男」「むかしの弟子」など滋味ある謎解き全28編。【収録作】「日曜日のアリバイ」/「灰」/「元天才少女」/「なつかしい旧悪」/「祖母の秘密」/「弁当の照焼」/「銀ブラ」/「不正行為」/「写真の若武者」/「機嫌の悪い役」/「いつものボックス」/「劇場の迷子」/「必死の声」/「芸談の実験」/「かなしい御曹司」/「家元の女弟子」/「京美人の顔」/「女形の愛人」/「一日がわり」/「荒療治」/「市松の絆纏」/「二つの縁談」/「おとむじり」/「油絵の美少女」/「赤いネクタイ」/「留め男」/「むかしの弟子」/「演劇史異聞」/講談社版『劇場の迷子』 後記=戸板康二/創元推理文庫版編者解題=日下三蔵
  • 星水晶の歌 上
    -
    季節外れの嵐、雨のない雷、全てを覆い尽くす白い霧。世界を襲う異常気象は、アトーリス王国が秘密裏に開発した兵器〈氷河〉の影響か。敵国ギルデアがその兵器を奪おうと画策するなか、王室の諜報員ステランは危機感を募らせる。内外から迫る脅威。立ち向かうすべはあるのか。ランドリアはひとつの覚悟を胸にギルデアに赴き、ウィルナーは故国の激戦に身を投じる。一方、サラファーンの星の雫を預言の英雄に届ける途上、砲弾に倒れたジョーは、九死に一生を得るが……。戦乱に翻弄されながら精一杯いまを生きる人びとを描く壮大な四部作ついに完結。
  • イメコン
    3.5
    ある地方都市に住む、人生負け犬気味の男子高校生・武川直央の前に現れた一分の隙もない謎のイケメン・一色一磨。“イメージ・コンサルタント”だと名乗る彼が、「じゃ、遠慮なく」と服装や仕草についてアドバイスをすると、変わりたいと願う依頼人の人生が少しずつ良い方向に向かっていく。さらに一色は依頼人の問題点を見抜く鋭い洞察力で、彼らが巻き込まれてしまった事件を次々に解決するのだった。本当のあなたを見つけてみませんか。“イメコン”一色と高校生の直央、二人が織りなすお仕事ミステリ。
  • 目黒の狂女
    3.3
    日常の謎ミステリの元祖ともよばれる、老歌舞伎俳優・中村雅楽探偵譚。歌舞伎界で起こった様々な事件や謎が持ち込まれると、雅楽は経験に裏打ちされた鋭い洞察力で鮮やかに絵解きをしてみせる。竹野記者の手記によって、雅楽が遭遇したあまたの事件の顛末が明かされていくシリーズ第3巻は、昭和50年代を中心とした作品群。竹野記者が目黒のバス停でつづけざまに出会った狂女にまつわる表題作「目黒の狂女」。なぜ淀君は逃げ延びなかったのかという、歴史に埋もれた謎を雅楽なりの解釈で解明していく「淀君の謎」など粒ぞろいの全23編を収録。【収録作】「かんざしの紋」/「淀君の謎」/「目黒の狂女」/「女友達」/「女形の災難」/「先代の鏡台」/「楽屋の蟹」/「お初さんの逮夜」/「むかしの写真」/「砂浜と少年」/「大使夫人の指輪」/「俳優祭」/「玄関の菊」/「梅の小枝」/「女形と香水」/「子役の病気」/「二枚目の虫歯」/「コロンボという犬」/「神かくし」/「芸養子」/「四番目の箱」/「窓際の支配人」/「木戸御免」/講談社版『目黒の狂女』 あとがき=戸板康二/講談社版『淀君の謎』 後記=戸板康二/創元推理文庫版編者解題=日下三蔵
  • 團十郎切腹事件
    3.9
    江戸川乱歩に見いだされ、旧「宝石」誌に掲載された「車引殺人事件」にはじまる、老歌舞伎役者・中村雅楽の推理譚。複雑な人間模様の歌舞伎界、芸能界を中心に起こる様々な事件や謎を竹野記者が持ち込むや、鮮やかに解き明かす。美しい立女形の失踪事件を解決する「立女形失踪事件」。旅先の旅館で自刃を遂げた八代目市川團十郎の謎を読み解く、第42回直木賞受賞作「團十郎切腹事件」など全18編。立風書房版作品ノートをはじめ、講談社文庫版後記なども併録。ミステリ史に燦然と輝く、中村雅楽の名推理の数々を完全収録する《中村雅楽探偵全集》堂々開幕!【収録作】「車引殺人事件」/「尊像紛失事件」/「立女形失踪事件」/「等々力座殺人事件」/「松王丸変死事件」/「盲女殺人事件」/「ノラ失踪事件」/「團十郎切腹事件」/「六スタ殺人事件」/「不当な解雇」/「奈落殺人事件」/「八重歯の女」/「死んでもCM」/「ほくろの男」/「ある絵解き」/「滝に誘う女」/「加納座実説」/「文士劇と蠅の話」/河出書房新社版『車引殺人事件』 序=江戸川乱歩/旧「宝石」所収各編解説=江戸川乱歩/立風書房版『團十郎切腹事件』 作品ノート=戸板康二/立風書房版『奈落殺人事件』 作品ノート=戸板康二/講談社文庫版『團十郎切腹事件』 後記=戸板康二/創元推理文庫版編者解題=日下三蔵
  • 空の幻像
    4.0
    ペレス警部のもとに、アンスト島でエレノアという女性が失踪したとの知らせがはいる。彼女はテレビ番組の制作者で、親友の結婚式への出席と取材を兼ねて、夫や友人たちと島を訪れていた。現地に渡ったペレスが捜索をはじめてまもなく、エレノアは死体で発見される。島に伝わる少女の幽霊――1930年に溺死した“小さなリジー”のことを取材していた彼女は、失踪する前日に「浜辺で踊る白い服の女の子を見た」と話していたが、そのことと事件との関係は……。シェトランド諸島を舞台に、繊細かつ大胆に織りあげられた、現代英国本格ミステリの優品。/解説=松浦正人
  • グリーン車の子供
    3.9
    7年ぶりに、「盛綱陣屋」の微妙役への出演依頼があった老歌舞伎俳優・中村雅楽。しかし、雅楽は子役の配役が気にいらず、出演をなかなか快諾しない。そんな中、法要のため大阪を訪れた雅楽は、友人の竹野記者とともに帰京する新幹線のグリーン車で、一人の幼い少女と隣同士になる。東京へ到着する直前に「陣屋」への出演を決意した理由とは? 《中村雅楽探偵全集》第二巻は、第29回日本推理作家協会賞を受賞した「グリーン車の子供」を含む全18編。日本推理作家協会賞受賞時の著者の言葉など、資料も併録。【収録作】「ラッキー・シート」/「写真のすすめ」/「密室の鎧」/「一人二役」/「ラスト・シーン」/「臨時停留所」/「隣家の消息」/「美少年の死」/「八人目の寺子」/「句会の短冊」/「虎の巻紛失」/「三人目の権八」/「西の桟敷」/「光源氏の醜聞」/「襲名の扇子」/「グリーン車の子供」/「日本のミミ」/「妹の縁談」/徳間ノベルズ版『グリーン車の子供』 あとがき=戸板康二/受賞の言葉=戸板康二/創元推理文庫版解題=日下三蔵
  • 死後開封のこと 上
    4.6
    すべてはあの手紙がきっかけだった……屋根裏で偶然、夫の字で「死後開封のこと」と書かれた封筒をセシリアが見つけさえしなければ。そのときから、優しい夫と三人の娘との幸せな家庭に暗雲がたれこめる。そのころ、テスもまた夫と従妹からの衝撃の告白に動顛していた。二人は愛し合っているというのだ。テスは息子を連れ、母親の看病を口実に実家へと向かう。その故郷で出会ったのは、何者かに殺された娘をいまだ忘れられない老婦人レイチェルだった……開けてはいけない「パンドラの箱」を開けてしまった女性たちを描くトリッキイなミステリ。
  • 火災調査官
    4.0
    目黒区柿の木坂の空き家で放火が発生し、東京消防庁の火災調査官・東は現場に向かう。消火活動にあたったのは、東の高校時代の先輩であり、現在は目黒消防署八雲出張所のポンプ車小隊長を務める白木だった。そこで東は、犯人の遺留物と思しき、ダ・ヴィンチ『岩窟の聖母』の一部を模写した笑う天使の絵を見せられる。そしてその事件を皮切りに、都内で同じ手口の放火事件が頻発。現場にはなぜか同じ絵が残されていた……。有能だが本心では炎の美しさに執着している火災調査官と、正義感あふれるポンプ車小隊長が事件を追う渾身の長編ミステリ。
  • 日曜の午後はミステリ作家とお茶を
    3.6
    「事件を解決するのは警察だ。ぼくは話をつくるだけ」そう宣言しているミステリ作家のシャンクス。しかし実際は、彼はロマンス作家である妻のコーラと一緒にいくつもの謎や事件に遭遇し、推理を披露して見事解決に導いているのだ。取材を受けているときに犯罪の発生を見抜いたり、殺人容疑で捕まった友人のため真相を探ったり、犯人当てイベント中に起きた『マルタの鷹』初版本盗難事件に挑んだり、講演を依頼された大学で殺人事件に巻き込まれたり……。結婚20年余りになる作家夫妻の日常と謎解き。図書館司書の著者が贈る連作ミステリ短編集。/解説=大矢博子
  • 気まぐれ食堂 神様がくれた休日(なつやすみ)
    3.7
    調理師の実果は、念願の三ツ星レストランで働き始めた矢先にケガをして失業、恋人にも逃げられてしまう。不運が重なり思いがけなく休みができた彼女は、あてもないまま瀬戸内海の小島に滞在することに。島民より猫の多い猫島で民宿を営む老夫婦と、釣りや料理を手伝いながらのんびり過ごす実果。そんなある日、島で道に迷った彼女は、気まぐれで営業しているという風変わりな食堂と出会う。主人らしき青年はいるものの大抵は店を空けていて料理をふるまう様子もない、この謎めいた食堂との出会いをきっかけに、実果にささやかな転機が訪れる――。
  • 弁護士アイゼンベルク
    3.8
    凄腕の女性刑事弁護士アイゼンベルクの元に、ホームレスの少女から弁護の依頼が持ち込まれる。少女の友人のホームレスの男が若い女性を殺害し、死体を損壊した容疑で逮捕された件だという。驚いたことに、その男がアイゼンベルクの元恋人だったという衝撃の事実が判明する。若くして名声を得た物理学教授だった彼が、なぜ路上生活を送り、殺人の被疑者となったのか? 二転三転する事態と、熾烈極まりない裁判の果てに姿をあらわす、あまりに意外な真実。ドイツ推理作家協会賞受賞作家が放つ傑作ミステリ!/解説=川出正樹
  • 占い師はお昼寝中
    3.5
    渋谷のおんぼろビルにある「霊感占い所」には、今日も怪異な現象に頭を悩ますお客さんがやって来る。身の回りの物が消え失せてゆくサラリーマン、ポルターガイスト現象に苛立つキャリアウーマン、写真を撮ったら背後に霊が写った学生、そしてドッペルゲンガーに悩む主婦。そんな彼らの相談に応えて占い師が口にするのは、三度狐や水溶霊など、奇天烈な霊や妖怪の名前ばかり。それらは全部インチキだが、しかし彼の「ご託宣」はいつも見事に怪異の裏に隠された真実を突く。始終寝ている占い師・辰寅叔父と、巫女役をつとめる美衣子の心優しき推理の日々を描いた安楽椅子探偵連作集。/解説=青井夏海
  • カナリア殺人事件
    3.3
    ブロードウェイで男たちを手玉に取りつづけてきた美しきマーガレット・オウデルが、密室で無残に殺害される。カナリアというあだ名の元女優殺人事件の容疑者は、わずかに四人。彼らのアリバイはいずれも欠陥があるが、犯人の決め手の証拠はひとつもなかった。矛盾だらけで不可解きわまりなく、ほかに類を見ない犯罪に挑むのは、名探偵ファイロ・ヴァンス。独自の推理手法で犯人を突き止めようとするのだが……。『ベンスン殺人事件』で颯爽とデビューしたヴァン・ダインが名声を確固たらしめたシリーズ第2弾。/解説=三橋曉
  • ベンスン殺人事件
    3.5
    証券会社の経営者アルヴィン・ベンスンがニューヨークの自宅で射殺された。事件は、有力な容疑者がいるため、解決は容易かと思われた。しかし捜査に、尋常ならざる教養と才気をもち、並はずれて容姿端麗なファイロ・ヴァンスが加わったことで、事態は一変する。友人の地方検事が提示する物的・状況証拠に裏付けられた推理を粉砕するヴァンスが、心理学的推理を用いて突き止める。巨匠S・S・ヴァン・ダインのデビュー作にして、アメリカ本格ミステリの黄金時代の幕開けを告げた記念碑的傑作!/解説=戸川安宣
  • 壺中の天国 上
    3.4
    「全能にして全知の存在から発射されるメッセージを電波として受信しているが妨害者の存在を知ったので殺害を実行したものであり――」盆栽が趣味のシングルマザー・知子が、アイドルに夢中の一人娘と少々お節介な父親とのんびり平和に暮らす稲岡市。しかし犯行声明のような怪文書と共に女子高生の撲殺死体が発見され、静かな地方都市を揺るがす騒動の幕があがる! 通り魔殺人事件が起こるたびに発見される電波系怪文書。被害者を繋ぐミッシング・リンクとは。巧みにはり巡らされた伏線と規格外の推理が冴える、第1回本格ミステリ大賞受賞作。
  • ピラミッド
    4.1
    北欧ミステリの帝王、ヘニング・マンケルが生んだスーパースター、イースタ署の刑事クルト・ヴァランダー。そんなヴァランダーが初めて登場したのは、ガラスの鍵賞受賞の『殺人者の顔』だが、本書は、ヴァランダーがまだ二十代でマルメ署にいた頃の「ナイフの一突き」「裂け目」から、イースタ署に移り、ベテランとなった「海辺の男」「写真家の死」を経て、『殺人者の顔』直前のエピソードで、飛行機墜落の謎と手芸洋品店放火殺人事件を追う「ピラミッド」に至る、5つの中短篇を収録。ヴァランダーの知られざる過去を描いた、贅沢な作品集。
  • 007/薔薇と拳銃【井上一夫訳】
    4.0
    英国秘密情報部の腕利きエージェント、007ことジェームズ・ボンド。祖国の平和と安寧のため、世界を股にかけて危険な任務を遂行する。パリ郊外の静かな森に隠れ潜むソ連の情報機関を破壊する「薔薇と拳銃」、ジャマイカで荘園主夫妻を殺害した、凶悪なナチの残党の男を暗殺する「読後焼却すべし(フオー・ユア・アイズ・オンリー)」、ローマからベニスに通じる麻薬密輸ルートを追跡する「危険」、セーシェル諸島のサンゴ礁を舞台に、アメリカ人の富豪の死を描いた「珍魚ヒルデブランド」、植民地総督がボンドに語る、一組のカップルの数奇な運命「ナッソーの夜」の全5編を収録。
  • 現代詩人探偵
    3.8
    とある地方都市でSNSコミュニティ、『現代詩人卵の会』のオフ会が開かれた。九人の参加者は別れ際に、これからも創作を続け、十年後に再会する約束を交わした。しかし当日集まったのは五人で、残りが自殺などの不審死を遂げていた。なぜ彼らは死ななければならなかったのか。細々と創作を続けながらも、詩を書いて生きていくことに疑問を抱き始めていた僕は、彼らの死にまつわる事情を探り始めるが……。生きることと詩作の両立に悩む孤独な探偵が、創作に取り憑かれた人々の生きた軌跡を辿り、見た光景とは? 気鋭の著者が描くミステリ長編。/解説=宇田川拓也
  • シャーロック・ホームズの蒐集
    4.0
    1927年、アーサー・コナン・ドイルによる最後のシャーロック・ホームズ活躍譚「〈ショスコム・オールド・プレース〉」が《ストランド・マガジン》に掲載されて以降も、この不滅の人気を誇る名探偵の贋作は、数多くの作家によって書かれてきた。本書はそれらに連なる至高の傑作である。大英帝国を縦横無尽に駆け巡るシャーロック・ホームズと相棒ワトスン博士の〈語られざる事件〉を、世界有数のホームズ・ファンが愛と敬意を込めて作品化した、最高水準のパスティーシュ。「ノーフォークの人狼卿の事件」「詮索好きな老婦人の事件」など6編を収録。【収録作】「遅刻しがちな荷馬車の事件」「結ばれた黄色いスカーフの事件」「ノーフォークの人狼卿の事件」「詮索好きな老婦人の事件」「憂慮する令嬢の事件」「曲馬団の醜聞の事件」/単行本版あとがき/単行本版解説=日暮雅通
  • 悪女
    3.0
    20世紀初頭のバルセロナ。町では幼い子どもが何人も失踪し、子どもをさらって貪る化け物の仕業だという噂が立つ。そして今日また一人、新たな子どもが姿を消し、さらに頸動脈を噛みちぎられた男の死体まで発見された。血に飢えたその化け物の名は、エンリケタ・マルティ。人間の魂を刈り取る「私」という全知の存在が、失踪事件を追う刑事たちやエンリケタの手下、家族などさまざまな人物の視点で、「吸血鬼」と呼ばれた稀代の悪女の恐ろしさとおぞましさを語り尽くす。犯罪捜査官である著者が、犯罪者の実話に材を得て描いた戦慄の物語。
  • 真実の10メートル手前
    3.9
    高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める。太刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。日本推理作家協会賞受賞後第一作「名を刻む死」、土砂崩れの現場から救出された老夫婦との会話を通して太刀洗のジャーナリストとしての姿勢を描く「綱渡りの成功例」など粒揃いの6編。第155回直木賞候補作。/解説=宇田川拓也 ※本作品は 2018年3月22日まで販売しておりました単行本電子版『真実の10メートル手前』の文庫電子版となります。 本編内容は単行本電子版と同じとなります。
  • 生贄の木
    4.2
    森の中で、袋に入れられ木から吊るされていた三人の人間が発見された。イカれたパーティー・ガール、狂気に冒された配給所の聖女、そして小児性愛者。ひとりは助かり、ひとりは手遅れ、ひとりは瀕死の状態だった。同じ頃、小児性愛者に誘拐されていたと見られる女の子がマロリーに保護される。ココと名乗るその少女は妖精のような顔立ち、音楽的才能などからウィリアムズ症候群と診断された。ココの心を思いやるチャールズと対立しながらも、マロリーはココに犯人を思い出させようとする。マロリーと少女の奇妙な絆を描く、好評シリーズ。/解説=大矢博子
  • 動く標的
    3.0
    私立探偵リュー・アーチャーは、石油業界の大物サンプソンの夫人から、消えた夫を捜してほしいという依頼を受けた。ロスアンジェルスの空港からお抱えパイロットをまいて失踪したというのだ。その後、夫人宛に本人の署名入りの手紙が届く。取引きに必要な十万ドルを用意せよと。誘拐か? だとしたら誰がなぜ? 彼の安否は? 怪しげな聖人、往年の映画女優、ピアノ弾きの女、バー経営者らとの関係は? 連続する殺人事件は何を語る? マーロウ、スペイドとともにハードボイルド史上不滅の探偵リュー・アーチャー初登場の記念碑的名作、新訳版。/解説=柿沼瑛子
  • 闇の虹水晶
    4.7
    その力、使えばおのれが滅び、使わねば国が滅びよう。それが創石師ナイトゥルにかけられた呪い。人の感情から石を創るたぐい稀な才をもつがゆえに、故国を滅ぼし家族や許婚を殺した憎い敵に、ひとり仕えることになったナイトゥル。憎しみすら失い、生きる気力もなくしていた彼は、言われるまま自らの命を削る創石師の仕事をしていた。そんなある日、怪我人の傷から取り出した黒い水晶が、彼に不思議な幻を見せる。見知らぬ国の見知らぬ人々、そこには有翼獅子(グリフォリス)が……。〈オーリエラントの魔道師〉シリーズで人気の著者が描く、壮大なファンタジー。/解説=卯月鮎
  • 魔法使いの陰謀
    4.2
    セントラル・パークで若い女性の死体が発見され、現場に駆けつけた刑事マイケルは、水妖馬(ケルピー)を目撃する。さらに、子どもが連れ去られるなど妖精の関与が疑われる奇妙な事件が続く。妖精界の女王の座を祖母レオニーに譲ったソフィーは、ようやくバレエダンサーとしてのキャリアを再開していたが、そんなソフィーの前に現れた魔法使いのジョセフィーンは、事件を妖精の仕業と決めつけ、魔法使いと妖精の対立を煽る。このままでは戦争が起きてしまうと危惧したソフィーは、マイケル、エミリーらと共に戦いを阻止すべく動きはじめる。シリーズ第3弾。
  • ビリヤード・ハナブサへようこそ
    4.0
    変わった名前をもつ大学院生、中央(あたり・あきら)。彼はちょっとレトロな撞球場「ビリヤード・ハナブサ」でアルバイトをしている。ビリヤードの腕前は一流、経営手腕は三流の英雄一郎(はなぶさ・ゆういちろう)先生がオーナーの店には、個性的な常連客たちが集う。おしゃべり好きな彼らは、仲間内の誰かが事件に巻き込まれると、プレーそっちのけで推理談議を始め、みな素人探偵となって謎を解こうとするのだ。けれど結局事件の真相を言い当てるのは、アルバイトの中央の役割で?! そして今日もまた不思議な事件が持ち込まれ――。現代の『黒後家蜘蛛の会』登場。第24回鮎川賞受賞作。/解説=福井健太
  • ペインスケール
    3.0
    ロングビーチ市の高級住宅街で、下院議員の息子ベントン三世の妻と幼い子どもたちが殺害された。強盗から政治がらみの怨恨までさまざまな動機が考えられたが、刑事のダニーは壁に飾られた一家の写真を見て不自然さを感じる。子持ちの家庭なら子どもを中心にした写真を飾るのが一般的だろうが、主であるベントン三世の写真ばかりだったのだ。手がかりはそこに? 過去の事件で負った体と心の痛みを抱え、捜査に没頭する刑事ダニーと、静かに彼を支え続ける相棒の女性刑事ジェン。緻密極まりない捜査の魅力と男女刑事コンビの絆を描く警察小説!/解説=若林踏
  • 人魚と金魚鉢
    4.0
    個性豊かなメンバーが集う、T大学芸術学部文芸サークル第三部〈ザ・フール〉。聴き屋体質にして名探偵の柏木君をはじめ、誰よりもネガティブな性格の先輩、推理マニアの美男子学生など、愉快な仲間達が遭遇する事件の数々。音楽学科の学生選抜コンサートの会場となるはずだった、大ホールのステージを泡だらけにした犯人は誰か? そしてその理由とは? 爽やかな余韻が残る表題作ほか、〈ザ・フール〉メンバーの熾烈なかくれんぼを描くシリーズ・キャラクター大活躍の「愚者は春に隠れる」など、全5編を収録。軽やかな連作ミステリ第2弾!/解説=宇田川拓也
  • 月下の蘭/殺人はちょっと面倒
    3.0
    温室での洋蘭の栽培に全身全霊を捧げる美しい義姉。彼女が育てる人面花を巡る悲劇と戦慄の真相を描いた表題作ほか、花・星・蟲・鳥を題材として、幽玄の世界のうちに技巧を尽くした傑作ミステリ短篇集『月下の蘭』。かつて公安警察の鬼と呼ばれた盲目の老人と、彼の愛娘が伴った謎の客との会話が思わぬ過去を暴き出す「夜のジャスミン」ほか、男女の愛憎を中心に据え、鮮やかなツイストで読者を唸らせる『殺人はちょっと面倒』。幻の2冊を合本にて贈る。『血の季節』『弁護側の証人』など大胆な仕掛けで世を驚倒せしめた著者が、歌舞伎、能楽などの古典芸能をモチーフとした8篇を収録。【収録作】『月下の蘭』「月下の蘭――春は花」「残酷なオルフェ――夏は星」「宵闇の彼方より――秋は蟲」「ロドルフ大公の恋人――冬は鳥」/『殺人はちょっと面倒』「ラヴ・ホテル〈瀧〉にて」「殺人はちょっと面倒」「夜のジャスミン」「空白の研究 A Study in Blank」/『月下の蘭』初刊本あとがき/編者解題=日下三蔵
  • こめぐら
    3.5
    【倉知淳ノンシリーズ作品集成第二弾】必要か不必要かはどうでもいいのだ。したいからする。着けたいからつける。これは信念なのだ――密やかなオフ会でとんでもない事態が発生、一本の鍵を必死に探し求める男たちを描く「Aカップの男たち」をはじめ、うそつきキツネ殺害事件の犯人を巡ってどうぶつたちが動機のあげつらいと推理を繰り広げる非本格推理童話「どうぶつの森殺人(獣?)事件」、B級時代劇におけるあまりにも意外な犯人消失の真相を描いた「さむらい探偵血風録」など5編に加え、猫丸先輩探偵譚「毒と饗宴の殺人」を特別収録。【収録作】「Aカップの男たち」「「真犯人を探せ(仮題)」」「さむらい探偵血風録 風雲立志編」「遍在」「どうぶつの森殺人(獣?)事件」「毒と饗宴の殺人」/単行本版あとがき
  • なぎなた
    3.2
    【倉知淳ノンシリーズ作品集成第一弾】死神を思わせる風貌の警部が、完璧だったはずの殺人計画を徐々に崩壊へと導いてゆく――倒叙ミステリ「運命の銀輪」をはじめ、残虐な場面が映し出されているにもかかわらず観客席の闇の中で微笑を浮かべる女性の謎を追いかける「闇ニ笑フ」、米大統領選挙の熱狂の最中に発見されたひとつの死体の謎をファンタスティックな筆致で描く力作本格推理「幻の銃弾」など7編収録。たくらみに満ちたミステリ・ワールドを二分冊で刊行!【収録作】「運命の銀輪」「見られていたもの」「眠り猫、眠れ」「ナイフの三」「猫と死の街」「闇ニ笑フ」「幻の銃弾」/単行本版あとがき
  • そしてミランダを殺す
    3.8
    ある日、ヒースロー空港のバーで、離陸までの時間をつぶしていたテッドは、見知らぬ美女リリーに声をかけられる。彼は酔った勢いで、1週間前に妻のミランダの浮気を知ったことを話し、冗談半分で「妻を殺したい」と漏らす。話を聞いたリリーは、ミランダは殺されて当然と断じ、殺人を正当化する独自の理論を展開してテッドの妻殺害への協力を申し出る。だがふたりの殺人計画が具体化され、決行の日が近づいたとき、予想外の事件が起こり……。男女4人のモノローグで、殺す者と殺される者、追う者と追われる者の攻防が語られる鮮烈な傑作犯罪小説。/解説=三橋曉
  • 玉妖綺譚3 透樹の園
    -
    妖力を奪われ眠りについた相棒の玉妖を目覚めさせる方法を知る唯一の人物、難波俊之の行方を捜し“はざま”をめぐっていた彩音は、ある“はざま”で奇妙な光景を目にする。男たちが異界妖を檻に追い込み、こちらの世界に連れ込んでいたのだ。妖は人間界では実体をもたず、檻をすり抜けてしまうのに、なぜ? 折しも都では“はざま”や異界妖の出現が増え、その存在を隠そうとする政府を悩ませていた。俊之捜しを続ける彩音は、いつの間にか遷都をめぐる陰謀に巻き込まれる羽目に……。石に宿る精霊、玉妖と驅妖師の絆を描く、シリーズ第3弾。
  • 龍の騎手
    3.7
    領地を荒らすグリフォンの群れを退治してほしいという、メリーボーン卿の要請に応えてやってきたのは五人の騎手。騎手といえば誇り高く高潔な人物……のはずだが、メリーボーン荘園の事務官の次女アリザと、龍の騎手アラステア・デアレッドの出会いは最悪だった。アリザが仲良くしている庭妖精たちと争いになってしまったのだ。なんて高慢ちきでいやな奴! だが、グリフォンは大事な妹を殺した憎い敵。アリザは騎手たちのグリフォン退治に案内役として同行するが……。『高慢と偏見』×ドラゴンの世界を描いたロマンティック・ファンタジー。
  • 許されざる者
    3.7
    国家犯罪捜査局の元凄腕長官ラーシュ・マッティン・ヨハンソン。脳梗塞で倒れ、一命はとりとめたものの、右半身に麻痺が残る。そんな彼に主治医の女性が相談をもちかけた。牧師だった父が、懺悔で25年前の未解決事件の犯人について聞いていたというのだ。9歳の少女が暴行の上殺害された事件。だが、事件は時効になっていた。ラーシュは相棒だった元捜査官や介護士を手足に、事件を調べ直す。犯人をみつけだし、報いを受けさせることはできるのか。スウェーデンミステリ界の重鎮による、CWA賞、ガラスの鍵賞など5冠に輝く究極の警察小説。/解説=杉江松恋
  • 湖底のまつり
    3.6
    傷心を癒す旅に出た若い女性香島紀子は、東北地方の山間の村で、急に水量が増した川の岩場に取り残される。岸に戻ろうと水に入った紀子は流れに呑まれそうになるが、ロープが投げられ辛うじて救出された。助けてくれたのは、土地の若者埴田晃二で、その夜晃二の家に泊まった紀子は彼に抱かれる。翌朝目覚めると晃二の姿はなかった。村祭で賑わう神社に行き、村人に尋ねると晃二はひと月前に毒殺されたと告げられた。では彼女を助け、晃二と名乗った人物は誰なのか? 文学的な香気漂う描写の陰から、著者が仕掛けた謎が妖しく浮かび上がる……?!/解説=綾辻行人
  • 田舎の刑事の好敵手
    4.0
    県警本部より首席監察官が視察にやって来る。監察官とは警察内部の警察だ。この知らせに問題だらけの田舎の刑事たちは大慌て。しかもこの監察官、黒川鈴木の高校時代のライバルだったのだが、警察官としては致命的な欠点があったのだ……。はた迷惑な来訪者のせいで署内がパニックに陥るなか、小劇団事務所荒らしの捜査に駆り出された黒川。無能な部下・白石や恐るべき黒川夫人、そして暴走するライバルに頭を抱えながら捜査を進めるが、小さな事件はやがて殺人事件に発展する!? 田舎でだってやっぱり難事件は起こる。鬼刑事・黒川鈴木に暇はなし! 大好評コミカルミステリ第三弾。
  • 流れ舟は帰らず 木枯し紋次郎ミステリ傑作選
    4.3
    三度笠を被り長い楊枝をくわえた姿で、無宿渡世の旅を続ける木枯し紋次郎。己の腕だけを頼りに、人との関わりを避けて孤独に生きる紋次郎だが、否応なしに旅先で事件に巻き込まれてゆく。兄弟分の身代わりとして島送りになった紋次郎が、ある噂を聞きつけ島抜けして事の真相を追う「赦免花は散った」。瀕死の老商人の依頼で家出した息子を捜す「流れ舟は帰らず」。脱走した女郎たちとの逃避行の意外な顛末を綴る「笛が流れた雁坂峠」。ミステリと時代小説、両ジャンルにおける名手が描く、凄腕の旅人にして名探偵が活躍する珠玉の10編を収録。【収録作】「赦免花は散った」「流れ舟は帰らず」「女人講の闇を裂く」「大江戸の夜を走れ」「笛が流れた雁坂峠」「霧雨に二度哭いた」「鬼が一匹関わった」「旅立ちは三日後に」「桜が隠す嘘二つ」「明日も無宿の次男坊」/編者解説=末國善己
  • タラント氏の事件簿[完全版]
    3.5
    メトロポリタン博物館から忽然と消えた古写本、ペントハウスで起きた密室殺人、乗る者を次々死に追いやるボートの怪、古詩のとおりに消失と出現を繰り返す竪琴……いずれ劣らぬ怪事件に理知の光を当てて真相をあばくのは、日本人執事カトーを従えた謎の紳士トレヴィス・タラントである。巨匠クイーンが「当代におけるもっとも想像力に富んだ探偵小説」と評し、〈クイーンの定員〉に選出した傑作短編集に、その後に発表された「消えたスター」「危険なタリスマン」など4編を追加収録し、不可能趣味に満ちたシリーズ全作品を網羅した文庫決定版!/解説=千街晶之
  • 雪には雪のなりたい白さがある
    3.6
    銀行に勤める瑞希は、中学三年生の冬に別れた同級生の恋人を忘れられずにいた。「フルート奏者になる」「宇宙に関わる仕事をする」夢を語り合った所沢航空記念公園。展示されている飛行機「天馬」の前で、別れの直前に二人はある約束をした。それを支えに生きてきた瑞希だが、届いた同窓会の招待状に彼との再会を期待し思い出の公園に立ち寄ると、中学時代の記憶が鮮やかに蘇る。ふたたび「天馬」の前に立ったとき、十年の空白が埋まるように“約束”のもうひとつの真実が明らかになる(「雪には雪のなりたい白さがある」)。会いたい人は今、どうしていますか? 公園を舞台に、時を超え思い出が交差する。5つの奇跡の物語。
  • 妖怪姫、婿をとる
    4.1
    「許嫁がさらわれた! 取り返すから手を貸してくれ」飛びこんできた久蔵の絶叫に、弥助は仰天した。人さらいなら、十手持ちにでも訴えるのが筋ではないか。だが、聞けば許嫁は妖怪、しかもいいところのおじょうさんだと言う。え? 許嫁が妖怪? 驚きのあまり言葉を失う弥助だったが、真剣な面持ちで頼みこむ久蔵に、千弥は厄介事が大好物の大妖である妖猫族の姫、王蜜の君を紹介する。王蜜の君の手引きで許嫁の初音がさらわれたと思しき、華蛇族の屋敷に忍びこんだ久蔵だったが……。遊び人久蔵に降りかかる試練を描く、人気シリーズ第5弾!
  • 声

    3.8
    クリスマスシーズンで賑わうレイキャヴィクのホテルの地下室で、一人の男が殺された。ホテルの元ドアマンだったという地味で孤独な男は、サンタクロースの扮装でめった刺しにされていた。捜査官エーレンデュルは捜査を進めるうちに、被害者の驚愕の過去を知る。一人の男の栄光、悲劇、転落……そして死。自らも癒やすことのできない傷をかかえたエーレンデュルが到達した悲しい真実。全世界でシリーズ累計1000万部突破。翻訳ミステリー大賞・読者賞をダブル受賞。家族の在り方を描き続ける著者の、『湿地』『緑衣の女』に続くシリーズ第3弾。
  • 何が困るかって
    3.6
    小説でしか表現できない〈奇妙な味〉が横溢した、短いけど忘れがたい、不思議なお話を読んでみませんか?――子供じみた嫉妬から仕掛けられた「いじわるゲーム」の行方、夜更けの酒場で披露される「怖い話」の意外な結末、バスの車内で静かに熾烈に繰り広げられる「勝負」、あなたの日常を見守るけなげな「洗面台」の独白、「鍵のかからない部屋」から出たくてたまらない“私”の物語――日常と非日常のあわいに見える18の情景をさまざまな筆致で描きだす、『青空の卵』や『和菓子のアン』の名手が贈る珠玉のショートストーリー集。巻末に「ホリデーが肉だと先生が困る」を特別併載。/解説=東雅夫
  • 内部の真実
    4.0
    本島人鉄工業者の邸の庭で起きた、日本軍人の決闘騒ぎ。一方は銃殺され、一方は頭部を殴られ意識不明の状態で発見された。最初は単純な事件と思われたが、現場に残された二挺の拳銃はどちらも指紋が拭われており、相手を殺したと目される男の側に落ちていた拳銃は弾が未装填だったことが判明する……。推理と恋と幻想が混然一体となった名匠の最高傑作。/解説=新保博久
  • 蝶のいた庭
    3.9
    FBI特別捜査官のヴィクターは、若い女性の事情聴取に取りかかった。彼女は〈庭師〉と呼ばれる男に拉致された10名以上の女性とともに警察に保護された。滝や小川があり、蝶が飛びかう楽園のような〈ガーデン〉――完全防音で随所に監視カメラが設置され、外界から隔離された秘密の温室に、彼女たちはコレクションとして軟禁されていたのだ。女性の口からじわじわと明かされていく事件の全貌に、恐ろしい犯罪に慣れているはずの捜査官たちが戦慄する。おぞましくも美しいこの地獄でいったい何が起きたのか。一気読み必至、究極のサスペンス!
  • クリスマスに少女は還る
    4.1
    クリスマスも近いある日、二人の少女が町から姿を消した。州副知事の娘と、その親友でホラーマニアの問題児だ。誘拐か? 刑事ルージュにとって、これは悪夢の再開だった。十五年前のこの季節に誘拐され殺されたもう一人の少女――双子の妹。だが、あのときの犯人はいまも刑務所の中だ。まさか……。そんなとき、顔に傷痕のある女が彼の前に現れて言う。「わたしはあなたの過去を知っている」。一方、何者かに監禁された少女たちは、奇妙な地下室に潜み、力を合わせて脱出のチャンスをうかがっていた……。一読するや衝撃と感動が走り、再読しては巧緻をきわめたプロットに唸る。では、新鋭が放つ超絶の問題作をどうぞ!/解説=萩原香※紙書籍版とはカバー画像が異なります。
  • 修道女フィデルマの挑戦 修道女フィデルマ短編集
    3.6
    法廷弁護士にして裁判官の資格を持つ美貌の修道女フィデルマ。彼女がまだ修道女になる前、モラン師が学院長をつとめるタラの学問所に入学した時に出合った、フィデルマ最初の事件「化粧ポウチ」、フィデルマが学問所の最終試験として出された事件の謎を解く「痣」、ドーリィーの資格を得、修道女になってからの事件、三晩続けて聞かれた死を告げるバンシーの声の正体「バンシー」、有名なローマ第九ヒスパニア軍団の鷲の謎にフィデルマが挑む「消えた鷲」など全6編を収録。若き日のフィデルマに会える、人気シリーズ日本オリジナル短編集第4弾。/解説=大矢博子
  • 書店猫ハムレットのうたた寝
    4.2
    経営する書店に、ダーラがコーヒー・バーを開設してから四ヵ月。店員のロバートが淹れるラテなどが好評だ。さらに、ダーラが企画した地域のお祭りの準備も着々と進行中。一方で、書店のマスコット猫のハムレットは相変わらず店の好きなところで寝たり、店内を堂々と闊歩したり。そしてお祭り当日、イベントは無事に終了するかと思いきや、コーヒー・ショップの店主の妻が死体で発見される。背景には、ひそかに流通しているという薬物が関係している? 黒猫探偵の活躍が光る、楽しいコージー・ミステリ!
  • 鳥籠の家
    3.6
    豪商天鵺家の跡継ぎ、鷹丸の遊び相手として迎え入れられた勇敢な少女茜。だが、屋敷での日々は、奇怪で謎に満ちたものだった。天鵺家に伝わる数々のしきたり、異様に虫を恐れる人々、鳥女と呼ばれる守り神……。茜がようやく慣れてきた矢先、屋敷の背後に広がる黒い森から鷹丸の命を狙って人ならぬものが襲撃してくる。それは、かつて富と引き換えに魔物に捧げられた天鵺家の女、揚羽姫の怨霊だった。一族の跡継ぎにのしかかる負の鎖を断ち切るため、茜と鷹丸は黒い森へ向かう。〈妖怪の子預かります〉シリーズで人気の著者が放つ時代ファンタジー。/解説=井辻朱美(単行本版タイトル『鵺の家』を改題した文庫版を底本といたしました)
  • 名探偵の証明
    3.5
    そのめざましい活躍から、1980年代には推理小説界に「新本格ブーム」までを招来した名探偵・屋敷啓次郎。行く先々で事件に遭遇するものの、ほぼ十割の解決率を誇っていた――。しかし時は無情にもすぎて現代、60代となったかつてのヒーローはある事件で傷を負い、ひっそりと暮らしている。そんな屋敷のもとを、元相棒が訪ねてきた。資産家一家に届いた脅迫状の謎をめぐり、探偵業の傍らタレントとしても活躍している蜜柑花子と対決しようとの誘いだった。人里離れた別荘で巻き起こる密室殺人、さらにその後の屋敷の姿を迫真の筆致で描いた長編ミステリ。第23回鮎川哲也賞受賞作。/解説=村上貴史
  • ワニの町へ来たスパイ
    4.0
    超凄腕CIA秘密工作員のわたしは、潜入任務でちょっぴり派手に暴れたせいで、狙われる身となり一時潜伏を命じられる。ルイジアナの田舎町シンフルで、“元ミスコン女王の司書で趣味は編みもの”という、自分とは正反対の女性になりすましつつ静かに暮らすつもりが、到着するなり保安官助手に目をつけられ、住む家の裏の川で人骨を発見してしまう。そのうえ町を仕切る老婦人たちに焚きつけられ、ともに人骨事件の真相を追うことに……。人口三百に満たない町でいったい何が起きている? アメリカ本国で大人気、型破りなミステリ・シリーズ第一弾。
  • コリーニ事件
    4.2
    67歳のイタリア人、コリーニが殺人容疑で逮捕された。被害者は大金持ちの実業家で、事務所を開いたばかりの新米弁護士ライネンは国選弁護人を買ってでる。だが、殺されたのはライネンの亡くなった親友の祖父だったと判明する。知らずに引き受けたとはいえ、少年時代に世話になった恩人を殺した男を弁護しなければならない――。苦悩するライネンと、被害者遺族側の辣腕弁護士マッティンガーが法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。そして裁判で明かされた、事件の驚くべき背景とは。刑事事件弁護士の著者が研ぎ澄まされた筆致で描く、圧巻の法廷劇!/解説=瀧井朝世
  • 七つの海を照らす星
    4.1
    様々な事情を抱えた子どもたちが暮らす児童養護施設・七海学園では、少女にまつわる七つの怪異が言い伝えられ、今でも学園で起きる新たな事件に不可思議な謎を投げかけていた。孤独な少女の心を支える“死から蘇った先輩”。行き止まりの階段から、夏の幻のように消えた新入生。女の子が六人揃うと“七人目”が囁く暗闇のトンネル……勤めて二年目の保育士・北沢春菜は、児童福祉司の海王の力を借り、謎解きを通して子どもたちが直面する悩みを解決すべく奮闘する。過去と現在を繋ぐ六つの謎、そして七番目の謎が解かれる時明らかになるもう一つの真実とは。第18回鮎川哲也賞受賞作。/解説=宇田川拓也
  • アルバトロスは羽ばたかない
    4.2
    海を望む街に建つ児童養護施設・七海学園に勤めて三年目となる保育士の北沢春菜は、毎日多忙な仕事に追われつつも、学園の日常に起きるささやかながら不可思議な事件の解明に励んでいた。そんな慌ただしくも幸せな日々に、学園の少年少女が通う高校の文化祭の日に起きた、校舎屋上からの転落事件が影を落とす。警察の見解通り、これは単なる不慮の事故なのか? だが、この件に先立つ春から晩秋にかけて春菜が奔走した、学園の子どもたちに関わる四つの事件に、意外な真相に繋がる重要な手がかりが隠されていた――鮎川哲也賞受賞作『七つの海を照らす星』に続く清新な本格ミステリ。/解説=千街晶之
  • 吟遊詩人の魔法 上
    4.0
    かつてエイヴァールでは、吟遊詩人が学ぶ学院の〈視者〉たちが強大な魔法の力をふるい、王権とならびたつ権力を握っていた。だが〈視者〉の一部が禁断の魔法に手を染めたために争いがおき、学院は弱体化し、吟遊詩人の魔法は失われてしまった。……十二年に一度、タムリュリンの都では、盛夏祭に行われる競技会で最も優れた技を披露し優勝した吟遊詩人に〈銀の枝〉が与えられる。いまや王に絶大な影響力を及ぼす宮廷詩人も、競技会の優勝者だった。秘められた魔法と、陰謀が渦巻く都を舞台に、吟遊詩人たちの密かな戦いを描く本格ファンタジイ。
  • レイチェル
    4.1
    従兄アンブローズ――両親を亡くしたわたしにとって、彼は父でもあり兄でもある、いやそれ以上の存在だった。彼がフィレンツェで結婚したと聞いたとき、わたしは孤独を感じた。そして急逝したときには、妻となったレイチェルを、顔も知らぬまま恨んだ。が、彼女がコーンウォールを訪れたとき、わたしはその美しさに心を奪われる。二十五歳になり財産を相続したら、彼女を妻に迎えよう。しかし、遺されたアンブローズの手紙が、想いに影を落とす。彼は殺されたのか? レイチェルの結婚は財産めあてか? せめぎあう愛と疑惑のなか、わたしが選んだ答えは……もうひとつの『レベッカ』として世評高い傑作。
  • 狩人の手
    4.0
    海岸にある洞窟遺跡近くで先史時代専門の女性考古学者の無惨な遺体が発見された。殺害され海に投げ込まれ、魚たちに食い散らされた遺体。そして連続する女性の惨殺事件。事件現場には謎の手形の描かれた紙片が残されていた。謎の殺人者を追うマルセイユ警察主任警部ド・パルマはオペラを愛しアリアを口ずさむ優雅さから、男爵(バロン)と呼ばれる一方、違法すれすれの荒っぽい手法で部下を戸惑わせる。事件の鍵は学者の研究テーマである先史時代のシャーマニズムにあるのか? フランスのミステリ・マニアたちが交流サイトで選出するロンポル賞受賞の傑作。
  • 矢の家
    4.0
    フランスのディジョンに住む資産家ハーロウ夫人の死は、養女ベティによる毒殺である――夫人の義弟ワベルスキーがそう警察に告発したとの報が、ロンドンにある夫人の法律事務所に届く。事務所の若き弁護士フロビッシャーは事態を収拾すべく、事件を担当するパリ警視庁の名探偵アノーと接触してから現地に赴き、ベティとその友人アン、ふたりの可憐な女性と出会うのだった。“矢の家”グルネル荘で繰り広げられた名探偵と真犯人との見えざる闘いに、読者は解決編において驚嘆するであろう。文豪・福永武彦による翻訳で贈る、メースンの代表長編。/解説=杉江松恋
  • 雪の夜は小さなホテルで謎解きを
    3.5
    12歳のマイロの両親が営む丘の上の小さなホテル、〈緑色のガラスの家(グリーングラス・ハウス)〉。クリスマス前の冬の日、ホテルに5人の奇妙な客が現れる。彼らは全員が滞在予定日数を告げず、他の客がいることに非常に驚いていた。なぜ雪に閉ざされたこのホテルにわざわざやってきたのだろう? 5人のうちの誰かが落としたと思しき、古い紙片に描かれた海図らしきものを手がかりに、宿泊客たちの目的を探ることにしたマイロ。だが、客たちの謎は、このホテルに隠されたとてつもない秘密につながっていた……? MWA賞受賞、心あたたまる聖夜の物語をお贈りします。
  • バッキンガム宮殿のVIP
    4.3
    1942年、戦争がつづくロンドンに戻ったわたし、マギー・ホープは、ドイツの強制収容所に収監されている異父姉妹と再会できる日を心待ちにしつつ、特別作戦執行部(SOE)で事務の仕事についていた。そんななか、MI‐5の長官から、ある事件の捜査協力を要請される。SOEの訓練を受けた女性ばかりが行方不明になり、そのうちの一人の死体が発見されたというのだ。死体の状態から、犯人はあのいまわしい事件を模倣しているとしか思えないのだが……。マギー・ホープ、今度は戦時下のロンドンで勃発する連続殺人事件に挑む! 大好評のシリーズ第6弾。
  • 犯罪心理捜査官セバスチャン 少女 上
    3.5
    父親、母親、そしてふたりの息子。その家では一家四人が無残な死体で発見された。凶器は散弾銃、怪しい人物はすぐに挙がった。違法狩猟をめぐって、殺害された一家ともめていた男がいたのだ。だが、事件への関与を証明するのは困難。現場のトシュビー市の市長の夫で、捜査責任者のエリック・フロディーン警部は外部から応援を要請する決心をした。昇進したての彼は、なんとしてでも早急に事件を解決し、自分の昇進が妻のコネではないことを証明したかった。そこで呼ばれた最高の人材、それがトルケル率いる国家刑事警察殺人捜査特別班だった。凄腕の迷惑捜査官、本領発揮! 人気シリーズ第4弾。
  • 魔導の矜持
    4.6
    内乱以来、魔導士への迫害がさらに悪化したラバルタ。デュナンはミオ師の私塾で学ぶ魔導士の卵だが、落ちこぼれだ。ある日、私塾が魔導士を逆恨みする村人に襲われ、師や兄弟子たちが殺されてしまう。生き残った弟弟子と妹弟子を連れ、必死で逃げるデュナン。だが、所詮は子どもの足、魔導士狩りの人々に追われ、力尽きた彼女らを救ったのは、貴族の庶子ノエと元騎士のガンドだった。四人が魔導士とは気づかず助けてくれたのだ。デュナンは、自分たちは魔導士に追われていると嘘をつくが……。『魔導の系譜』『魔導の福音』に続く、シリーズ第3弾。
  • 熾天使の夏
    3.0
    学生運動に伴うリンチ事件の主謀者として三年間の刑務所生活を終え、男はひっそりと暮らしていた。ある日彼は、自分が尾行されていることに気づく。待ち伏せてみるとそれは昔の仲間であったのだが……。完璧な自殺それが問題だ――頭蓋の奥で響く小さな呟きを意識しながら、植民地都市へ向かい、飛翔を試みた、かつて革命の時を生きた男は何を思い、何を求めるのか? 矢吹駆の罪と罰を描いた、シリーズ第ゼロ作にして、笠井潔の原点! 幻の処女長編テロリズム小説。/講談社文庫版解説=竹田青嗣、創元推理文庫版解説=小森健太朗
  • ポンド氏の逆説
    3.0
    温厚で小柄な紳士ポンド氏には、穏当な筋のとおった談話の最中に奇妙な発言をまじえる癖があった。死刑執行延期命令書を携えた兵士が途中で死んだせいで、囚人は解放された。二人の意見が完全に一致したために、片方がもう一人を殺した……など、辻褄の合わないポンド氏の発言が明らかにする、さまざまな事件に隠された、論理的だがあまりにも奇妙な真相。巨匠自らが逆説集と銘打った珠玉の短編集を新訳決定版にて贈る。文豪ボルヘスも驚嘆した「黙示録の三人の騎者」など、全8編を収録する、新訳決定版。【収録作】「黙示録の三人の騎者」「ガヘガン大尉の罪」「博士の意見が一致する時」「ポンドのパンタルーン」「名前を出せぬ男」「恋人たちの指輪」「恐ろしき色男」「高すぎる話」/解説=西崎憲
  • 赤い靴の誘惑
    4.4
    ケイティ・チャンドラー26歳。ニューヨークに出てきて1年余り。やっと自分の能力をいかせる職場と巡り合い、どうやら彼氏のいない生活からも卒業の気配。一見順風満帆のようだが、やはり人生そううまくはいかないもの。スパイ事件が発生し、社内の雰囲気は最悪に。魔法に免疫のあるケイティがスパイ事件の調査を任され、ただでさえ目が回るほどの忙しさのなか、なんとテキサスからパパとママがやってくるという。つき合いはじめたばかりの、会社の顧問弁護士で免疫者(イミユーン)仲間イーサンの協力で、なんとか無事乗りきれると思った矢先、ママが変なものが見えると言い出した。危うし、ケイティ! 好評〈(株)魔法製作所〉第2弾。
  • ずっとお城で暮らしてる
    3.8
    あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。姉のコンスタンスといっしょに、他の家族が皆殺しにされたこの屋敷で、ずっと暮らしている……。惨劇の起きた資産家一族の生き残り。村人から忌み嫌われ、外界との交流も最低限に止める彼女たちは、独自のルールを定めて静かな生活を送っていた。しかし従兄チャールズの来訪をきっかけに、美しく病んだ箱庭世界は大きな変化をむかえる。“魔女”と称された異色作家が、超自然的要素を排し、無垢な少女の視点から人間心理に潜む悪意が引き起こす恐怖を描く代表作。/解説=桜庭一樹
  • 穢れた風
    3.6
    風力発電施設建設会社のビルの中で、夜警の死体が発見された。一見、階段を踏み外したための事故死に思われたが、監視カメラに侵入者が写っていたことで、にわかに殺人の様相を呈する。奇妙なことに、社長室のデスクの上になぜかハムスターの死骸が残されていた。これは一体何を意味しているのか? 風力発電の利権をめぐって次々に容疑者が浮かびあがり、さらに第二の殺人が。再生可能エネルギーにかかわる国家的犯罪なのか? 人々の欲望と、巨大な陰謀に呑み込まれる刑事オリヴァーとピア。〈ドイツミステリの女王〉による新たな傑作が誕生!/解説=大矢博子
  • その絆は対角線
    3.4
    内気な性格に悩む中学生の千鶴は、自身を変えるための新しい挑戦として、“憧れの国”と呼ばれる四谷のカルチャーセンターに通い始める。そこで出会ったのは、性格も学校も異なるがそれぞれに悩みを抱える同い年の、桃、真紀、公子。なぜかいつも講座でささやかな謎に遭遇する彼女たちは、時にぶつかり合い、時に支え合いながら、事件を通して自分の内面を見つめ直していく。創作講座で絶賛された作者不明の原稿、経済学講座を担当するカリスマ講師を巡る盗難事件。それらの謎を解き明かした時に、少女たちは成長していく。温かな青春ミステリ。
  • 老人犯罪団の逆襲
    3.0
    国立美術館の絵画誘拐と身代金奪取をまんまと成功させ、大金を手にした老人犯罪一味ネンキナー団の面々。ほとぼりが冷めるまでと、ラスベガスでカジノ三昧の日々を送っていたが、さすがに故郷が恋しくなってきた。それに福祉崩壊の皺寄せを受けている老人たちのための資金は、まだまだ足りない。メッタをリーダーとする5人の団員は新たな犯罪に着手すべく、再びスウェーデンに。だが、せっかく入手したアジトである一軒家の隣は、バイク族バンドエンジェルズの巣窟だった。危うしネンキナー団。老人たちの痛快無比な活躍を描くシリーズ第2弾。
  • 女王のジレンマ
    4.4
    公園で見つかった奇妙な死体。70年代のディスコ全盛期の服装で、外傷はないが、怯えた表情をしている。現場を調べていた刑事マイケルは、側に妖精がいることに気づく。その妖精によると、新しい女王の命を受けた部下たちが、人間と、女王に忠誠を誓うことを拒んだ妖精を追放しているのだという。死体の男も、妖精界から追放された人間だった。だが、新たな女王になったソフィーがそんなことをするはずはない。妖精界で何が起きているのか? マイケルは新米女王のソフィーと共に妖精界に乗りこむ。〈(株)魔法製作所〉の著者の新シリーズ第2弾。
  • ニューヨークの魔法使い
    4.1
    ニューヨークは変わった街だと聞いてはいたが、これほどとは思わなかった。テキサスの田舎から出てきて一年、いまだに毎日驚いてばかりいる。宙に浮いている妖精や耳のとがったエルフ、教会の屋根にいたりいなかったりするガーゴイル……。こんなの想定外だ。でも、ニューヨーカーたちは振り返りもしない。変なのはこの街? それともわたし? ボーイフレンドはできないし、会社の女上司はヒステリーの二重人格。いい加減にうんざりしていたある日、思いもかけない転職の話が舞い込んできた。でもちょっと待って、うまい話には必ず裏がある。現代のニューヨークを舞台にした、魔法版『ブリジット・ジョーンズの日記』。(株)魔法製作所シリーズ第1弾。
  • 死のオブジェ
    3.5
    画廊で殺されたアーティスト。胸の上には一枚のカードがタイトルのように「死」と告げていた。NY市警には、同じオーナーの画廊で12年前に起きた猟奇殺人事件との関連を示唆する手紙が届く。切り刻まれ、オブジェとして展示されたアーティストとダンサーの死体。捜査を担当したマーコヴィッツは、容疑者の自白を信じていなかった。マロリーの再捜査は関係者たちの秘密を容赦なく暴き、閉ざされた過去をこじ開ける。娘の死と同時に失踪した画家の行方は? 膨大に遺されたマーコヴィッツのメモが指し示す真犯人は? 伏魔殿のようなアート業界に踏み込んだマロリーに、市警を牛耳る何者かの捜査妨害が……シリーズ第3弾!/解説=穂井田直美
  • ブラウン神父の醜聞
    3.0
    その古書を開いた者は跡形もなく消えてしまう──そう伝えられるとおりの事件が起きる「古書の呪い」を始め、閉ざされた現場で発生した奇妙な殺人の謎がこのうえなく鮮やかに解かれる「《ブルー》氏の追跡」、陸へ上がったばかりの提督が殺害された奇妙な事件とブラウン神父の鮮やかな推理が光る「緑の人」や「共産主義者の犯罪」など、いずれもチェスタトン特有のユーモアと、逆説にあふれた、粒よりの9編を収録する。全編が必読にして傑作という、奇跡のような〈ブラウン神父〉シリーズ、堂々の最終巻!/解説=若島 正
  • 怪盗の伴走者
    4.0
    帝都を騒がす大怪盗ロータスが盗みに失敗した! 東京は浅草の高層建築「凌雲閣」。その一角に飾られた油絵を盗もうとした怪盗は、番人に見つかり絵を置いて逃げたというのだ。この椿事は記者の高広の耳にも届く。ロータスは高広とも天才絵師・礼とも因縁浅からぬ相手、ただ失敗したとは思えない。さらに凌雲閣を再訪すると予告状が出されたとの情報が入り、高広と礼が調査を始める。同じ頃、彼らが再会した安西はロータス一連の窃盗事件の主任検事となっていた。怪盗と検事、今は敵対関係にあるが、かつては友人であり並んで駆けた時代があった。決別した二人がついに相まみえる! 大好評〈帝都探偵絵図〉シリーズ第4弾。
  • ガイコツと探偵をする方法
    4.0
    故郷の大学に非常勤講師の職を得て、高校生の娘と共に戻ってきたシングルマザーのジョージア。懐かしの我が家では、幼い頃からの親友シドが待っていた。彼は全身白ずくめ、余分な肉のない骨ばった外見……というか、骨そのもの。そう、シドは世にも不思議な、歩いて喋る骸骨なのだ。生前の記憶がない彼だが、仮装して遊びにいった大学で、見覚えのある人物とすれ違う。それをきっかけに、生前のシドについて調べはじめたジョージアたちは殺人事件に巻きこまれてしまう……たっぷり笑えてちょっぴり泣ける、骨の髄から楽しめるミステリ新シリーズ。/解説=上條ひろみ
  • アマンダの影
    3.5
    マロリーが殺された? 部下の報告で検視局に駆けつけたライカーが見たのは、彼女の名前の入ったブレザーを着た別人の死体だった。身元を突き止めたマロリーとライカーは、被害者アマンダ・ボッシュの住居を調査する。くまなく掃除された部屋。消去された名簿ファイル。彼女自身のことを書いたと思われる小説原稿。そして猫――唯一の目撃者? マロリーは復元した名簿を手がかりに高級コンドミニアムに潜入し、容疑者たちに仮借ない捜査の手を伸ばす。上流階級の虚飾の下に澱む策謀と欲望。ひとりの女を死に追いこんだ「嘘つき」は誰なのか? 善悪の彼岸に立つ、非情にして無垢なヒロインの活躍を描く、シリーズ第2弾!/解説=川出正樹
  • 哲学者の密室
    4.3
    三つの事件を経て、矢吹駆に対する自分の感情を持て余していたナディア。そこに起こった新たな事件は、頭部を殴打され、背中に刺傷を負った死体が、誰も入ることのできぬはずの三重密室の中で発見される、という衝撃的なものであった。さらに、その謎を追う彼女の前に、第二次大戦中、コフカ収容所で起こった密室殺人事件が浮かび上がってくる。二つの事件の思想的背景には、二十世紀最大の哲学者のある謎が存在した。ナディアに請われ、得意の本質直観による推理で事件に立ち向かう矢吹駆の前には宿敵イリイチの影が……!? 現代本格探偵小説を生み出した大量死の謎をも解き明かす、シリーズ最高傑作の呼び声高い第4作。/解説=田中博
  • 薔薇の女
    3.6
    フィリップ・モリスをひとつ――紙幣と共に差し出された名刺が、映画女優を夢みるシルヴィーに運命の訪れを告げていた。ささやかな贅沢で祝したその夜更け、自室の扉を叩く音に応じた彼女に賦与された未来は、あろうことか首なし屍体となって薔薇の散り敷く血の海に横たわることだった……。そして翌週には両腕を失った第二の、翌々週には両脚を奪われた第三の犠牲者が。明らかに同一犯人と見做される状況にも拘らず、生前の被害者たちに殺害されるに足る共通項を探しあぐね混乱するパリ警視庁。事件を統べる糸〈ドミニク・フランス〉を紡ぎ出してみせる矢吹駆の、鮮やぐ現象学的推理が織り成す、真相という名の意匠とは?/解説=山路龍天
  • ぬばたまおろち、しらたまおろち
    4.5
    両親を失い、田舎にある伯父の家に引き取られた綾乃には秘密の親友がいた。幼いころ洞穴で見つけた小さな白蛇アロウ。アロウはみるみる成長し、今では立派な大蛇だ。十四の夏、綾乃は村祭の舞い手に選ばれた。だが、祭の当日、サーカスから逃げ出したアナコンダが現れ村は大混乱に。そんななか、綾乃は謎の男に襲われるが、そこに疾風のように箒で現れ、間一髪彼女を救ったのは、村に滞在していた民俗学者の大原先生だった。綾乃はそのまま先生の母校ディアーヌ学院に連れていかれ、そこで学ぶことになるが、そこはとても変わった学校で……。第2回創元ファンタジイ新人賞優秀賞受賞作。/第2回創元ファンタジイ新人賞選評=井辻朱美、乾石智子、三村美衣
  • 007/カジノ・ロワイヤル【井上一夫訳】
    3.5
    英国が誇る秘密情報部。そのなかでもダブル零(ゼロ)のコードをもつものはどんな状況でも冷静に切り抜ける腕ききばかり。ソ連の工作員で、フランス共産党系労組の大物ル・シッフルが、党の資金を使い込み、カジノの勝負で一挙に挽回をはかろうとしているらしい。それを阻止すべく英米仏三国の共同戦線のもと、カジノ・ロワイヤルに送り込まれたのはジェームズ・ボンド。007のコードをもつ男。華麗なカジノを舞台に、巨額の賭け金をめぐる息づまる勝負の裏で密かにめぐらされる陰謀。007ジェームズ・ボンド登場。映画『007/カジノ・ロワイヤル』原作。/解説=杉江松恋
  • お人好しの放課後 御出学園帰宅部の冒険
    3.1
    授業が終われば速やかに帰宅し、成績は平均以上、通学区域で社会奉仕をすべし――帰宅部といっても佐々木幸弘が入学した御出学園の場合、正式な部活動としての規定がある。ベニヤ製の人形が夜な夜な徘徊していると聞いて調査に乗り出したのは、地域の皆さんのためにと燃えたわけではなく単なる成り行きだったが、結果的に帰宅部メンバーの認知度は上がり、相談と称してささやかな事件が持ち込まれるようになる。それなりに、または懸命に、使命を果たすべく奮闘する生徒たち。笑いのち友情ときどき謎の高校生活を描く、軽やかなデビュー連作集。/解説=佳多山大地
  • 007/ロシアから愛をこめて【井上一夫訳】
    3.0
    ソ連情報部は、このところの失策続きを、なんとか挽回しようとしていた。そこで槍玉に挙げられたのが、英国秘密情報部。なかでも腕利きのスパイとして知られる、007ことジェームズ・ボンドだった。こうしてソ連の公式殺人機関スメルシュの、ジェームズ・ボンドに対する死刑執行計画が動き始める。舞台はイスタンブール。ヨーロッパとアジアが交わる混沌とした街。ボンドに恋するソ連情報部の美女との、豪華なオリエント急行での逃避行。二重三重に仕かけられた巧妙な罠に、さしものジェームズ・ボンドも、次第に搦めとられていく。シリーズ最高峰の傑作。/解説=戸川安宣
  • 捕食
    3.8
    蘭の花に擬態するハナカマキリみたいに、まぎれ込んでしまったほうがいい、捕食者に気づかれないように。そう言って、いづみはするりとトラウマを抱えた真尋の心に入り込んできた。彼女と一緒なら、自分は変われる。いづみに憧れ、彼女のようになりたいと願ったのに……。あなたは誰? なんのために私に近づいてきたの? 不安に駆られ、いづみの過去をたどっていくと、何人もの女が、彼女の周りで姿を消していた――。真相に迫る真尋は、ついに彼女のおぞましい姿を目にしてしまう。『強欲な羊』『ゴーストフォビア』を凌駕する、戦慄のサスペンス。
  • 名探偵・森江春策
    4.0
    名探偵や怪人が登場する推理小説に夢中の小学生・森江春策。彼はある日黄昏の車窓から見つけた《電氣世界館》の看板に惹かれたのをきっかけに、謎の館と老紳士を巡る一夜の大冒険を体験した。やがて中学生となった彼は『黒死館殺人事件』に心酔する作家志望の青年と“存在しない13号室”の謎に挑む。その後も大学の級友の依頼で安楽椅子探偵となって下宿館の密室殺人の真相を見抜き、新聞記事の取材で訪れた廃ホテルの生首の謎を解く――心優しい少年が大人になる間に遭遇し解決してきた数々の不可能犯罪を年代順に収めた、ある名探偵のクロニクル。多彩なシチュエーションとトリックの限りを尽くしたマニア必読の一冊!/解説=太田忠司

最近チェックした本