吉行淳之介 - 講談社作品一覧

  • 暗室
    3.9
    屋根裏部屋に隠されて暮す兄妹、腹を上にして池の底に横たわる150匹のメダカ――脈絡なく繋げられた不気味な挿話から、作家中田と女たちとの危うい日常生活が鮮明に浮かび上る。性の様々な構図と官能の世界を描いて、性の本質を解剖し、深層の孤独を抽出した吉行文学の真骨頂。「暗い部屋」の扉の向こうに在るものは……。
  • 菓子祭・夢の車輪
    4.0
    単行本『赤い歳月』から2篇、『菓子祭』から13篇、さらに、文庫初収録の名篇『夢の車輪』から全12篇、計27篇の秀作集。現実と夢の壁を、あたかもなきがごとく自在に行きかい、男と女との「関係」などを、鋭く透写する硬質な作家の「眼」が、内から硬質の光を鋭く放つ! 『砂の上の植物群』、『暗室』、『鞄の中身』の達成の上に立つ、短篇の名手・吉行淳之介の、冴えわたる短篇群の「かがやき」。
  • 鞄の中身
    4.3
    自分の死体を鞄に詰めて持ち歩く男の話。びっしりついた茄子の実を、悉く穴に埋めてしまう女の話。得体の知れぬものを体の中に住みつかせた哀しく無気味な登場人物たち。その日常にひそむ不安・倦怠・死……「百メートルの樹木」「三人の警官」ほか初刊7篇を含め純度を高めて再編成する『鞄の中身』短篇19。読売文学賞受賞。
  • 詩とダダと私と
    -
    吉行文学の抑えた描写に垣間見える詩情――学生時代、萩原朔太郎に影響を受けての詩作が、その文学的出発となった作家の、生涯変わらぬ本質の現れであった。若き日に書いた詩の数々、苦悩の中で文学を志した戦中戦後の回想、昭和初期文壇で異彩を放った父エイスケの詩篇、恩師が翻訳した「ダダの歴史」をあわせて収録。吉行淳之介の全体像把握に必須のユニークな詩文集。
  • 人工水晶体
    -
    わずかに光しか感じなくなり、もはや「手なずけ」ようがないほどの白内障に病んでいた右眼の視力が、たった20分の手術で、1.5まで回復した。「人工水晶体移植手術」の驚異の体験記を、簡潔な名文でつづり、講談社エッセイ賞を受賞した表題作に、病気への対応法を軽妙に説く「養生訓」などを加えた「実用の書」。
  • 石膏色と赤
    -
    坂の向うの空で沈みかけていた、大きな夕日。また、鈍い白い光が漂うその下にあった、夕暮の野原。幼年期に見た、この赤と白のふたつの夕暮とは、何だったのだろう? 幼年期から成年期にかけて想起された心象風景や体験、あるいは人々の印象などを、独得の感性と語り口で構成した、余韻ゆたかな好エッセイ集。
  • 出口・廃墟の眺め
    4.0
    過ぎ去った遠い日や心の底深くに、しめやかな触手をのばし、生の根の不思議なゆらめきを鮮かに捉えた、虚無に献げる高貴な酒にも比すべき短篇集。真昼に現れ出た夢魔の如き「出口」、痛ましいまでの思春期の青年の心を描く「手品師」、瓦礫の中に青白い女の裸体が横たわる「廃墟の眺め」など14篇を収録。
  • 悩ましき土地
    4.0
    対象との距離を微妙にはかりながら、すれすれのところで作品として成立させる、吉行淳之介の短篇集。作者自身の幅を反映して、対象は読者から、バーの女給、エロ雑誌の編集者、棟梁、作者とおぼしき主人公の周辺に登場する諸人物は、いずれも一癖あるが、それを冷静に、ときには諷刺をまじえて、面白さをひきだす。表題作のほか、「青い映画の話」など12篇収録。
  • 星と月は天の穴
    3.7
    結婚生活に失敗した独り暮しの作家矢添と画廊で知り合った女子大生紀子との奇妙な交渉。矢添の部屋の窓下に展がる小公園、揺れるブランコ。過去から軋み上る苦い思い出……。明晰・繊細な文体と鮮やかな心象風景で、一組の男女の次第に深まる愛の〈かたち〉を冷徹に描きあげ人間存在の根本を追究する芸術選奨受賞作。
  • 街角の煙草屋までの旅
    -
    「家から一歩外に出れば旅だ」と考えるヘンリー・ミラーに共感し、自分の住む都会を歩きまわる中で、すばらしい旅や風景を発見する、と語る著者の姿勢には、作家らしい感受性と想像力の重視がうかがえる。そのほか、幼少時の思い出、交遊、文章観、身辺雑記などを綴り、吉行文学の基盤をあきらかにした、卓抜エッセイ集。街角の煙草屋まで行くのも旅。角度を変えて見えてくる風景。独特の人生感覚あふれた文章!
  • 街角の煙草屋までの旅 吉行淳之介エッセイ選
    4.0
    坂の上の角の煙草屋まで行くのも旅だと考え、自分の住んでいる都会の中を動くことに、旅の意味を見出す表題作。小説作品のモチーフになった色彩体験を原風景に遡って検証する「石膏色と赤」ほか、心に残る幼年時代の思い出、交遊、文学観、なにげない日常の暮らしや社会への思いなど、犀利な感性と豊かな想像力を通して綴る「人生の達人」の珠玉のエッセイ選。吉行文学の創造の秘密が詰まった47篇。
  • わが文学生活
    -
    編集者によるインタビュー、また「群像」および「小説現代」で長く担当した編集者との対談を、作家自らが構成した貴重な文学的自伝。高い芸術性と人気を備える小説家、洒脱な随筆や座談の名手、ヘンリー・ミラーや井原西鶴の作品の現代日本語への翻訳者、豪腕アンソロジスト……多彩な相貌が臨場感を湛えて語られる本書は、吉行淳之介を知るための必読書となろう。
  • 私の文学放浪
    -
    旧制高校に入学した頃の文学との出逢い、詩作、敗戦後の同人雑誌参加、大学中退、大衆雑誌記者時代、肺結核。芥川賞受賞までのエピソードや、父吉行エイスケのこと等著者の交友・文学の“核”を明晰な文体で瑞々しく回想。ほかに「拾遺・文学放浪」「註解および詩十二篇」を収める。
  • 悪い夏 花束 吉行淳之介短篇小説集
    -
    初期から最晩年まで、短篇小説で辿る吉行淳之介の世界。男女の心象風景を凝縮するイメージで描く散文詩風の「藁婚式」、少年の眼を通して恋愛の生理と心理を追う「悪い夏」、父エイスケとの屈折した関係を主題とした「電話と短刀」、親友の13回忌に訪れた男女の齟齬を描く「花束」等14篇を収録。明晰な文体と実験的手法で、人間の生と性の不条理を追究した著者の珠玉の作品集。

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