皆川博子 - e-NOVELS作品一覧

  • あの紫は
    -
    金沢行きの飛行機の中で、うたた寝をしていた主人公は、何度も繰り返しみている夢をみていた。ふと目覚め、三人掛けのシートの空席となった真ん中を挟んだ通路側に和装の女がいるのに気付いた。少女のような無邪気さを漂わせる彼女からは夢でかいだのと、同じ香りが漂ってきて…。泉鏡花作のわらべ唄の歌詞をモチーフに描かれた幻想短編。
  • 具足の袂に
    -
    8歳にして母親を亡くした彼は、父がきちんとした家柄の女性と再婚するまでという約束で、伯父夫婦の家に預けられている。入院中だというその家の息子・肇の部屋に寝泊まりする彼は、“ねえや”の“きよや”や肇の妹・百合子が、盗み読んでいる肇の蔵書に禁断の魅力を感じて自身も貪るように読み進むうち…。
  • 桜月夜に
    -
    開業医の父と母の仲が険悪になり、祖母の家に連れられてきたぼく。夢と現実の間を彷徨うぼくの耳に入ってくる、不思議な歌声。そして、高窓の外で踊る手鞠。「ほんとに悲しいと、からだじゅうが痛いんだよ」。「〈よくない〉ことはないんだよ。してしまったことには」。祖母の言葉は、ぼくの心に染みる。「泣いて涙は どこへゆく」祖母が唄うと、「泣いて涙は 舟に積む」と歌声が返った。そのときぼくは、高窓の向こうは仏壇の中なのだということを知る。手鞠歌から始まる幻想奇譚。
  • 雪花散らんせ
    -
    桂木馨は、ある日彼女のエッセイを読んだという読者からの封書を受け取る。エッセイで取り上げた、馨が幼い頃に納戸で見つけた木版画のことを知っているというのだ。友人の雑誌編集長・土谷を誘い、その人物、天野玲奈に会いに行くと…。木版画に描かれた肘から先の両手がない人物。そして、その絵を見てからたびたび見るようになった夢。「雪花ちらんせ 空に花咲かんせ…」。不思議な童歌が結びつけた3人は…。
  • 睡り流し
    -
    嵐の夜、雨宿りに入った喫茶店で出会った男。彼は自分の幼い頃にあったという、不思議な話を語り始めた…。「睡り流し 睡り流し 睡り流して捨て申そ…」。中学に入ったばかりの彼が、雨宿りに入った寺の本堂で出会った女。鍛冶小屋で出会った少女。彼らは皆、不思議な歌を彼の耳元に残した…。睡り流すとはどういう意味なのか。睡ることで何かを流れに捨て去るというのか…。
  • 薔薇
    -
    「船のなかに忘れた薔薇は誰が拾った 船のなかに残ったものは 盲人がひとり 鍛冶屋がひとり 鸚鵡が一羽 船のなかの赤い薔薇を拾ったものは…」その本は、そこで数ページが千切れていた。雨あがりの神社の境内。学校帰りにみちくさをしていた9歳のぼくは、1冊の本を拾った。そこへやって来て「返して」と、手を差し出した千釵子は、父が母親の春枝とともに新しく迎えたぼくの家族だった…。本の持ち主が千釵子ならば、薔薇を誰が拾ったのかを知っているはず…。果たして薔薇を拾ったのは?
  • 陽はまた昇る 黄昏ホテル
    -
    1巻110円 (税込)
    幼いころに視力を失った「わたし」に、<風>が、ホテルというものの存在を教えてくれた。「ホテルは、太陽みたいなもの? 星みたいなもの?」。そう訊ねるわたしに<風>は、様々なイメージを与えてくれる。そしてわたしは、かつて目がまだ見えていた頃の記憶を頼りに、私だけのホテルを思い描く…。美しい言葉で綴られた魅惑の幻想小説。(本作は「黄昏ホテル」をテーマとする読み切り連作小説の一篇です)

    試し読み

    フォロー
  • 百八燈
    -
    1巻110円 (税込)
    映画監督の彼は、同業者の父の再婚相手、自分より年下の義母・塁子の口ずさむ歌に、18世紀半ば、イタリアで夭折した作曲家が死の直前に作った聖母哀傷の曲を重ね合わせ、映画を撮ろうとしていた。しかし、資金繰りは難航し、予算1億のところ半分を出資してもいいという映画会社は見つかったが、後の半分が工面できない。そんな彼に出資者を紹介したのは累子だったが、その資金をあろうことか彼の父親が攫っていった…。累子が口ずさむ魂送りの歌が送ったのは…!?
  • わらべ唄幻想
    -
    さまざまなわらべ歌をモチーフに語られる幻想奇譚。『薔薇』『百八燈』『具足の袂に』『桜月夜に』『あの紫は』『睡り流し』『雪花散らんせ』の7作を合本。読者を一瞬にしてつややかで妖しい世界に誘う珠玉の短編集。

最近チェックした本