ゴールド
レビュアー
  • 弐十手物語 【特大合本版】1

    正統派時代劇

    本格的で重厚な正統派時代劇。長所も短所もこの言葉で表現できてしまう。
    大長編作品ではあるが、連作短編の形をとっているのでどこからでも読めるし、どこで読むのをやめても良い。ずいぶん読みやすい作品である。
    一応捕物帳 ミステリーもののカテゴリーに入るのだろうが、ミステリー要素はほとんどなく、江戸時代人情ものである。
    絵柄は典型的劇画であるが、かなり丁寧に描いてあるので読みやすい。

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  • 隣の席の佐藤さん【分冊版】(ポルカコミックス)1

    等身大の女の子

    このようなコミックのヒロインと言えば「才色兼備の高嶺の花」というのが定番であるが、この作品はそれとは正反対の地味でどちらかといえばトロい 等身大の女の子をヒロインに持ってきている。主人公とその彼女の関わりが徐々に深まっている過程を丁寧に描き出している。足が地についた良作である。

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  • 永日小品

    漱石のエッセイ

    漱石のロンドン時代や帰国してからの身の回りの出来事 子供の頃の思い出などを、現代でも十分に味わうことのできるわかりやすい文章で綴られたエッセイである。「蛇」のようにやや不気味なもの、「行列」のように巧まぬユーモアを秘めたものなど様々な味わいの作品がある。中でも散文詩のような「昔」が特に心に残った。

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  • 二百十日

    台風に荒れる活火山阿蘇

    この時期の夏目漱石の特徴である「世相批判」的なセリフがしばしば出てくるが、それよりも、台風に荒れる活火山阿蘇の大自然描写が見事である。草千里の背の高い草が生い茂った中を強引に歩む二人が、とてもリアルに描き出されている。

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  • 形

    購入済み

    まず形から入る

    ハロー効果 というか 人は見た目が9割 というか、外見の持つ力 威力 そして怖さを十分に感じさせる作品である。昔 高校の国語の教科書に乗っていたので印象に残っている。最近の、反ルッキズムという運動 活動を考えると感慨ひとしおである。

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  • 長篠忠義 北近江合戦心得〈三〉

    題名の「忠義」とは

    本作品の題名の「忠義」と言う文字が入っているが、忠義についての三種類の考察が述べられている。まあ明確にどれと決められるものではなく三要素が入り混じっているのであろうが、主人公は情緒的なものであるそうな。石田三成の「忠義」への考えがしばしば顔を出すが、将来の関が原への伏線だろうか?途中の上田茂兵衛のちょいとした登場は嬉しかった。

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  • 瀧夜叉姫 陰陽師絵草子【分冊版】 1

    おどろおどろしい世界を

    原作者夢枕獏のおどろおどろしい世界を、伊藤勢が細密 緻密な筆致で 妖気な世界を見事に描きあげている。NHK大河ドラマで雅な世界と渦巻く陰謀を放送しているが、底辺にはこのような世界が広がっていたということを感じさせられる。ストーリーも絵も見事である。

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  • 湖底のひまわり 1

    工夫をこらした

    タイムスリップものではあるが、主人公の大人と子供の姿を代わる代わるに表示するなど、作画に工夫をこらしていて、凡百のタイムスリップものから抜きん出た存在になっている。ストーリー展開もノスタルジックでありながらミステリーっぽい雰囲気も濃厚にあり、なかなかに読ませる。絵柄もノスタルジックな雰囲気とよくマッチしている。

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  • 艦隊のシェフ(2)

    様々な人間模様

    狭い艦内で24時間顔を突き合わせている乗組員たちの人間模様、シャバにいた頃の経歴や職業や家族関係 などが徐々に明らかになる。そして戦況は厳しさを増し、次々と船が沈む 大消耗戦となってゆく。そのような戦況もちゃんと描き出している。作画も悪くはなく駆逐艦の姿がくっきりと描き出されている。

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  • 艦隊のシェフ(1)

    新しい切り口

    仮想戦記ではなく実録もの戦争漫画に、これまた実際にあった駆逐艦内の調理 食事の話と、他に余り類を見ない切り口となり大変に興味深い。コミックとしての作品の出来も悪くはないが、作品で語られている内容が面白くもあれば厳しさが身にしみるところもある。2000トンそこそこの艦体に240名もの乗員を乗せていた事にまず驚く。文字通りすし詰めの艦内である。この多人数の乗員に揺れる艦内で手の込んだ調理をした主計兵たちに敬意を表したい。

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  • バイクが趣味な地味子の日常 まとめ1

    題名ほど地味でない

    ライダースーツを着ていないときでも題名ほど地味でない 印象を受けてしまう。バイクに乗ったときと乗っていないときの対比をくっきりとさせるためには、より一層美味な姿に描くべきだと思う。しかし、バイクに乗ったときには、バイク好きではない私にでもはっきりと分かるほど、絵柄もストーリー展開もいきいきとしている。

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  • 人体大全―なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか― 無料お試し版

    カバーの印刷がレンブラント

    カバーの印刷がレンブラントの有名な解剖場面の絵を使っていて非常に印象的である。解剖学的な概説は勉強にはなるがそれほど感銘を受ける話ではない。しかし巻末の終盤の現代医療や医薬に関する話には大変に感銘を受けた。確かに医学は急速に進歩しているが、今現在 正しいとされていたことが将来も正しいとは限らない ということがよくわかった。特別な健康法を実施するのではなく、食べて 運動して しっかり眠る ことが良い。

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  • ホイッスル 2

    単に走るだけではない。

    単に早く走るだけではなく、様々な心理的 精神的な逃走をする駅伝の面白さ 醍醐味をよく描き出している。悪役として会社幹部やスポーツキャスターが登場しているが、ややステレオタイプかな。ストーリー展開から言うと、成功は失敗のもと とも言うべき次のステップへの問題登場 というところで、次巻へ という構成が憎い。

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  • ホイッスル 1

    社会人スポーツの宿命

    社会人スポーツは、会社の宣伝広告活動なのか?会社の福利厚生なのか?会社の社会貢献活動なのか?という宿命的な問題をかなりリアルに扱っている。絵柄はとりわけ画力が高いというわけではないが、漫画っぽい特徴を活かしていて登場人物たちの個性がうまく描き分けられている。

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  • BLOODY MONDAY Season2【極!単行本シリーズ】1巻

    いきなりの展開

    冒頭部分からいきなりの展開で読者の心を鷲掴みにするストーリー構成は素晴らしい。売ろうと思えば最初の部分が大事 という鉄則をよく守っている。その後のストーリー展開もドキドキの連続だし、あっと驚く どんでん返しも各所にある。絵柄もしっかりとしていて迫力満点である。

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  • あいにくあんたのためじゃない 無料お試し版

    万人の万人に対する批評

    SNSの発達普及普遍化によって、「万人の万人に対する批評」が常に飛び交っている社会になってしまった。それにより、悲喜こもごもの自体が発生している。この作品はそれを端的に切り出し描き出したものである。昔から噂話という口コミはあったが、ネットによりその影響力は比較にならないほど大きくなっている。
    一方、人間の感情、気持ち、心は、その多くの部分を「言語」によって作られている。「美味しい」という感覚を言語によって表現し、自分自身の中で確認し、「必要ならば」人に伝える ということも重要なのであろう。

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  • ほどなく、お別れです【単話】 1

    しっとり

    丁寧な絵柄が情感を盛り上げている。題名からして泣かせる要素を十分に持っている。ヒロインが霊感を持っている という設定であるが、このようにしっとりとした足が地についたエピソードが中心の作品ならば、霊感設定を無しにしたほうがよりリアル感がましていいのではないか。

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  • 人類とイノベーション:世界は「自由」と「失敗」で進化する

    やや悲観的に

    の著者の以前の作品 例えば「繁栄」等では、楽観主義的な思想 見込みを披露していたが、この著書では、やや悲観的な調子が目立つ。印象に残った箇所として下記が挙げられる。

    11% 不安定な自給自足から、より安定した相互依存へ

    イノベーション アイデアの発明ではなく、実用化。手頃な価格で現実に使えるようにすること。

    原子力は、イノベーションに必須の「試行錯誤」が大変に困難なので、進歩できない。

    発明やイノベーションは、理解されるより先に使われることが多い。
    理論付は後付。

    人びとが長期的な影響を過小評価するというイノベーションに関する重大な真実の好例

    家畜化による遺伝子の変化は、犬や牛にみ...続きを読む

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  • シティーハンター 1巻

    色褪せることがない。

    40年も前の作品であるが、ハードボイルドとギャグの取り合わせが今でも新鮮である。ストーリーの舞台は流石に時代がかっていて、昔の話だな という感じは否めないが、主人公たちのかっこよさ 魅力は色褪せることがない。カラーを交えた絵もとてもきれいである。当然だけれど全部アナログなんだよな。

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  • ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~: 1【電子限定描き下ろしマンガ付き】

    発想が素晴らしい。

    おなじみ中華ファンタジー、お馴染み入れ替わりもの ところがこの2つを組み合わせるという発想が素晴らしい。さらにヒロインが最強のメンタルの持ち主という まさに最強の組み合わせになっている。絵柄も丁寧で、中華ファンタジーらしい華麗な世界を描き出している。

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  • じれったくて時々やらしい雰囲気になる話 総集編(1)

    いいねえ

    幼馴染とのいちゃいちゃ ワイワイが中心テーマのオムニバス作品集である。似た雰囲気の作品が続くが、どの作品もそれなりに面白く思わずニマニマしてしまう。少年漫画っぽい絵柄も決して上手とは言えないが、ストーリーの雰囲気とよくマッチしていてなかなかに良い。

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  • じゃあ、あんたが作ってみろよ(分冊版) 【第1話】

    題名がすべてを語っている

    題名がすべてを語っている。なんだか身につまされるストーリー内容である。料理に対する要求は妙に高く本格的伝統的な手法を要求するのに、自分自身では という男を描いている。絵柄もとても可愛らしい。

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  • こちら大阪社会部【合本版】(1)

    30年以上昔の作品

    30年以上昔の作品ではある。メディアとして新聞テレビが大いに幅を利かせていた時代であった。今読むとなんだか時代小説を読むような隔世感があってなかなかに面白い。最も釜ヶ崎の貧困は今も同じだろうが。絵柄も時代を感じさせはするが、スッキリとしていて読みやすい。

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  • 宇宙の音楽(1)

    主人公の気持ちがよく表れている

    絵は決して上手ではなく 朴訥な感じがするが、登場人物たちの表情に気持ちがよく現れている。音楽が好きで才能があるのに、身体的制限のある主人公の焦燥感や諦めの気持ちがとても良く表現されている。さあみんなと一緒にどこまで進めるのだろうか?

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  • ハダカメラ 1

    絵がとてもいい

    この作者の作品は絵がとてもいい。特に女の子の描きかたが素晴らしい。
    ストーリーもギミックとしてカメラをうまく使い話をうまく進めている。登場人物の名前も閃とか押切とか鏡介などカメラに関わる単語をうまく使っている。

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  • チ。―地球の運動について― 2

    チ。とは?

    「―地球の運動について―」という副題から「チ。」とは地動説の「地」のことだと思いこんでいた。しかしここまで読み進めていって、真実を知りたいという「知」であり、真実を表す「智」であり、代償としての「血」であるということに気づき、慄然とさせられた。

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  • あそこではたらくムスブさん 1

    たどたどしい関係がいい

    主人公とヒロイン結さんの「年甲斐もない」たどたどしい関係が初々しく感じられてとてもいい。
    この作者の絵は年々よくなってきているような気がする。数年前の作品は稚拙さの残るほんとの少年漫画であったのに、この作品のヒロインの表情、一見無表情だが時々内心が表れるところの描き方などとてもいい。

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  • B(べー)ブラームス20歳の旅路 (1)

    音楽をいかに「絵」で表現するか

    珍しくクラシック音楽の作曲家を取り上げたコミック。このテーマだと音楽をいかに「絵」で表現するかということが成否を握るキーポイントなのだが、その点では成功しているとはいいがたい。どちらかといえばストーリー展開を重視しているような気がする。ブラームスといえば晩年の髭の肖像画のイメージしかないが、若いころはこうだったんだ と新たな印象を受けた。

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  • 高度に発達した医学は魔法と区別がつかない(1)

    絵が素晴らしい

    とにかく絵の書き込みが凄まじい。デジタル描画の威力で上っ面だけきれいな作品が多い中、純粋に戦で勝負しているところが素晴らしい。ストーリーに関しても、よくありがちな魔法を使う異世界転生ではなく、本当の医療知識でストーリーを構築し、ストーリーを切り開いて行っている。

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  • 酔っぱらい盗賊、奴隷の少女を買う【分冊版】 1

    ヒロインの哀れっぽい様子

    心情的に家出女子高生を拾うの異世界版 という感じもほんの少しあるが、基本的には主人公が善人である そして ふたりとも幸せになる、という結果になればいいなと と最初から思わされる作品である。絵柄は戦闘シーンの表現にやや難があるが、痩せこけたヒロインの哀れっぽい様子の描き方が真に迫っていてとても良い。

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  • イサック(3)

    過去の因縁が明らかになる。

    イサックとロレンツォ 伊佐久と錬蔵の過去の因縁が明らかになる。少し無理筋なところはあるが一応 二人の因縁の説明にはなっている。それよりも30年戦争の戦いの描写が凄まじいリアル感を持って描き出されている。イサックとロレンツォをうまく時代にはめ込んでいて、ストーリー構成が素晴らしい。ゼッタの可憐さもなかなかに気になる。

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  • 37セカンズ 1巻

    テーマも絵柄もしっかりとした力

    コミック 漫画といえば、気楽なエンタメ 娯楽作品が多いが、この作品は障害者 女性を正面から取り上げた問題作である。「弱さは強さである。」という近年のリベラリズム 社会正義の盛り上がりにより、障害を持つ人の社会生活が段々と楽になってゆく傾向はあるが、実際のところまだまだなんだろうな と思ってしまう。テーマも絵柄もしっかりとした力作である。

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  • ヒトヒトリフタリ 1

    エンタメ性たっぷり

    「BLACK-BOX」や「NeuN」で知っている高橋ツトムとは随分と様子が違う作品であるが、なかなかに面白い。日本国の総理大臣とギャルの守護霊 という取り合わせに意表を突かれとても面白い。話の展開も、政界裏話や実在の政治家が次々と登場して、エンタメ性たっぷりである。

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  • アサギロ~浅葱狼~ 1

    他の作品とはずいぶん違う印象

    ありふれた新撰組ものかと思って読み始めたらぐいぐい引き込まれた。さほど奇をてらったストーリー内容とは思えないが他の作品とはずいぶん違う印象を受けた。強気一本やり凄みを感じる場面だけではなく、息継ぎの場面も入っていてなかなかいい

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  • バイオレンスアクション【単話】 1

    簿記検定

    殺し屋なのだがキュートでポップな女の子という人物設定が素晴らしい。
    ストーリー内容も変にべとついていないでドライ、話のテンポがとてもいい。
    絵柄もストーリー内容と良くマッチしていてサッパリ系のかわいらしさがよく出ている。殺しがテーマのストーリーなのだが、すっきりした絵柄で残虐さが表に出ていないところがよい。

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  • インド夫婦茶碗 1巻

    子育て漫画

    インドのヒトと結婚して日本で暮らす。そして、男の子を授かる というあらすじ。結婚に関わるドタバタはいかにもインドらしいが、子育ては日本で行っているせいか、基本 他の育児漫画とよくにている。
    絵柄はコミカルでストーリーの基調とよくマッチしていて、読んでいて大変に楽しい。

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  • 薬屋のひとりごと 1巻

    大変に読みごたえがある。

    中華後宮物語。ヒロインの人物設定を普通の容貌の少女 としたところが実にいい。後宮の美人下女を皇帝が見初めて などと言うようなありきたりのシンデレラ物語でがない。薬草の知識に謎解き ミステリー要素も加わって大変に読みごたえがある。
    日向夏の原作に対して、ねこクラゲと倉田三ノ路の二人が同時にコミカライズしている。どちらもいいが私はこの作品の絵の方が可愛らしいと思う。

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  • 碧いホルスの瞳 -男装の女王の物語-【分冊版】 1

    実在の女王

    古代エジプトを舞台にした漫画は結構ありそうなのに、実際見るべき作品は少ない。この作品はその点だけでも貴重である。ヒロインが「実在の女王である」という点がなかなかに迫力を持って描き出されている。作者の画力も高く、古代エジプトの風物がくっきりとした絵で描き出されていて感銘を受けた。

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  • 夫婦は今日も子づくらない1巻

    女性が働くのが普通になった現在

    女性が働くのが普通になった現在、女性しかなし得ない「出産」というのは多くの人にとってとても深刻な課題である。その問題を何のてらいもなく正面から取り上げた作品である。周辺 同僚からの気遣いの応酬など「ああこんな事あるよな、面倒だよな、しんどいよな。」と思わされるリアルな出来事満載である。絵柄はきれいで読みやすい。

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  • だんドーン(1)

    山田風太郎では有名だが

    「ハコヅメ」で大ヒットを飛ばした泰三子の作である。主人公の川路利良は、日本の警察の父と言われ、山田風太郎の明治初期の作品群では有名だが、一般にそれほど知られた人物ではない。「ハコヅメ」とは警察つながりということではあるが、この人物に注目した作者の慧眼に敬意を表したい。「ハコヅメ」で鍛えられた画力は健在であるが、居酒屋ののれんの文字が左から右に書かれているところなど、校正漏れに気づくところもある。

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  • 日本のいちばん長い日 (上)無料試し読み版

    入門書として

    幕末以降の日本史の入門書の一冊としてなかなかいい作品だと思う。江戸時代の水戸学の影響で「大日本帝国は世界でただ一つの神国である」という考えに染まってしまった人々が政治軍事の中枢にいて、国の運営を誤ってしまった ということがよく分かる。水戸学の始祖である徳川光圀 水戸黄門さんも罪作りなことをしたもんだ。絵柄はかなり写実的でしっかりとしている。コミックとしては地の文が多いが、本書の性格上やむを得ないと思う。

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  • 螺旋じかけの海【新装版】(1)

    壮大な世界

    上田早夕里のSFをおもわせる壮大な世界観が素晴らしい。第一話の羽が生えた少女の話も同じ上田早夕里の「リリエンタールの末裔」を思い出してしまった。遺伝子操作がまかりまちがうとどのような結果をもたらしてしまうのかを、端的に表現している。重いテーマにも関わらず、必要以上には力を入れず淡々と描いているところもとてもいい。

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  • ジョン・マン 1 波濤編

    同時並行

    土佐国の人 万次郎とアメリカの捕鯨船の話が同時進行で進んでゆく第一巻である。同時並行という記述方式はややもすると話が混同されやすいが、本書はアメリカと日本というかけ離れた舞台なので混同することはなく、大変に面白く読めた。まだまだ序盤であるが次巻以降が気になる。

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  • 西加奈子最新短編小説集『わたしに会いたい』無料試し読み

    ドッペルゲンガー

    ホラ-絡みで語られることが多いドッペルゲンガーを成長記録の中にたくまずに入り込ませている技法がとても優れている。テーマから想定される、おどろおどろしい語り口ではなく、平易で日常会話的な語り口なのでとても読みやすい。

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  • 三河雑兵心得 : 10 馬廻役仁義

    やはりこのシリーズはいい

    作者井原忠政の他の作品も読んでみようとして、「うつけ屋敷の旗本大家」を読んでみたがあまりしっくり来なかった。改めてこのシリーズの魅力に気付かされた。主人公の茂兵衛を始め登場人物たちが皆いきいきとしている。しかもストーリーの大筋は史実を踏まえているので、明らかに創作と思われる色々なエピソードも大変にリアル感がある。

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  • 僕 BOKU1

    心情を実にうまく描き出している

    過去、この作者の他の作品を読んだことがあるが、特徴ある絵柄にやや惹かれたものの、ストーリー内容はギャグっぽいものが多くどうにも好きにはなれなかった。しかし、この作品は主人公の男子高校生の心情を実にうまく描き出している。周辺の登場人物もいい味を出している。

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  • ふぉん・しいほるとの娘(下)

    ゴツゴツとした歯ごたえ

    作家吉村昭のゴツゴツとした歯ごたえが際立つ作品である。司馬遼太郎が時代小説家歴史小説家なら吉村昭は史談 史劇作家 と感じた。想像力の羽ばたきを意図的に抑え、史実に語らせる、という手法がこの作品にも満ちている。そのような手法で描き出される、時代に置き去りにされる老いたシーボルトや、正式な医学を前にして身を引くお稲を感傷を交えずに書き上げている。

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  • 【カラー完全収録】江戸の検屍官(1)

    数少ない法医学モノ

    法医学モノ というのは現代物でも例が比較的少ないが、江戸時代捕物帳との組み合わせが類例が少なくとても新鮮である。絵柄も非常に丁寧で生き生きとしていて素晴らしい。時代考証もしっかりとしていて、スキがない。

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  • 凶犬の眼

    構成の巧さに痺れる

    状況説明 背景説明に週刊誌の記事を引用したり、田舎の女子高校生がはからずも事件の引き金を引いていたり、ストーリー構成の巧さに痺れてしまう。このストーリー構成の作り込みがあまり度が過ぎると、昔の伝奇小説のようにわざとらしくなりすぎるが、この作品は適度に抑えられていてとても読ませる。

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  • 僕の奥さんはちょっと怖い(1)

    とにかくかわいい

    タイトルだけから高坂曇天の「拝啓…殺し屋さんと結婚しました」のような内容を想像していたら、思いっきりのいちゃラブモノにお仕事小説の味付けをしたものであった。とにかく奥さんのツンデレぶりが可愛い。絵柄も登場人物の気持ちをよく表現できていて、特に奥さんのデレる表情がこれまた可愛い。

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