書店員レビュー一覧:小説・文芸

  • 亡国のイージス
    どうすれば20代でこんな骨太の長編が書けるのでしょうか。そして人の人生を語れるのでしょうか。読み進めながらそのことに感動します。映画化もされましたが、活字で想像を働かせた方がよほどスケールが大きく感じられる作品です。
    登場人物の背景が印象的に描かれる前半から、それが徐々にクロスしていき、それぞれの...続きを読む
  • そして誰もいなくなった
    アガサ・クリスティーの最高傑作ともいわれる作品。刊行されたのは約70年前だが、今もなお評価が高い。映画化もされており、ファンでなくとも、作品名を聞いたことがある方も多いだろう。
    「クローズド・サークル」(外界との接触が断たれた状況で起こる事件)の代表作としても有名で、孤島に招待された男女が一人ずつ...続きを読む
  • 皇国の守護者
    人と龍が共存し、様々な取り決めを持った大協約世界。日露戦争を彷彿とさせる戦場が舞台の架空戦記小説です。世界観や人物像、戦記物には必要不可欠な戦略・戦術が細部まで深く作り込まれ、その説得力には感嘆のため息が出るばかり。
    主人公・新城直衛は、剣牙虎(サーベルタイガー)を戦力として運用する実験部隊「剣虎...続きを読む
  • 陰陽師
    和風ファンタジーの題材としてすっかりおなじみの陰陽師。そのブームの火付け役であり、9月に市川染五郎・市川海老蔵らによる歌舞伎座公演も決定したのがこの「陰陽師」シリーズです。
    平安時代の天才陰陽師、安倍晴明。その親友で音楽の才能豊かな源博雅。この二人が鬼や生霊など様々なものの怪にまつわる怪異を解き明...続きを読む
  • 別冊カドカワremix KREVA×後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)特別拡張対談
    「もちろん俺たちのCDとか曲とかを買ってくれてたら最高だけど、お金もお小遣いも少なくなってきてる中、君はヘッドホンを買ったんだねって。音楽を楽しむためにヘッドホン買ったってだけで、好きになるね(笑)」
    インタビューの中でKREVAが言ったこの一言が、今の時代がどれだけ音楽にお金を払う人が減っている...続きを読む
  • シューマンの指
    「シューマンの音楽は、甘美で、鮮烈で、豊かで、そして、血なまぐさい――」
    2011年本屋大賞5位にランクインした音楽ミステリー小説『シューマンの指』。
    この作品をオススメしたい理由は、なんといっても作者の圧倒的な描写力!!私はシューマンの曲を全く知らなかったのですが、読んでいるうちになぜか頭の中...続きを読む
  • BG、あるいは死せるカイニス
    全人類が生まれた時、すべて女性だったというマジカルな世界観に意表を突かれました!作者である石持氏は、宇宙人が主人公の『暖かな手』や、特殊能力を持つ人物が登場する『ガーディアン』など、意外性に富んだ推理小説を描く作家として有名です。本作はその極めつけで、物語の前提となる世界観をまるごとひっくり返してし...続きを読む
  • 別人「群ようこ」のできるまで
    作者が大学を卒業してからエッセイストになるまでの5年間のお仕事奮闘記。
    特におすすめなのは、前半の広告代理店時代。代官山OLってかっこいい!と思って入社したのに、現実は非人道的な残業時間とエロ上司。同僚の女の子はストレスで10円ハゲが二つもできてしまう最悪な職場だった!
    大笑いしながら「ああ、私...続きを読む
  • 一瞬の風になれ
    学生生活の全てを賭けていた。そんなことのひとつふたつ、ありませんでしたか?「最近あの頃みたいに熱くなってないな…」というあなたにぜひオススメしたい一冊です。きっと熱いモノがジワジワくるはず。自分もまた頑張ろうって背中を押してもらえます。
    陸上競技に学生生活の全てを賭けて成長していく高校生たちを見て...続きを読む
  • 薬指の標本
    忘れたくとも失いたくはない過去に区切りをつけ、完結させるため、たくさんの人がその“標本室”を訪れる。持ち込まれる品は様々。例えば、楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、ヤケドの痕。そして、標本技術士の助手になった「わたし」は、欠けてしまった薬指の先端を。
    登場するのは、皆、かつて何かを永遠に諦めてしまった人...続きを読む
  • ルパンの消息
    時効まで24時間というタイムリミットの中、15年前に起きた事件を追っていくミステリー小説。
    事件は昭和50年、かの三億円事件が時効を迎えようとしていた頃の事。そんなノスタルジックな雰囲気漂う時代を舞台に、事件の当事者の供述(回想)で物語は進行します。当時、高校生の少年3人が期末テストを盗み出すとい...続きを読む
  • 世界音痴
    「夏空の飛び込み台に立つひとの膝には永遠のカサブタありき」――頼りない、イケメンでもない、しかも自己愛炸裂。そんな「ダメ男」なのに、モテる男がいます。その名は「穂村弘」。人気の若手歌人で、あだ名は「ほむほむ」。自意識過剰ゆえに繰り広げられる、なさけない体験や妄想を詰め込んだ初期のエッセイ本。「なんだ...続きを読む
  • グレート・ギャツビー
    レオナルド・ディカプリオ主演の映画公開をきっかけに初めて本作を手に取るという人もおられるでしょう。いくつも翻訳が重ねられている本作ですが、個人的には『ライ麦畑でつかまえて』の邦訳でも知られる、この野崎孝訳をおすすめします。語り手の一人称が「ぼく」であること、そして適度にしゃちほこばった文体が、いかに...続きを読む
  • 王国記
    花村萬月の名前を聞くと、サラダ油のシーン(!)で印象深い映画化タイトル「皆月」を思い浮かべる人も多いかもしれない。過激な性と暴力描写を得意とする作家だが、その根底にあるのは神への猜疑と冒涜である。
    著者の「王国記シリーズ」の第一章目にあたる本作『ゲルマニウムの夜』の主人公・朧は、頭脳明晰だが人を殺...続きを読む
  • パンツァークラウン フェイセズ
    『マルドゥック・スクランブル』が愛読書の私が、読み始めたら止まらない新人作家の作品に巡り会えました。
    舞台は西暦2045年。大震災により崩壊した東京は層現都市「イーヘブン」になっており、AIの<co-HAL>によって人間の行動・職業などが制御されています。
    主人公の「広江 乗」は、一度は<co-...続きを読む
  • 流星ワゴン
    「最近、いつ泣きましたか?」――ジメジメした梅雨も終わり、そろそろ疲れも溜まってきたのでは?そんな時は本を読んで泣いて、心をすっきりリフレッシュするのはいかがでしょうか?そこで、悲しいけれど心が暖まるストーリー、重松清の『流星ワゴン』をご紹介します。
    リストラ、妻の浮気、息子の家庭内暴力など、度重...続きを読む
  • MM9
    怪獣と聞くと幼き日を思い出しますが、本作は驚くほど綿密に練られた大人のSF小説です。怪獣がシリアスな災害として描かれ、“特異生物対策部”が怪獣の出現予測や対策を講じる……まさに「プロフェッショナル!」な仕事ぶりの隊員達が実に熱い!
    法律や世論などの兼ね合いで判断・決定がスムーズにいかないもどかしさ...続きを読む
  • 眠れる美女
    川端康成と言えば、「トンネルを抜けると~」から始まる、静謐で美しい文章を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。なんか難しそう、とか、堅苦しそうとか思ってる人もいるのでは?
    ところが、この川端康成という人、実はかなりの変態です。フェティシズムの塊です。それが端的に表れているのが、この『眠れる美女...続きを読む
  • 逃亡くそたわけ
    二十一歳の夏は一度しか来ないのにどうしよう――入院する精神病棟から脱走した「花」と、気まぐれについてきてしまった弱気の「なごやん」。二人は汗まみれになりながら1台の車で九州中を逃げ回る。
    「手に手を取って逃亡する男女」と聞けばつい、追手から逃れるうちに高まる愛情…などと想像しがち。しかし、絲山節の...続きを読む
  • いやしい鳥
    芥川賞作家、藤野可織が描く、現実と非現実の交錯する恐怖の世界。
    主婦の内田百合は隣人男性の高木の奇行に不安を覚える。どうして彼は、玄関ではなく家の裏の窓から、靴も履かずに、狭いブロック塀の間を縫うようにして外へ出るのだろう…?あの家の中で、一体何が起こっているというのか。
    薄暗い部屋の中に、食わ...続きを読む