あらすじ
著者代表作にして大ベストセラー『蒼穹の昴』シリーズ第6部。1936年、蒋介石を張学良が拉致した西安事件の胸熱くする真相とは。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
筋書きのために。すなわち尊敬する魂のために。正義と良識を持って見届けよ。何を生きる柱とするのか、何を大切に思うのか、目の前の人は何を考えているのか思慮しなさいという話でした。
蒼穹の昴シリーズ、2023年9月現在の最新刊までとうとう辿り着きました。辿り着いて本当に良かったです。こんなにすいすい読めた長編シリーズは初めてかもしれません。まあタイトル通りヘビーな内容なのですが。
二・二六事件から影響を受けた張学良が蒋介石に国共合作と抗日戦線を迫った西安事件が中心となる今作。東北を追われた東北軍の、張作霖が育てた最後の魂が終わる軍事法廷ミステリーでした。
今作を含めて15巻の長編を読んできたからこそ、重苦しい軍事法廷でありながらその意図、その根底に隠されている仁義だったり信念だったりするものの、人の血の通った体温を感じ取れるような、そうしたお話でした。
ええ。うまく感想がまとまっていないのはシリーズの中でも屈指の推しキャラ陳一豆大佐が死刑に処されたからです。剪髪のあだ名を持つ彼は、張学良の罪を被って銃殺刑に処されました。蒋介石を殺そうとしてまでも国共合作と対日抗戦を始めようとした張学良を庇い、西安事件の主犯は自分だと嘘をつきました。そしてその嘘の証言が真実とされ、文字通り命を張って今度こそ張学良を守りました。
張作霖も宋教仁も革命家たちも守れなかった剪髪が、いよいよ張学良を命懸けで守り、馬賊としての誇りのもとに死んでいったことを私は馬鹿にすることができません。彼が成し遂げたこそ兵諌だったのです。
ニューヨークタイムズの記者であるジムは当初その剪髪の行動論理を理解できませんでしたが、大先輩にあたるトム・バートンの魂に諭されて理解します。この行動指針と論理を解明するときの浅田先生の文体の見事なこと。思えば宋教仁を守ろうとして守れず亡くなったトムと護衛の役目を果たせず生き延びた剪髪の魂が交錯した日だったのかもしれません。
こんなに読みやすい小説家に出会えて幸せ者だなと思いました。
まあ軍事法廷に剪髪が立った時は全てを察して「浅田先生の鬼」と思いましたがね。勿論褒め言葉です。
龍玉の物語もいよいよ一つの到達点に辿りつきそうです。天命には具体がある。そのこと自体が果たしてどんな意味を持つのか。次の巻が待ち遠しくてなりません。一刻も早く続きが読みたいです。
ぶっちぎりで面白かったです。どうか早くこの巻まで一人でも多くの読者がたどり着けますように。
そうか……剪髪は馬賊として死にたかったか……総攬把の最後の子分として死にたかった……剪髪に生きて欲しかったと心から思うけれどその気持ちが間違っているとも下卑ているとも私は言えない……馬賊の剪髪の一生だったよ……
Posted by ブクログ
蒼穹の昴シリーズも15冊目になり、ここまで長い長い物語が連なっていることに、感嘆する。
二.二六事件首謀者との面談は「戒厳令下は戦地と同じ。弁護人なし、非公開、上告なしという暗黒裁判が可能。到底法治国家とは思えぬ」の異様さが際立つ。
2023年現在、憲法改正で検討されている緊急事態条項の創設は、この二.二六事件の戒厳令のような権力集中も起きかねないと思ってしまう(なので緊急事態条項は反対)。
龍玉をめぐる蒋介石への張学良の判断、兵諌。いよいよ現代に近い舞台が描かれようとしていて、次作も待ち遠しい。
Posted by ブクログ
日本人とはもちろん違う国民性を持つ中国の人々。
『蒼穹の昴』『中原の虹』『天子蒙塵』ずっと読み続けてきて良かった。
日本とかの国の歴史的背景等は詳しくは分からないけれどまた大きな波に攫われ感動に揺すぶられている。
一気読み。