【感想・ネタバレ】令和元年のテロリズムのレビュー

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Posted by ブクログ 2022年05月21日

事件に重ねて世相を語る文章は時に牽強付会となりがちであまり好きではないのだが、本書は8050問題や氷河期世代の問題と令和元年に起こった事件を重ねながらも、個別の事件の背景をきちんと読み取っていて、雑に世相をまとめていないところが好感を持てた。
特に元農林事務次官長男殺害事件は裁判の様子まで追跡して、...続きを読む加害者擁護となりがちだった世論に対してどうしても抗わないといけない部分にかなりの確度で迫っており、読みながら力が入った。

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Posted by ブクログ 2021年11月07日

磯部涼さんの渾身のルポルタージュ、力作。いろいろあるが、第四章 元農林水産省事務次官長男殺害事件裁判
は涙を禁じ得ない。令和元年前後の事件を取り上げているがその後も苛烈な事件は連綿と発生し続けており
まだ令和3年なのかと思うと我を失う。

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Posted by ブクログ 2021年04月27日

磯部さんの筆力によってグイグイ引き込まれ一気に読みきった。
内容はハードであるのに対し、読み心地のよさは音楽評論家としてのバックボーンからくる構成力によるところが大きいのだろうか

読んでいて、自然に理解できる価値観もあれば令和の時代からすると旧時代的と自分でもわかってはいるが納得できない物の見方も...続きを読むあり、揺さぶられ、考えさせられた

これからも作家買いしたいと思わせるのに十分な一冊でした

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Posted by ブクログ 2022年07月13日

「この”令和“には、人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められております」

改元の際にこの説明をした安倍晋三が凶弾に倒れた。しかし、逮捕された男性は政治的思想による犯行ではないと供述しているらしい。

テロリズムは普通政治的目的があるが、本書で紹介される犯行にも政治的目的はな...続きを読むい。
ただ、犯行があった背景に8050問題やアスペルガーなどの政治が放置してきた問題があることから、あえてテロリズムと呼んで可能な限り丁寧に、詳細に事実を追う。
世間を騒がせた事件について、単に異常者、不良品だったと済ませるではなく、議論を尽くすことで社会的包摂に寄与するという東浩紀の主張が本書の補助線になっている。

令和元年のテロリズムは中心がぼやけているのに対し、周りの反応は他罰性がはっきりしている。
今回のテロは時代の何を反映してるんだろう。

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Posted by ブクログ 2022年05月07日

令和に起きた事件。だけど、根っこの部分は平成や昭和から地続きの問題であること。高齢化、引きこもり、格差社会、ネット上でのやりとり…。
いつか問題になると、誰もがどこかで聞いてきたはずなのに、問題の当事者であるという意識は低い。だから、軽率に非難する。
犯人を庇うわけではないけれど、介入する余地がなか...続きを読むったのかと考える。みんなが救われる世界線だってあったはずだと考える。

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Posted by ブクログ 2021年08月22日

特殊な人の特殊な出来事と感じるか、自分にでも起こり得るかもしれない、社会の問題として捉えるか。社内の責任という見方を学んだ

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Posted by ブクログ 2021年08月09日

1つの事件について深掘りされた本ではないが、社会全体の問題として大きく捉える視点で書かれている。背景となる平成という時代を考察する上で興味深い一冊だった。

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Posted by ブクログ 2021年07月06日

いつの時代にでも
陰惨な事件は起きている

ただ
その「事件」「事故」が
どのように社会的に位置づけられるかは
その時代に大きく影響されている

本書では

川崎での20人殺傷事件
元農林水産省事務次官の長男殺害事件
京都アニメーションの放火殺人事件
東池袋自動車暴走死傷事故
の四件を
実に丁寧に取...続きを読む材し丁寧に思考しながら
綴られた記録である

どんな事件・事故でも
その当座は大きく報道される
しかし、
検証、考察となると
そこから位置的にも、心理的にも
離れていしまうと
ほとんど振り返ることもなく
日常の意識からは遠ざかってしまう

それだけに
本書が世に出された意義は
大きいと思う
どんな事件・事故も
その時代に生きている我々と
無関係では無い
そんな当たり前のことを
思い出させてもらえる
一書である

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Posted by ブクログ 2021年06月25日

読んでいてしんどくなってきた。いつの時代にも陰惨な事件は起こるものだと思うし、時代の影響は受けるものだとは思う。令和の時代はこういう事件を生む背景を持っているというのがしんどい。元年の次の2年、3年はずっとコロナだし、何かロクでもない時代のスタートだなぁ。

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Posted by ブクログ 2023年03月04日

5割方前にあったエリート官僚のニート息子殺しの話になってて、熱量もなんかそこだけ突出してるのでこの話だけで本出した方がよかったんちゃうんか?と思った。そうすると何がテロリズムやねんってなっちゃうやろうが、そもそもこの本タイトル付けに失敗してると思う。
裁判の話見とると親子だニートだの眼鏡外したらモロ...続きを読むアスペに対しtwitter経由でネチネチネチネチ掃除せえ掃除せえ言うとったら果てにアスペがブチギレて半殺しにされ、余りの屈辱に前後を忘れて殺したとしか取りようがない……。
家庭内暴力の事始めには確実に母親に責任が有るように思えるし、いい学校行ける頭はあったんだから、居場所、落とし所さえあれば何とかなっただろうにと言う切ない思いを感じた……

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Posted by ブクログ 2022年08月13日

特に印象に残った事件は元農林水産省事務次官長男殺害事件について。

この本の帯に書かれている「悪意は伝染していく」という言葉が最も重なった事件だと思った。

この事件は細かい事はわからなくて、当時ネットニュースでなんとなく見た程度。
オンラインゲームのドラクエをずっとプレイしていた引きこもりの男が親...続きを読むに殺され、そのゲーム内の止まってしまったキャラにザオラルをかけ続ける遊びが行われてるというは見た記憶がある。

社会的に人とのコミュニケーションを取る事が困難になった人達がこの本に書かれている事件を起こしている。
正直、近所にそういう人がいたら絶対に関わらないように自分も過ごすだろう。

事件を起こした人達の背景にあった事実が見えて来て、社会が彼らにしてあげられた事は何だったのだろうかとモヤモヤする。
いや、彼らというよりは彼らの親達だろうか。
何かこう、こうした事件というのは容疑者の幼少期まで遡るとそこに何かしらの要因を感じる事が多い。

川崎殺傷事件の犯人、岩崎隆一に対して世間が投げつけた「1人で死ね」という言葉。
熊澤英昭が息子英一郎を殺害した事でそれを実行した。

果たしてそれは親の責任だったのか、どうするのが正しかったのかは最後まで分からなかった。

令和に起きた凶悪な事件を元に、色々と考えさせられた本だった。

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Posted by ブクログ 2022年03月06日

以下、引用

●ポピュリストたちが隆一に投げつけた「一人で死ね」なる言葉は、遺族の怒りを代弁しているつもりだったのだろう。しかしそこには、7040/8050問題をはじめとする社会的背景から隆一を引き剥がし 、個人に問題を抱え込ませ、彼をもともといた深く暗い穴の底にもう一度突き落とすかのようなー事件を...続きを読む社会的なものとして受け止めてなるものかというような強い意志が 感じられた。更にその言葉はまた別の男の背中を押し、もうひとつの殺人事件を起こすことになるのだ。男とは、元農林水産省事務次官=熊澤英昭である。あるいは彼こそが、誰よりも真剣に岩崎隆一の事件を”テロリズム”として受け止め、営業されたのかもしれない。悪意は伝染していく。
●あるいはそこでも被害者=熊澤英一郎と、川崎殺傷事件の容疑者=岩崎隆一とが重ねられてはいないだろうか。つまり、犯人が意図を説明することも罪を裁かれることもなく死んだ、川崎殺傷事件に対する世間の行き場のない感情が、熊澤英昭の殺人によって発散されたのだ。英昭に同情や共感、尊敬の声が寄せられるのに対して、英一郎は被害者であるにも拘わらず批判や揶揄の対象となっている。 マスメディアでは直接的な言い回しは避けられるものの、両親の資産に頼りながら彼らに暴力を振るっていたことが繰り返し報道され、それが「熊澤(英昭)氏を責められない」 という印象を強化する。
● 英一郎はエリート街道から外れてしまった自身の男性性の欠如を埋めるものとして、英昭に”強い父性” というイメージを求めたのではないか。もしくは周囲も英昭をそう見る中で、相互補完的に妻には”悪い母性”というイメージが着せられてしまったようなところがあったのではないか。そして英明自身も”強い父性”というイメージに押し潰されるように最終手段として子殺しを選び取ってしまう。
●京都アニメーション放火殺傷事件は実際にテロに応用されたのだ。これを受けて政府は、ガソリンを容器で販売する際には身分証明書の確認を徹底する事などの規制強化を決定する。
●青葉は昭和53年生まれ、加藤は昭和57年生まれで、共に就職氷河期世代にあたる。後者の事件と前者の事件との間には約10年の時差があり、その期間における青葉の経歴を検証すると、同時代の政治や労働運動が救うことができなかった人間の姿が浮かび上がってくるだろう。もしくは同じく改元直後に起きた川崎殺傷事件の犯人・岩崎隆一と、元農林水産省事務次官による家庭内殺人事件の被害者・熊澤英一郎も共に一般的な働き方からドロップアウトしてしまった人物だが、昭和50年生まれでやはり就職氷河期世代にわたる後者に対して 、前者は昭和42年生まれと世代がずれている。一方で、岩崎隆一が引きこもり始めたのは平成10年前後とみられ、就職氷河期と時期が被っているという意味では以上4つの事件は同時代性を持っている。
●確かに数々のエピソードから伝わってくるのは、英一郎はどうしようもない面を持つ人間だったということだ。しかし彼のそのどうしようもなさは、菊池の見解によればアスペルガー症候群と密接な関係があった。また事件の要因となったのは、英昭が様々な試行錯誤をしながらも最終的に問題を家庭の中で抱え込んでしまったことだ。それならばやるべきなのは、熊澤家の事件を、横田が書くように「この家庭の「悲劇」」「「家庭」だけの問題」としてではなく、「現在の社会そのものから必然的に生じた事件」として捉えること―彼らを包んでいた分厚い繭を切り開き、社会の側へ折り返すことだろう。あるいは前日のような子殺しにおいて、加害者がむしろ同情を集め、被害者が二の次にされてきた歴史を踏まえるのならば、熊澤英一郎という一人の人間についても思いを馳せるべきだ。繰り返しになるが、ツイートを始め彼が残した言葉から浮かび上がってくる人物像はどうしようもない。そしてそのどうしようもなさについて考えなくてはならない。(中略)裁判で取り上げられた「僕の44年の人生は何だったんんだ」という発言や「#子供の頃怖かったもの。成績が悪いと大切な玩具を叩き壊す愚母。エルガイム MKーⅡのプラモためらいも無く壊された、あのショックは30年以上経っても忘れられない…。私の性格がゆがんだ原因の1つですよ…」というツイートからは、テロリストの原点である孤独な少年の実存をはっきりと感じることが出来る。。ちゃんと生きたかったという叫びを聞くことができる。そこに耳を傾けなければいけない。

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