【感想・ネタバレ】2016年の週刊文春のレビュー

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Posted by ブクログ 2021年03月16日

週刊誌から『スクープ力』というパワーが失われている。かつて、吉本興業創業家 vs 現経営陣の双方が週刊誌〈週刊新潮と週刊現代〉を介し、暴露合戦をするという異例の展開が繰り広げられた。怪芸人中田カウスが暗躍したあの一連のお家騒動。あれは2007年のこと。

今思えば、まだまだ週刊誌が週刊誌然としていた...続きを読む。それが今や現代やポストはスクープに背中を向け、シニアシルバー層向けの読み物が中心となり、週刊朝日は佐野眞一による橋下徹の出自記事掲載陳謝事件以降、牙を抜かれてしまい現在に至る。

ネット台頭による販売部数の低下は取材費を直撃。週刊誌が本来持つ『深く掘り報ずる−詳報性』を放逐してしまった中でひとり気を吐く週刊文春。まさに太平洋ひとりぼっち状態と言ったら新潮は気を悪くするか−。

その週刊文春。近年、政治家の金銭スキャンダルやタレントの醜聞スクープを連発。それを指して『文春砲』はまさに言い得て妙。この呼称、元々AKB48のファンの間で使われており、指原莉乃らのスキャンダルを文春が報じたことからネット上で付いたことに由来する。

このは旺盛なスクープは今に始まったわけでなく'84年 三浦和義『疑惑の銃弾』、‘93年 貴花田・宮沢りえの『世紀の破局』等、世を震撼させたスクープは一貫して変わっていない。

ただ不思議に思うのは、同じメディアでありながら文春はジャニーズ王国の闇に斬り込み、テレビは沈黙。その違いについて、本書にこんな記載がある。日本の新聞やテレビは『権力の監視者』を標榜しつつも実際には極端に臆病で従順。諸外国とは異なり、日本の新聞社とテレビは〈読売新聞と日本テレビ〉といった資本関係でつながる異常な構造を持つ。テレビ局はそもそも許認可事業、規制に弱い。そういう意味では不都合な真実を伝える週刊誌、特にタブーを恐れない〈週刊文春〉は権力者から危険視され敵視され忌避される。

とは言え文藝春秋は総合出版社。女性誌に文芸分野もありそこには広告主が存在する。にもかかわらず週刊文春編集部は掴んだスクープを会社上層部の政治的判断や大手広告会社からの圧力で差し止めを喰らうことはない。『編集の独立性』が厳然と守られている。むしろ公序良俗に照らす判断の方を大事にする。

社名の文藝春秋の『文藝」』は文芸作品、『春秋』は日々の出来事が積み重なった年月を指すことから転じて日々の出来事を報ずるジャーナリズムを指している。この『春秋』の中心にあるのが『週刊文春』。

本書は『週刊文春』の歴代名物編集長 花田紀凱とま新谷学のふたりにフォーカス。 このふたり、週刊誌1号あたり約1億円という発刊経費を毎週使い、勝ち続けてきた人物。ふたりのカリスマ編集長の辣腕ぶりを編集者として身近で見てきた著者がスクープを生む編集部の現場、度々勃発した社内抗争や掲載記事をめぐる訴訟等も余すことなく活写し、現場実況さながらの臨場感が語られている。

最終章では、デジタルへの挑戦に立ち向かう文藝春秋の葛藤が描かれる。広義ではアナログ vs デジタル、端的に言えばコンテンツメーカー vs プラットフォーマー。現在は『制作側』より『運営側』が主導権を握る時代。編集長の新谷は、現在の出版業のままでは立ち行かなくなると、議論百出を経て『文春オンライン』を立ち上げる。デジタルに移行してもスクープ報道が可能であることを立証。またそのスクープ動画はテレビ局へ有償提供することにより新たな利益を 生み出すことにもなり、見事デジタルシフトを果たす。

それを可能ならしめたのが、『ベッキーのゲス不倫』を皮切りに『甘利大臣賄賂疑惑』『清原覚醒剤発覚』『宮崎謙介育休不倫』『元少年A直撃取材』『ショーンK経歴詐称』…と文春砲が炸裂した2016年。『衝撃スクープなら文春』というブランディングが一気に進み、デジタルシフトを加速させた。それは、まもなく創業100年を迎える総合出版社にとって次の100年に向け意気揚々と歩み進めたことを物語る。

本書は『週刊文春』とそれを発行する文藝春秋の歩み、出版メディア史、部員60名を束ねる編集長のリーダーシップ論、スクープを取ることからスクープで稼ぐビジネスへの移行…、昭和平成令和の『春秋』を報じ続けた『週刊文春』の凄みを堪能できる一冊。大河小説を読み切った感さえある超力作。オススメ!

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Posted by ブクログ 2021年02月23日

・昭和、平成から令和にかけて、日本の出来事が文春の歴史とともに振り返えられる。
・花田、新谷という世代を超えた2人の編集長の仕事様
・野獣に人権なし、最悪事件の実名報道に踏み切る判断
・紙雑誌の衰退にともない、デジタルによるコンテンツビジネスの多角化を狙う
・仕事が好きな編集長2人の熱い仕事様
・テ...続きを読むレビや新聞では報道できないことを文春が取り上げる、スクープを毎週連発することで違った景色がみえてくる。
・少年Aの直撃取材でみえた反省のない反応。

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Posted by ブクログ 2021年02月19日

激務なのに誰も異動を申し出ない。まるであの頃の週プロ編集部じゃないか(笑)そして著者は柳澤さん!

なんとなくは知っていた事件、その存在すら知らなかった事件が報道に至るまではどんな人間が関わっていて、それが発表された事で世間に与えた衝撃を考えると興奮をおぼえる

週刊文春の編集長を命じられた新谷学が...続きを読む感じた
「俺は、大変なものを預かってしまった」
ときてページをめくると

第七章 『二○十六年の週刊文春』

とあるのを見た瞬間、まるで映画のクライマックスかのような感動を覚えたのには自分のことながら驚いた、こんな感覚は初めてだった

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Posted by ブクログ 2021年02月06日

出版社と雑誌社。月刊と週刊。新潮と文春。などなどその違いを改めて知った。花田さんが「鬼平犯科帳」の名付け親というのも。
昼は本読むな。知らない人と3人は会え。とか。ビジネスに通ずる言葉がたくさんあった。
前半は著者がインタビューした生の声と歴史ファクトが相まってとても面白い。後半は新谷学礼賛がちょっ...続きを読むとヒク感じ。本からの引用が多いし、一流である、史上最高の、などなど昭和マスメディア的な文体が目立った。。どうしたんだろう。。

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