【感想・ネタバレ】掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集のレビュー

ユーザーレビュー

Posted by ブクログ 2021年01月08日

極彩色でシーンが降り注いでくるような圧倒的な表現描写と,意表をつくエンディング,縦横無尽,変幻自在,奇想天外…繊細で大胆で,スゴいな,他の作品も読んでみたい.

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年12月13日

からっからの風が吹いて、考えたこともないような場面が現れては消える。本を閉じたときの現実とのあまりの距離に眩暈がする。ぶん殴られるような。読書ってこういうことが起こるからすごいんだよなーと思う。読み始めて「ちょっとこれすごすぎない?この調子で続くの?!」とか思ったらまだ30ページとかで、びっくりした...続きを読む

実体験に基づく作品集とのことだけど、ネタの宝庫すぎないかこの人生…。でも文学として昇華させていて、死後発掘sれて世界中で読まれるんだからそこまでが作品というか。
こんな人生を作品にしていながら自己憐憫の類が一切ないのがすごい。嘘みたいに強いのに、嘘みたいに弱い。そのまま。
ちょっと違うけど植本一子さんと似ているところがあるような。そのまま全部だしちゃう感じが。

愛していた夫を「バークレーのごみ捨て場みたい」って愛情を込めて表現するのとか、歯医者のおじいちゃんの歯を抜く描写とか、共産党の先生とピクニックに行く話とか、笑いたいのに怖いような、泣きたいような、なんていう感情なんだろう。

岸本佐知子さんによる解説までがセット。全面的に同意!
なんかすごい本読んでしまった感じ。

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Posted by ブクログ 2020年12月04日

この本に出逢えた幸せ
新聞の書評欄を見てほしいなあと思っていた本です。そして、電子版で読めると知り、即買いました。上質の短編集は、何度も読み返したいと思う作品ばかりでした。翻訳者の方のルシアへの想いがこもっている言葉選びの力もありますが、選び抜かれた言葉に惹かれます。本作を読んでつくづく思うのは、い...続きを読むかに自分が見ているようで見ていない、見えているようで見えていない。聴いているようで、聴いていない。ということです。ルシアのものを見る力、聴く力に圧倒されます。好きな作品は、「喪の仕事」「ラヴィアンローズ」「さあ土曜日だ」ですが、それ以外の作品もとにかく、とっつきやすいのに、読めば読むほど、味わい深いと思います。私小説を超えた、リアリティがあるのに、幻想的ですらある描写が後をひく、繰り返し読んでいきたい作品でした。

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Posted by ブクログ 2020年10月11日

洋画というものを初めて見たのは10歳頃だったか。
ストーリーとは全く無関係の人間が唐突に現れることにかなり衝撃を覚えた。
主役のふたりが話している間を通り抜けたり、話しかけてきたりする。
エキストラのはずが、一体これは何なのだ?
背景も小道具も衣装も全てが計算し尽された邦画とは、なんという違いだろう...続きを読む
異文化という言葉も知らない頃だったが、猥雑な画面に気持ちがざわざわして、一体次は何が出てくるのかと心待ちにする自分を発見したのだった。

本書を読むと、あの時の気持ちをありありと思い出す。
何かが、唐突に訪れる。
あ、今そこに何かが!・・と思う間に幕は途切れる。
何度となく置き去りにされては、また次の幕を開けてみたくなる。
24の短編は切れ切れの断片のようでいて、やがて全てが繋がり自伝となって完成する。
痛々しく、誇らしく知的で、微かな自嘲と笑いを含む。主人公はこの表紙の美しい女性だ。

表題作は4作目に登場する。
掃除婦は作者自身が4人の子どもを育てる生活のために選んだ職業で、この短編のみならず、ほとんどが実体験を元にしたものらしい。
「掃除婦が物を盗むのは本当だ。ただし雇い主が神経を尖らせているものは盗らない。」
ドキッとするフレーズもしばしば登場する。読み手への忖度などない。
認知症気味の雇い主の家から瓶入りのゴマをひと瓶盗み、他にも盗んだものは睡眠薬。何軒もの家をかけもちして、それぞれの家から盗むのも睡眠薬。
彼女がいつも思うのは薬物中毒で死んだ夫、ターのこと。
睡眠薬は胸にしのばせたナイフだったが・・鮮やかなラスト一行に息をのむ。

養護施設に入所中の父を見舞う話はかなり堪えた。
パーキンソン病と認知症を患い、娘のことも見分けがつかず悪態をつく。
だが彼女は幻滅していない。
父の口から「愛してる」と言ってくれるのを待っている。ある日車いすで丘にのぼると・・
一瞬の心の通い合いの後唐突な幕引き。しかし後からじわじわと涙がにじんでくる。

登場するのは掃除婦だけではない。矯正器具を背中につけた女生徒、共産主義にかぶれた地味な女教師、断酒会に通うアルコール中毒患者、依存症のシングルマザー、創作を習う囚人、誰にでもどこにでも醜さと悪を見出す母親。
歯科医の祖父はスプラッターばりに自分の歯を抜いて入れ歯を装着する。
どこかタガが外れてぶっ壊れている彼ら。
いつも必死で、不器用で、感情的で、なのに何故か胸の奥に住み着いて離れなくなる。
作者の人生もまた、結婚と離婚、アルコール依存症、性的虐待、孤独だった少女時代や刑務所での出会いなど、痛切なエピソードだらけだ。
現在進行形で出来事だけを綴る文章は、最初デュラスのようだと思ったが違った。語り口はその都度変えてあるのだ。作家本人の筆力か、岸本さんの訳の良さか、何しろ見事だ。

これらの短編に共通するのは、鈍色の低い雲が垂れ込める空から一瞬さす光。しかし直後にはかき消される。生きていくということは、まさにそのようだと語るのだ。
綺麗なだけではなく、辛いだけでもない。
猥雑な事柄のすべてを受けとめて、ただ進むのみ。
コインランドリーで他人の洗濯物をうっかり洗ってしまった主人公が、相手の男にしつこく罵倒される話がある。係員の女性の言葉が印象的だ。
「あのさ、そんなに大騒ぎするほどのことかね?
あと百年もすりゃ、そんなの気にもならなくなるさ」
百年!困惑し、笑い、それもそうだと呟く。私もこれを言ってみたい。

本書はブク友さんたちのレビューから知り、いつか読みたいと願っていたもの。
ところがメアリアン・ウルフの著書に一部が引用されており、急激に読みたい熱が高まってしまった。引用部分は表題作のラスト一行だ。ここで、痺れた。

生前は一部にのみ知られる作家だったというが、死後に発表された本書は、今も世界中に読者を増やしているという。出来ることなら他の作品も読みたかった。
ルシア・ベルリンの苛烈な人生に、乾杯したくなる。

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Posted by ブクログ 2020年07月20日

残酷でどうしようもない日常をここまで詩的に切り取られると思ってなかった。
歌うような文章なのに綺麗なだけではなくて、とても心にささる

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Posted by ブクログ 2020年06月27日

読んで良かった。五感が総動員される。
こんなに気にいるのなら、ゆっくりまとめて読む時間があればよかったのにと思う。無いものねだりをしてもしようがないのではあるが。
原著も読むことにする。

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Posted by ブクログ 2020年05月25日

寝る前に少しずつ読んだ。孤独に寄りそってくれる作品だと思った。善悪を超えた人生の深み、みたいなものが宿っていると思った。

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Posted by ブクログ 2020年05月22日

“他人の苦しみがよくわかるなどと言う人間はみんな阿呆だからだ。”(p.13)


“月が恋しい。独りの時間が恋しい。”(p.183)


“わたしに向かって発せられたのに聞きそこねた、どんな言葉があっただろう? 気づかずに過ぎてしまった、どんな愛があっただろう?
無意味な問いだ。わたしがここまで長...続きを読む生きできたのは、過去をぜんぶ捨ててきたからだ。悲しみも後悔も罪悪感も締め出して、ぴったりとドアを閉ざす。”

“このもしもも、あのもしもも、結局は起こるはずのなかったことだ。わたしの人生に起こったいいことも悪いことも、すべてなるべくしてそうなったことなのだからーー今のこの独りぼっちのわたしを形づくってきた選択や行動ならば、なおのこと。”(p.274)

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Posted by ブクログ 2020年05月03日

題材とするストーリーはアル中や、虐待や、死であったりするのにどこか軽快でユーモラスで不思議と引き込まれる。
現実よりリアリティがあるように感じる。
ストーリーの終わりはスンとやってきて、「そんなこと言ったって無理なもんは無理」って感じでリアルを見せてくる。
暗い題材なのに不思議と軽快に読めて、読後...続きを読むの余韻が軽やかなこの感じ、何と表現したらいいかわからない。

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Posted by ブクログ 2020年04月10日

作者自身の経験をもとにした短編小説集。これが時系列と、時に語り手さえも変えながら読む24編。
何となく事実っぽいなと思わせるのはそこにあるような。週末毎に親戚の家で昔話を聞かせてもらうような雰囲気がある。そう、優しさに溢れてます。どの話もすごくいい。短編で読みやすいしね。

時系列と登場人物が必ずし...続きを読むも定まらないので繰り返し読む度に新たな発見がありそう。そう、何度でも楽しめる!!

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Posted by ブクログ 2020年09月15日

『わたしも「エンジェル」に来る。なぜだか自分でもわからない、インディアンのせいばかりでもない。家は町の反対側にある。ほんの一ブロックのところにはキャンパス・ランドリー店がある。エアコン完備、BGMは有線のソフトロック。雑誌は『ニューヨーカー』に『Ms』に『コスモポリタン』』―『エンジェル・コインラン...続きを読むドリー店』

リディア・デイヴィスが、そして岸本佐知子が上手く言葉が見つからないと評する作家。ルシア・ベルリンの短篇集を漸く手に取る。リディア・デイヴィスの序文(翻訳では巻頭ではなく末尾にあるが)は少々個人的な思いが錯綜しているようでこの稀有な作家の全体像を冷静に伝え切れているようには思えないが、翻訳家のあとがきは短い言葉でルシア・ベルリンの文章の特徴を言い当てる。比喩の斬新さ、作家の起伏に富んた人生に裏打ちされた確かな「目と耳」。読者の「五感をぐいと」つかみ取る「声」。確かにその通り、と思う。

とはいえ、言い当てたところで何故読むものが彼女の文章に惹かれるのかまで解明される訳ではない。当たり前だがそれはそうそう単純なことではないだろう。

『でもわたしが気になるのは、カラスに気づいたのがほんの偶然からだった、という部分だ。わたしはほかにもいろんなことをみのがしてきたんじゃなかろうか。(中略)無意味な問いだ。わたしがここまで長生きできたのは、過去をぜんぶ捨ててきからだ。悲しみも後悔も罪悪感も締め出して、ぴったりドアを閉ざす』―『巣に帰る』

一つの答えは彼女の動体視力の良さ、ということにあるような気がする。この短篇集を読みながらずっと頭の中ではヴィヴィアン・マイヤーの撮った白黒の映像が浮かんでいたのだが、写真はその中に封じ込められた今にも動き出しそうな物語を全て見るものに委ねている。ルシア・ベルリンの描く物語もそれと近い印象を残すように思う。そしてもう一つ。ヴィヴィアン・マイヤーも時に自分自身の映り込んた写真を撮った。その風景の中に取り込まれた孤独な家政婦はにこりともせず、かといって自身の置かれた立場を卑下するようでもなく、凛と、と言うと言い過ぎだが、しゃんと立って写っている。ルシア・ベルリンが自分自身の人生に紐づく物語を書いている短篇はそのポートレイトに似ていると思う。

憐憫を誘う訳でもなく、自身の境遇に対する理解を求めるでもなく。妙に冷静で、他人に起きた出来事のよう綴られたエピソード。短篇集の最初の何篇かを読んでいる時には、なんて極端な状況を上手い表現で語る物語だろう、さすが岸本佐知子が翻訳を手掛ける作家だ、とわくわくした。しかし説明されるまでもなく徐々にこれらが彼女の人生の一部を切り取ってみせた小説なのだと理解する。しかし理解しても、わくわくは静まりこそすれ小説を読む愉しみが少しも変わることは無い。その媚びない態度、自然体を保ちつつ自分自身の身の上話を文章に出来るのは、観察する眼の確かさ故だろうと思うのだ。

極端過ぎると思う程、自分自身を他人事のように取り扱い、他人の感情にぴしゃりと戸を閉ざす。年老いてからのエピソードには多少角の取れた雰囲気も醸し出されてはいるが、それも最後にはびしっと突き放した表現で反故にする。もちろんそれが作家の全てを表現しているとは思わないが、先に挙げた写真家の作品から漂う雰囲気をルシア・ベルリンは確かに持っている。ヴィヴィアン・マイヤーが誰に見せるでもなく何万枚もの写真を撮り溜めたように、この作家もまた他者による評価を本当には必要としていなかったのではないだろうか。そんな気がしてならない。

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Posted by ブクログ 2021年01月01日

紆余曲折の多い作者の実生活を元にした短編集。
率直な語りで彼女の濃密な生涯が切りとられているが、まとまりのなさも感じた。

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Posted by ブクログ 2021年01月04日

短編は苦手、というのがこれまで長らくの所感。とはいえ楽しみ方が分かっていないのだろうなとも思っていた。
この作品でようやく分かりました。一作読んで、一度本を閉じるんだな。そして噛みしめる。
苦悩と諦め。生命力。
哀しみは言葉ではない。ここにあるのは汗の匂いや誰かが嘔吐した道端みたいなもの。

やり直...続きを読むすことはできない人生を、既に生きているといる理由だけで続けなければならない。そんなことを考えた。味わい深い、素晴らしい短編集。

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Posted by ブクログ 2020年11月20日

彼女の人生は万華鏡のようだ。それぞれの短編のテイストが全然違うから、あとがきでそのほとんどがルシア・ベルリンの実体験だと知ったときは驚いた。 自分の体験と重なり辛い部分もあったが、彼女の書く短編は許しや浄化を求めておらず、苦しいけどむしろそれが心地良かった。親子関係で心に傷のある人にはスッと染み込む...続きを読む作品だと思う。特に良いと思ったのは以下の作品。 「ドクターH.A.モイハニン」「星と聖人」「いいと悪い」「ママ」

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Posted by ブクログ 2020年09月12日

万人に受ける小説ではない。
純文学が好きな人は読んでみて。

外れた人生を送っている唯一無二の物語。
ときどき詩的で感動的なシーンがあれば、生々しくて見なくないひどい現実が入り混じっている。
解説にもあるけれど、比喩が独特。
アメリカのアル中の生活なんて知らないから新鮮。
自分で歯を全部抜いてしまう...続きを読む歯科医の祖父の話の、メリメリと木の根っこが抜ける音がする奥歯の抜歯のシーンは本当に痛い気持ちになった。

『私の騎手(ジョッキー)』がお気に入り。たった2ページの短編だけどいいね、かっこいい。男の人のセクシーさと純粋無垢さ、女としての母性をくすぐり、命の輝きを感じる。

何回も読んでみたい。
感情やシーンの描写は複雑で、1度だけでは意味が分かりづらい所もあり、時間を経て読むとまた違う風に感じるような気がする。

物語全体で時系列は行ったり来たりする。
読みにくさもあったが、ニヒルに生きる彼女の人生を暖炉の側でココアを片手に夜更かししながら聞いているような感じだった。

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Posted by ブクログ 2020年08月29日

物語の語り手の声が聞こえてくるような本だった。変容を伴った自伝的な小説。「ファントム・ペイン」には泣いてしまった。「さあ土曜日だ」にも心を揺さぶられた。全編を通して、壊れてしまったものや壊してしまったもの、得られなかったものへの痛みや苦しみが含まれているようで、それをウィットに富んだ返しで乗り越えて...続きを読むいる時もあれば乗り越えられていない時もあるのが、苦み走った人生を感じてしまった。悲しい一面に注目してしまったが、明るくてユーモアが垣間見えるときも多くて面白かった。なんだかんだで私は俗っぽい人間なので本棚にあるとオシャレだろうな〜と思ってしまった。

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Posted by ブクログ 2020年07月17日

アル中、ネグレクト、シングルマザー、ブルーカラー・・・それぞれの不幸を愚痴りながらそれでも私たちは日々暮らしている。
そしてこれは著者が体験しただろう様々な人生。
世知辛い、これぞ人生と感じる悲喜交々が短編としてまとめられている。

確かグレイスペイリーが「二つの耳を持つことは有用だ。一つは生活の中...続きを読むの耳と、もう一つは文学用の耳だ」という言葉を残している。
著者もきっと二つの耳を持ち、ダイニングテーブルに向かいながらこんな小説を書いたのかもしれない。

何年か経ち読み直せば、またきっと新しい何かがみつかる。
そんな灰色の短編集。

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Posted by ブクログ 2020年07月05日

岸本さん訳の本は追っていますが、とてもしびれる本でした。女性の葛藤や自らの身体の中にある矛盾、どうしようもなさをここまでリアルに描写されると、近づきがたい気分もしてくる。

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Posted by ブクログ 2020年06月01日

乾いた大地と剥き出しの人間たにの中で、細く曲がった背骨を持つ少女が踏ん張ってビュービュー吹く風を全身に受けて立っている。そんなルシアベルリンの姿が浮かぶ。周りの人間もルシアもみんな傷つき疲れている。でも、ルシアは、ほんの少しだけ、他の人間より情が深い。だから、最も傷ついているのは、彼女なのだ。

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Posted by ブクログ 2020年05月24日

どんな状態でも、たとえ底辺を這いつくばってでも、人々は生きていく。そこに崇高な意識はいらない、それが定めかのようにただ生きていく。

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