あらすじ
一人の天才の独創が生んだ相対論に対し、量子論は多数の物理学者たちの努力によって構築されてきた。その精緻化のプロセスで、彼らを最も悩ませた奇妙な現象=「量子もつれ」。因果律を破るようにみえる謎の量子状態は、どう理解されてきたのか。EPRパラドックス、隠れた変数、ベルの不等式……。当事者たちの論文や書簡、討論などを渉猟し、8年をかけて気鋭の科学ジャーナリストがリアルに再現した、物理学史上最大のドラマ。
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Posted by ブクログ
これは面白かった。量子もつれについての解説本だと思って読み出したけど、もっと面白かった。
私の頭では、誰が何を主張し、誰が何を問題視してるのか混乱したけど(翻訳本ってときどきこうなる。欧米独特?の表現というか言い回しで混乱する)、そんなことに関係なく面白かった。名前をよく聞く物理学者たちが研究室で、散歩しながら、雪山やベッドであーだこーだ。二つの大戦もあったのに20世紀初頭はすごかったようだ。
いつか読み直したい。
Posted by ブクログ
とても優れた歴史小説。
量子力学の概念的な概要と寄与した物理学者の名前を知っている人の方が得るものが大きい。
そうでない人にとっても、知らない国の知らない時代の面白い歴史小説を読んでいたらたまーに知っている人物やエピソードに出会う という楽しみがあると思う。
資料研究に基づいた実話という立て付けだが、資料記録の表現方法は闊達でほぼ創作の域にある。
私がこれまでに知っていた量子力学の研究の経緯、特に登場人物間の関係性について、ここまでビビッドに詳細に読めるなんて、、、有難う としか言えません。有難う。
近年の理論物理領域の書籍の中には、数学で表すのが精一杯だった理論を概念的に説明する事に挑戦したもの そしてそれが数学的に間違っていない ものが増えました。
有難い事です。
そしてこの書籍は、そのような概念的理解のレイヤーで語られています。
22世紀に残されるべき名著と思います。
個人的にはこの本を1960年に読んでいたかったです。
Posted by ブクログ
20世紀前半の量子力学確立だけでなく、その後の技術への応用を実現したり基礎理論を追求し続けたりする様々な若い世代の姿まで描かれていてとても良かった。ただ、前提知識が全くないと厳しいような、含みをもたせた書かれ方は多かったかも。
Posted by ブクログ
量子論で議論されてきた歴史が、アインシュタインとボーアの対立点、ERPパラドックスとベルの不等式、さらにベルの不等式を破る実験と現代の量子もつれを使った情報理論まで 物語として著されている。数式はほとんどないが、量子論の不思議さは良くわかる。ボーアが相補的と呼ぶ 光子と波、アインシュタインが存在を願った隠れた変数と物理学としての実在。量子もつれや波動関数の観測による収縮は、読み終えても未だ理解できていないが、量子力学はそうゆうものだとして捉えることが、現在の大多数の学者の知恵らしい。ベル曰く、FAPP(For All Practical Purposes)
実用的な目的には十分である。
結局、量子に影響を与えずに測定することは不可能なのだから、測定という言葉は正しくなく、あくまでも実験の一部として捉えるべきらしい。シュレジンガーの猫は実験して初めて生死が決まるのだ!???
Posted by ブクログ
もつれの話というよりは、100年前から最近までの、物凄い量の量子論と物理学者のエピソード集。
名前しか知らない物理学者たちのキャラクターが伝わってくる。彼らも人間だなぁという感じ。
ナチスがもたらした災厄も描かれていて、特にエーレンフェストの話は悲しい。
Posted by ブクログ
アインシュタインとボーアを中心にして量子力学は多くの物理学者の英知のぶつかり合いの中から精緻化されてきた。そのドラマを実際にそこにいたかのように描き出してくれる。ただ、量子力学の用語や理論を少しでも知っておいた方がいいだろう。様々な考え方がぶつかり合う中で、どこに向かうのか途方にくれるときもあるから。時の前後が同じ章に書かれていたりして、いつの時点の話になっているのか戸惑うこともあった。
Posted by ブクログ
リアリティがすごい。物理学者がどう考え、学者同士でどの様な話をしていたのかまるで映画を見せられているかのような語り口で読ませてくれる。私の知識不足から存じ上げない学者もちらほら。アインシュタインが生存していた時はすごい時代だなと改めて痛感。
Posted by ブクログ
初期の量子力学の歴史を、偉人たちの残した言葉をセリフとして使って、小説風に語った本。教科書には物理学の偉人たちがさも当然のように数々の発見をしたように書かれますが、実際はその着想に至るまで色々な苦労があったり、発表しても他の学者たちに受け入れられなかったり、様々なドラマがあったことが分かります。
まあこの本はだいぶ脚色が入ってるとは思いますが、それでも大筋の流れは正しいのじゃないかと思います。
シュレーディンガー方程式とかベルの不等式とか専門用語もたくさん出てきますが、それらの中身にはあまり言及せず、それらが当時の物理学者たちにどういう風に受け止められたか、という観点で主に描写されています。セリフ中心で書かれているので、読みやすく物理学者たちもキャラが立ってて面白いです。量子力学版の大河ドラマですね。