【感想・ネタバレ】光圀伝 角川文庫合本版のレビュー

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黄門様は水戸学の開祖。

2021年08月09日

「本物の黄門様は諸国漫遊などしなかった」「若い頃は結構なヤンチャ者だった」…
ぐらいの事は知っていたのですが、御父上様を含めてw、こんなに豪快で魅力的な人物だったとは、全く知りませんでした。

もちろん本書とて「時代小説」ですから、一から十まで真実ではない事は重々承知してますが、史実として残っ...続きを読むている部分だけを考えても、戦乱が去ったあの時代の中では「異彩を放つ物凄い人物」だったんだろうなぁと、つくづく感じ入りました。

ただ、彼があそこまで命懸けで作り上げようとした『大日本史』は、現代の歴史資料としては結局「偏った思想に基づく歴史観」や「歴史資料としての中立性に欠ける」点等を理由に、全く顧みられる事も無く、その評価や価値はあの世の黄門様には申し訳無いほど、低いものに成っているのが実状です。本書を読むと、その落差に愕然とし、哀しみすら憶えます。

2021年の大河ドラマ『青天を衝け』では、その水戸藩が前半の主たる舞台として登場しています。
あれを見ていると本当に辛いです。元を辿れば、その黄門様の勤王思想こそが幕末の水戸の悲劇の根元である事がハッキリしてしまうからです。
水戸藩の内戦~天狗党の乱など一連の悲劇は、その点を避けては語れないし、また語られるべきではないと思います(NHKは上手に逃げてましたが)。しかし、明治維新から近代へと日本が突き進む最初の大きな原動力と成ったのも又、黄門様の思想であった事は疑いの余地すら有りません。

現代では「勤王思想」を学ぶなど以ての外、学術的な研究も恐る恐るで無闇に口にする事すら憚られる時代に成りました。大東亜戦争の過去を思えば妥当なのかも知れませんが、一度「悪」の烙印を押された物には「見るも触れるも一切禁止」とばかりに決め付けてタブー視するのも、自分には極端過ぎる気がするのです。
そうした振り子の様に極端な振れ幅の思想の変わり方、「空気読め」に代表される同調圧力の強さ等は、日本人古来のモノなのでしょうか?
安直に「タブー」を作り、その中身を敢えて学ぼうとしない姿勢も、反省の無い愚行に思えます。

話が逸れましたが、こんな日本だけど、こんな現代だからこそ、黄門様が熱く抱き続けた想いを、私達はもっと冷静且つ真摯に学ぶべきなのではないかと、心から思いました。

#アツい #切ない #感動する

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