あらすじ
『ランチのアッコちゃん』の次はコレ! いま最も注目を集める著者が贈る、パワー全開!永遠のガールズ小説!! 王冠を手にするのは誰? 教室は少女達の戦場! 私立女子校・聖鏡女学園中等部二年の範子は雑誌の編集長として勤める母と二人で暮らしながら、チヨジ、スーさん、リンダさんという気の合う仲間たちと、地味ながらも楽しく平和な学園生活を送っていた。ところが、クラスである事件が起き、公開裁判の末に滝沢さん(=王妃)がクラスの頂点にいる姫グループを追われてしまう。なりゆきで滝沢さんを迎え入れることとなった範子たちだったが、彼女の傍若無人さに、グループの調和は崩壊! 穏やかな日常を取り戻すために、範子たちはある計画を企てる……。傷つきやすくて我がままで――みんながプリンセスだった時代を鮮烈に描き出すガールズ小説!
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Posted by ブクログ
久しぶりに読書しました。
色々とリアルな感じで、自分の学生時代のことを
思い出したりしました。
なんで同じクラスなのにグループが違うかったら
遠い国の人々同士みたいになるんでしょうね。。。
喋らなくなって終わるのもリアリティあるけど
なんか寂しいな。。と思ってたら
最後の描写がとても爽やかで、素敵で
なんか泣きそうになりました。
おもしろかったー!!!
Posted by ブクログ
◾️record memo
------スーさんだって、怖いんだ。
隣にいる範子には、彼女の耳たぶが赤く染まっているのがわかる。目立つことが大の苦手な彼女が、精一杯勇気を振り絞っているのだ。
突然、自分が恥ずかしくなってきた。王妃のことが心配なくせに、怖くて行動には移せない。安藤さんがハブにされた時もそうだ。自分達さえ安全ならそれでいいと思っていた。これまで何人を見捨ててきたのだろう。もうごめんだ。私はそんな、卑怯な女の子じゃない。
母が再婚するのは構わない。
ただし相手は、チヨジのお父さんみたいな、お腹が突き出た優しそうなおじさんに限る。ホッシーのように若く男っぽく、同級生から騒がれているようなタイプだけはご免だ。母が異性を必要としている事実がなまなましく突き付けられる気がする。
家族の前でだけは聞き分けのよい優等生ではなく、甘えん坊のお姫様「のりちゃん」でいたいのに------。
「ちょっと、デパートなんてどこにもないじゃないの!騙されたのかと思った!」
三人の前に辿り着くなり、息を切らせてそう叫ぶ。いくらなんでもオーバー過ぎる、と内心あきれたが、吊り上がった大きな瞳に涙が滲んでいるのを見て、範子はどきりとした。そうか。この子は今、必死なんだ。なんとか居場所を見つけようとして、一人になるまいとして、必死なんだ。急に王妃が可哀想になってしまう。レースの襟のついた赤いニットワンピースにショートブーツという可愛い格好をしているけれど、大人の女の人が行き交う自由が丘で見ると、教室で感じるようなオーラや威厳はない。髪を乱し、額に汗を浮かべているのでせっかくの美貌も台無しだ。彼女も案外、普通の女の子なのかもしれない。
「滝沢さん。私、アパートやマンションの間取り図を見るのが好きなの。近い将来、自立した時のことを考えると、わくわくしてくるんだ。全部自分で決められるのって素敵なことだと思わない?」
王妃はうつむき、スーさんの話を仏頂面で聞いている。
「滝沢さんが今悩んでいることって、狭い教室の中だけのことだよ。自分の力で生きていけるようになれば、人の評価にわずらわされるなんてことなくなるわ。だから、勉強はある程度しておいた方がいいと思うよ」
驚いたことに、王妃はややあって小さくうなずいた。
この学園はおかしい、と範子は初めて、自分たちを支配するシステムに疑問を抱いた。お行儀や身だしなみに関しては厳しく干渉するのに、肝心の生徒の心に何が起きているか、といったことに先生たちは異様なくらい無関心なのだ。もしかすると、範子の悩みも、いや2年B組の問題も、建前ばかりにこだわるこの大人社会の弊害なのかもしれない。
プリンセス。範子はいきなり、頬をぱちんと打たれた気がする。色々なものが一度に目に飛び込んでくるみたいだ。そうだ。誰だって------。リンダさんだって、範子だって、どんな女の子だって教室を離れれば誰かの大事なプリンセスなのだ。そう、王妃だって。勝手にランク付けをしたり、状況によって誰かへの態度をころころ変えたり、一体自分は何をやっているのだろう。
「その、悪い評判とか敵を作らない努力って、みみっちいかもしれないけど、プリンセスとして生きていく上ではすごく大事なんだよ。マリー・アントワネットが処刑されたのだって、もとをただせば、国民の反感を買ったせいなのよ。例えば、ダイヤモンドの首飾り事件は、彼女の評判を決定的に落としたとされる陰謀で……」
それにしてもなんというあきらめの悪さ。男の人を好きになるということはまだよくわからないけれど、こんな風にしつこく執着してしまうものなのだろうか。自分もいつか探るような目つきで、苛々と誰かを問い詰めるようになるのだろうか。
でも今は------。かつて本気でそんなことをやろうとしていた自分が信じられない。母にホッシーがいるからではない。人間が人間をそんなに簡単に操れたら苦労はないのだ。マリー・アントワネットのような美女ですら、ルイ十六世の本当の愛を得るには時間がかかった。なんでも持っている王妃すら、ホッシーを振り向かせることは出来ない。
いずれ範子も母から自立する。その時、一人になった母を一生大切にしてくれる相手であれば、誰であれ、応援出来るくらいには大人になったつもりだ。どうせ付き合うのであれば、心から好きで一緒にいてくつろげる男の人を選んで欲しい、と強く思う。母はずっと範子をお姫様扱いし、守ってくれた。そろそろ、範子が騎士になるべきかもしれない。
車を降りると母の腕に甘えて手をからませ、店まで続く階段を上った。そう、母が誰と恋をしようと、再婚しようと、二人が母娘であることに変わりはないのだ。
だからこうやって一緒に過ごせる時間は出来るだけべたべたしようと思う。甘ったれと笑われても構わない。
「ねえ、こういうメールって、どう返せばいいの?意味がわからないんだけど」
店のドアを押す寸前に、母がしかめ面で携帯電話を突きつけた。たくさんの絵文字が踊る、ホッシーからのびっくりするような長文メール。
『ねえねえ、久美子さんは目玉焼きにソースかけるの許せる人!?将来一緒に暮らすんなら、そういうことは早くカクニンしあっておいたほうがよくないかな!?(笑)新婚そうそう幻滅されて即離婚なんてやだしね(笑)あとさ……』
なんだか一生懸命なホッシーが不憫に思えてきて、範子は曖昧に笑った。大人だってこんなにイタいのだから、範子達が恥をかいたり失敗してばかりなのだって、当たり前かもしれない。
一人一人が個性を認め合って、グループの垣根をなくして付き合う------。ホッシーの主張は夢物語に思えたけれど、あながち不可能でもないかもしれない。こうやって、色んな相手と心を開いて話し合う勇気とチャンスさえ持つことが出来れば。
範子は必死に心を落ち着けようとする。大きく深呼吸をすると、教室の隅々までよく見渡した。群集心理に引きずられてはならない。個人が個人であることをあきらめた瞬間、取り返しのつかない悲劇が起こる、と歴史は繰り返し教えてくれたではないか。
「ごめんね、のりちゃん。でもね、ママ、この数日考えて、本当によくわかったの。ママは今、恋愛なんていらないの。のりちゃんが大人になるまでは、ママはママだけやっていればいい。ああいう時に真っ先に考えるのは、星崎先生の身の安全や評判じゃなくて、まずのりちゃんの身の安全や評判なのよ」
母はこちらの肩にそっと手を置いた。
「ママが全力で守りたいのは、のりちゃんだけなの。今はとても男の人とどうこうなる余裕なんてないわ」
あんな風に何もかもを出し切って守れるのなんて、もしかして人一人に対して一人が限界なのかもしれない。
なめやがって------。
あの意地悪女の横っ面を思い切りひっぱたいて、床に突き飛ばしてしまいたい。どうしてこんなひどいことをしても涼しい顔で笑っていられるのだろう。人を見下すことでしか自分を確認出来ない最低の人間。喉に手を突っ込んで、彼女の醜さと弱さを引っ張り出し、教室の床にぶちまけてやる。二度と学校に来られないようにしてやりたい。
「嬉しい。ありがとう。王妃だなんて言われたの初めて。でもね、もういいんだ。私はお姫様じゃなくていい。もうお城になんか戻らなくてもいいの」
「スーさんやリンダさん、チヨジや黒崎さん達。あ、アッコもね。それともちろん、ノリスケと仲良くしたい。もう人気なんてどうでもいいんだ。人の評価なんてくだらないよ」
チヨジのスカートが、まるで王女のマントのように翻った。姫グループの皆がかしずくように彼女の周りに集まっていく。チヨジはお姫様になったんだ、と範子はショックでぼんやりとした頭で、ようやく認識する。
誰よりも綺麗で、同時に誰よりも孤独に見えたから。
マリー・アントワネットが処刑される前に述べた言葉をふと思い出す。
------不幸になって初めて、人は本当の自分が何者であるかを知るものです。
すらりとした長身に小さな頭をのせ、ポニーテールを揺らしている。範子とほぼ同じ髪型なのに、おくれ毛が絶妙にこぼれていたり、毛先がくるりと丸まっていたりして、たまらなく洒落ている。あんなに美人で、なんでも持っているような子がどうしてそんなに他人の不幸を願うのだろう。
「すっごい美人な海外セレブでも、拒食症になったり整形に走ったりするじゃん」
「人の心の奥なんてわからないよ。自信ありげな人ほど、いつも他人と比較して、びくびくしてたりするもんだよ」
「でも、この子がそういう風になっちゃった原因はわかる。恵理菜は見た目よりずっと弱くて、自信がないんだよ。誰かが自分と同じところまで落ちて、初めてほっとする、そういうところがある。皆だってわかるでしょ?そういうダサくて弱い気持ちわかるでしょ?」
Posted by ブクログ
こんなに二転三転し、感動のラストになろうとは冒頭では思いもしなかったな
泣いちゃったよ
ちょっとした事で人に対する見方が変わったり、仲がギクシャクしたりってあるもんな
学生の頃地味グループだった自分のことも見透かされてるようでドギマギした
しかし姫グループに行っても趣味全開のチヨジ強い笑
そして範子母が一番カッコイイ
Posted by ブクログ
主人公の立ち位置がめちゃくちゃいい。
クラスの最底辺から成長するでもなく、見下してるところから成長するでもなく、ほんとにクラスの間をなんとか縫って生きてく感じが面白かった。
そのおかげで主人公以外の一人ひとりが主人公のようにキャラが立ってた気がする。
柚木麻子の本は、どろどろしてるのもしてないのも、見苦しくない必死さみたいのを感じてわくわくする。
終わり方も良かったけど、アッコちゃんは良くギャルズに戻れたなっていうのと、ブチノリは流石に嫌でしょ!と思います。
ブチノリって、。あだ名があだ名なだけあって怒るに怒れないし、色々嫌なあだ名だなぁ…。
Posted by ブクログ
またもや柚木麻子さんである。自分の書いた記事をざっと見てみたけれど年明けに書いた感想noteが9冊ぶんほどあるのだけど、すでに柚木麻子さんの著作については2作ぶんほど書いている。でもどれも好きなんだもの、しょうがないじゃない!!
女子校のクラス内で起こったグループでのちょっとした諍いがもとになっている。王妃ことクラスで一番人気の滝沢さんがもといたグループから弾かれ、範子たちの文化系もといオタク系のグループにやってくるという流れから話が展開していく。ネタバレ多数なのでまだ読んでいない方はここから引き返してください(笑)
この話、王妃が範子たちのグループにやってきただけではなく、他のグループ同士でもあれやこれやが勃発しもともと範子たちのグループにいたある子が王妃がいたグループに移動していったり…。同じクラスにいる、この年代の子たちだからこそ起きること。思春期でアイデンティティの確立に必死な女の子たちが瑞々しく描かれている。王妃こと滝沢さんはすごい美人な子ではあるが、いわゆる性格がわかりやすく良いわけではない。好き嫌いがはっきりしていて、嫌いなものや不快なものに関しては絶対的にノーを突きつけるし甘やかされて育ってきたからこその傲慢さもある。決して美人で性格も良い完璧な子ではない。私はこういう子が大好きだ。自分の魅力に自覚的な女の子。少女漫画でも『君に届け』の爽子ちゃんのような自分の魅力に無自覚な女の子と、そのライバルである気が強い美少女の胡桃ちゃん。胡桃ちゃんもまた自分のかわいさをわかっているタイプのライバルだ。私は昔からこういう無自覚系ヒロインの対抗馬として出てくる自覚的な美少女ライバルの子がいるとライバルの子のほうが好きになってしまう。だから王妃のことがすぐに好きになった。でも読んでいると出てくるみんながあの教室で生きていくことに一生懸命でみんなが大好きになっていった。だから最後のあのラストシーンはもうボロボロ泣いていた。柚木麻子さんはなんでこんなにも少女の歪さや素直さやかわいさを鮮烈に書けるんだろう。柚木さんの書く女の子が大好きだ。
全編好きな『王妃の帰還』だけれど一番ぐっときたところは範子の大親友チヨジがあることがきっかけに範子と仲違いになったときのシーンだ。範子の母親が範子とチヨジの間に入るところ。
”範子はやっと理解する。チヨジは女の人に甘えたかったのだ。最近やけにべたべた体に触り、すり寄ってくるチヨジを気色悪く思っていたけれど単純に女の体温や香りが恋しかったのだろう。当たり前のように範子が手にしている、お母さんとの甘くぬくぬくした時間が彼女にはないのだから。”『王妃の帰還』p215
ここのチヨジの気持ちが私は痛いほどわかる。なんといえばいいのか、時折無性に自分より年上の女の人に甘えて頭を撫でてほしくなるときがある。女性にもお金を払って女性に話を聞いてもらったり手を握ってもらえるようなサービスがあればいいのに、と思う。男性でも恋人でも友だちでもなく、大人の女性に甘えたくなるときがあるのだ。そういう気持ちは私にもある。
最後のほうで明かされる王妃に関するある事実。あそこであの事実をつまびらかにして一気にラストシーンへ持っていく柚木麻子さんの話の構成力とどこまでも臨場感とライブ感のある書き方にできる表現力には驚かされる。読み終わってクラスのなかに生まれるグループというものは本来上も下もない。ただ本人たちの趣味嗜好によって結びつきが生まれる自由なコミュニケーションの取り方なのだと実感した。また文学部のフランス文学科で学んだ柚木さんならではなのが、この一連の出来事をフランス革命になぞらえているところだ。高校で世界史を選んだこともあり、フランス革命のことは知っていたのであの歴史的に大きな意義のある出来事とこの女子校のクラスの事件がリンクするように描かれていたのも鮮やかだった。
あの頃クラスのグループというもので楽しく過ごした人もそうではなかった人も、女の子はみんな楽しめてエンパワメントされる小説だと思う。
Posted by ブクログ
うつろいやすい中学生の人間関係
学校が全てだったあの頃が懐かしいと思いながら読みました!
高校とはまた違う中学生独特の空気感!
誰かと仲良くなると今まで一緒にいた人と気まずくなったり邪険にしてしまったりする…
毎日一緒に過ごさなきゃ行けない学生活のリアル、よく耐えられたなと思い出しました。
リアルすぎて、現役の学生は辛くなりそう。
フランス革命時代の貴族の人間関係と現在の学生生活の人間関係はどこか似ているところがあるのかもしれないですね。
閉ざされた世界、評判で一変する周囲、ヒエラルキー…
Posted by ブクログ
お嬢様女子中学校のスクールカーストのお話。憧れの王妃と関わることでどんどん強気になって、今までの親友を蔑ろにしてしまう点がリアルだった。
Posted by ブクログ
状況が二転三転してクラスが変わる感じなんか中学の時を思い出した
今思い返せばくだらないと思うようなことも、狭い中学で生きる14歳にとっては全てで、大変だったなぁと思う
王妃が普通のクラスメートのようになった最後がとても素敵だ