余命僅かの宣告を受け殺人願望を実行に移す男と、同じく癌が再発しながらも殺人犯逮捕に執念を燃やす刑事。物語はこの二人を対比させるように元恋人と刑事の娘、息子を絡めながら深みを増しつつクライマックスへなだれ込んでいきます。そして連続殺人鬼に身を落としていった男が幼少期の消し去った記憶を取り戻したとき、衝撃の結末が・・・。
犯人を追い詰める刑事ドラマのようなサスペンス部分と、当たり前の日常で家族や愛する人と向き合う事の重みをじっくりと考えさせられる場面が印象的に描かれています。いつもながら重いテーマを扱いながら、今回の作品ではいつも以上に温かいシーンが多いように感じました。
毎年、薬丸岳の新刊を読むたびに次の「このミス」第1位は彼だ!と私は思わずにはいられません!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ 2023年05月19日
分厚い上に、行がページのギチギチに詰められているという、重厚長大な作品だった。内容もさることながら、読書という行為そのものが好きな人間としては、これを一冊にまとめてくれた編集者さんにも感謝したい。
組織捜査に馴染まないローンウルフ系刑事の蒼井が、進行性の胃癌に犯されながらも、連続女性殺害事件の被疑者...続きを読むを追う。だが実は、その被疑者も同じ病魔に襲われていた。死が迫るからこそ、抑えきれない殺人衝動を解放した被疑者と、死を恐れるがために、死ぬまでに逮捕する使命を燃やす刑事。最後には、死そのものが怖いわけではなく、愛した人や場所を含む「自分の人生という鏡」を見せられることが怖いのだと気づく。愛するものがあるからこそ、怖い。だからこそ蒼井は最後に、被疑者の愛した人の最後の言葉を伝えるーー。
ただのミステリーじゃなく、人生の哲学が込められた内容だった!
ナイス、重厚長大。
Posted by ブクログ 2022年01月15日
久しぶりに薬丸岳さん読んだ。さすが!おもしろ(連続猟奇殺人なんで、面白いっていうのなんか違うんだけど)すぎて、一気読み。仕事が手につかず困った。
ネタバレなので、まだ読んでいない人はこの先読まないでくださいね↓
主人公は、過去にトラウマを持つ青年「榊」と、その恋人「澄乃」。そして榊を追うことになる...続きを読む熱血刑事「蒼井」と、部下の新米刑事「矢部」。
榊と澄乃は過去に新潟の田舎で出会った。榊はヒドい虐待を受けて育った。澄乃もそれを知っていたが、どうすることもできず、榊を見捨ててしまった、という想いをもっている。そのせいか、榊は肝心な部分の記憶がない。東京で再会した二人は、今度こそ二人で寄り添って生きたいと思うが、澄乃は榊の記憶が戻ることをおそれる。榊は自分がどうしてそんな衝動を抱えるかもわからないまま、女性(特に性行中や、淫靡な雰囲気を出してくる女性)に対して異常な殺意を抱いてしまう。愛しているはずの澄乃に対しても、突然殺意を抱いてしまう。澄乃は榊をおそれる。
そして、自分が末期の癌だと知ったそのとき、榊は自分の欲求を抑えられなくなる。最初は衝動的に、徐々に計画的に連続殺人を犯していく。
同時進行で描かれるのは刑事の蒼井のストーリー。蒼井は妻を亡くし、子どもたちにも見限られ、仕事にだけ情熱を燃やす。こちらも末期の癌だ。最期まで命を燃やして犯人を追い詰める。そこまでする理由は、亡き妻が、救えなかった殺人被害者に対して自責の念を抱えていたからだ。妻との約束を果たすため、最後まで力を振り絞る。
榊と、自分の夢を追っている娘とのやりとり、それをそばで見ていた部下の矢部が、実家のパン屋に行って父親と会話を交わす場面とかが、ほんの少ししか描かれていないけどスパイスが効いていて泣けた…。矢部の父親は数行分しか出てこないのに、その姿が目に浮かぶようで心が震えた。
蒼井刑事の執念はすごいけど…子ども二人を残して死ぬんだから、そんなわやくちゃしないで、もうちょっと自分が死んだあとの保険の手続きとか(!)子どもが困らないように現実的になんかしてよね、とか小説の本筋と関係ないことをもやもやと考えながら読んでしまった(笑)。
Posted by ブクログ 2021年11月14日
余命宣告された二人が病気が進行するにつれ現れる症状や体力の衰えとか、一方で各々の使命にたいしての焦燥感とか、各々に鬼気迫るものがあった。
その二人と関わる人たちの、失望やら焦りやら無力感やら…
連続殺人事件の話だったけど、登場人物の機微がたまらなく良くて、ほんと面白かった。
Posted by ブクログ 2021年11月04日
信一の過去が衝撃すぎて犯人と言えども同情をしたくなってしまう。ただの快楽殺人とは違い、闇の中の原因を見つけに行くような深い作品だった。大人の勝手さに腹が立つ。欲望がもっと違うものだったらよかったのにと切に思った。蒼井の過去の思いからの執念、言葉にしてやっと繋がる家族愛。そしてその背中を見て育っていく...続きを読む部下。いろいろな思いが混ざった作品でした。
Posted by ブクログ 2021年07月09日
最近ハマってる作者の作品!これも面白い!まだまだ、5、6冊はキープしてるので楽しみ!
さて、本作は、余命宣告を受けた善悪の2人の終わりまでを描いてる
残り少ない日々を抑えていた欲望を解放する榊、最後まで犯人を追い自身の職務を全うする蒼井。
自身の欲望解放はええけど、人様に迷惑掛けるのは…まぁ、そんな...続きを読む生易しいレベルではないけど。
子供をほったらかしにして、仕事に…も考えものやけど、妻との話を聞くと納得。
ラストは、うるうる(T . T)
もし自分が余命宣告なんかされたら、どうなるんかな…
この小説のように、
最後まで、仕事に?
ひたすら自身の欲望?(ここでは殺人やけど)
多分、私は後者やな!でも、殺人とかの欲望はない!多分、1日中、家に籠って、本と映画やな!
…なんとお手軽な欲望なん(−_−;)
Posted by ブクログ 2021年04月12日
余命わずかと知って己の欲望を解放した者と、
己の使命と向き合う事で恐怖と戦う者
ふたりの運命が交錯し、最後を迎えるとき
どちらがどれだけしあわせだったのか?
どちらの勝利といえるのか?
死を迎えるラストは最初から見えているのに
最後までふたりの生き様を知らずにいられなくなってあっとゆうまに一気読み...続きを読むだ。
山口澄乃のやりきれない最後も衝撃だった。
病魔に蝕まれて苦しみながらも欲望に抗えない
犯人と、犯人逮捕に突き動かされる刑事の執念。
色んな角度から楽しめる人間のミステリー作品。
Posted by ブクログ 2019年09月03日
余命宣告を受け、抑えられない衝動から殺人を繰り返す榊。かたや余命宣告を受けたが、家庭を顧みず執念深く連続殺人犯を追う刑事・蒼井の対決。残り僅かな命をかけて罪を犯すもの、罪を暴くもの。命のタイムリミットが迫る2人にどのような展開が待ち受けるのか。
続きが気になって一気読み。
暗い話だが、本当におもし...続きを読むろかった。
榊の罪は許されるものではないが、根は優しく善人だったのに、様々なきっかけで捻れていってしまって、何も救いがないのが悲しかった。
ドラマでも面白そうと思って調べたら、ちょうど今年、吉田鋼太郎さん主演でドラマ化していた。動機含め大人向け描写が多かったので、どのようにドラマ化されたのか気になる。
Posted by ブクログ 2019年06月23日
余命宣告された殺人犯と刑事の生き方に
全く共感できませんが、
結末を迎えるまでに、どんなことが起こるのか、
気になって、止まらずに読んでしまいました。
いつもだったら、通勤で読むので、
1週間は長持ちするのに、
二日で読んでしまってもったいない。
ただ「死を恐れない罪人に、報いを与えられるか」
...続きを読むが佳境でしたが、ただの、当て擦りだったなと。
法律で罰せられるといことは、
恐怖や不自由を与えれて罪の償いをさせる。
でも、それは与える側がそう思っていたとしても、
与えられる側は、まったく正反対なものとして
受け入れているということもあるんだなと思いました。
罰が報酬だとしたら、
まったく意味をなさない。
Posted by ブクログ 2019年05月04日
「解説」にもあったけど、最大の見所は 余命いくばくもない二人の男 命をかけた息遣いが臨場感たっぷりで 最後までハラハラドキドキ、
こんなに緊張するミステリーは久しぶりで 鳥肌がやまない。
Posted by ブクログ 2019年03月21日
サスペンスが好きというのもあり凄く面白かったと思う。
あまり小説を読んだことがないのですが、人生でこんなにも早く読み切った本は初めてです。
頭の中で、まるで映画を見てるように画が浮かんできて、読んでるのか見てるのかわからなくなるぐらい今作にどっぷり浸かってしまった。
"そこに着いたらま...続きを読むっさきにおまえを捜しにいくよ"
こんな53歳になれるように、これからの21年頑張るかな!
Posted by ブクログ 2022年06月25日
一気読みでした。犯人の殺人衝動は何から来てるのか気になりテンポ良く読めた。
ある意味これだけ使命を感じられる人生はなかなかなさそうだし、羨ましくもあった。
人生最後の時間自分はどんな風に過ごしてるのかな…なんてふと考えたりもしました。
Posted by ブクログ 2022年03月20日
夏目信人シリーズとはまた一味違った重厚な作品だが、信一、澄乃、蒼井、矢部の視点の切り替えがテンポ良く、読む手が止まらない。信一の過去が明らかになってからの展開は圧巻。ラストは救いがあって好み。矢部を主人公にして続編如何でしょうか?
Posted by ブクログ 2021年10月13日
余命わずかな殺人犯と刑事
二人が同じようなタイミングで余命宣告とは・・・
物語は読みごたえがありました
犯人視点や刑事視点で展開されそれぞれの思いなども
知ることができより物語に入っていけた感じです
末期胃がんはしんどそうですね
Posted by ブクログ 2021年03月16日
犯行シーンは読むのをやめようかと思ってしまったけど、それにも慣れて一気読み。
犯人や刑事の目線で書かれていてテンポがいい。
結局は蒼井さんの刑事の勘が当たったことになり、ほんとはそんな糸口では頼りない。
でもそれを差し引いても十分におもしろく、目が離せない。
矢部くんの成長した姿をまた見たい。
Posted by ブクログ 2021年03月12日
余命少ない2人の危機迫るやり取りが気になり、あっという間に読み終えました。話のテンポもよく、面白かったです。
また、榊の記憶が少しずつ蘇り、このを起こすきっかけとなった過去の忌まわしい記憶が明らかになっていく様もうまいなと思いました。
Posted by ブクログ 2019年10月13日
耳が不自由ながらもデイトレードで財を築いた榊信一。癌を宣告され、自分の欲望のまま生きることにする。榊の欲望、それは性行中に首を締めて殺すことであった。連続殺人に手をそめる。榊の元恋人・澄乃は榊の小学生時代を知っているだけにより一層心配する。一方。事件を追う刑事・蒼井凌も癌の宣告を受けていた。命の限り...続きを読む犯人を追う。
追う者と追われる者の命をかけた物語。それぞれに過去があり、深い物語であった。少々オーバーというかどうかなと思うところもあったが、最後まで引き付ける内容であり、一気に読んでしまった。蒼井の執念には唸る。人のトラウマ、心の傷によってもたらされる性癖、怖さを感じた一冊です。
Posted by ブクログ 2019年04月23日
ドラマ化されるということで購入。
最近、薬丸さんの小説を多く読むようになりましたが、どの作品も物語の構成が良く、スリリングな展開で面白かったです。
今回の構成では、刑事側と犯人側の視点だけでなく、元恋人の視点や若手刑事の視点があったりと物語の世界に奥行きを出してくれます。約500ページと少々分厚い...続きを読むのですが、序盤から小説の世界に引き込まれて、どんどんページが止まりませんでした。ある理由から殺人願望のある人が、余命を宣告されたのをきっかけに殺人を犯す心理は、非現実的ですが、小説だからこそ、グッと引き込まれました。
最後まで飽きさせず、面白かったのですが、個人的には、最後は刑事の勘ではなく、証拠で徐々に犯人を追い詰めてほしかったなと思いました。
ドラマ版では、吉田鋼太郎さんと賀来賢人さんということで、イメージと合っているなという印象でした。
Posted by ブクログ 2024年01月28日
p504 死ぬのが怖い-
人は誰でもいつかは死ぬというのに、どうしてこれほどまでに死を恐れるのだろう。
それはきっと、死そのものを恐れているのではないのだと、最近になって思い始めていた。
人を愛した人間は、その人と二度と会えなくなることを怖いと思うのではないか。
わたしも自分が死ぬことよりも大切な...続きを読む人に会えるなる方が怖い気がする。
Posted by ブクログ 2023年11月10日
自分が余命数ヶ月と宣告されたらどうだろう。
最期の時まで下を向いて時を過ごすのが、限られた時間をめいいっぱい有効に使おうとするのか。
いずれにせよまともな身体でないと、好きなこともできないか。
間違いなく仕事は辞めるだろうな。
Posted by ブクログ 2023年05月28日
3.25
殺したいという気持ちが抑えられなくなってきている男、それは何故なのか
何でこーなってしまってるのか
明らかになっていく過去の記憶が思い出されていく
本気で好きになった人と再会して、そしてその衝動は前からあり殺していく事で満足感、昂揚感を得ていく
激化した大きな要因は死の宣告
自分が死ぬ事を...続きを読む知らなされてやるべき言葉を見つけた
そこに絡んでくる警察と好きになった今でも好きな相手
警察の中にも死の宣告を受けた人物がいてそれも思いがある
題名とストーリーが合致してる面白い作品です
Posted by ブクログ 2023年05月10日
共に末期の胃がんに冒された殺人犯と刑事が、互いの使命のためにそれぞれの獲物を追う物語。今作も幼少期の虐待が動機になっているが、まったく同情できない。澄乃も榊の失くした記憶についてずっと後悔しているが、そこまで自責の念にかられるほどのことか理解できない。本当に刑事の勘だけで真犯人まで到達したりと出来...続きを読む過ぎ感が強くて、他の著者作品に比べて少し軽めと感じた。
Posted by ブクログ 2021年10月12日
余命幾ばくもない連続殺人犯と、同じく余命僅かで、その犯人を追う刑事。互いに胃癌という病により命を削りながら、片や犯行を、片や捜査を、それぞれの死命が攻防するサスペンスミステリ。
現在、私のミステリ欲はピークを迎えている。
どこかに悪いやつはいねえか。
ハラハラヒリヒリさせてくれるやつはいねえか。...続きを読む
薬丸岳は本作で3作品目。
前作、前々作は少年法をテーマとした社会派ミステリで良作であったことは前読レビューの通りである。
本作品は、病の殺人犯・殺人犯の恋人・病の刑事・新米刑事の4視点で展開していくのだが、兎角読みやすい。視点の切り替えが絶妙で、約500ページをサクサクと読めて最後までハラハラさせられた。
何よりも相反する立場と併存する余命という設定は斬新であり、互いに身体が徐々に不自由になっていく進行は、実にリアルで読んでいてしんどかったほどだ。
また、本作は雄雌の性的描写が過激であり、生臭さが凄い。私は許容範囲だったが、苦手な人はもしかすると敬遠すべき作品かもしれない。
ただし、自分の死期が近いことを知った時に人は何を一番恐れるのか、死生観の感慨に耽る展開が、本作品の最大のテーマと見どころであることは記しておきたい。
総括、一冊でミステリ・サスペンス・エロス・ヒューマンドラマが味わえるエンタメ作品であった。
Posted by ブクログ 2021年09月15日
命に期限があると分かった時、人はどういった行動を取るのだろうか。
やり残した事はないか。
先延ばしにした事はないか。
会っておきたい人はいないか。
死を受け入れ、欲望のままに天寿を全うしようとする者。
死に抗い、無念を晴らすまで職を全うしようとする者。
相反する2人の死命と使命。
分厚い本ではあるが...続きを読む、長さを感じさせない一冊だった。
Posted by ブクログ 2021年01月23日
【自分はこの世にたくさんの大切なものを遺してこられた。自分なりに必死に生きてきて、人を愛して、大切な存在を遺すことができた。それでもう十分だー】
テンポが良く読みやすかった。
末期がんに侵された二人。
殺人衝動のまま犯行を繰り返す男と、命尽きるまで刑事であった男。
これは、家族の物語なんだと...続きを読む思う。
Posted by ブクログ 2020年10月04日
お勧め度:☆6個(満点10個)タイトル通りyはりちょっと重たい小説だった。胃がんを患い余命わずかの若者と同じ病気患う熟年刑事。偶然、昔の恋人と再会したことによって、自身に秘められた殺人衝動により次々と殺人を犯していく。それを刑事としての執念で追い詰めていく展開は衝撃の結末となる。文書にするとそれまで...続きを読むだけど、綿々と綴られる刑事の執念には驚かされる。生命とは何か?生きるとはどういう事かを考えさせられる哲学的ミステリーらしい。ただ、私にはちょっと重かった。けど、ページを捲る手は止まらなかった。
Posted by ブクログ 2019年08月05日
余命数ヶ月の宣告を受けた2人の男
ひとりは殺人衝動に苦しみ、宣告を機に開放を決意する。
ひとりはその殺人事件の解決に執念を燃やす刑事。
残された数か月。やがてあらわになる衝撃の過去
もしも自分があと数か月の命だったらと考えてしまう。