【感想・ネタバレ】憲法の創造力のレビュー

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Posted by ブクログ 2022年07月15日

やっぱりファンになれる(以下略)。
楽しい。わりと初期の本のせいか、前はこう考えてたけど違うことに気づいた、とか、この文を読んでこう考え直した、とかいう木村先生自身の勉強とか思索の痕跡が有体に描かれてて面白い。
身近にいそうで、いたら敬して遠ざける面倒臭い理屈屋臭が素晴らしい。楽しい。

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Posted by ブクログ 2015年08月15日

憲法を創造的に応用するということは、憲法の規定を機械的・量的に解釈するのではなく、その規定の意義や目的(憲法はわれわれに何を要求しているか?)を達成するための方策を「質的に」考えなければならないということ。

第1章
君が代不起立問題を題材に、法律や命令の目的と手段のバランス関係を論じる。法令の目的...続きを読むを達成するために、他のよりよい手段は考えられなかったか?いわゆるLRAの原則。

第2章
一票の格差問題を題材に、政治問題の「正解」を発見するための多様な人物の参加と、みんなが納得して従うことのできる「正統性」のある決定を下すことの重要性を説く。

第3章
裁判員制度を題材に、国民の権利の制限は何と引き換え(公共の利益)なら許されるかを論じる。公共の利益いかんによっては合憲にも違憲にもなりうる。いわゆる比較衡量。

第4章
日本人独特の宗教観の問題を取り上げ、政教分離の問題に警鐘を鳴らす。無宗教を装った「日本的多神教」は国家権力にとって利用しやすい「宗教」であることを日本人は自覚しなければならない。

第5章
仮設住宅が孕む問題を紹介し、保証されなければならない生存権の内容を検討する。社会保障は「生きていくための最低限」という量的な側面だけではなく、他者との交流が人間の尊厳にとって重要であるということを十分に考慮した保障が必要である。

第6章
公務員の政治的行為がなぜ「問題」とされてきたのかを吟味し、これまでの判例を批判する。勤務外の政治的行為の規制は、公務員の職務の中立性にただちに影響を及ぼすものではないし、仮に政治的偏向によって公務員としての職務に及ぼしているならば、懲戒や刑罰などの制裁を受けるので、事前的予防は過剰規制である。政策を形成する公務員組織には、むしろ各職員がさまざまな思想をもっているという意味での「多様性」こそ必要である。
この章は特にウンウンと頷きながら読んだ。

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Posted by ブクログ 2014年04月17日

『憲法の創造力』というタイトルからは、どんな内容か想像がつかない。はしがき「憲法を創る」(ここにも”創る”と書かれているが)の「本書が目指すこと」の段落に、”憲法問題を考える際には、様々な角度から思考を巡らせ、苦境に置かれた人々の状況に想像力を働かせなければならない。また、その解決のためには、多くの...続きを読む人の納得が得られるような公平なルールを創造することが求められる。”と書かれていて、どうやら憲法の理解のもとに公平なルールを創造することらしいと思うが、まだピンと来ない。しかし、君が代起立問題など具体的な論点を読み進めていくと、「憲法の創造力」ということがより具体的にわかってくる。
今までニュースなどの報道を聞いて、どう考えたらいいのか分からないとか、どうも釈然としないと感じていたことが、よく整理されて理解でき、この本を読んでとても良かった。日本的多神教についても、よくまとめられていると感じた。

特に、興味深かったのは、「生存権保障の三つのステップ」の章で、ここで述べられている三つのステップは、職場環境についてもいえることだと感じた。職場でも「最低限」はこの三つのステップを含むと考えるべきだ。

短い解題のついた文献案内が付されている。

取り上げられている論点
1.君が代不起立問題
2.一人一票
3.裁判員制度合憲の条件
4.政教分離
5.生存権
6.公務員の政治的行為
7.生存権
8.憲法9条

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Posted by ブクログ 2014年01月03日

ピアノ伴奏拒否事件を、校長による女性教員へのパワハラと捉える。校長の君が代斉唱ピアノ伴奏拒否による女性教員への戒告処分は、思想良心の自由の侵害として捉えない。むしろ、憲法14条の、すべて国民は、法の下に平等であつて、信条(略)により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない、という差別され...続きを読むない権利の侵害と捉える。私は妥当と思う。校長はただの嫌がらせ、個人の思想強制を、権力を用いて怠惰なやり方で行っているにすぎない。治安維持法と同じだ。歴史は繰り返される。

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Posted by ブクログ 2013年08月11日

 最近注目されている気鋭の憲法学者による本。「憲法が今の社会や時代にそぐわないから変えるべきだ」とか、「憲法の理念が~だからその原則に従うべきだ」とかの極端な主張にすぐに行ってしまうのではなく、憲法の基本的な性格や特徴を踏まえた上で、憲法に関係する世の中の問題をじっくり考えて、「もし…だったらどうな...続きを読むるのか?」という想像力を働かせ、すぐに極端化するような思い込みを避けるように説く一冊。いわゆる「憲法問題のケーススタディ入門」と言ったところ。非常に読みやすい。

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Posted by ブクログ 2023年02月19日

実際の判決内容を記載し、それに対する筆者の理論を記載されているが内容がわかりやすい。
こういった裁判の内容は無意識に難しいものだと思い避けていたが、筆者の説明を読み一つ一つ読み解いていけば理解することができた。
又、憲法によって保証されているあらゆる権利についてもよく説明がなされており、本を読む前と...続きを読むその後では権利に対する認識が大きく変わった。

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Posted by ブクログ 2014年11月17日

憲法学の若手エースが書いています。憲法に関して聖☆おにいさんやクイズ$ミリオネアなどのとっつきやすい話題でわかりやすく説明しているので読み物としても面白いです。

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Posted by ブクログ 2014年07月31日

<目次>
はしがき  憲法を創る
序章    憲法とは何か?
第1章   君が代不起立問題の視点ーなぜ式典で国歌を     斉唱するのか?
第2章   一人一票だとどんな良いことがあるのかーク     イズミリオネアとアシモフのロボット
第3章   最高裁判所は国民をナメているのか?-裁判     ...続きを読む員制度合憲の条件
第4章   日本的多神教と政教分離ー一年は初詣に始ま     りクリスマスに終わる
第5章   生存権保障の三つのステップー憲法25条1     項を本気で考える
第6章   公務員の政治的行為の何が悪いのか?-国     民のシンライという偏見・差別
終章    憲法9条の創造力
文献案内

<内容>
実際の憲法問題の判決を基に、「憲法とは何か?」を問うた本。若き憲法学者の意気込みが伝わる良本。第9条の問題は別の本にあるが、政教分離や公務員の政治行為、憲法25条の「社会権」、そして裁判員制度、その良心による鋭い分析が見事である。

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Posted by ブクログ 2014年03月04日

とっつきにくいはずの憲法をここまで噛み砕いて説明できる筆者の才能に敬意を表します。
合理的思考での最高裁判決への批判にはなるほどと納得させられます。最高裁はなんでそんな筋が通らないことをするんでしょうか?
判例主義も思考停止の一形態だと思うので、法律関係者には柔軟な思考を求めたい。
わかりやすかった...続きを読むので、他の法律関係の一般書も読んでみようと思います。

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Posted by ブクログ 2013年11月07日

木村草太氏の憲法入門書。君が代の不起立問題・一票の格差問題などなどホットな話題から、日本人の宗教観・憲法9条などの根深い問題までさまざまな課題を扱っている。一見関係ない無駄話のように見える話題が導入に書かれており難しい憲法の話題にすんなりと入っていけた。

団体とは、要するに、共通の「ルール」に従う...続きを読む「人の集まり」である。「ルール」と「人」の二大要素のうち、「ルール」は頭の中にしかないが、「人」は目に見えるし、触ることもできる。団体の「正体」を、「ルール」だと見るのが擬制説、人間という「実在」だと考えるのが実在説だが、団体の「正体」などという怪しげなものを観念する必要はなくて、擬制説と実在説は同じものを右から見るか左から見るかの違いにすぎない、と評価するのが筆者の立場である。

経験により検証できない性質の事実認識を「宗教」と呼ぶのである。

ボーアの蹄鉄 ある人が宗教を「信じていない」といったからといって、その宗教を行動の前提としていないとは限らない。

などなど参考になる文章が多数

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Posted by ブクログ 2013年10月05日

憲法改正問題が取り沙汰されている中、平易で読みやすく、現実的な問題を憲法を通じて解説してくれる良著だと感じた。作者を変えて、何冊か読み、自分なりの考えを持つべきなのだろう。

著者は引用する。憲法は終わりの無い仕事であると。
自衛権の行使以外に武力を行使してはならない、というのは、憲法第9条以前に、...続きを読む現在国際法の大原則である。9条の内容というのは、それが守られるような、国内外の状況を作っていかなければならない、という意義そのものなのだと。

現在の憲法があるのが当たり前のように感じているが、その存在意義を改めて考えることは、現在の国の成り立ちを考えることでもある。

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Posted by ブクログ 2013年09月12日

最近、注目を浴びている若き憲法学者の著書。
『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)がとても読みやすく、取っつきやすい作品だった事から興味を持ち、本作も読んでみました。
各章ごとに事例を挙げながら、憲法に照らし合わせた際にこれはどう解釈されるのかを丁寧に説明してくれます。解釈については実際の判例・...続きを読む判決に沿っている為、実用性も抜群です。
また導入部に当たる話がとても面白く、著者の実体験を元にしているのか映像が目に浮かぶ様なものが多く、小難しい話を敬遠しがちな方にもお勧めです。

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Posted by ブクログ 2013年08月19日

最近何かと喧しい「憲法」周辺。この本は特に改憲の是非に議論を絞ったものではないが、憲法をめぐる諸問題に触れながら、国家のあり方を議論するうえでのベースとなる考え方のいくつかを示してくれている。

この本の特徴としては、君が代不起立問題や公務員の政治活動等の憲法上の問題について重要なファクターを抽出し...続きを読む、これをより卑近な例に置き換え、その場合に生ずる不都合からより根源的な論点を照射する方法が多く取られていること。例えば、

・君が代を否定する思想をもつ公務員にその斉唱を強要する行為と、ベジタリアンに肉を強制的に食べさせる行為との違いは何か?
・公務員が職務時間外に政治活動をするのを禁止すべきというなら、より政治色の強い行為である「選挙権の行使」も禁止すべきなのか?

といった具合。全て納得できるわけではないが、なかなか分かり易い。

私も「そんなの国や自治体から給料もらってんだから当たり前だろう」と安易に考えていたが、そのように短絡的な思考では見落とす部分が沢山あることを思い知らされた。

なお、終章で少しだけ9条に触れているが、安倍の改憲論を精神論呼ばわりしている。ある程度肯けるのだけど、それをいうなら本書の「9条が日本の非武装を選択できるための世界の創造を要求する」という主張もかなりナイーヴな精神論なのではないかと思ったりもした。

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Posted by ブクログ 2013年05月23日

「ニッポンのジレンマ」に出演していた若手憲法学者の本。テレビ出演時の意見が興味深かったので、購読。

<国家と憲法の定義>
国家:権力を作ることを目的とした組織。
権力:暴力を背景に有無を言わさず人に言うことを聞かせる権利のこと。
憲法:国家のルール。国家の領域範囲、王位継承の方法、裁判の手...続きを読む続き、軍隊の指揮権の所在などを決めたもの。

<入学式での「君が代」ピアノ伴奏拒否事件の判決について>
・入学式で「君が代」伴奏を拒否したピアノ教員は、「君が代」を軍国主義と結びつけて拒否した。
・反対論者は、「君が代」を古い日本の歴史と結びつけて擁護した。
・どちらも「君が代」と思想、歴史的価値の連関を認めている。
・最高裁は、「君が代」の固有の意味や、歴史的価値について考察することを留保した。「君が代」は今国歌なのだから、入学式で歌うことに問題ないとドライに扱った。
・憲法は、個人的なこだわりを他者に強いることを否定する立場を取っている。

<生存権保障>
・人間が人間らしく再生産される社会の創造は我々の義務。

<憲法9条の想像力>
・9条は自衛のための必要最小限の自衛権を認めている。
・憲法9条は世界の中で特殊な憲法なんかではなく、むしろ世界で主流の考え方。自衛以外で戦争するのは、世界では侵略行為と呼ばれる。9条が言っているのは、国際法の常識に照らしてみれば、実は当たり前のこと。

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Posted by ブクログ 2013年05月12日

憲法の入門書。扱われているテーマは、今流行のものが中心。
個人的に、筆者の鋭い指摘には、気付かされること、
考えさせられることが多かった。とりわけ、生活保護に関する指摘では、なるほど、と思った。あとは、思い込み程恐ろしいものはないということか。

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Posted by ブクログ 2013年04月17日

最新判例を素材にした憲法の入門書。
著者の見解が前面に押し出されているが、最高裁の論理を丁寧に分析しているので、司法試験受験生にとっても参考になると思う。
特に、第一章(君が代不起立問題)、第二章(一票の較差)、第六章(公務員の政治的行為)については、司法試験論文で出題されても文句が言えない分野だと...続きを読む思うので、本書を読んで議論の要点を押さえておくことは有用だと思った(もっとも、君が代不起立問題についてはその性質上、そのままの事例が試験に出ることはないと思うが)。
個人的に、裁判員制度や生存権についての記述はあまり説得力を感じなかったが、全体的には参考になる部分が多く、面白かった。

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Posted by ブクログ 2021年05月07日

日本国憲法についてわかりやすく述べられている。
憲法全般を扱うというよりも、いくつかのテーマに沿って憲法と照らして解説するといった内容。
判例なども豊富に紹介されていて、法律家の思考で憲法を学ぶことができる。

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Posted by ブクログ 2014年11月13日

1票の格差や政教分離など,憲法に関連する論点について,木村草太がわかりやすく解説している。もっと詳しく知りたい人のために参考となる本を薦めてくれているのもうれしい。

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Posted by ブクログ 2014年08月03日

最高裁や学説で用いられる抽象的な用語を具体的なレベルに落とし込んで説明されていてとても分かり易かった。

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Posted by ブクログ 2014年01月24日

残念ながら「思わず膝を打つ!」とか「目からウロコが落ちる!」という感じではありませんでしたが、所々興味深い論述はあります。

・君が代の斉唱強要は「そうまでしないと斉唱を確保できないほど指示の弱い国歌だ」という印象を与える(P.45)

・裁判員制度は憲法16条の「苦役」にあたる(P.114)

...続きを読む日本的多神教では数ある神を場当たり的に利用することができ、宗教利用が生じやすい(P.134)

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Posted by ブクログ 2013年08月16日

憲法の入門書。
なぜか、章の冒頭に時々同級生の「トミナガ」が登場し、ユニークなエピソードが披露される。これに引き込まれ本論は法律解釈の専門的な議論から離れ、一般常識を使った想像力により、法律の解釈を創造するというアプローチ。
もちろん、判例や通説も紹介されており、独善的な内容ではない。憲法にこんな考...続きを読むえ方もできるのか、と新鮮な気持ちになった一冊。

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Posted by ブクログ 2013年07月22日

「憲法の想像力」を経て、「創造力」に進んだステージ。学校で「君が代」を歌わせる問題が、「君が代」でなくて「ビューティフル・サンデー」だったらどうなるのか。それを同列に扱うのをイカンというのなら、それを他者に押し付けることも憲法は禁止している。
憲法は、新しくするとか改正するとかが大事なのではなくて、...続きを読むそこから想像力を使ってよい国を創造するのがよいことだ、と。かなり砕けた書き方で読みやすく、そしてその想像力と創造力が染みてくるではないか(簡単すぎて怖いけど)。
憲法というと、眉間に皺をよせ、頭に血を上らせて、となりがちだけど、これは上機嫌に憲法を語れそうだ。選挙結果は白紙委任ではない。裁判所だって、どうでるか。今こそ、下地を持っておきたい。

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Posted by ブクログ 2013年05月18日

裁判員制度、確かに裁判員法は上から目線だな。でも、専門性の高い仕事ってある程度は上から目線が必要だと思う。

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