【感想・ネタバレ】分子からみた生物進化 DNAが明かす生物の歴史のレビュー

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Posted by ブクログ 2020年08月27日

精巧な機能の連携によって機能する、ダーウィンすら惑わせた眼の進化。
突然誕生したようにみえるキリンの首、鳥の羽。
現在も諸説あふれるカンブリア爆発の原因。
"進化"という学問が作られてから200年。人類はようやく進化の謎に外見以外の要素を交えて語れるようになった。

本書は表題の...続きを読むとおり、進化にまつわる各諸説を分子の観点から語るものであり、
中心となるのは筆者も深く関係する分子の進化中立仮説について。

特に機能に直結する形態レベルの変異は、自然淘汰の影響をダイレクトに受けるが、分子レベルではそうではない。
淘汰に有利でもなく不利でもない、何にも影響しない中立な変異こそが主軸となり、
遺伝子は違ってもコードされるタンパク質は変わらない同義置換や、
重要な機能に直接関与するため変化し難い遺伝子を重複させることによって、
変化し続ける状態こそが正であるシステムを稼働させていた。
こうして見えない領域で蓄積された変異の一部分が、形態変化となって表出する。

というように論としては頷けるのだが、自説を支持するあまり、論理の飛躍と思われるような箇所も見受けられる。
本書のネタ本とも言える『分子進化の中立説』を「種の起源以来の本」と絶賛するのは大仰がすぎるし、
軟骨発育不全症だけをもってオスの遺伝子変異率が子供へ影響するオス駆動進化を説明するが、他の疾患に関してのデータはない。
もちろん素人がこれだけを持って真偽を判定できるものではないが、素直に受け入れるには気になる点が残る。

ダーウィンは現代よりも圧倒的に少ない情報量で新しい学問を創出した。
読書に限らず理解が及ばないときは、つい情報量の不足を理由にしてしまうが、
ときには手元にある情報のみから結論を導き出す訓練も必要だろう。
本書はその手助けになるかもしれない。

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Posted by ブクログ 2014年06月11日

生物の進化はDNAの配列を解明することだけでは解き明かすことができない。
カンブリア紀爆発はこの時期に新たな遺伝子が増えたのではなく、9億年前に作られた遺伝子を活用することで達成されたのではないか。ハードではなくソフトモデルとしての遺伝子の活用を考える必要がある。
生物の完全を求めない便利主義こそが...続きを読む、分子に内職を可能にし、多様な付加機能を持たせる事が出来る様になる。
DNAには集団内に固定された多数の中立な遺伝子が存在するため交配により新たな機能が発現する可能性がある。

本書のもう一つのテーマは分子生物学の進歩により生物の系統樹の見直しが進んだと言う事。生物進化の道筋がハッキリすることで意外な発見があるようだ。

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Posted by ブクログ 2014年02月27日

当方には些か難しい内容だったか。
それでもオス駆動説などは凄く面白い(ただ何だか一昔前のジェンダー議論を思い出さなくもない、つまりはどこか色褪せているような気が、、、何の根拠もない単なる素人の感覚にすぎませんのであしからず)し、クーンの科学革命論を何箇所かで持ち出すところを見るに著者の相当の自負が見...続きを読むて取れる。
しかし取り上げる説等が日本の研究者の手によるものでその多くを占めているようにも見受けられなくもない。
もしかしてこの著作で取り上げられているのはグローバルな論議ではなく、極東のローカルなものなんだろうか?そんなことはないんだろうが、少々哀愁を感じさせます。

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