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Posted by ブクログ 2024年02月24日
明治、大正、昭和へと続く、母から子、孫に至るまでの年代記。
有吉版『細雪』のよう。細雪よりはだいぶコンパクトながら、明治のお家騒動にとどまらず、昭和までの時代の移り変わりが書かれているのがすごい。
川の流れのように続いていく命と、変わっていく「家」のあり方を体感することができ、しっかり満足感。
「〜...続きを読むのし」という独特の方言も癖になる。
Posted by ブクログ 2024年02月24日
明治時代に和歌山に生まれ育った花を中心に、子の文緒(大正)、孫の華子(昭和)を通して、時代の移り変わりを描いた作品。
私の義実家は和歌山なので、話言葉や食べ物(駿河屋のまんじゅう、富有柿)、地名(岩出)和歌山城やぶらくり町が聞き覚えがあるもので、読んでいておもしろかったです。
私は強い女性の話が好き...続きを読むなので、この小説は大好物でした。
主人公の花は明治時代の女性の見本のような、夫をかいがいしく世話するように見えて自分の野心のために動かすような女性(に見えました)。
その母を反面教師とした文緒は、「女性でも自立していく時代だ」と大口を叩きながらも、実家のお金を頼りにする女性。
孫の華子は、花の隔世遺伝を受け継いでいるような女性。花に親しみを感じ、受け継がれてきたものを客観的に見ています。
女性が直接的に社会に出ていないながらも、家の中のやりとりを通して、間接的ながらも社会に貢献してきたこと、こまごましたやりとりを通して考えが次世代に繋がっていくさまが描かれていておもしろかった。
「原始社会の母系家族は自然やったんやと思いませんか。いざとなって頼るのは、男の家やのうて、女の実家方ですよ。」
紀本家の豊乃から、花へ、そして文緒から自分へと確かな絆が力強く繋がれて、花の胸の鼓動が直に華子の胸に響いているのを、華子は感じたのだ。
Posted by ブクログ 2024年01月17日
めちゃくちゃ面白かった。
第1章が終わり、第2章が文緒が女学生になったところから始まることに気づいた時点で「文緒が女学生になるまでに何があったかも教えてよ!!花の視点を共有してよ〜!」と駄々をこねたくなった。
内孫、外孫、長男がどう、と家父長制的な視点を持つ花に対し、文緒が「実際に深い交流があるの...続きを読むは外孫ばかりではないか、母系家族は自然だったのではないか」と訴えるシーンは特に印象に残った。
母と娘が反発し合いながらも、宥和できる部分は時間をかけて宥和し、その様子を見る孫娘は祖母に対して親近感を持つ、という描写は、そうやって昔から連綿と命が続いてきたのだなと思わされた。
一方で、晩婚化や出産の高齢化、核家族化が進むいまでは、祖母と孫娘の距離はこの作品ほどは近くないのだろうなと少し残念に思った。
Posted by ブクログ 2023年07月23日
朝日新聞の和歌山紀行での推薦本である。有吉佐和子は、恍惚の人や複合汚染で有名になっていたので、その本を読んだが、こうした昭和の初めの地方の和歌山の女性を描いたとは思わなかった。和歌山を昭和にかけて知るにはガイドブックとして最適であろう。
Posted by ブクログ 2023年04月27日
23.1.21〜2.5
有吉佐和子、面白すぎ❗️
花と祖母の関係性、習慣。絆。嫁入りの様子は鈴木清順の映画を思い出した。
カバンに大量のキューピーをぶらさげて田舎を闊歩してる文緒、可愛げありすぎ。
華子を見つめる花の目線と、終盤に彼女が語る言葉で感極まった。
武蔵美に友達の卒制を見に行った帰りに...続きを読む、近くにあった古本屋さんでこの本と『複合汚染』を買ったんだけど、複合汚染を見た老齢の店主さんが「うん……うん…‥いい本だよね、これ」って呟いてた。紀ノ川も良い本だったよ、店主さん❗️
Posted by ブクログ 2022年08月03日
花(明治)・文緒(大正)・華子(昭和)の三代記と、少し前の朝ドラを彷彿とさせる構成。事前に著者の生い立ちを確認していると、自伝的小説だと言うことに途中気づく。
開始早々泣きそうになった。
嫁入り前の花が祖母の豊乃と寺の石段を上るシーンから入るのだが、孫へのはなむけの言葉がもう優しくて、優しくて…。...続きを読む
明治初期に身内が嫁入り前の女子に説くことなんざせいぜい嫁の心得だろうに、「身体を大切にしなさい」等今と変わりないしどれも愛情深い。早逝した実母に代わってどれだけ彼女が手塩にかけてきたのかがよく分かる。
作家の桂芳久氏は解説にて、著者は紀ノ川に「いのちの流れ」を象徴させたと書いている。出来た嫁の花は作中で紀ノ川に例えられているが、桂氏曰く「(自分より早逝した)夫や義弟のいのちを吸収して逞しい生命力に溢れている」という。正しい解釈かもしれないが、まるで花が悪霊のような書き様に思えて自分はこれに賛同しかねた。
和歌山市の有吉佐和子記念館を訪れた際紀ノ川も見えたが、水流は穏やかなれど水の色は凛々しい青だった。芯の強い花に屈強な文緒、これからの時代を逞しく生きていくであろう華子を想起させる、揺らぎのない青。性格や得手不得手は違っても、彼女らに共通する強さは脈々と受け継がれる。これが読後に見出した、自分なりの川の解釈。だいぶ単純なものになってしまったが~_~;
男性陣が儚い印象だが、花の小舅にあたる浩策だけは異色だった。小気味の良いツンデレっぷり(あの重度の皮肉屋を容易にツンデレと呼んで良いものか、書いてから悩んでいる…)で、基本的には長兄や花にジェラシーを燃やすひねくれ者。しかし彼もどこかで花たちと繋がっていたかったのか…?と思っちゃうほど、交流を続けていた。
子供たちとの交流や、年老いて一人になった花の元に書籍を届けたりして、何だかんだで花も彼への警戒を解くようになっている。
だが「家」には決して染まらず、登場人物の中で一番思い通りの人生を送れている。桂氏風に言えば、花にも吸収できない川があったってこと。
毎朝読んでいたから、こちらも自分にとっては「朝ドラ」にあたる笑 先のリアル朝ドラとはまた違った瑞々しさ。バトンをつないだ華子の未来が前途洋々であれと、紀ノ川を眺めた時のように流れを見守っていた。
『恍惚の人』に続き、こちらも知人から紹介して貰った一冊!有吉氏の代表作にようやく辿り着くことができて達成感でいっぱいです^ ^ この先(一生かけてでも⁉︎)︎他の作品も制覇していきたいです。
Posted by ブクログ 2021年11月27日
三代に渡る女の人生。
描く人が違うとまた濃厚さが違う。
風景の描写も流れる時間もまた違って方言まで美しく感じる。
気丈な花が老いてワガママになるのも計算の内なのか、今まで抑えていた気持ちをボケたふりして孫に語っているような気がして、というよりそうあってほしいと思う。
Posted by ブクログ 2021年07月04日
おそらく、本で読んだだけならここまで強烈に印象に残ることはなかったことだろう。
毎朝のNHKの朗読で一回、それを録音で収録したものでもう一回。初夏のウォーキングのなかで聴いた。
柔らかな紀州訛りと、もう失われた少し遠い時代の生活や言葉を背景に、“真谷のごっさん”花の見つめた世界に同化しながら浸った...続きを読む。
そして、もう一回この手にしている本で三度目の『紀の川』を渡った。
三度ともなれば、すべてがもう知り抜いた既知の世界。展開も、台詞も文字を目が追う前に既に知れている。
ただ味わった。もう一度この心地よさを。
何が心地よいかって?
それは花の“美しさ”だ。小説のなかでも、その美貌を表現する箇所はあるが、それだけでは私の心は動く筈はない。
豊乃に英才教育されて身につけた教養と躾、身のこなし。それだけでもない。
それらと彼女の生きた運命が化学反応して発光する輝きが、孫娘華子(有吉佐和子)によって見事に描かれているのだ。
絵画に描かれた女性に恋する青年の気持ちと同じだ。
もう、現実には存在し得ない、失われた“美しさ”だ。
Posted by ブクログ 2021年06月06日
ラジオで朗読されていたので購入。題名からちょっと最近の人にはとっつきにくいのではないかと思う。女性4代の血脈が、紀ノ川の水脈のようにしっかりと、静かにゆるやかに流れる。女性の強さを感じる。女性の生命力、ミトコンドリアの力を感じさせられる良書。
Posted by ブクログ 2021年06月05日
有吉佐和子の代表作。読んだのではなく、NHKラジオ「朗読の時間」で聞いた。目からではなく耳から、という朗読の面白さを初めて実感。朗読50回シリーズ。
朗読は、俳優の藤田美保子さん。藤田さんの朗読の上手さも、この作品の魅力を一層引き出していた。
Posted by ブクログ 2019年09月13日
自分のひいひいおばあちゃんくらいが花の世代かな?そう思うと、女性がとんでもなく「家」に縛られて生きていたのは割と最近なんだなと、驚く。プラスチックを始めて触るシーンとかも、世代を逆算して考えると面白い。
有吉佐和子の作品、もっと読んでみたい。たしかに努めて娯楽的にしている面も感じなくはないけど、女...続きを読む性の人権に対する意識とか今読んでも古びてないし、作家らしい作家だと思う。
そして女性を、三代を通して描くのはすごく有効な描き方だと改めて思う。キム・ジヨンもだったけど、個人的な母娘の確執に見えることでも三代になると社会のうねりの中で起こってるってことが可視化されていいよね。
Posted by ブクログ 2022年08月16日
花の一生、理想の女の生き様かと思えばもっと濃いもの。教養はあれどしとやかであれ、というだけに止まらず家に対する執念など。
花の死際、家の縛りから放たれ、抑圧していたものが全て解放している様は読んでいて辛い。呆けだけではなくヤケのような、
白蛇が出たのだからじきに花も死ぬのだろうが、その場面まで書か...続きを読むれてなくてよかった、きっと耐えられない
美っつい川。
Posted by ブクログ 2022年05月10日
女三代期。戦後財閥解体を経て没落した一家を描く。紀の川上流の紀本家から嫁いだ花。花を旧世代だと批判する娘文緒。幼少期を外国で過ごした病弱な孫華子。それぞれの女の力強さを感じる。
Posted by ブクログ 2021年12月20日
紀伊半島一周の旅、終着の和歌山市にて。
和歌山の言葉は初めて知ったなあ。
豊乃〜花〜(文緒)〜華子と、紀ノ川が流れるように移ろっていくお話で、すらすらと読みました。
それぞれに大変な苦労が起きてるにも関わらず、心を重くせずにいられたは、4者4様に持つ強い芯としなやかさの為かな?
次に訪れた時は、...続きを読む紀ノ川をじっくりと味わおう。
関係ないけど、
居酒屋のお兄さん(同い年!)と、スーツさんやら鉄道の旅やらの話で盛り上がったのは良き思い出。
旅先でその土地を舞台にしたお話や、その土地出身の作家作品に触れるという恒例行事は、続けていこう。
Posted by ブクログ 2021年08月20日
朗読の時間
人の一生は川のようなものなのだとつくづく思う。
悠然と流れる川もいろいろある。
登場人物、必ずしも同意できないが
大河のような物語だった。
Posted by ブクログ 2021年07月18日
紀州の素封家を舞台に明治、大正、昭和の時代を紀ノ川のようにたくましく生きた女の物語。
九度山の名家・紀本家の娘・花は、早く亡くなった母親替わりである祖母・豊乃の愛情と教育を受けて、才色兼備の女性に成長する。
彼女は、紀ノ川の流れに沿って、六十谷の名家・真谷家に嫁ぐ。婿となる真谷敬策は新進気鋭の村長で...続きを読むあり、その後、県議会議員、衆院議員と政治の道を順調に進んでいく。花は敬策を支えながら真谷家にとけ込み家霊的な存在となっていく。娘・文緒は男のような侠気があり、新しい女性の姿を求め独立自尊の気持ちが強く、花とよく対立する。また、大学を卒業して出版社に就職した戦後世代の孫娘・華子は感受性豊かで賢く花と情緒を通わせる。
それぞれの女性が世代の落差はありながらもエネルギーを内包した生き方を見せる。
敬策の弟で分家した浩策、花の長男で覇気に欠ける政一郎、文緒の夫であり、青白い秀才のイメージのある晴海英二など男性の登場人物はいずれも弱い川として強い女性の象徴である紀ノ川に吸収されていく。
破滅的な戦争末期に「家」こそが女の砦だったこと、長男が嫁をもらうことで次男が分家として格下げされる宿命、農地改革により息のねを止められた地主など時代背景を物語の中で実感として味わうこともできた。
Posted by ブクログ 2021年07月11日
読み応えのある作品。紀州弁が更にこの物語に彩りを与える。それぞれの世代における女性の価値観が見事に描写されている。今の時代に生きていてよかったと思うのと同時に、御っさんと呼ばれた花の生き方にも憧れを抱く。
Posted by ブクログ 2021年04月22日
静かな和歌山の雰囲気と大きく変化する時代のうねりを対照的に感じさせる作品であった。そのうねりを紀ノ川になぞらえ、女性のもつしなかやかな強さを想像させられた。時代の変化とともに、女性としての役割や価値観の変化を個々の人物によって表現している。今の時代をうつすとしたら、どのような人物として描かれるのかを...続きを読む見てみたいと思う。
Posted by ブクログ 2020年08月16日
さまざまな「女」を知る作者の原点を見た気がした。
求められる女性らしさを演じきり、家庭を動かす女。求められる女性らしさに反発し、道を切り開こうとする女…。相反する女性を描いているのに、そのどちらの心理も描き出すところが、この作品の魅力だ。時代の移り変わり、世代による価値観の違いも、物語にうまく取り込...続きを読むんでいる。
幕の引き方も素晴らしく、ひとつの家が終わりゆく切なさを、見事に表現していた。
Posted by ブクログ 2017年12月22日
和歌山紀州を舞台に明治・大正・昭和の時代を生きた三代の女性たちの物語。
流れゆく紀ノ川になにか象徴的なものを感じた。
時代は変わって行き、価値観も変わっていくこと。それにともない女性の立場、生き方、人生もまた変わっていく。非常に興味深かった。昔の女性ではあるけど、祖母の花に一番凛としたものを感じまし...続きを読むた。そして隔世遺伝のような華子とのやりとりもまた感慨深いものがあり。
これといった結末やストーリーはそれほどなく、本当に時代が流れていくのを追った一冊だったけど、読み応えありました。
Posted by ブクログ 2016年09月08日
読み応えのある内容だった。和歌山の素封家三代にわたるとは言っても実質の主役は「花」。
激動の時代を女がどう生きていったかわかりやすく書かれている。
いわゆる古風で奥ゆかしい花と、その娘でリベラルな意識を強く持った文緒の対照的なキャラクターが、固く暗くなりがちなこの時代の物語をコミカルに見せていると思...続きを読むう。
そんな二人を足して二で割ったような華子は青春を戦争で埋められ奨学金をもらいながら学業を納める。もし華子が花と同じ時代に生まれたら、あるいは文緒と同じ時代に生まれたら。花と同じように川を下って嫁入りしたであろうし、文緒と同じに人権活動もしたのではなかろうか。
華子からは花や文緒に感じなかった「時代に作られる人」という新しい人種を発見できたように思う。
Posted by ブクログ 2016年01月11日
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」(方丈記)
これに集約されると思う。親子の間には、何かしら似てない親子にしても伝わるものがあり、また似ている親子に見えても伝わらないこともあり、ということをこの言葉で伝えているのではないかと思う。
それと、女性はよく海などに例えられることもある...続きを読むが、それと同じで、戦争など有事の際には、女系を中心とした側に家族が集まることが描かれており、その女同士を中心とした関係に、周囲の男性が結局巻き込まれていくということも描きたかったのかもしれない。
紀ノ川沿いで生まれ、紀ノ川の流れに沿って、嫁に行った明治の花→我が儘勝手な大正の文緒→強く生きざるを得ない昭和の華子のある裕福な一家の話。
佐和子さん、がちがちの女史みたいな写真だけど、以外におっとりした雰囲気の漂う作品。他も読んでみたいと思った。
花の第一部は、昔ながらの従順な考えで育てられた花のよくある話。文緒の第二部は、我が儘いっぱいの文緒にてこずる花の話。第三部は、華子が文緒とは違い、どちらかというと従来の旧式のことも大事に思いながらも、たくましく戦後を生きていくだろう様子に、文緒とそっくりでないことに安心する花の話。
佐和子さんと私が生きた時代が違うためか、文緒に一番共感できない。親からの仕送りをもらっているにも関わらず、私の旦那は給料が上がり、家柄などなくても妻子を養ってるのでありますなどと厚顔無恥なことを言う。
それに、自由な独立な女史を目指していた割に、なぜか、ただの専業主婦になっている。そして、なぜかそれなのに独立しているように語る。。。なぜだろう。。。
第三部の華子が、一番時代が近いからか共感できる。
華子は日本式のことを大切に思う心もあり、それほどはねっ返りではないが、風潮もあり、20代後半でも未婚で、しっかりと仕事をもって働いている。名前も花→華子と受け継がれ、そして花自体も母親の存在感がなく、祖母への愛着が強い。
第一部では紀ノ川の紹介、第二部では紀ノ川の意味するところ、第三部では総括なような感じで、徐々に人の、世の流れを川に擬えた作者の意図を理解できるように上手い流れが作られている。
Posted by ブクログ 2015年01月23日
明治半ば、和歌山の旧家へ嫁ぎ、家をもり立てることに心血を注ぐ花。
美しく万事そつのない彼女も、娘の文緒には手を焼いていた。
家やしきたりに反発し、男女平等を掲げて自由を謳歌する文緒もやがて結婚。
そして生まれた華子は、隔世遺伝のように情緒を大切にする花の美意識を受け継いでいた。
死の床の、もはや見...続きを読む栄や建前もない花の述懐が、なんとも人間臭く味わいがある。
家の没落に気を病んでいるいると思いきや、戦後の農地解放のおかげで
先祖に気兼ねがなくなり嬉しくてたまらないと笑い、
反抗され続けたが、文緒に傍に居て欲しかったと本音を漏らす。
衝突ばかりの母娘だったが、頼りない二人の息子より、
生意気だけど気概のある文緒に、一番深い親子の縁を感じたのだろう。
その母の死期を悟ったように突然現れた文緒。
彼女の体を流れる母の血が、それを教えたに違いない。
親から子、そして孫…と継承されていく命が、力強く滔々と流れる紀ノ川と重なった。
Posted by ブクログ 2015年11月12日
前からずっと読んでみたいと思ってた有吉佐和子。
「お母さんは古うて古うて、どないにもなりません。
私(うち)の行動を制限するんやったら、日本女性の敵ですえ。
同姓だけに許せんわ。親やなかったら・・・」
文緒のこんな台詞を読んで、花の視点から見れば生意気
でまだまだわかっとらんと感じ、 ...続きを読む
文緒の立場から見ると花みたいな女性観に嫌悪感を示したくなる。
自分に流れてきている時代の名残みたいなものが一切ないことに
気づき、びっくりした。
これでいいのかとも思う。
これは三部作となっているらしく次の「有田川」「日高川」も読んでみよう。
Posted by ブクログ 2023年04月01日
三代に渡る女性の人生を描いた作品。戦後を迎え、封建的な一族も衰退し没落していく様子は残念でならなかった。
そしてこの一族の女性たちは皆強く逞しいことにも胸を打たれた。男尊女卑が残る時代においても男を黙らせるほどの女性の行動力、発言力には読んでいて惹かれる部分もあった。
Posted by ブクログ 2021年05月29日
古風で奥ゆかしく、強くて知的で、これぞまさに
昔ながらの理想的な日本人女性!な花が主役の話。
重要な人があっけなく亡くなるシーンが多くて
えっ?この人も?と呆然とすることが多かった。
こんなこと続いたら心折れるわ、って中でも
たくましく美しく生きていく登場人物が魅力的でした。
ただ、この時代を...続きを読む生きた女性の方々への尊敬の念はもちろんあるけど、自分がこの時代に産まれなくてよかった〜(女性に求められるものが多すぎるから)と正直思ってしまいました。
Posted by ブクログ 2019年02月11日
「悪女について」に圧倒され、他の作品も読んでみたいと選んだのがこちらだったが、個人的にはそれほどの感動はなかったかな。紀ノ川にゆかりがあるため、読んでいる間何度も川の流れや景色を思い出した。
Posted by ブクログ 2018年09月21日
和歌山の素封家に生まれた花は、祖母の豊乃から女性としての生き方を教えられて、真谷敬策のもとに嫁ぎ、政治家となった彼をよく支えてその一生を過ごします。一方、娘の文緒は、大正時代の自由な空気のもとで育ち、みずからの「家」の重圧にことごとく反発しますが、そんな彼女の気質をよく知るひとたちの協力で、晴海英二...続きを読むという青年と結婚することになります。さらにその娘の華子は、戦争から戦後へと向かって「家」が解体されていく時代のなかで、祖母と母の生き方を目にしながら、みずからの立っている場所をあらためて見つめ、踏みしめようとします。
本書の最後のほうに華子から花へと宛てて書かれた手紙があり、そのなかに「我々は伝統という言葉を否定的な意味でしか使うことができない」というT・S・エリオットのことばが引かれています。本書の主役を務める3人の女性たちは、いずれも伝統に対して異なる態度を示しつつも、そのようなしかたで伝統にかかわっていたという意味では、むしろタイトルの「紀ノ川」がほんとうの主役だといえるかもしれません。
Posted by ブクログ 2015年01月10日
娯楽作品として問題なく楽しめる、その意味で古さを感じさせない。
が粗い造りであるのも確か。まぁ思い切って骨太の骨格だけでコンパクトにまとめたのかもしれないし、これはこれで成功している。
当方にとっては女性の社会地位の変遷より、言葉の断絶が一番印象に残った。聞いたこともない言葉遣いです。
Posted by ブクログ 2014年10月19日
どう見ても新潮の自作自演ではあるのだが、今年は没後30周年ということで、世間は有吉佐和子ブームらしい。猫町でも「好きな作家は有吉佐和子」と言っている人がいるので、読んでみた。
有吉佐和子は、大昔に「恍惚の人」を読んだ記憶が微かにあるくらいで、ずっといわゆる社会派作家なのかと思い込んでいたが、この「...続きを読む紀ノ川」は明治、大正・昭和初期、戦後と日本の激変期を和歌山の片田舎から見つめた女性 花の生涯を描いた大河小説(いや、紀の川小説か)。明治大正期の女性開放運動、戦争直前の騒々しい雰囲気、農地解放の混乱などを背景に、女性と家の関係、母と娘の対立、世代間の相違などが生々しく描かれていて、なかなかに凄い。個人的には戦後の混乱期にもっと紙数を割いてくれると、より嬉しかった。
一般的には花、文緒、華子の三代記と言われることが多いようだが、一貫して描かれているのは時代に翻弄されつつも、揺らがない「強さ」を持った女性 花の物語であり、またそれが象徴するのは、女性の「強さ」は時代とともに変遷する社会の価値観に必ずしも依存しないという事実である。というわけで、桂芳久の解説はまったく酷い。