【感想・ネタバレ】みずうみのレビュー

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ 2021年12月04日

美女をどうしても追いかけてしまうストーカーの視点。
現実とストーカーの妄想・回想が継ぎ目無く展開されて面白い。表題のみずうみは彼の心の中にあると感じた。救いようの無い孤独感が流れる傑作。

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Posted by ブクログ 2019年07月07日

美しい女を見ると後をついていっちゃう男の意識がシームレスに流れていく過程が素敵。
私も美しいものから美しいものにイメージを飛躍させて生きていきたい。

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Posted by ブクログ 2017年05月12日

簡素で、乾いた言葉ばかりで編まれているのに、情景までも美しいのに、まるで浮かび上がることのできない水の底へ沈んでいくよう。

男が持つ生来の哀しさが、妖しく美しい。

女の匂い立つ性よりも、男の精神に神秘性を感じた。

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Posted by ブクログ 2017年02月15日

美しい女を見つけると後を追ってしまう・・・
現代でいうところのストーカー行為が癖な主人公。
おまけに元教師で、生徒と良からぬ関係になりクビになっている。

追われる女性たちも、それがきっかけで関係を持ってしまう女子高生、自分の価値にちょっと自信を持つ金持ち老人のお妾さんなど、自分が選ばれているという...続きを読むような優越感みたいなものを感じでいる。

現実、回想、妄想が入り混じって、時間が飛びながら話が進んでいく。
そのせいか、主人公の男の行為はとっても気持ちが悪いのに、あまり汚らしくは感じない。
どうしようもない性が薄ら悲しくもあり、滑稽なセリフにはちょっと笑ってしまう。

賛否両論ある作品だが、個人的には「雪国」や「伊豆の踊子」より断然面白かった。
まあ、読みやすいというだけかもしれないけど・・・。

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Posted by ブクログ 2023年03月09日

 川端康成の美しい日本語で、みずうみや蛍の情景・山火事などの温度を感じる。美しい日本画を眺めているかのよう。登場する人々は排他的で甲斐荘楠音の絵を見ているようで怪しく対比的な印象を受けた。
 緻密な人物背景と関係図であるが、夢(主人公・桃井の心情?)と現実が入り乱れるので、ストーリーは追いづらく、そ...続きを読むれが川端康成の魅力なのだろうかと、まどわされる。他の作品などを読んだとき、同じような感覚を覚えた記憶がある。
 登場人物は皆、どこか壊れた人々で、言動の理解に少々苦しむが、ひとつひとつの行動にしっかり説明があり、現実世界でも隣人はもしかしたらこんなことを考えているんじゃないか?という気持ちにもさせられる。
 多くの感想が「川端康成は『変態』」と豪語するものが多いが、意外と『変態』と呼ばれる人たちはすぐ近くにいるかもしれない、、、もしかしたら自分もそちら側なのかもしれないな、と気付かされる作品だった。

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Posted by ブクログ 2022年11月14日

気が狂いぎみの男が美少女をストーカーする。それだけの話だけども読み流せない面白さがある。気味が悪いようでところどころ美しいようで夢と現実の狭間のよう。
でもこれがすべて夢だったならば寝起きの気分は良くないだろうな。

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Posted by ブクログ 2022年01月04日

川端康成は変態である。これは間違いない。もちろん作品の内容と著者の人格は別である。でも、はたして「変態」ではない人間に、このような小説が書けるだろうか? 本作の主人公・桃井銀平は、ストーカー行為で教師をクビになった過去を持つ「変態」である。しかし、その相手である玉木久子もまた、「変態」であるように見...続きを読むえる。そして、水木宮子も有田音二も「変態」である。銀平と久子のことを告発する恩田信子はさすがに「真人間」といえるが、しかし彼女もまた、通報することがひとつの快楽となっていたとしたらどうであろうか。自身の欲望を満たすために行動するという意味では、信子もまた「変態」といえるかもしれない。ここまで書いてみると、さて、はたして「変態」とはなんであろうか。そして、川端康成はほんとうに「変態」といえるであろうか。読者であるわたしは、「変態」ではないと断言できるのか。本作を「『変態』を描いた小説」と称することは簡単だが、じつはそのようであって、そのようではない。まことに深い世界である。

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Posted by ブクログ 2019年08月04日

三島由紀夫より私は川端康成の方が好きだ。この小説も変態的要素がふんだんにあるのだが、主人公の意識の中で女性の美しさを表現出来ているし、故郷の湖の情景が夢に浮かぶ様に纏まっている。このような抒情的文章はフランスの昔の作家に通づるものがあるという。ノーベル賞作家である事に納得した作品だった。

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Posted by ブクログ 2017年10月15日

ストーカーの話。
今でこそ、ストーカーという単語まで存在し、一般的な概念だが、これがいつ創作されたかを考えるとやっぱり川端康成はすごいと思った。
そして、雪国に続き川端作品は2冊目だが、隠喩が多く、一回読んでも理解できた気にならず、続けて再読した。
読み終わった後でも、気になるのが、みずうみが何を象...続きを読む徴しているのか。はっきりと掴みきれない。

教え子と禁じられた関係になることで、教職を追われた桃井銀平が3人の女性をストーカーする際の心持を描く。ストーカー発覚を恐れ、隠れ暮らしていた銀平が、辿りついたトルコ風呂で、湯女を相手に独りごとをつぶやくモノローグから始まる。そこで、ストーカーが、行きずりでもう会えない人との邂逅を惜しんで、あきらめきれずに追跡してしまう行為であると核心を語る。だが、この作品では、1人は教え子であり知り合いである。

興味深いのは、ストーカーされる側にも、複雑な事情を持つ女性が多いということだ。女生徒久子は父の裏稼業、宮子は祖父ほどの年齢の男性の妾、町枝は交際相手の親から反対されている。それが、一種ミステリアスな雰囲気を人に帯びさせるのだろうか。そして、最後には逆に銀平がつけられる。当時の銀平は、ストーカーから派生した罪で捕まえられるのを恐れていたから、ストーカーを引き寄せたのだろうか?

38ページのクモの巣と86ページの父の幽霊に関しては、同じことを言っている様な気がする。
近づけば、からめとられ、やられる。
だから、怖くて、知り合いである教え子にもストーカーしてしまうのであろうか?

ストーカーの恐ろしさの真髄は、その止められないところ、盲執にあると語っていると思われる部分が何か所もある。
醜い足をもった銀平が、ストーカーを水虫の様なものだと32ページで語る。興味深いのは、担当のクラスには僕は水虫じゃないと宣言し、ストーキング対象である久子には水虫持ちであると嘘をつく。水虫=ストーカーと変換すると、興味深い。

幽霊に関しては、もう一つ意味しているのではないかと思う個所が138ページにある。幽霊は足がないはずと思った後に、自分の足もすでにこの世の土を踏んでいないのかもと自問自答。対象になる銀平の足は醜い。醜くても生きている、ととるべきか、醜く歪んだ生き方の象徴そのものととるべきか、それとも生きていないのか。そして自分の子供に足の醜さが遺伝するはずと語ることで、つまり湖で自殺した父親もなんらかの盲執にとりつかれて醜い足をしており、それが遺伝したことを暗示しているのか?

最初のストーカーの相手である従姉妹のやよい。
彼女と故郷の湖を散歩しているとき、湖に桜が映り込んでやよいが怖がるシーンがある。湖が桜を取り込んで逃さない様に思えた?やよいは、銀平が父親の仇探しにとりつかれることが無意識にこわかったのかもしれない。

後述する、犬が殺したねずみの遺棄先がみずうみ、そして、銀平は町枝の黒い瞳のみずうみで泳ぎたいと願う。
wikiの解説では、川端さん自身が、「水には時がない」と記している前書きがあるらしい。
とりこまれた者は、時間による制限がなく、一生とらえられたままということで、水虫とリンクした、ストーカーを魅了する側の象徴であろうか?そして、もちろん、水はとらえきれない。

最後に向かって、銀平は、ストーカーを嫌悪して、その悪習からの脱却を試みているように思う。
76ページで、一度ねずみを捕まえて、その喜びに固執して、ねずみを探し続ける犬に嫌悪感を感じているし、タクシーの後部座席から見るガラス越しの景色は青で、運転手側のガラスを通さない景色は桃色がかっている所で、現実の方が美しいと感じている銀平がいるのではないか?と思う。そして、銀平がいつも心に描く、故郷の山は桃色と紫がかって美しい。これは、母親とすごした頃の希望の世界を象徴しているのではないか?

そして、最後のストーカー対象者である町枝は、蛍狩りでも遭遇することができ、そして名前を知ることもできて、それだけで十分現実世界で縁があると記述してある。
足のコンプレックスにより、縁深い相手との関係も逃してしまう銀平。それどころか、彼女が入院中の恋人に贈りたがっている蛍をこっそりと彼女に上げて立ち去る銀平。その後、ストーカーされた汚い女を現実、町枝を夢幻と対比させる。町枝を夢とすぐ前でも表現しているが、その時は、夢現と表現しており、銀平が現実はこんなものだと悟ったことで現→幻の転換が図れたということだろうか?
そして、「幽霊としても平凡だぞ」と独りごちる。幽霊とは、つまり、ここにきて、現実と向かい合うことができず、ストーキング対象者からも認識されないこともある生きているのか、生きていないかも明らかでない幻の様な存在の象徴ではないかと思った。

そして、深読みしすぎかもしれないが、銀平が町枝に贈る蛍。蛍は暗闇で見ると幻想的な光で確かに美しいが、光の中で見ると黒い虫である。現実社会では美しくなくて、幻を同じく意味しているのだろうか?

雪国と同じで、川端さんは何度も違う比喩を使って、同じ事を言う傾向にある。それが伝えたいことであろうか?そして、現実と向かい合えない人間を描くことが多いのであろうか?どうにしろ、気になる作家さんである。

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Posted by ブクログ 2016年08月18日

ストーカー、あとをつけるスリル、つけられるスリル。気味の悪い物語である。時間軸もひとつではないし、どの箇所が現実で幻想なのかも釈然としない。もしかしたら、これは全部幻想なのかもしれないし、すべて現実なのかもしれない。

男と女、追う追われる関係。最後には、追うはずの男が女に追われている。逆さまの世界...続きを読む。この物語をどう評価すべきなのか、読みおえていまだに処理のしようがないが、物語の核たる箇所があるとすれば、おそらくは主人公の男が語った一節だろう。男はこう言う。

「君はおぼえはないかね。ゆきずりの人にゆきずりに別れてしまって、ああ惜しいという・・・僕にはよくある。(中略)そのまま別れるともう一生に二度と見かけることは出来ないんだ。かと言って、知らない人を呼びとめることも話しかけることも出来ない。人生ってこんなものか。(中略)この世の果てまで後をつけてゆきたいが、そうもできない。この世の果てまで後をつけるというと、その人を殺してしまうしかないんだからね。」

男は最後に、あとを追ってきたゆきずりの女と酒を飲む。ゆきずりのままではなく。人間は孤独で、そう運命づけられているから、物語の男女は追い追われることに悦びを見出すとでも言いたげに。

男の思い出には、いつもみずうみと孤独がある。愛への渇望がある。ときどきなにかの拍子に、ある人の瞳に、ショーウインドウのガラスに、そのみずうみを想う。男は言う。「水にうつる二人の姿は永遠に離れないでどこまでも行くように思われた」。非常に物悲しく美しい筆致で、わたしの目にも男の想うみずうみが映る。霧に包まれた静寂のなかで、そのみずうみは枯れることなく男の心にあるのだろう。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2015年09月16日

人物を表面から、内面から表わす言葉が素晴らしいと思う。
古くから伝わっている美しい日本語です。
また、少女の初々しさや純な美しさを感じます。
美少女を見つけると跡をつけてしまうという癖を持つ主人公の衝撃的な内容の小説。
病的に異性を求めてしまうのは、生まれのためかな・・・。

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Posted by ブクログ 2015年01月14日

(*01)
ひとことでは変態小説と評したい小品である。
主たる公人として、主人公らしき男性の内面と嗜好の描写が中心ではあるが、途中その男性の欲望の対象に主観がすり替わるあたりの手際も含め、変態である。
変態といえば、この著者の文体もこうして改めて読むと鬼気迫るような対話であったり、嬉々として欲望に預...続きを読むけたような視線の行方(*02)の細部の描写であったりするが、その動きがちらついて落ち着きがないのは、一文の短さによるものと思う。
表題のみずうみを介した発色や明暗の現われについてもよく練られており、変に美しい。この美は、前近代の伝統的な美とは切れたところで、戦争を挟んで、近代の完成を見るような美としてとらえることはできるだろうか。

(*02)
目線が定まらない一方で、主人公の身体の移動については一定の安定感を示す。
その理由はいくつかあるが、ひとつは、水虫や奇態な足、それともハンドバック、といった身体的な、または心理的な制約のせいである。このスティグマないしトラウマによって、彼の身体は芋虫の様にもじもじと安定している。
ふたつめは、場の狭さによる制約で、冒頭の蒸風呂や後半の溝の気持ちのよい狭苦しさの趣向にあって、視線を泳がしている。
みっつめは、視線を主因とした自縄自縛であって、眼の欲望の赴くままに、身体を視線に逆らわせることなく都市に潜っていくことが、安定の根拠になっている。

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Posted by ブクログ 2014年08月13日

川端康成が1954年に雑誌"新潮"に発表した長編小説。美しい女性を見ると何かに取り憑かれたようにその女性の後をつける奇行のある男の話です。ちょっとニュアンスが違う気もしますが、今だとストーカーと呼ばれるんでしょうか。主人公の銀平の現在、過去、妄想、夢を、特に境界をつくらずに縦横無...続きを読む尽に描いてあり、読んでいる最中に、これがどの意識化での話なのか分からなくなる事もありますが、必ずどこかでハッと気付かされます。川端康成は、こういうフェティシズムを描かせたら流石だなと思いました。

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Posted by ブクログ 2014年05月27日

もの、人を介して思い出されるゆがんだ思考と幼少の思い出。これは文学的に研究しがいがあるとは思いますが。
ほかの作家は気にならないのに、川端だけは女性に対するねちっこい視線というか、物語の世界にたいする異物感があって嫌ーな感じがいつも残る。それだけすごいということなのですが。

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Posted by ブクログ 2018年08月11日

美しい女を見ると後をつけてしまう男桃井銀平。
彼が後をつけた女、その女について、過去の記憶、幻などが流れるように織り込まれた作品。

スミレを食べて泣いたりしているところが寂しげで印象に残った。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年03月02日

美しい少女の後をつけてしまう性癖を持つ桃井銀平。ハンドバッグをぶつけられたり、相手の恋人とひと悶着を起こしたりするなかで、いとこのやよいに憧れた幼少時代、教え子と恋愛問題を起こした追放された教師時代の追憶が交錯する。

「死体紹介人」という傑作があるのでつい期待してしまったが、あらすじから予想したほ...続きを読むどの不気味さはなく、諸代表作と同じく淡泊な味わい。回想が重なる作風で、頭に浮かんだものをそのまま順番に書く「意識の流れ」の手法が取られていると解説にあったのには納得。

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Posted by ブクログ 2022年12月14日

読んでびっくり、ストーカー、未成年者との不純行為、置き引き。
しかし、そこは川端康成の佳麗な文章で、書かれたのが昔も昔1954年なので。

ま、現代でなくとも警察沙汰になるような、一人の男のモノローグ的な小説。
「桃井銀平」それがこの男の名前だからして、なんだかすごいなあ。

で、銀平さんが軽井沢の...続きを読む古着屋でズボンやワイシャツ、セーターを、おまけにレイン・コオトまで、置き引きしたハンドバック中のお金で買いこみ、着かえるところから始まる。

「置き引き」としたけれども、要は妙齢の気になる女性をストーカーして気味悪がられ、女性が投げつけたハンドバックを持ってきてしまったのだ、ということが明かされていく。女性の後を付けていく趣味(?)の始まりは、教え子との恋愛での戯れに始まったとか。

その不道徳きわみない、彼の行動や想いが独白風「意識の流れ」となって綴られていて、だけれども、そんじょそこらのだれかれには書けないだろう、美麗というか、シュールというか、許せねえけども川端康成文学だねえ。

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Posted by ブクログ 2022年10月30日

今まで抱いていた川端康成のイメージとはちょっと違った。

銀平は教え子と交際したり、見知らぬ女性を付け回したりするのだけど、そこに罪の意識は存在していない。
ただ銀平に起きる衝動を捉え続けている。

銀平も有田老人も歳の離れた美少女に恋というより母性、拠り所を求めている気がする。

とっ散らかったイ...続きを読むメージもあるけど、銀平をめぐる少女たちの群像劇のようでもあり、銀平の行く末から目が離せなかった。

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Posted by ブクログ 2022年07月18日

川端康成のストーカー小説があると聞いて読んでみた。
町で気に入った女を見つけると尾行する男。その理屈は理解できなくもない。ここで追いかけなかったら二度と会えないかもしれない、という論理は分かるが、尾行するだけだと犯罪なんだよなー。とはいえ、知らない男から声をかけるとナンパでしかないし、難しいところで...続きを読むある。
また、尾行された女の方の内面描写も面白い。老人の愛人として生きている女は、尾行されることで失った若さに復讐している、という理屈は何となく理解できたし、尾行されていることを楽しんでいることも分かる。

冒頭が主人公の妄想・幻視で始まるためヤバい小説かと思いきや、犯罪的な行為で結ばれる関係の描写が面白い。主人公がいわゆる淫行で職を失った過去も「あるある」で納得。舞台は昭和初期のようだが、ストーキングや淫行が現代の問題ではなく、普遍的な病であることが分かったことも面白い。

しかし、愛人の女を深掘りするかと思いきや、過去の女子高生の話になり、また時間軸が飛び、現在の町で見かけた女の子を尾行して失敗する、という流れが消化不良を起こした。
主人公がやりかけで放置した体験談のようである。深掘りしてくれればかなり面白くなりそうだったので残念。

若く美しい女を尾行していた主人公が、最後は年増の女と待合に入ろうとして逃げる結末は、現実の暗示なのだろうか。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月07日

やっぱり川端は言葉の天才。
ストーカー癖のある変態教師の話を、描写の美しさでカバーし、読み終わったらちょっと爽やかな気分にまでさせてくれる。

時間軸や現実と妄想が巧みに変わる。
主人公の銀平は、きっとずっと変わらない。
他の登場人物は、未来がありそうな人もいる。
そして、一見関係なさそうな登場人物...続きを読む達が微妙に繋がるのも読んでいて面白かった。
最後の赤ん坊と、女のくだりがなんだったのかはよく分からない。
蛍のところで終わっていたらもっと爽やかだったのに、と思ってしまった。

みずうみは、銀平の少年時代との象徴のようだが、出会った美しい少女の目もみずうみに例えられていた。「その清らかな目のなかで泳ぎたい」
妄想からの切り替わりも見事だった。
「降っていない雨の音を聞くのだから自由である」
など、思わず唸ってしまうような文学的表現がいくつもあった。

他の作家が描けないような、手や足などの所作を美しく表現して、狂気や官能を読んでいる者に感じさせる。やっぱり天才。

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Posted by ブクログ 2021年02月14日

美しい女の魔力に憑かれた男は、執拗に女のあとをつける。
男の中で美女への暗い情念が渦巻いている。自身の足の醜さがゆえに美しい女を追い求めるのだろうか。
男はしだいに幻覚をみる。幻が彼を覆い非現実の世界に迷い込んでゆく。

まるで魔界が物語の中で漂っているかのようだ。

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Posted by ブクログ 2019年08月18日

ストーカー的に女性を追い求める主人公ですが、追い求めた相手との交わり切らない関係性も含め、別れがむしろ際立ちます。退廃的ではあるのですが耽美的という訳でもなく、エロス云々というよりは人間の滑稽さが切ない作品だと感じました。

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Posted by ブクログ 2019年06月22日

ストーカーの意識の移ろい。フラッシュバックのように少年期の湖畔の生活が白日夢のように現れる。偏執者というか神経に異常を起こしているかのようにも感じるが、著者の体験なのだろうか。2019.6.22

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Posted by ブクログ 2018年09月26日

まず、他の川端作品とは書き方がだいぶ異なることを言う必要があると思う。私の意見だが、「山の音」にしろ「千羽鶴」にしろ多くの掌・小・中編にしろ、川端は人物の心理を一から十まで書かない。どこかでふっと漏れるたった一つを書いて残りは読者に読ませる。それが読めるのは背景の構成の巧さゆえだと思うが、いずれにし...続きを読むても、書かない心理を伝えるのが川端文学の特徴と思っている。「何故かこの人の気持ちが伝わってくる...!」これが川端文学である。本当に凄いと思う。

さて当の「みずうみ」だが、もうびっしり心理を書いてくる。とても「山の音」を書いたのと同じ人が書いたとは思えない。足の指の長さやら二の腕の付け根の丸みといった病的に細かい身体への審美的執着が無ければ、これが川端文学とすら思えなかっただろう。情緒が入る余白など全く無い、それこそ湖に沈んでいくような息の詰まる世界だった。

しかしこの作品で書かれていないこともあると気づいた。それは背景、特に人物関係だ。読んでいくと、「あれ?もしかしてこの時のこの人ってあの人?」というような人間関係がいくつかあるのだが、真実は全く語られない。というか徹底的に一人称視点のため本人は知る由もないのだ。作者は物語を〝心理″で埋め尽くして、逆に〝事実″に余白を作ったのかな、と思った。(書いていて思いましたが、主観的心象と客観的事象は本質的に両立し得ないものかもしれませんね。)

もう一つ加えると、丹念に心理を記述したことで読者が人物、特にストーカー男の心理がいつのまにか受け入れられるように書かれている。はっきり言って、最初の時点でここまで嫌な男主人公もいないと思う。確かに川端の書く男は多分に女々しくヒネているが、読んでいてここまで嫌悪感があるのは武者小路実篤か鴎外か堀辰雄(...完全に個人の好みで作家その人を悪く言う意図は皆無です)以外では規格外だ。しかし恐ろしいことに、後半になるとこの男なりの愛というか純粋さが理解できてきてしまうのだ。これこそはねっとりじっとりと心理ばかりを描いた功績だろう。人物に共感できる川端作品なんて、本作以外ではちょっと思いつかない。

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Posted by ブクログ 2018年01月31日

今でいうストーカー気質のある元教師の物語。幻想を抱いたり、ことあるごとに過去を回想したり、危険な行動を取る銀平を始め、登場人物も作風も不気味である。

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Posted by ブクログ 2017年10月14日

ストーカー気質の男の話で、ストーリー自体はさほど面白みは感じなかった。川端康成氏にこのような作品があったことに今更驚いた。

ただ、この主人公の男の内面からの描写中心で、その思考によって様々な場面へとステージを変えていく。そのせいか支離滅裂な感じを受けたが、今までに読んだことの無い独特な感覚であった...続きを読む

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Posted by ブクログ 2015年06月28日

主人公・銀平は美しい女を見るとすぐ追いかけてしまう…
これは母性に飢えた男が、精錬された少女に救済をもとめるストーカー小説である。

ニュウス、ストリイトガアル、オウバアコオト、などこの時代特有の表記がかわいらし。
銀平がストーカーしてきた女のエピソードがくるくる転換する文体も引き込まれる。
解説に...続きを読むもあるが、これは夢の様なお話である。
なんというか全体的にふわふわと現実味がない。

伊豆の踊子も雪国も読んだことないけれど
川端康成って哀愁ただようひねくれ者なのかな、とおもった。
表紙の色のようなみずうみを想像しながら読んだ。

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Posted by ブクログ 2014年09月08日

時間軸が行ったり来たり何処かへ吹っ飛んだりで混乱しつつ、倒錯的身勝手な主人公の思考回路も美しい言葉で綴られると…アリかな…と認めがちな気持ちに?最終幕の心情には考えてしまう。

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Posted by ブクログ 2014年09月01日

一見すると屈折したエロチズムを感じるが、瑞々しく描かれている。歪みは随所にあるが、最後の部分はかなり効果的でかつ、うまい。谷崎潤一郎といい、男の性を見事に描いている。

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Posted by ブクログ 2014年04月29日

綺麗な女を尾けてしまう銀平は、かつて高校教師だったものの、久子という生徒と恋仲になったことが露呈し、教師をクビになってしまう。

ある時彼が女を尾けていたら、ハンドバッグを投げつけられ、中に入っていた20万円をそのままもらい、怖くなって逃げているところから始まるけれど…
その女は老人の愛人であり、尾...続きを読むけられていることに対して悪い気がしない。

また、別の時に銀平は町枝という少女を尾け、町枝からも、そのボーイフレンドからも気味悪がられる。

…銀平がこどもの時に好きだったやよいという従姉妹や、醜い父親が変死して、美しい母親のことをやよいと話しているのを思い出すところ、しばしば久子を思い出しているところ、銀平の足が猿のように醜いという描写など…現代のストーカーのような状況がただでさえ嫌なのに、さらに嫌らしさというか、醜さが際立った。

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