【感想・ネタバレ】山の音のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年06月03日

 そこはかとなく漂う老いと死の予感を、行間から立ち昇らせる文章。「悲しい」ものをただ「悲しい」と書かれても「ああそうですか」となり、野暮ったくて仕方ないですし、過剰に難解であったり、くどくど書かれても想像を働かせる余地がなくなって困ります。
 その点、簡素な文で、心情や情景を掬い上げる著者の筆運びは...続きを読む、到底凡人になしえる芸当ではなく、閑寂の境地すら窺わせます。
 
 終戦直後の昭和20年代後半の鎌倉。深夜ふと響いてくる「山の音」を死の予告と恐れながら、尾形信吾(62)の胸には昔憧れた人の美しいイメージが消えない。同居している息子の嫁・菊子の可憐な姿に若々しい恋心を揺さぶられ…。

 どこにでもありそうな、家庭の風景。劇的な展開が主題をなしているわけではありませんが、忍び来る死への恐怖や、嫁・菊子への、道ならぬ恋慕が、それとは言わずに描出されています。老妻・保子や、愛人と不倫する奔放な息子・修一、若く美しい嫁の菊子、夫のもとから出戻った娘・房子たちが抱えるもの悲しさも、言葉の端々や、ちょっとした動作から、陰翳ぶかく捉え、読者に得も言われぬ感情を喚起させます。

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Posted by ブクログ 2022年12月22日

大した出来事は起こらないのにずっと読めてしまう文章。情景が頭の中で細部まで再現される。川端康成は天才だな。

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Posted by ブクログ 2022年09月05日


個人的康成ナンバーワン。
過度な描写を省きに省いたミニマルの極地。
風景・心理・説明できない情緒が流れまくる。作者がよく使う短く区切った掌編名も良い。
根底にあるのは男尊女卑だが、ただ作品の持つ良さのみを評価したい。

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Posted by ブクログ 2021年07月29日

深夜ふと響いてくる山の音を死の予告と恐れながら、信吾の胸には昔あこがれた人の美しいイメージが消えない。息子の嫁の可憐な姿に若々しい恋心をゆさぶられるという老人のくすんだ心境を地模様として、老妻、息子、嫁、出戻りの娘たちの心理的葛藤を影に、日本の家の名状しがたい悲しさが、感情の微細なひだに至るまで巧み...続きを読むに描き出されている。戦後文学の最高峰に位する名作である。川端康成さんがこんなにがっつり家族ものを書いているとは知らなかった。 年齢は六十代くらいの信吾は妻の保子の姉を好きだった気持ちから、妻を見ては時々思い出したり、嫁の菊子にほのかに可愛らしさを感じたり。 この主人公、いやもうすでにこの小説自体が、妻の保子に関する記述が少ない。数少ない部分を見ると、保子はユニークで、いろんなことに知識も深く、家族への愛情も深く、とても素敵な女性なのだが、信吾は妻をほとんど見ていない。どうして戦後の女性の妊娠を扱ったプロットって互いに似てくるのでしょうね。蛇の卵や聖少女のイメージの濫用とか太宰治『斜陽』にそっくりだし、その『斜陽』を介して、家のゆっくりとした崩壊が書かれてあるところは三島由紀夫『美しい星』に似ている。それらを貫くのは「処女懐胎」とテーマと、こじらせた男性性のテーマです。単調とは言えば単調ですが、現在まで続く何かしらの「型」を感じさせます。更に信吾の恋愛観の根底には妻・保子の姉、若くして亡くなった美しい女性への憧憬がある。息子・修一、その姉・房子ともに夫婦関係は破綻しており(修一の場合は菊子の忍従により辛うじて保たれている)、それを仕方のないようにおろおろと見ている保子の存在も、日本の主婦の一つの典型でした。中盤以降、日常生活に戦争の影が落ち続けるが、解説に引かれる川端の言葉「私は戦後の世相なるもの、風俗なるものを信じない」が全てなのだろう。本作と時代を同じくする大岡昇平の武蔵野夫人でも戦後に家族関係の法律が激変した旨を登場人物に語らせており、当時の文化人の一大関心事だったことがうかがえる。また鎌倉と武蔵野の違いはあれど、両作品とも自然描写が素晴らしいと感じた。一族三世帯、英子や絹子など合わせると実に多くの人間が出てくるのだが全ての人物を人間として書けていてすごいと思った。簡潔にまとめると老いを感じ始めた男のお話。どんな意味を象徴しているのかを考えながら読む小説も楽しい。家という形の崩壊の話なのだろうか。家族を作っても妻の亡くなった姉を忘れられず、本当の心はここにあらずな男は、夫、父としての役割も果たしておらず、同居する息子は外に女を作り、その妻はプライドから堕胎を選ぶ。戦争で価値観が一変してしまった故の歪みなのか、隠している人間の残酷性なのか、なかなか乱れている。

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Posted by ブクログ 2021年03月29日

かつてそれが当たり前だと思われていた家族像が瓦解してゆく様と主人公である信吾の死の予感、彼が睡眠中に見る数々の夢が折り重なった本作品はある時代の終焉を告げているかのようです。息子の嫁である可憐な菊子の存在によって、信吾が今でも忘れられない、昔憧れていた美しい女性のイメージが幾度も喚起され、彼女の面影...続きを読むや美しさを実の娘、妻、孫にまで願望のようにふと求める彼はとても残酷に思えました。信吾は己の内にあるアニマを求めていたのでしょう。老醜という言葉が度々登場しますが、それは信吾をさして言っているというよりも、川端からみた世の中がそう見えたのかもしれません。全編にわたって薄らと不吉な死の影がゆらめいていますが、終わりの方で信吾が口にする「自由」という言葉に、複雑な事情を抱えて一つ屋根の下で暮らしている家族の新たな門出、旧来の家族像の崩壊を予感させます。移り変わり、終わりゆく一つの時代を静謐な悲しみの目で見送る川端の瞳が見えるようです。

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Posted by ブクログ 2021年03月02日

『山の音』は、日本の家庭の複雑な人間の心情を巧みな表現で描き出しています。

主人公、信吾の悲しみは、死の予告とも感じられる山の音を聞くことに始まる。死に恐怖しながら老境に至りより鮮明に美の観念に傾倒してゆく。

美しさを愛するが故に、信吾の不幸せがあるとも思われ悩ましいところでもあります。

信吾...続きを読むの想いは、老妻の美しい姉の面影と、若く美しい息子の嫁への恋心に揺れる。
対して、器量の悪い出戻りの娘を不憫と感じながらも、実の娘より若く愛らしい嫁を可愛がる。
愛人をつくる美男の息子。信吾もあきれる程の非情。

様々な人間模様のなかで信吾は、親の生涯の成功か失敗かは、子供の結婚の成功か失敗かにもよると言って奔走します。

繊細な心理を美しい自然の描写に昇華させた、味わい深い趣のある物語でした。

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Posted by ブクログ 2020年11月06日

草木への心象描写は作者の自然美に対する精神性が垣間見れた。まさに四季に寄り添う家族の肖象があった。
初老の男が亡き者の美しい面影を義娘へ投影し、淡い恋慕に戸惑うのだが...死を目前にしても迷いがあり、侘び寂びがあると「山の音」が囁きに聞こえた...

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Posted by ブクログ 2019年01月05日

昭和のどこにでもある二世帯住居家族の物語。浮気、出戻りなどいろんな事件が起きる。老化を実感しはじめている60代の老主人はそれらにおろおろとしながら日々を過ごしていく。文体は淡々としているのですが、登場人物の細かな感情が、季節の風景や小物たちを絶妙に使いながら、見事に描かれているのがすごいところ。さす...続きを読むがの文豪の名作。

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Posted by ブクログ 2017年10月09日

海外の小説ばかり読んでいたので、久しぶりに日本の小説をと思い、読み始めた。
明快で論理だてて語られることが多い海外の小説と比べて、この作品はとにかく、行間の妙、とでも言うべきか、風景や会話などを通して、人物の心情が巧みに、繊細に描かれている。決して直接的に語られることはないが、読みながら場面をイメー...続きを読むジすれば、すっと入ってくる。さすが川端、と言うのも憚れるぐらいの名作だと思う。

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Posted by ブクログ 2017年01月08日

老いを感じる今日この頃の主人公の心境が淡々とつづられている作品。
しかしまあ、息子は美人の妻を放っておいて浮気する、娘は出戻りで帰ってくるなど家族を巡る事件は多発。主人公にとっての癒しは息子の嫁。嫁を見ていると若かりし頃の初恋を思い出すのでしょう。
昔の家族の形ってこうなんだと感じる一方で、それを鋭...続きを読むく描く川端康成がすごいと思う。

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Posted by ブクログ 2014年12月31日

初めての川端康成。老いと男女がテーマであるが、燃え上がるようなものではなくて、主人公の老いを描写しながら、それを取り巻く環境と関係の中で男女を描く。人生をきりもみしながら進む中で、灰汁のように浮かび縁にたまった感情を救い上げたような、とってもセンシティブな小説。淡々と進む、主人公の感情を中心とした物...続きを読む語の展開だが、山も谷もない。しかし人間そのものをよく描いている傑作であると思う。山の音とはいったい何だったんだろうか。老いとほのかな恋慕の間のギャップがある。それはかすかな低音を響かせる大きな穴のようだ。だが目立ちはしない、自身の事情でありながらも自身でも気づかぬほどに目立たない。山の音は虚しさをたたえている。焦りをたたえている。
 主人公はよく夢を見る。老いの現れであろうか。ネクタイの結び方を忘れた、いろいろして思い出した、というところだけ恣意的なものを感じ、違和感があった。それ以外は素晴らしかった。

14/12/30

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Posted by ブクログ 2014年10月28日

川端康成の作品の中で特に一番大好きな話。
信吾の菊子への感情については、色恋の印象無しで読んだ。
舅から嫁への愛情、泣ける。

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Posted by ブクログ 2023年01月16日

後ちょっとで著作権フリーになるところだったけど、法改正で青空文庫化が大きく遅れ、読まずに待っていた三島、川端、内田百閒と言ったところを今更に入手、少しずつ読んでます。
三島由紀夫も川端康成も文章が美しく染みますが、特に誰かが殺される訳ではありません笑、戦後の時代の家族間の心情が細やかに伝わる物語です...続きを読む
国語の試験問題をたくさん作れそうなポイントがあって色々と考えさせられる。もちろん自分では気づけるわけはないのだけど、既にあちこちで公開されているので、考察を知るのも楽しいです。
繰り返し読み味わう愉しさを教えてくれる作品ということだと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年10月21日

【注意・川端の無垢幻想に半ば共感するアラフォー男性による、暴言も込みの、ただの感想です】

全16章で、章の中は4,5分割されている。
この佇まいは、綺麗。
解説で山本健吉が、雑誌システムに依存しながら書かざるを得なかった長編、と寄せており、その成立過程も込みで味わえた。

・連載は1949年から1...続きを読む954年にかけてだが、舞台は1949年から1950年にかけてなので、2022年現在から見ると、ほぼ70年前の小説。しかも視点人物は62歳くらい。当時1899年生まれの川端が、10歳くらい年上を想定して描いたので、1890年くらいの生まれの人物に寄り添う小説なのだ。
・一言でいえば、岩明均「ヒストリエ」のキーワード「文化がちが~う!」を前提に読まなければならない小説ということ。

・第2次世界大戦……、水木しげるは戦地に行ったが手塚治虫は行かなかった、三島由紀夫や中井英夫や澁澤龍彦は青年だった、宮崎駿や富野由悠季はほんの少年だった、そんな時期に、作中最も「ダメ」な息子の修一は、水木しげると同じく戦地に行き、父に殺したかと問われて、自分が撃った弾が当たっていたら敵は死んだでしょうという……トラウマゆえメカケへのサディズム?
・戦争未亡人の存在。戦地から帰って、父の会社に寄生しつつ、戦争未亡人にサディスティックな性を強要しながらも、妻を唯一の相手としない、刹那主義? 正直いって修一ダメやん、と思うが、当時の読者の感じ方はまた違ったのかもしれない。
・さらにいえば当時の読者といっても老若男女あるので、受けとり方は一様ではなかったろう。

・と、息子にまずフォーカスを当ててしまったが、もちろん主眼は1890年くらいに生まれた、当時62歳の、引退直前の老人。
・今風にわざと露悪的にいえば、ジジイが想像する夢ハーレム小説(ラノベ風タイトル案「息子の処女嫁が同居することになったけど彼女えげつないフケセンでした、どうしましょう!」)。処女信仰のある世代だし、作者自身の無垢幻想を代理する視点人物でありながら、息子とセックスしてヨガっている矯正が聞こえてくるひとつ屋根の下にあるにもかかわらず、義娘の純潔を(あり得ないことながら)夢見ていたら、妊娠、その上自ら堕胎手術し、それでも義父たる自分へ擦り寄ってくる……こんな「苦しいハーレム」って、あり?
・いわば、純潔にしか思えない処女ビッチ風のアイドルが隣室で毎晩嬌声を上げるその声で自分を慕ってデレてくるのを庇っていたのにも関わらず「公式」から当社所属アイドルがファンとの不適切なつながりを持っていたので解雇しましたと公式HPに発表されたというのに、そのアイドルがあなただけ愛したいのに状況がそれを許さないんですと媚びてくるような状況に置かれたら、彼女が頬を赤らめるだけで(菊子頬赤らめすぎ問題!)落ちてしまうファンジジイに、自分を共感させながら読まなければならない小説なのだ……やっぱり、文化が違う!
・新聞への言及が多いので、新聞連載かしらんと思ったが、雑誌連載だった。義理の娘が毎朝寝床に新聞を届けてくれたり、それを待てず自ら取りに行ったりする辺り、なんだかリアルだなと読んで感じた。邪推するに、川端自身が養女に迎えた政子との生活感覚を描いたのではないか。
・新聞言及だけでなく時事ネタが多いなと感じた。年齢の数え方が満年齢から数えへ変わったとか、電気剃刀という新しい文明の利器、とか、電気冷蔵庫とか。もっと踏み込んで筋と関わる時事ネタといえば、戦後施行された、優生保護法による堕胎オッケーという法律。太宰治と村上春樹の断絶がこの法律にあると、斎藤美奈子や石原千秋が言っていた気がするが、その前身的作品だと感じた。
・堕胎について、登場人物全員が、時差なく把握するあたり、ご都合主義だなと感じた。劇的に考えれば姑あたりがえげつない行動を起こしそうなものだが、そういう想像すら、ポストモダン世代が行うマンガチックな妄想と言われるかもしれない。
・信吾、よく夢を見る……これって、不眠症だった川端の生理に根ざしたものかもしれない、と思った。川端の自死、解釈は様々にあろうが、不眠は一要因かもしれない。
・信吾が、ネクタイの結び方を忘れた、という終盤の挿話が、印象的。40年毎朝行ってきたことができなくなるって、恐怖。しかしこの場でただひとりで驚くのではなく、息子の嫁や自分の妻に構ってもらった挙句(にもかかわらず)、すでに死んだ妻の姉がネクタイを結んでくれた記憶を、大事に大事に思い出すあたり、……ただの老いでは、ない。ひたすら美的なものを美しいと言い、身内ですら器量が醜いものは醜いとしか思えない、いまふうにいえばサイコパスな気質が、作者にはあったのだろう。
・凡人に言わせれば、鬼畜! でもそれが面白い!!

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Posted by ブクログ 2021年09月18日

学生時代読んだ時には思わなかったけれど、今回再読して、老いてもなお失われない男の業を、全編通じて感じた。
信吾が、自分を妊娠させてくる心配もない、言ってしまえば戦力外なお年寄りということもあって、菊子は気楽に懐いているように思われる(そもそも夫の父だし)。
しかし、信吾は菊子に新宿御苑に待ち合わせに...続きを読む誘われて、カップルが多いのにどぎまぎしてしまう。いまだに女の美醜にめちゃくちゃ言及するし、若い娘の夢も見る。
あちこちから死の音が聞こえてきてもなお、男にはいつまでも現役の意識があるものなのかなあと思う。それとも、高校生くらいの、女子のことばかり考えていた頃に、老いて感覚が戻っていくのか。
戦後の日本の家の窮屈な暗さの中で、それは良くも悪くも、男の支えだったのだろう。

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Posted by ブクログ 2021年08月06日

戦後の家族像。
老いを感じ始めた真吾の背徳的な愛情が、淡々とだけれどじょうずに描かれている。妻保子の姉への郷愁や息子の嫁菊子への仄かな想いは、誰しも少なからず持ち合わせているような小さな秘密の感情。
息子修一の少し身勝手なところや、姉房子のうらぶれたところ。破綻した夫婦関係のなかで、それでも家族に囲...続きを読むまれ家族を求めて生きているようだ。
真吾の妻保子の、でしゃばりすぎず、それでも我慢の中で愚痴をこぼしたりする様はとても日本っぽいなぁと感じた。
再読必至本。

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Posted by ブクログ 2021年03月17日

日常生活があんなに淡々と描かれていながらも、そこに大小の波が打ち寄せては引いていって気持ちが揺り動かされる、そんな感覚を覚えた。
戦後文学だからか、家族のあり方が現代とは違っていて、共有できる感覚があまりない。けれど、主人公真吾の老いに対する恐れや、息子の妻と妻の姉へ抱く自分の欲望への羞恥だとか、そ...続きを読むういうものをまざまざと浮かび上がらせて、読者に読ませて感覚を共有させる手腕が、さすがだあと思った。
説明的な文章はそんなにないのに、出てくる登場人物それぞれが肉厚で立体的で、川端康成はきっと己自身と自分の文学に真っ向から向き合い続けた人なんだろうなと感じた。とても洗練された文章だった。
物語自体は中々に生々しくて、全く爽やかではないのに、読後感が清々しいのは、美しい日本語だったからだろうか。さらりとこんなものを読ませるなんて、凄いな。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年02月17日

身近な自然の移り変わりの中で、
微妙にすれ違う家族の心。

現代よりもゆったりとした、
何気ない日常生活の中で、
義父と嫁の間で育まれる愛。

ハラハラ・ドキドキするような展開はないけれど、
モヤモヤっと、心を動かされ、
気づくと感情移入している自分がいる。

不思議な読後感。

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Posted by ブクログ 2020年12月01日

はじめての川端康成。2002年ノルウェーブッククラブ「世界最高の文学100冊」源氏物語と共に日本から選ばれた。戦後まもなく鎌倉を舞台に、家長の60才過ぎの目を通して妻の亡くなった姉への淡い恋心が若い嫁に蘇ったり揺れ動く家族を情景豊かに描いてます。

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Posted by ブクログ 2020年05月10日

中産階級の日本の古い家庭の長である主人公の敬語が,死期が遠く近づいた音を聞いて,それが古い記憶の水たまりにぽちゃんと落ち,池の底に溜まっていた義姉への古い遠い憧れが水面に浮かび上がることで見えるようになった,菊子や英子を中心とした若い女性とのその関連が波紋のように広がっていく様は,きっと僕も肉体が年...続きを読む老いて,自分の老い先を嘆く頃には,それを感じる時が来るのでしょうかと,しみじみと読みました。
心の感じたことの襞というか,そいういったものがすごく丁寧に描写されていて、川端康成先生の他作品も読み進めてみたいと思う。

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Posted by ブクログ 2019年11月21日

日本初のノーベル文学賞作家、でも、恥ずかしながらきちんと読んだことがなかったのです。音、会話、登場人物の反応描写、風景描写と其れへの人の感じ方、さらに登場人物間の感じ方の差の描写。何らか表そうとする対象への表現方法のバリエーション、組み合わせの豊富さに驚きます。各章のタイトルも素敵です。小学生の時に...続きを読むこの本に感動したと言う方にお会いしたことを切掛に読みましたの。この内容に小学生で感動できたその方に、またそれがあり得そうな人でもあり、驚きます。

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Posted by ブクログ 2019年10月14日

・終戦後の壊れゆく家族の話。
・た が多用されててすごく読みにくいし入ってこない。
・1章一章が独立した短編の形でいろんな雑誌に断片的に発表されたもの。
・主人公の尾形信吾はネクタイの結びかたを急に忘れたり女中の名前を、忘れたりしている老人。息子の嫁の菊子に昔の恋を重ね合わせもう想してる。菊子もまん...続きを読むざらでない。
・題の山の音ってどんなんだろう。
・読めるのか果てしない気がしてたがなんとか。読書会ありがたや。

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Posted by ブクログ 2023年02月05日

鎌倉に暮らす尾形信吾は、同居している息子の修一が外に女を作っているのに頭を悩ませる。そこに修一の姉・房子が子供を連れて戻ってくる。かつて妻の姉に憧れていた記憶が残る信吾は、息子の嫁・菊子と親しく接するうちに、異性への欲望が少しずつよみがえってくる。

いかにも私小説的な、日々の些事を書きつらねていく...続きを読む川端康成らしい作品。物語が大きく動くことは少ないので淡々としているが、ほぼ一文ごとに改行しているのでテンポよく読み進めることはできた。

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Posted by ブクログ 2022年06月18日

菊子がとても魅力的に描写されていた。全体的には結局何を言いたいのか分からない部分もあったが、これが純文学なのだろう。

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Posted by ブクログ 2021年04月04日

川端康成、と聞くとノーベル文学賞受賞作家というイメージが先行するが実際に作品を読んでみると青春の切なさを描いたと思えばなんとも前衛的でエロティックな作品もある。
しかしこの「山の音」は正しくノーベル文学賞受賞作家というイメージに嵌まった作品のように思える。
戦後という私たちからは遠くなってしまった舞...続きを読む台において息子や娘からの生の暴力(私からは彼等の起こす騒動が老人に対してのひどい暴力に思えた)と友人たちからもたらされる死の足音をあるがままに受け入れ思案する主人公は少し遠い存在に思えるが人間とはそういうものだ、と思わずにはいられない。
また、私はこの作品において主人公の息子と娘をなんてだらしなくみっともないのだろうとひどく嫌悪したが主人公に対してはさほど嫌悪感や憤りを感じなかったのが奇妙だった。

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Posted by ブクログ 2020年12月01日

作者の思考・推測が面白かった。修一が、菊子は自由だと言ったが、それが信吾が菊子を自由にしてやれという意味を含んでいたとは、、、。私もよく人の真意を探ってしまうが、信吾に比べたらかわいいもんだ。信吾は、自意識過剰とも言えるし、観察力が鋭いとも言えるし、老人はこんなこと考えているのか、、、。日本文学はい...続きを読むいな。

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Posted by ブクログ 2019年09月08日

私は家族を持たない独身です。主人公が60ぐらいの孫を持つ男性なので、男性目線の嫁を想う行動や心情が新鮮でした。いやらしくもなく、情景たっぷりに描写されている文章が良かったです。昔の中流階級の二世帯家族がこんな事を考えていたのかと理解できました。普段ほとんど接触する事のないこの物語はフィクションですが...続きを読む、これからの私の人生の糧になります。
男性ってこんな繊細だったんですね…好きだった人を嫁に重ねて、不憫に想う姿は男性の他人に見せたくない恋心なのでしょう。はたから聞いたら気持ち悪いですが、それを感じさせない様に書いている所が川端康成らしいです。
ただ物語として、日常を描きすぎていて今の私には刺激が少ない様に感じました笑

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Posted by ブクログ 2018年03月30日

老人が自己実現に奔走する話。後先無い死ぬだけの身でありながら、長年の未練を晴らすべく、程のいい正義をこしらえて義理の娘に愛を向ける。しかも家族は乱れすぎてて手もつけられない状況にあり、現実から逃げる意味合いもあったのかもしれない。例え老いようがやっぱり誰かに認められ、愛されたい。そんなテーマに思えた...続きを読む

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Posted by ブクログ 2016年12月30日

川端康成の作品は初めて読んだけど、登場人物のなんとも言えない微妙な心情が読みやすい文章の中で表現されていてさすがだなと思った。

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Posted by ブクログ 2015年02月06日

その他の著作と同様に淡々と進みこれがどうなるんだろう…と、ながらダラダラ読みしていたらしっぺ返しをくらう。夢のくだりやお面のくだりが印象的。

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