あらすじ
シーナ、78歳。よろよろと生還す。
後遺症、進む老い、進まない原稿、募る一方の失踪願望……
サイアクときどきサイコウの、ある1年の記録。
新型コロナ感染後、生死をさまよい退院するも、しつこい後遺症に悩まされる日々。旅には出られず、友と生ビールは遠く、自らと向き合えば今までと何かが違う――。
若き頃から抱える“失踪への衝動”を携えてシーナが放つ、パンデミック下の1年の記録。
〈WEB-MAGAZINE集英社 学芸の森〉で好評連載中の「失踪願望。」、2021年4月~2022年6月の日記に加え、壮絶書き下ろし「新型コロナ感染記」、盟友・野田知佑氏ら、自らの人生に大きな影響を与えた男たちへ捧ぐ「三人の兄たち」の2編を収録。
「自分の日記なのに興味深い……浦島太郎的な気分である」
【日記の見出しより】
カニカマ、骨折、コルセット 海苔弁、コロナ、Xデー 禁酒、漂流、金メダル 相棒、オアシス、後遺症 返納、お帰り、おとなり座 衆愚、減薬、初投票 講演、ブンガク、紅葉狩り 族長、満月、ガイコツテレビ 夫婦、胃カメラ、あすなろ忌 冬ウツ、貧困、ウクライナ SF、寅さん、失踪名人 通院、タケノコ、春の海 東北、賢治、初シュジュツ アオムシ、生還、誕生日
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
精神的不調、アルコール依存症、加齢の影響で、冒険心や行動力も衰えて来ているシーナ。お孫さんや奥さんの一枝さん、旧友の話がやたらと出て来て微笑ましいが、世界が狭くなって来ているようで昔からのファンとしては寂しい気もする。偏狭さが増しているように感じるのは自分だけだろうか...。
Posted by ブクログ
椎名誠氏ほど擬音が似合う作家はいないと思い
ます。
それもポジティブな擬音語です。
どこでもドカドカと突き進み、何でもワシワシ
と食べ、酒はグビグビとあおる。
しかし彼に2022年で78歳の後期高齢者なので
す。しかもコロナにもかかり、入院してしまい
ました。
救急車で運ばれる椎名氏を遠巻きに見ていた家
族も「これが最後かも」と思ったほどだったそ
うです。
そう、彼には全く似合わない擬音語「ヨレヨレ」
なのでがこの本で書かれているのです。
本書のテーマである失踪願望については、コロ
ナ闘病などがあったためか、次回作以降に続く
様ですが、特徴として際立ったのが彼の妻であ
る一枝さんへの感謝の言葉です。
過去の作品では「我がツマ」みたいな記述で、
伝えるメッセージもあっさりしたものでしたが、
本書では言葉を尽くして感謝を述べています。
どうにも「らしくない」椎名氏が散見されます
が、まあ年を取ればそういうものだろうなあ、
と納得してしまう一冊です。
Posted by ブクログ
椎名誠さんも78歳になってしまったのか…とちょっとたじろいでしまった。
元気で世界中を旅して、キャンプに釣りに、ビールをぐいぐい飲んで、彼のまわりにはいつも気持ちのいい仲間が集っていて…
そんなイメージがずっとあった人だけれど、少し前から、例えば鬱のようなものを抱えていたり、死について語ってみたり、そういう"負"、弱い面も見せるようになってきたなと感じてはいたが。
今回は、怪我や体調を崩してしまった果てに、とうとうコロナウィルスに感染してしまった経緯等ついて書かれている。
感染したことを全く知らなかったので驚いた。よく生還されたことと思う。基礎体力はもちろんたけれど、運の良さもあったのだろう。
そして何よりも奥様の一枝(いちえ)さんの力が大きい。本人も感じているようだが、私の好きな"椎名誠"は一枝さんが支え作ってくれていたのだなとつくづく思った。
昨年亡くなった野田知佑さんのことについてもふれてあり、お二人がキャンプしたりしていた頃のエッセイを思い出して懐かしくもあった。
コロナの後遺症は完全に抜けきってはいないようだが、また新しい雑魚釣り隊のエッセイが読める日を期待したい。
Posted by ブクログ
奥様への愛が伝わる1冊でした。でもだったらシーナさん、もっとカラダを大事にして欲しいなあ。
コロナ罹患の記述が生々しくて、帯の「シーナ、よろよろと生還す」というコトバが大げさではなかった・・・
本当に危ない状態だったから、こうして本を執筆出版するまで回復して心底ホッとしました。
あ、それと、野田知佑さんが亡くなられたとき、追悼文がほとんど出ないままだったので、なんとなくもやもやしていました。
本書には、彼とのある出来事についてが詳細に書かれており、出来事の内容はともかく、すこしもやもやが晴れました。
Posted by ブクログ
椎名さんの若い頃からの旅日記、写真展、映画制作やトークショーまで、色々読んだり参加したりしてきました。 世界中旅する様子、面白い友人関係等楽しかったなぁ。今回の失踪願望、いつもその時その時の自分を書かれていて、今の椎名さんはこうなんだなと。この先も元気で、その時の椎名さんを綴ってほしいなと思います。
Posted by ブクログ
30代に探検記や岳物語を読んでました。
何十年ぶりかの椎名さん作品で、幕張少年マサイ族からのつながりで読みました。
人生初めてのお酒がこんなジイジと飲めるお孫さんが羨ましいのと椎名さんがうらやましいです。
奥様も素敵です。
読んで良かったです。
追記
沢野さんのジジイの台所も参考に実践してます。
本当に素敵な仲間たちですね。
もちろん野田さんも。
Posted by ブクログ
もう30年以上、椎名誠氏に憧れている。
・自由
・明るい
・アクティブ
・おもしろい
なのに
・知的
実際に自分の生き方に大きく影響を与えた人だ。
だが、ここ10年くらいの著作は暗い内容が多くて、
読んでいるこちらまで「歳を取ったなぁ」と暗くなっていた。
本作は比較的明るい。
老いを表現する部分もあるのだが、
全盛期を振り返ったり、
友人たちに本心から感謝を伝えている記述も多い。
特に印象に残ったのが、「奥さんへの感謝・尊敬」と「野田知佑氏との想い出」。
自分とは正反対の性格の奥さんに対して素直な気持ちを綴っている。
そして、個人的に椎名氏と同様に憧れ、昨年亡くなってしまった野田氏の今だから書けるような裏話も、「こんなにたくさん!」と思えるほど披露している。
あれだけ仲が良かった二人なのに、亡くなったときにコメントを出さないので違和感があった。だから余計にうれしい。おそらく決裂の原因となったであろう出来事もくわしく知れてよかった。
そんな感じで、久しぶりに読後感の爽やかな本でした。
ただし、コロナ感染部分は結構壮絶です。
あと、酒の飲み方が未だに尋常じゃない。
昔は「豪快」と思えたが、お爺ちゃんとなった今は危険なだけ。
ファンとしては酒量を減らして、バカ話の執筆量を増やしてほしい。
Posted by ブクログ
【きっかけ・目的】
また、椎名さんの本を読みたいなぁと、やはり盟友目黒考二さんが亡くなった前後の動向を知りたかったのが一番の動機だ。
【感想】
帯にもあるが、「よろよろと生還す」ということなんだろう。まさしく文章もそう。「よろよろ」とという表現が加齢による見えないものへの抗いも相まっておもしろかなしずむ的になっている。
作家シーナのコロナ禍の日常が描かれている。緊急事態宣言下でも不眠症でもやはり飲む。そして書く。さらに仲間とつるむ。そういう日常だ。失踪願望が主眼になっているが、アウトドアのように外で遊びたい欲望の裏返しかとも思う。
当時自分がどう生活していたという振り返りもかねて見たがただひたすら目の前のことに一生懸命で、、単に働いていただけのような気がする。
失踪願望の日記部分は(残念ながら)さておき、3人の兄と闘病記はさすがはコロナ禍における考察も交え、私小説風に仕上がっている。
【終わりに】
新宿赤マントシリーズとはまた違う日々の諸々のことがらが書いてある。さらにこの連載は集英社文芸の森で行われているのが今らしい。紙上ではこの内容では難しいか元思った。なんだろうか往年の椎名誠ファンならではの連載ではないだろうか。
Posted by ブクログ
手にとった表紙に、はっと胸をつかれた。まっさおな空をバックに草原にすわる椎名さん。サングラス姿はまちがいなくカッコイイのだけど、それははっきりカッコイイ「おじいさん」なのだった。
自分の心の中には、いつまでもパワフルなシーナ隊長の姿があるのだが、現実の椎名さんは当然年齢を重ねている。愛着のあった車を手放し、免許も返納したという。腰痛と不眠症をはじめとする心身の不調が続く。読み進めながら、ウーンと唸ってしまった。一昨年にはコロナに感染。救急搬送されたときご家族は最悪の事態を覚悟されたそうだ。その後の後遺症らしき症状も軽いものではないようで、読んでいてつらくなることもしばしば。
救いは、椎名さんが今になって訪れた静かな生活(コロナ禍のせいではあるけれど)を喜んでいることだ。妻の一枝さんと二人、時には息子の岳さんやお孫さんたちとともに、思うにまかせぬことは多々ありながらも、穏やかに過ぎる日々のあれこれが日記の形で綴られている。
そうそう、今回は妻の一枝さんについてふれた箇所の多さが印象的だった。一枝さんがずっと続けてきた社会的な活動への敬意や、日常生活での気遣いへの感謝の言葉が、これまでになくストレートに語られていて、そうした面でも椎名さんの変化を感じたのだった。
2020年6月13日の日記が忘れがたい余韻を残す。14日の誕生日を前にして「息子ファミリーが夕食後祝の宴をしてくれた」とある。「その日ぼくはすっかり七八歳のじいちゃんになって笑っていた」「それなりにいい日だった」と書いた後、こう続けている。
「思えばいつの間にか七八歳になってしまった。六〇歳のときも七〇歳のときも今回も『こんなもんなのか』という気持ちだった。ぼくの想像していた七八歳のぼくはまだこの家に来る駅からの坂の途中で、団欒をもとめてそこらの路地をトボトボ歩いているところのような気がした。まっすぐ行くんだよ。ころぶなよ、とぼくはうしろから自分に声をかけているのだ。」
ここに込められた椎名さんの心情がどんなものなのか、はっきりとはわからない。それでも、なんとも言いようのない寂寥感がせまってきて、胸がつまってしまう。
そして。その次の日には「目黒考二と二年ぶりに会って話をした」とあるのだった。「元気そうなんてもんじゃない」と椎名さんを呆れさせた声のデカイ目黒さん。先日の訃報はあまりにも突然だった。「本の雑誌」は目黒さんなしには生まれなかったであろうし、その功績ははかりしれないと思うが、私にとっての目黒さんはずっと「釜焚きメグロ」だった。隊長の心中は察するにあまりある。
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椎名さんもう本当に老人なんだなと実感しました。78歳、もはや会っても気が付かないかもしれません。
しかしそれでもこうやって本を出してくれることに感謝です。骨折やコロナ感染などかなりハラハラしますが、あれだけ頑強を極めた人であっても時間には敵わないんですね。それをリアルタイムで教えてくれる本です。
そしてこの本は日記なので、去年2022年3月27日にお亡くなりになった、僕の人生を変えた最大の人物、野田知佑さんの他界の事も書かれていました。ショッキングなシーンも描かれていますが、2人関係が描かれていて読んでよかった。
2人が疎遠になって悲しいですが、人生いろいろありますよね。
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シーナさん、老いてゆく。
30〜40代の頃の、旅もエッセイもバリバリだったイメージが強すぎて、もう何十年も読んでいるのだから段々弱いところを隠せなくなったり、隠すつもりもなくなっていたり、そういうところを知っているはずなのに、改めてショックを受けてしまう。
それでも、普通の人なら家族にしか見せない「老いてゆく過程」を正直に自分の手で書き綴ってくれるシーナさんがやっぱり好きなのだ。
どうか一日でも長く、ちべたいビールをぐびぐび飲んで、俺はバカだなぁ、と書き続けてほしい。
Posted by ブクログ
椎名さんの本で初めて読んだのは「岳物語」だったはず。その後、「怪しい探検隊」シリーズや「哀愁の街に霧が降るのだ」(本にサインしてもらったなぁ)のような私小説系シリーズ、数々のエッセイを読んで、大ファンになった。強くてはにかみ屋で腕に覚えがある分野があって自然と仲間が集まってくる、私の理想のオトコの原型になった人。最近は動向を追えていない中で本書の続編の本を新聞広告を見て、先にこちらを手に取ってみた。
まずは今でもビールを始め、お酒をぐいぐい飲んでいて一安心(心配な面もあるが・・・)。でも人並みの衰えも出てきていて、まあ仕方ないよなぁと思いながら読んでいた。昔は家族のことはほとんど書いていなかったのが、本書ではたくさん出てきて、それが新鮮。私の父の3歳上の椎名さん。いつまでも元気でいてくれることが私の元気にも繋がる。
Posted by ブクログ
酒好き、旅好き、アウトドア好きの著者の一年間の日記。2021年4月から2022年6月までの日常が綴られている。
著者は2021年6月に新型コロナに罹患、一歩間違えると死の危険もあったようで、その闘病の様子が巻末に「新型コロナ感染記」として記されている。
日記には、日常の出来事や世相への独自の思い、旅先や文学、映画、飲み仲間との交流などの話題が自由奔放かつユーモラスに綴られている。だが、著者も78歳を迎え、白内障の手術を受けたり、運転免許を返納したりと進む老いを実感している。
あげくに罹患したコロナには、さすがにまいり、入院中、眠れぬ夜に聞こえてきた謎の「通りゃんせ」のメロディーに悩まされたという。
「新型コロナ感染記」では、自ら体験した重症コロナで入院した際の苦しみ、回復までの道のりが作家ならではの表現力でリアルに語られていて、かなり、のめり込んで読んだ。
また、育児や家事を任せきりで、頭が上がらぬ妻「一枝さん」を頻繁にリスペクトしながらも、彼女の忠告に反して深酒する著者には、もはや「中毒」の域に達しているのではと少しあきれてしまった。
Posted by ブクログ
椎名誠のエッセイ。前半は日記、後半はコロナ治療と知人の話。
日記を読んだが、毎日最後は酒の話ばかり。何かをやっては飲む、飲みながら話すの繰り返し。その歳でそんなに飲んで大丈夫かと心配になった。付き合いで飲んでコロナ感染してしまい、入院するはめになって、それがまたエッセイになる。
この人の本はとても面白いが、ある意味、自分の行動記録か自分史に近い感じがする。それが仕事であり、趣味であり生き甲斐なのだろう。交友関係も広く深く、楽しい人生なんだろうなと思った。とても真似できないが。
Posted by ブクログ
コロナ禍が始まった頃からのwebで連載している「失踪願望。」をまとめたものに、椎名氏が兄と慕っていた3人の人たちについて書いたものと、自身のコロナ感染日記。
亡くなった野田知佑さんを書いた文章は、犬のガクを含めて大事な人を失った悲しみが伝わってくる。
コロナ感染日記は、椎名さんの老いや弱さが垣間見え、ファンとしては悲しい。そして、一枝さんへの感謝と愛情がヒシヒシと伝わってくる。
Posted by ブクログ
シーナさんも年取るか~。
しかもコロナにかかって、大変な目にあっている。
奥さんの一枝さんの存在が何よりだが、家族としてはご苦労さまなことだと思う。
入院中の夜中の信号の「とおりゃんせ」音の謎はわからないままだが、コロナが精神にどれだけ影響をきたすのかの見本みたいに思えた。
コロナにかかった人は周囲にいるが、入院した人は一人もいないので、体験談として読ませてもらえたことは貴重。
でもね、やっぱりお酒飲み過ぎだと思いますよ、シーナさん。
お体、大切に。
Posted by ブクログ
著者のエッセイを数十年ぶり読んだ。
装丁の著者が、十数年ぶりを物語ってした。
とはいえ、自分もそのままではない(笑)
コロナ禍の中、うんうんと同意することが多いのだ。
そして、「新型コロナ感染記」感染したのはなるほど自業自得のような経緯だか、さすがそこは作家、記憶がないというもののコロナの恐ろしさを伝えてくれた。
最近は少し油断しているところもあったが、気を引き締めて感染対策、怠らぬよう。