あらすじ
ロジャー・シェリンガムが創設した「犯罪研究会」の面々は、手掛りがわずかしかなく、迷宮入り寸前の難事件に挑むことになった。被害者は、新製品という触れ込みのチョコレートを試食したベンディックス夫妻。チョコレートには毒物が仕込まれており、夫人は死亡、ベンディックスは一命を取り留めた。しかし、そのチョコレートは知人のペンファーザー卿へ送られたもので、ベンディックスはそれを譲り受けただけだったのだ。会員たちは独自に調査を重ね、自慢の頭脳を駆使した推理を、一晩ずつ披露する――。誰がこの推理合戦に勝利するのか。本格ミステリ史上に燦然と輝く、傑作長編。
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Posted by ブクログ
古典
それは原点とも読み替えられるべきほど
舞台はイギリス、ロンドン
毒入りチョコレートによる殺人事件を推理する「犯罪研究会」の6人が、ひと夜ごとに犯人とその推理を披露する。
場面はほぼ固定で、舞台を見ているような感覚でお話は進む。
各メンバーの語りは、現代の犯罪捜査で実際に用いている「プロファイリング」の原型とも思えてくるもので、しかも、その欠点である「仮説から犯人像を描いたあとは、物事をそれに基づく証拠として固執し過ぎる」という点を、見事に小説に仕立て上げている。
そしてエンディング
古典的ではあるけど(事実古典である)効果抜群で、ここまで読んできたことが報われる瞬間と出会える。
面白かった〜。
Posted by ブクログ
ずっと読んでみたかった古典の名作。
『最上階の殺人』を読んで、阿津川辰海さんの書評のおかげで「堅そうに見えて実は笑える」という印象になったアントニイ・バークリー。
犯罪研究会のメンバーが全員の前で1人ずつ推理を披露していく。
名探偵気取りで自分に酔って発するセリフや、指を突き刺して大げさなポーズで犯人を指名したり、真面目そうに見せて結構ユーモラス。
大真面目に何とも笑える結論を出してしまう人もいて、もし自分がその場にいたら絶対に笑いを堪えきれずに吹き出してしまう。
ラストもその時のみんなの顔を想像するとジワジワくる。
読んでいて三谷幸喜さん脚本の『12人の優しい日本人』を思い出した。裁判所に集められた一般人の陪審員の話で、1人1人の意見で「有罪」か「無罪」がぐらついたり、みんな真面目にやっているからこそ生まれる笑いだったりが似ている。
『12人の〜』が大好きなのでこの作品も同じように楽しかった。
杉江松恋さんの解説によると、『第二の銃声』は謎解きよりも犯人の心理を問うことをメインにしているとのこと。自分の好きな感じっぽいので次はこれを読みたい!
Posted by ブクログ
古典の名作。
紳士淑女のための限定された推理倶楽部の会員たちが、日替わりで自分の推理を述べてくので、探偵小説の醍醐味であるクライマックスが6度も楽しめる。
これはなかなか探偵小説を読む人への挑戦とも言える試みではないかな。ただ探偵役の推理を鵜呑みにするのではなく、その実証性や証拠の有用性を検証することが、冤罪や間違った推理を見破ることになる。
各探偵たちの得意げに述べる推理が楽しくて、状況証拠でしかないような根拠で推理を進めていても、そうなのかー!じゃあそいつが犯人なんだな!って毎回思ってしまうからおもしろい。
誰かに話したくなるような推理小説であると思う。
Posted by ブクログ
シンプルに見える未解決事件を、殺人研究に意気込む人々が様々に解釈・検討していくのが大筋の物語。
罪のない遊びかと思いきや、真犯人が他者に罪を着せる目論みにも繋がっていて、皆が途方に暮れる終わり方が余韻がありとても印象的でした。
ロジャーが関係者に聞き込みをしても、あまりに熱心だったからとか物を買ってくれそうだったからとかいう理由で、事実とは異なる(ロジャーの意に沿う)証言を得て喜んでいるあたり、冷笑的だけど現実ってそうだよねというか、浅薄なところもコミカルに表現していて好きだなあと思いました。
Posted by ブクログ
最初はもう読みづらくて読みづらくて読むのやめようかなと思ってしまった。
例えば今ぱっとページ開いた文章で
「つまりですね、この部屋の中でいわれたことは、虚心坦懐に、あるいはーー友人間の内輪のこととして、あるいはーーあるいは、とにかく、とがめだてはしないで聞き流すこと、というような申し合わせをしておいたほうがいいというわけです」
ぱっと読んで意味がよくわからなくない??申し合わせをしておいたほうがいいというわけ、とかなんか言い方が変にクドいので意味がすんなり頭に入ってこないんだよなぁ。聞き流してはいかがです?でいいじゃん、みたいな文章が多すぎて前半本当辛かった。
よくある英語の翻訳の、主語がやたらと長くなるの典型みたいな、文がずっと続いてた。
後半からはやっと慣れたのと登場人物が頭に入ってき始めたから一気に読めた。
この推理合戦本当面白いですね。当たり前に一人一人の意見に納得しちゃってすぐそれが犯人だと思っちゃう。
ただちょっと古くて〇〇だから女だとか男だとか言う意見は受け入れられなかったけども。
Posted by ブクログ
あれ?シュリンガム(一応主人公)ってもっとシュッとしてなかったっけ?シュリンガムだけに(いらない)
Σ(゚Д゚)
そうか!
これが、世に言う思い出補正ってやつだな!
あーわいも思い出補正で同級生とかに「そう言えばめっちゃ面白い奴いたな〜」って思われてるといいな〜
ってそっちかーい!
はい、古典ミステリーを読みまくっているNaotyさんに触発されて、ミステリーファンなら一度は読んだことあるであろう『毒入りチョコレート事件』を再読です
え?読んだことない?つか知らない?
マジか…まじかる☆タルるートくんか…(いらないって)
じゃあ「多重解決」は聞いたことあるよね
ミステリーファンなら
え?知らない?
マジか…まじかる☆タルるートくんか…(2回はほんといらない)
じゃあ、「多重解決」だけでも覚えて帰って下さい
多重解決(たじゅうかいけつ)とは、ミステリーにおいて、ひとつの事件や謎に対して複数の解決(推理)が提示される形式。(ニコニコ大百科より)
今で言うと白井智之さんなんかが得意としてる形式ですね
本作はその「多重解決」の元祖なんです
うん、もうこうなったら読まなくてもいいや
『毒入りチョコレート事件』=「多重解決」の元祖とだけ覚えてくれればいいです
で「多重解決」のミステリーを読んだら、「はは〜ん『毒入りチョコレート事件』ね」とか言っておけば
あれ?この人「ミステリー通」なんかな?って思われます
やったね!
Posted by ブクログ
杉江松恋さんの解説によると、本書(1929年)はミステリの長い歴史に於いて、後続の作家の創作意欲を掻き立て、模倣を行わせるだけの魅力を持ったマスターピースの一つなのだそうで、好き嫌いはともかく、「なるほど、これが『毒入りチョコレート事件』なのか」と、唸ることができたのは確かであった。
迷宮入り寸前の難事件に挑む「犯罪研究会」のメンバー6人は、フィールドワークを経た後、予め決められた順番によって、一夜毎に一人ずつ推理を披露していき、それに対して他の5人が意見を述べていく展開には、高尚な語り口や、自らの思い描く犯人像へ自然と持っていくような言い回しを皮肉っているように思われた中で、どうやら『多重解決』という小説のありようを読者に提示したことが、本書の最も優れた点らしい。
また、それについて、杉江さんの解説の中で興味深かったのが、『それまでのミステリにおいては、犯人は特権的な立場にあった』ことであり、私の中では「犯人は何をしたのか(トリック)」、「犯人は何を欲していたのか(動機)」という、それらを快刀乱麻を断つが如く解き明かす探偵の方こそ特権的な立場にあるのだと思っていたが、そもそも探偵以前に、その黒幕として事態を支配する人物がいないことには話にならないということは、「犯人」が物語を支配するということになるといった、逆説的な現象が発生してしまうとのこと。
そこでバークリーは、「犯人」が物語を支配せず『推理をすること』自体が特権的なものになるようにと、このような事を考えたのだろうと思われて、確かに本書の展開を見ると、6人6様の推理こそが物語の骨子であり、そこにこそ、ミステリの醍醐味があるのかもしれないと感じられたことから、それまでのミステリの決まった枠を取り払い、別の視点から提示してくれた、新たなミステリの楽しみ方と言えるのかもしれない。
また、本書への愛情と敬意を込めて書かれた、米澤穂信さんの「愚者のエンドロール」には、改めてなるほどと感じさせるものがあり、それは誰もが探偵となって推理を披露することのできる楽しさと、探偵も一人の不完全な人間なんだという、現実世界でも起こり得るようなリアリティを、稚拙さですら、振り返れば笑えるような思い出となり得る、そんな高校生の青春ものと見事に融合させたのだと、私には思われた。
これまで書いたことから、本書の特徴は、『多重解決』と『探偵の人間らしさ』が主ではあるものの、私個人の意見としては、別に探偵が人間離れしたような超然とした頭脳を持っていても、トリックが机上の空論に近いような奇異なものでも構わないと思っていて、要は物語として心動かされるものがあって、読んで良かったなと感じることができれば、それでいいのではないかと思うし、本書の多重解決にしても、読む人それぞれで、きっとこれが正解なのではと意見が分かれそうな中で、私はこれなのではないかと感じた瞬間、本書の物語としての素晴らしさも、更に際立つのではないかと感じられた。
それは探偵も含め不完全な愛すべき人間性を、人間である限り、誰しもが抱いているのであろうなと思わせるには充分なエンディングであり、この全く想像もしなかった他人の隠された顔が明るみにされた(かもしれない)時の、何とも言えない一種の脱力感のようなものは何なのだろう? しかもそれは大抵、まさかあの人がという人ばかりな点に、皆が思っていたようなままでいた方が良かったのか、そうした一面があることに却ってホッとするのか、何とも悩ましくて、思わずそっとしておいてあげたらなんて言いたくなる反面、それこそ人間らしくて嬉しいと感じたりと、そういうことを考えさせてくれるのが、良質なミステリの一つの条件なのかもしれないと思われたのは、バークリーが最も興味を持つ謎が人間性のそれであったことも、きっとあるのだと思う。
Posted by ブクログ
多重解決ものの先駆けである海外の本格ミステリー。6つの推理が展開される場面は勿論、真相を読者に委ねる構成も面白かった。ただ、古典だからなのか、やや読みにくさはあった。
Posted by ブクログ
111108さんの「偶然の審判」への言及に触発されて。
『第二の銃声』は読んだことある気がするけど、こちらは初読。
小説家、兼素人探偵ロジャー・シェリンガムが立ち上げた犯罪研究会の面々が迷宮入り寸前の事件を題材に探偵演習。
ロンドンの”レインボークラブ”の会員であるベンディックス氏の妻が、元々は別のクラブ会員ペンファーザー卿へ送られてきた毒入りチョコレートを食べ死亡した事件の真相を推理する。
一週間の間、銘々が調査し推理した結果を一夜一人ずつ全員の前で披露していくという極めて限定的空間で繰り広げられる思考実験の応酬。
ああ、これが多重解決の”型”なんだなぁと。
ところどころにまどろっこしい理屈のこね合いはあるにはあるが、各人の見せる解決のパターンの多様さや最後に用意されたオチなんかは、最初に聞かされた比較的シンプルな事件のあらましから良くここまで万華鏡的展開を作り出したなぁと感心。
「偶然の審判」でさらに別解があることにも興味深し。
Posted by ブクログ
殺人事件の研究サークルで、それぞれのメンバーが自分の推理を発表していくのですけれども、最後まで気が抜けないストーリーでした!
殺人に詳しい人々が集まるサークルって、ちょっと興味があります。設定が面白いですよね!
人気が高いのに納得★
Posted by ブクログ
「海外ミステリおすすめランキング」でよく紹介されている古典ミステリ。
ミステリというより、ミステリの形を借りたエンターテイメント作品だと思う。
多重解決で6人の人が推理を披露するが、それぞれ後出しの情報が追加されるため、読者にとってはフェアな謎解きではない。
しかし、物事を多角的に見るべきだということを教えてくれるので、これから本格ミステリを読もうとする方は読んでおいて損はない。
話は面白いといえば面白かったが、古典独特の回りくどい言い方が読みにくかった。
比喩表現が多かったため、途中で迷子になってしまった。
Posted by ブクログ
ベンディックス夫妻が食べたチョコレートには毒が入っていた。夫は一命を取り留めるものの妻は死亡。そのチョコレートは、直前にユーステス・ペンファーザー卿から偶然もらったもので、ユーステス卿自身も何者かにたまたま送り付けられたものだった。
ロジャー・シェリンガムが会長を務める「犯罪研究会」のメンバーは、スコットランド・ヤードのモレスビーからこの事件の概要を聞き、一週間の間にそれぞれで調査をした後一人一人自論を発表することにした。
大方の意見の共通点は、当然ながらこれは本来ユーステス卿を殺すためのもので、不幸な偶然のためにベンディックス夫人が死んでしまったというもの。だが次第に、実はそもそもがベンディックス夫人を狙ったもので、偶然に見えた状況は巧妙に仕組まれたものだったのでは?といった具合に展開していく。
犯人は誰で、動機は何で、本当は誰を殺すつもりだったのか。犯罪研究会のメンバーは弁護士から脚本家、推理作家まで様々な職についており、その職業ならではの個性が全面に出ていて面白い。様々な事例を引き合いに出しながら自論を展開していく彼らだが、次第にメンバーも当事者として事件に引き摺り込まれていく。
一つの事件から無限の推理を生み出す楽しみの詰まった一冊。最後にいいところを掻っ攫っていくチタウィックが痛快。
Posted by ブクログ
多重解決ミステリの典型とのことで、アナロジーとして使えるかと思い、骨子を整理すべくメモをしてみた。
物語自体は、文章というか描写も迂遠だし、人物の区別もつけがたく、事件やストーリーについてのおもしろさや驚き、意外性も特になく、読んでいて非常に苦痛だった。
犯人の狙いとされた候補者が2人あり(毒を送付されたペンファーザー卿と、実際に毒を呑んだベンディックス夫人)、さらに利害関係者が複数いて、その中には犯罪研究会の人物も含まれている、という構造。この構造は参考にはなった。
Posted by ブクログ
初見で夫人を狙った事件とあたりを付けたが、そこからさらに捻りがあった。古典の名作で翻訳が下手なのか読みにくいが、現代でも通用する多重解決は見事と言える。
Posted by ブクログ
相性の良いクラシックミステリ(できれば英国モノ)を求めて彷徨い続ける私。
今更ですが、バークリーに手を出してみることに・・と、いうことで、バークリーといえばこちら!といえる代表作の本書を“試着”してみました~。
ロジャー・シェリンガムを会長とする「犯罪研究会」の面々は、迷宮入り寸前の、とある事件の解決に挑むことに。
その事件とは、
クラブ気付でユーステス卿宛に送られてきた、試作品のチョコレートを貰ったベンディックス氏が、それを持ち帰って彼の妻と食べたところ、件のチョコレートには毒物が仕込まれていて、ベンディックス氏は一命をとりとめたものの、夫人の方は亡くなってしまった・・と、いうもの。
この【毒入りチョコレート事件】について、「犯罪研究会」の六人の会員たちが、順番に推理を披露していく展開です。
ひとつのお題(事件)に対して、様々な視点から推理が提示される、“多重解決もの”。
メンバー達が順々に披露していく推理を堪能できるのは面白いですね。
ただ、前の人の推理の欠点を指摘し、それを覆していく流れなので、どうしても順番が後の方が有利になるよねー・・?と、思ってしまったりもする訳で(汗)
なので、会長且つ主役(ですよね?)のロジャーが中盤での登板で、その推理をも覆されてしまうという点は、“ほう!”と新鮮な印象を受けました。
(ロジャーの推理は、結構好きだったのですが)
で、”目立たず、何故か弱気”なのが逆に“何かありそう”なチタウィック氏がオチで、美味しいところを持っていったのは、味のある構成で好きでした。
ラストは、二重の意味で「ちょ・・待てよ!(byホリのキム〇クの物真似)」という感じでしたが(;´∀`)
てな訳で、“これぞ謎解きの真髄”では・・と、思わせてくれるような推理合戦を楽しませて頂きました。
ところで、これは個人的な好みになるのですが、本書の場合は“多重解決もの”という内容と承知の上で読んでいるので、“推理が提示されてはそれが覆る”という繰り返しを楽しめましたが、通常のミステリの“真相解明パート”でこれをぶっこまれると、“ちゃっちゃと解決してくれよ!”と思ってしまいそうなんですよね~。
例えば、三津田信三さんの「刀城言耶シリーズ」の謎解きパートが、展開した推理を直後に覆して、結果推理が二転三転するので、今思えば、まさに“一人毒チョコ”パターンだな・・と本書を読みながら思い至った次第です。
と、話がそれましたが、せっかく本書で“多重解決もの”の原点に触れたので、今後は解決編がやたら長くても楽しめる器量を持とうと心改めましたw。
さて、バークリーお次は“ロジャーもの”長編一作目、『レイトン・コートの謎』を読んでみようかな・・と目論んでおります~。
Posted by ブクログ
1929年に発売された作品です。
あまりにも有名で、現代の推理小説にもその名が度々登場するので読んでみました。
なるほど、すごい内容です。
犯罪研究会のメンバーの推理合戦がメインストーリーですが、次々に発覚する事実と容疑者。
もはや、犯人が誰がということより、誰の推理が一番納得できるかということに焦点が当てられます。
名探偵が沢山いるため、混乱しました(笑)
Posted by ブクログ
とにかく名前が覚えにくくて、誰が誰だったかを確認するのにすごい時間を使ってしまった
ユーステス卿とワイルドマン卿を同じ人物だと思いながら途中まで読み進めて、訳が分からなくなった
多重解決物の第一人者で、数々の偉人からオススメされている1冊
面白そうだしせっかくなら古典作品も読んでみようかと手を伸ばしたら、現代ミステリーとの文章の会話の流れの差にびっくりしてしまった
とにかく登場人物の話がくどくて、読んでいてじれったい
自分の頭のせいでもあるけど、老人向けのお話かなあ
ブラッドレーが、色々考え結果犯人は自分ですって展開はちょっと笑ってしまった
Posted by ブクログ
想像よりも各人の推理は杜撰だったが、一定の筋が通っていて納得してしまった。
チタウィック氏と同感。
構成は面白くて好きだから、もう少し各人の推理パートをすっきりまとめてほしいと思ってしまった。
最後あんなに突然終わるとは驚き。
Posted by ブクログ
連夜、各々の推理を順番に披露していくという設定が面白い。
ただ、そこで提示される推理に個性がなく、読み応えがない(ただし途中の「いくつかの条件を満たすのは自分しかいない!犯人は私だ!」は傑作だった。こういった”個性”が全員にあると良かったのだが)。精鋭の集団らしいのだが、各々の推理はあまりに杜撰でみな蓋然性しか示さない。「探偵が収集した以外にも手がかりがある場合、推理の正当性は揺らぐ」という問題を作中でも指摘しているが、そもそもの推理が杜撰すぎて、本作を通してその問題について提起できているとは思えない。
また隠し球的存在であるトリのチタウィック氏の推理までも他の人達と似たり寄ったりなので煙に撒かれたような印象を受ける。それだったらいっそのこと「私は偶然良心の呵責に耐え兼ねた犯人から告白を受けたんです」みたいなユーモアのオチの方が良かっただろう。
Posted by ブクログ
クリスティのミス・マープル・シリーズを読み返している関係で、同時代のクラシックをもう一冊と思って読み返す。1964年「カリブ海の殺人」がキャラクター造詣も鮮やかで一編の小説としても十分に読めるのに対し、1930年「牧師館の殺人」はそれほどでもなかった。ほぼ同時代に発表された1929年「毒入りチョコレート事件」も同様で、キャラクター造詣よりも推理の構成に重きを置いた実験小説といった趣きが強い。しかし、この「探偵推理カタログ」とでも言うべき「毒入りチョコレート事件」が純粋な犯罪パズル時代の頂点(というか限界)を示したお陰で、ミステリー小説と言えども徐々に人間描写に重きを置く時代へと移っていくのであろう。
Posted by ブクログ
内容は面白いしキャラクターもはっきりしていて完成度が高く、名作と言われるだけあると思う。多重推理という構成も好み。
ただし昔のイギリスミステリー翻訳によくある、言い回しの冗長さだけはどうしても読みにくく、好きになれない。
Posted by ブクログ
一つの事件の謎に複数の探偵が推理を披露する「多重解決」型のミステリー。なかなか興味深いつくりだったが、作中の探偵たちの「男/女はAだからBである/ではない」といった発想には辟易した。
Posted by ブクログ
毒の仕込まれたチョコレート製品を食べてしまった夫妻。夫は一命を取り止めるも夫人は死亡、しかもそのチョコレートは夫妻とは違う人物に贈られた代物だった。迷宮入り寸前警察が助けを求めたのは「犯罪研究会」の面々、斯くして風変わりな面々の推理合戦が始まった。
推理合戦ものの祖という古典中の古典。推理合戦といえば「ミステリーアリーナ」や「聯愁殺」など素人探偵たちが独自勝手に推理を披露しながら真相に進んでいく形式。本作は素人探偵ながら警察以上の捜査能力や人脈を見せつけ、迷宮入り寸前の事件のはずなのに新事実が出てくる出てくる。登場人物は被害者も含め貴人が多く、端々にお硬い感じが見られる。
Posted by ブクログ
1つの事件を複数の登場人物が推理するっていう、古典部シリーズや漫画のQEDでも似たような話があったけどその辺の元ネタ。
翻訳がイマイチで読みにくいしトリックが凄い作品でもないけれど、オチが上手い。面白かった。
Posted by ブクログ
毒入りのチョコレートを食べて死亡するという一見シンプルな事件について、「犯罪研究会」の6人が調査、推理をして順番に発表していく。発表されるたびに新たな事実が発覚し、事件の様相が変わっていく。
最後には犯人(と思しく人物)は判明するが、明記はされていないので、まだ他の解釈をする余地も残されている。実際、『ジェゼベルの死』の著者、クリスチアナ・ブランドは「『毒入りチョコレート事件』第七の解答」を書いている。
イギリスの作家らしく、皮肉っぽい文章が随所にみられる。(作者は女性蔑視の傾向があったらしい)
「こうして誰を憚ることもなく正々堂々と愛し合って、ベンディックス夫妻は現代の第八の奇跡、幸福な結婚を成就したかに見えた。」(p.26)
「もし彼女が五十年前に生れていたら、どんな生活をしていたか、ちょっと見当がつかない。彼女がその時代でも女流作家になったとはとても考えられない。そのころの女流作家といえば(通俗な想像をするならば)白い木綿の手袋をはめ、挙動は激越で、そして、不幸にして容姿からはどう見ても縁遠いロマンスに対して、ヒステリックとはいわないまでも熱烈な憧れを持っている不思議な生物だった。」(p.259-260)
Posted by ブクログ
6人の人物が各々の推理を発表していく。そしてその推理は各々の特徴を持ち、犯人も違っている。この手法を発明したのはミステリ界においても衝撃だったのではないか。
Posted by ブクログ
クラブの顔見知り、ユーステス・ペンファーザー卿に届いた箱入りチョコを偶然譲り受けたベンディックス氏。 ところが、大量に食べた彼の妻は死亡し、数粒食べたベンディックス氏はなんとか一命をとりとめる重体に。
チョコレートにはニトロベンゼンが混入されていた。
ベストセラー作家のロジャーは名探偵的人物だけで組織された「犯罪研究会」の六人を集め、迷宮入りしそうなこの事件の謎を解くことを提案。
六人それぞれが推理を披露するが。
かなり昔、児童向けの本(何かの付録?)で読んだことがあったはずなんだけど、かなりはしょられてたなー。
1929年作なので、言い回しや当てこすり表現が難解で、ここのところライトな本ばかり読んでいたので読むのに時間がかかり、何度も睡魔に襲われる。。。
事件はとてもシンプルなのに、推理が始まるとどんどん人間関係が複雑になっていく。推理する側の6人の人間性も見えてきてニヤニヤ。
最後はあっさりばっさりと終わるのも、不思議な余韻を残す。楽しいー!
Posted by ブクログ
犯罪研究会の6人が順番に毒入チョコレート殺人事件の犯人を推理していく。訳が私にはまわりくどく感じて、なかなか話に入り込めず、読み終えるのに1週間くらいかかってしまった。一晩に1人ずつ推理を披露していくうちに、だんだんと真相に近づいていき、ドキドキ感はあったものの、面白かった!まではいかず。もし今後別の翻訳が出たらもう一度読んでみたい本ではあるかな。
Posted by 読むコレ
僕も大したミステリ読みではありませんが、確かにこれは斬新。初めて経験する感覚でした。
名探偵全盛時代の作品でありながら、明確な主役が不在のまま進む展開には驚きを禁じ得ませんでしたが、読み終えてみると、仮説と反証の丁寧な繰り返しは謎解きにかかる模範的思考実験の流れのよう。
あたかもこの一冊が名探偵の脳内を覗いたものかと錯覚するような作品でした。
分かり辛い内容で一見さんお断りな雰囲気が難かな。
読解力が足りない僕は「このネタの伏線ってあったっけ?」と逆転ネタが悉く後出しで加えたものに見えてしまって残念。
再読必須か。