労働のグローバル化について。
主に読んだのはまだ序章と第二章EPA外国人看護・介護受け入れのぶぶんだけだけど、新しい本なのでいい感じの視点。
気になった点をいくつか。
EPAでフィリピンとかインドネシアから看護師・介護師が来る前に(とはいってもまだ資格を得たのは二十人に満たない)すでにフィリピン
...続きを読む人移住者などがそれらの分野に進出していること。
外国人労働力の受け入れに関しては、バブル期の急速な労働力不足(主に非熟練)に対して整えられた1990年体制と、21世紀に入ってから労働力のダイバーシティーを求める形で整えられた現代の体制の差異があること。そして後者はリーマンショック以後急速に議論が縮小してしまったこと。
雨宮処凛の言説に顕著なように、外国人労働者に対しては従来の左右の軸が分解されてしまうこと。またそれゆえに議論が避けられていること。
海外インターンシップというキャリアアップを目指す若者に魅力的な幻想が、帰国後それを活かす場所が無いという現実に打ち砕かれること。
一部の基幹的製造業においては、外国人労働者が日本の非熟練労働市場の低賃金化を招くというよりも、彼らの存在によってそのような産業が海外移転せずに地方に残存し、雇用を創出していること。
いくつかの構造的衰退産業、たとえば農業は、きわめて日本的なものと捉えられながらも、その魅力のなさによって現在では外国人の手によって担われることも珍しくないこと。
再生産労働、例えばケア産業、においては、国際移転される形で歪なジェンダー構造が温存されていること。
ガッサン・ハージによれば、生産的多様性の称揚とパラノイア・ナショナリズムの勃興は表裏一体であるということ。
サスキア・サッセンによれば、多国籍企業の中枢管理部門が集中するグローバルシティでは、労働時間の極めて長い高給の専門職も集中するために、労働力の再生産のために多様な低賃金労働者も流入し、階層的分化が進むということ。
デヴィッド・ハーヴェイによれば、先進国の蓄積体制は大量生産のフォーディズムから多品種かつフレキシブルな蓄積へと移行するが、その過程で規格化された生産システムが第三世界へと移転され周辺的フォーディズムを生みだすということ。
なかなか刺激的な論集です。