ハーバード大学の学生の三分の二は、所得規模で上位五分の一にあたる家庭の出身だ。にもかかわらず、彼らは判で押したように、自分が入学できたのは努力と勤勉のおかげだと言う――人種や性別、出自によらず能力の高い者が成功を手にできる「平等」な世界を、私たちは理想としてきた。しかしいま、こうした「能力主義(メリトクラシー)」がエリートを傲慢にし、「敗者」との間に未曾有の分断をもたらしている。この新たな階級社会を、真に正義にかなう共同体へと変えることはできるのか。超人気哲学教授が、現代最大の難問に挑む。解説/本田由紀(東京大学大学院教育学研究科教授)
Posted by ブクログ 2023年01月28日
子供の教育において、なぜ親が過干渉になっているのか、なぜ有名大学に入れることに必死になるのか、能力主義が台頭している背景、政治や社会で生じている事象が描かれている。筆者はトランプが大統領になり、イギリスがブレクジットを選んだ2016年にグローバリゼーション、新自由主義が失敗だったことが明らかになった...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年01月27日
能力(功績)主義に対する鋭い批判を行う非常に重要な本だと思う。特に第7章の労働の承認の欠如が労働者の自死や怒りのポピュリズムを生み出すという主張に大いに賛同する。
本書にはマイケル・ヤングの引用があちこちにみられるがヤングがかつて予測にしていた事態がまさにイギリスのみならず世界中で発生していること...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年07月17日
不平等だから平等にしたのにさらに不平等になるカラクリ。アメリカの経済を歴史的に俯瞰で解説されていました。貧富の差が拡大した原因として教育問題、平等不平等問題、金融優先社会の問題点から丁寧に説明してあります。後半は機会の平等ではなく条件の平等を解決策としていました。能力主義、功利主義、市場主義、テクノ...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年06月19日
アメリカにおいて、学歴ベースのメリトクラシーがいかにして非大卒労働者から労働の尊厳を奪い、結果としてトランプ政権を誕生させたかが分かった。絶望死といったトピックがメリトクラシーと連結しているということもはじめて認識した。
能力における評価をなくしましょうというわけではなく、能力を評価してしまうシステ...続きを読む
Posted by ブクログ 2022年05月08日
「実力も運のうち 能力主義は正義か?」と問いかけるタイトル。当然、本書の主張ではNoだということだ。
まず、能力とは何か。
能の力、すなわち才能の大きさのことだろう。では、才能とは何か。才能は、多様である。誰もが才能を持っている。トレーダーとしての才能がある人がある人もいれば、大道芸の才能がある人...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年05月02日
サンデル教授の共同体主義は(浅学ですが、、)なんとなく私たち。。主語がでかいな。。私の考える「道徳」に合致していると思います。それも踏まえてですが、結論の「共通善」、「共同体」は目指すべき理想だけどここまで乖離してしまった世界で本当に向かうことができるのか?を最後までイメージできなかった。。もしそれ...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年04月30日
学歴主義と生産する労働の軽視への批判。
納得する内容でした。
人々の生活の実態を大切に、誰もが自分の生活に自信を持って幸せを感じられる世の中になりますように。
具体的な提案もたくさんあったけれど、なによりまず、GDPの増大が幸せにつながるという意味不明な方針を改め、労働への敬意と誰もが豊かでゆとりの...続きを読む