Posted by ブクログ
2021年06月05日
3篇の微妙につながりのある短編から成る。
●三十八度通り
初めは、この物語の舞台設定を読み進めながらそれに慣れるのに時間がかかる。
不死の龍が人類の身代わりとなって倒れ、そのおかげで今の人間があるという設定。
主人公は、妻との関係があまりうまくいっておらず、砂漠にずっと晒されていたかのように顔が日...続きを読む焼けして、微熱が続きながらも、披露宴会場で音楽のオンオフをし続ける男性。
この夫婦が住んでいる町はアセンション(次元上昇)が済んでて龍が住んでおり、住民は贄日に揃ってでかけたり、閼伽水(アクア)から愈水を作ったりと忙しい。家族よりも心縁の繋がりの方が大事だという。
チャクラが出てきたので、NARUTOかと見まがう。
上司の武田さんという女性も、一人称が武田さんであり、キャラが濃い。
ひとり婚の売り文句が「わたし、いきいき」なのもシュールである。
思考が盗聴されないようにウィッグを被る。
心理チューナーで脳波を整えて心を落ち着かせる。
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●千羽びらき
この2話目からだんだん話がわかってくる。
メインは、1話目の主人公の妻の真弓の母親である川北美奈子で、憑かれて蟠りを抱えるところから始まる。蟠りとは、癌の呼称が世間の批判によって変わったもので、一部では「蟠」の字も虫が増殖するイメージから印象が悪いので、「るん(笑)」と呼ばれている。やまいだれも同様に印象が悪いので、病院は丙院、病気は丙気、痛いは甬い、と変わっている。それでいながら、座るは痤る、座布団も痤布団など、まだれの感じがやまいだれになっていたりする。子供たちは「お山の上に、お口が三つ~」などという歌を歌っている。
るん(笑)、ないし癌は、業念(カルマ)が絡み合ってできた内なる獣のようなもので、最終的には業念の結び目を解くことが目標で長い時間をかけて施靈(せりょう)を行っていく必要があるとされている。
一人称で語られていくけど、現在と子供時代と若いころとが意図せず入り混じったりしていて、なかなか難解。
タイトルの千羽びらきというのは、表が黒、裏が白で折られた黒い千羽鶴を裏返して中の電話番号にかけて折ってくれた人に電話をして、全ての鶴が白になれば、業念の返済も終わって完治する、という迷信。
どんどんやまいだれの漢字が侵食してきて、人間も人癇、お隣の留美ちゃんも瘤美ちゃんになり、皮膚も病膚になり、、、静かに侵されていく様子が恐ろしい。
●猫の舌と宇宙耳
先ほどの川北美奈子の息子・博之の小学四年生の息子の真が語り主。この世界では、他人が書いた書き物を読むのは危ないという理由で本屋もほとんどなくて、真の蔵s7人分の教科書も全て担任の先生の手書き。
「想像してごらんよ。世界がひとつの家みんたいになったところを?」は、進撃の巨人のOSTかと思った。
高村家の高村じいさんは、宇宙耳を持っていて、頭の中を支離滅裂なことでいっぱいにしないと思考盗聴されてしまう。
不死の龍がかつて倒れた山に小学生4人で向かって、昔の携帯や猫の頭蓋骨などを掘り出す。平田くんは黄色い作業服の大人三人に追われて転落して骨折してしまい、真は体調を崩してしまう。真の部屋には光くんという子が来るが、体調を崩してから頻繁に話を聞きに来てくれるようになった。
うーむ、、消化不良である。。
この本には難読漢字が沢山出てきて勉強になる。
覿面(てきめん)・縦框(たてがまち)・蝦蛄(しゃこ)・紙縒り(こより)・躑躅(つつじ)・罅(ひび)・藺草(いぐさ)