Posted by ブクログ
2020年12月04日
やっぱり恒川光太郎さんは面白い。すごいなぁといつも思う。
この本は犯罪というものについて書かれたいくつかの話が収められている。加害者となってしまった人やその家族の側から書かれ、私が日頃から世間やマスコミに対して言いたいことに近くて、それを公に書いてくれて嬉しかった。
最近母が運転中に脳梗塞になって...続きを読む事故を起こした。母は幸い誰も殺さずに済んだけど、車に追突せず歩行者に突っ込んでいたら大量殺人犯になって私は殺人者の娘になっていたかも知れない。
母は元々頑張り屋で弱音を吐かず、具合が悪くても言わないタイプだからいつから体調が良くなかったのか家族でも分からないし、忙しいから短くちょこちょこ寝るし、元々話はポンポン飛ぶから周りにいる人が変調に気付きにくい。でも誰かを轢いてしまったらそういうことは関係なくなってしまう。魔女狩りみたいになる。私や旦那さんの性格も引き合いに出されるだろうし、まさにこの本の「やがて夕暮れが夜に」みたいになる。
母が殺してしまった人を生き返らせることは不可能だし、もうどうすることもできない。私が死んで生き返るなら私は死ぬけど、私の死はマスコミや世間に都合良く使われるだけで残った家族はもっと酷い目に遭う。母が重篤だったら私は母に死んで欲しいと思うだろう。死ななくていい人を殺して人生を終わらせてしまったのだから、仕方がない。母の人生も一緒に終わらせるべきだと思う。突然家族を奪われた被害者家族の深い悲しみは何があっても消えることはないし、怒りも消えない。でも母も死ねば少しは楽になるのではないかと思う。片方だけの人生が奪われるなんてあまりに不公平だ。私は酷い人間なのかな。
私は事件などの報道を目にするといつも加害者のことを考える。事件の内容や概要からどうしてそうなったのかと想像する。そして勝手に共感したり、どうすれば防げたか(救えたか)を考えたり、その家族を心配したりする。でも言わないようにしてきた。だから、こういう本を世に出してくれてとても嬉しい。