書店員のおすすめ
「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい。」
そんな鮮烈な書き出しで始まる、第164回芥川賞受賞作。
子役出身のアイドル・上野真幸を推している高校生・あかり。しかしある日、真幸は不祥事を起こし……!?
学校生活もバイトもままならない彼女にとって真幸は、「病めるときも健やかなるときも」推すべき存在でした。
心ぐらつく日々の中、あかりは真幸への思いをSNSやブログにつづり、
今まで以上に推そうと決意します。
初めて推しを知った時の高揚感、推しと同じグループのメンバーを推しているフォロワーとの関係性、
推しのメンバーカラーで全身を固めたファンの姿など、
芸能人でもコンテンツでも、何かに深くハマったことがある人なら
身に覚えのあるエピソードが次々と出てきます。
何かを熱心に推しすぎていると視野がどんどん狭まっていき、
「自分の実生活がそれどころではなくても、推しがどんなに世間に叩かれていようとも、
推しを推さない選択肢がない」という感覚に陥ることがありますが
この作品でその感覚を久々に思い出しました。
一気読みをお勧めします。