Posted by ブクログ
2020年04月01日
某大河ドラマで異様な存在感を放つ斎藤道三、その父・長井新左衛門と、その息子・斎藤義龍の三代に渡る物語を、新左衛門とともに戦った源太なる男の視点で描く。
最近の研究で道三は一代で成り上がったのではなく、父と二代掛けて守護代へと上り詰めたのではないかという説が有力となっているが、道三の父にスポットを当...続きを読むてた作品は全く知らないので興味深く読んだ。
どちらかと言えば、青年道三よりも父・新左衛門の方が蝮っぽいように思える。
青い青年道三をどう蝮に变化させていくのか、そしてやがて来る道三の息子との壮絶な争いにどう繋げていくのか、そこには作家さんの苦心の跡が感じられた。
もう一つ、最大のテーマは新左衛門が野心を燃やしていた『国滅ぼし』なるもの。使い方次第で国の薬にもなるが、国を滅ぼすことにもなるという、恐ろしいもの。大物商人たちや細川京兆家も恐れたそれは一体何なのか、最後まで興味をそそられる。
読み進めると所々に道三の祖父の物語も挟まれる。少年時代の松波高丸は細川家の命で何かを集めている。それがこの物語、つまり『国滅ぼし』にどう繋がっていくのか。こちらにも注目。
あとがきによると、この作品は雑誌掲載作品だが後に大幅改稿され、結局描き下ろし作品として出版されたらしい。それだけ作家さんの思い入れも深いし、様々な伏線や構成など、相当な工夫や苦心を凝らしたとのこと、確かにそれがあちこちに見られる。
そもそもタイトルである『まむし三代記』も何を以て『三代』とするのかも一つの仕掛けと言えるかも知れない。
『国滅ぼし』というアイデアが浮かんだとき、作家さんは心の中で喝采を上げ、そこから様々なさらなるアイデアが浮かんだ様子も想像出来る。
この作品がどこまで真相に近づいているかは置いておいて、道三親子が並の武将でなかったことは確か。
『国を医(いや)す』『国手』になるためには、相当の覚悟がないと出来ない。その覚悟の果が壮絶な戦いだったとすれば、蝮の蝮たる所以にも納得がいく。