Posted by ブクログ
2020年06月21日
表紙だけ見ると趣味を疑われてしまうような、ちょっと借りにくい買いにくい本だが、中身は違っていてなかなか面白かった。
とは言え、タイトルと物語の設定とは微妙に違う。
『監禁探偵』というものの、第一話では監禁されに行く探偵? って感じだし、第二話では轢き逃げ事故で記憶喪失してしまった探偵という感じ。
...続きを読むいずれもアカネなる謎のロリータファッション少女が事件の謎解きをするのだが、彼女の年齢は表紙絵ほど幼くはなく、十七、八歳といったところ。
第一話では様々なきっかけが重なった末、思いがけずアカネなる謎の少女を部屋に閉じ込めてしまった青年・亮太が、それまで夜な夜な覗いていた向いのマンションに住む美女の部屋に、これまた様々なきっかけが重なって忍び込んだところ、当の美女の刺殺体を発見してしまう。
だが警察に通報するわけにはいかない。何故なら亮太は美女の下着を盗むために様々な場所を触っているし、部屋には少女を監禁しているし。
しかしここからアカネが思いがけず、亮太の救いの女神となるのだ。
安楽椅子探偵よろしく謎解きのヒントを出したり一緒に聴き込みしたり、果ては犯人を罠に掛けるアイデアまで、なかなかの活躍だ。
アカネの思いもよらない頭の回転の良さや度胸や、事件の展開など、なかなか面白い。
そして片付いた後、アカネはどこかへ消えていく。
第二話はアカネが入院している病院内の事件の謎解きをするのだが、気になるのは記憶喪失で怪我も酷いのに妙に落ち着きがあり、何故か事件の真相究明に積極的なこと。
その訳は後々分かるのだが、その事は何故アカネがこの街に来たのか、どんな秘密を抱えているのか、さらなる謎を呼ぶ。
そして第三話は時折挟まれるアカネの現状から見るにやっとタイトル通りの監禁された探偵っぽくなるのだが、それはそれで不安になる。
第一話の亮太、第二話の伸一がコンビとなってアカネの行方を追うと共にアカネの過去にも迫っていく。
それが何なのか、アカネはどうなるのか、ということは勿論気になるが、我孫子さんの真骨頂はそこではない。
アカネは二人に簡単に暴かれるほど簡単な人間ではないのだ。掴み所がない、亮太の台詞を借りれば『繋ぎ止められない』、実にミステリアスな存在なのだ。
結局彼女は何者なのか、探偵なのか犯罪者なのか。何をしてきてどこへ行くのか。その行き着いた先でも事件に遭遇し解決するのか。
そういう意味では『監禁探偵』ではなく『放浪探偵』かも。