りり、りり、りり……草雲雀は恋の歌を唄う――。媛野藩の藩士、栗屋清吾は女中のみつと深い仲になるが、妻として娶ることは周囲から認められていない。そんな折、道場仲間の山倉伊八郎から自分の用心棒になるよう頼まれる。伊八郎が藩の筆頭家老になるには清吾の剣の技が必要という。子を持ちたいというみつの願いに応えるため引き受けた清吾を、伊八郎と対立する派閥からの刺客が次々と襲う。秘太刀「磯之波」で迎え撃つが……。
Posted by ブクログ 2022年10月16日
設定が面白い
清吾と伊八郎の友情、清吾とみつの夫婦の愛情の物語
三男坊の清吾は剣術に腕がありながらも、養子の話もなく、兄の世話になる厄介叔父の立場。女中のみつと相思相愛になり、妻としますが、兄からは妾としてしか認めてもらえず、子どもをもつことを許されません。
一方、清吾の道場仲間の伊八郎は同じよ...続きを読む
Posted by ブクログ 2021年07月29日
期待を裏切らない面白さ、そして登場人物たちへの優しい眼差しが心地よい小説です。
「人が何事かをなすのは、大きな器量を持つ故でなく、己も人も裏切らぬ誠によってだということ」という小市民的な生き方を賛美した応援歌。フィナーレで畳みかける展開は涙無くしては読めません。葉室麟、おそるべし!解説もナイスです。...続きを読む
Posted by ブクログ 2019年07月02日
藩内随一の剣の使い手が、家老を目指す友人の用心棒となる。
その動機は、部屋住みの境遇から逃れ、恋仲の女中と子供を持ちたいという「草雲雀のごとく小さな望みを果たすため」という。
主人公の「草雲雀のごとき誠」と、友人の家老を目指すという大望との落差が面白い。
ただ、著者の他の作品と比べると、完成度が今ひ...続きを読む