Posted by ブクログ
2016年09月25日
中学生の頃、ピアノの先生が譲ってくれた『くますけと一緒に』。どんどん頁をめくって、何度も読んで、ふと、「もっとこの人の本が読みたい!」とまだ定額ではなかったお小遣いをうまーくやりくりして買い揃えた新井素子さんの本。まだまだ中学生だった私には、『星へ行く船』『ブラックキャット』等々、コバルト文庫が一...続きを読む番お手頃で田舎の本屋でも手に入りやすく、そして世代ど真ん中で面白く感じていました。
あのころと同じ――ではないのです。書き下ろしももちろん新たなあとがきも(笑)あります。
そして、それだけではなく、本文もたっくさん手直しされている様子。なんせ、頁を開いて、まず、最初の一言からして変更されてます。細かい、細かいよ!でもそのおかげなのでしょうか、それとも単に私が年嵩だからでしょうか、読んでいて全然違和感はありませんでした。落ち着いたら読み比べも面白いかもしれないです。
『星へ行く船』の中でも一番印象深く好きだったきりん草の話。きりん草の設定自体が多感なお年頃にはグサグサくる話なのだけれども、それ以上に、若さゆえの無敵感みたいな、そういうのがくしゃくしゃにされて思い知らされて、だけどそのことで自分は未熟であると知る、成長する、そんな主人公の姿の方がずっとグサグサきたのを覚えています。
たぶんこの本を読む人の三分の一くらい、大人なんだろうなぁと思うとちょっと残念。このグサグサ感、是非、思春期の少年少女に味わっていただきたいものです。私の価値観が古いのは重々承知ですが、それにしたって最近のラノベはなんていうか主人公が無敵だったりなんだりで、そういう主人公のもだもだ感、味わうことってあんまりなさそうだから。くしゃくしゃのポイっとされてへこんでへこんでなんとかこらえて夢が破れたらつくろうために手があるんだなんて恥ずかしいこと言って立ち直ってでも実際には何にも出来なくて大人に助けてもらって悔しくて、そういうのに心を沿わすこと、その年齢にしかできない部分もきっと多いから。
ぶっちゃけ自分は年とっちゃったからあの頃は憧れの大人の男だった太一郎さんすらちょっと子供っぽく感じちゃうわー(笑)。