Posted by ブクログ
2016年06月09日
織田信長をとりまく無名の者たちを主人公にした連作短編集。日本史上、例のないカリスマを備えた巨人、織田信長の影響力が周囲の無力な人間を巻き込み、そして破滅へと導いていく。
タイトル作の「王になろうとした男」とは奴隷として日本まで連れてこられたアフリカの黒人。彼が信長に仕えることになり、共に王を目指す...続きを読むことを誓い合う。徹底した実力主義の信長であれば、皮膚の色には目もくれず、日本人にはかなわない運動能力を持つアフリカ黒人を非常に評価するだろうし、周囲から差別される点で親近感を持ったとしても不思議ではない。その一方で古い価値観にこだわる秀吉が徹底的な悪役として描かれる。
短編が連なるにつれて、信長という人物像、本能寺の変の真相が明らかになってくる歴史サスペンス・ミステリーでもある。