ネタバレ
Posted by ブクログ
2016年05月18日
今野敏さんの数ある警察小説のシリーズの中でも、倉島警部補シリーズは、公安の捜査員を主人公とした唯一のシリーズである。本作は、シリーズ第4作に当たる。
『曙光の町』で初登場した倉島という人物は、当初は公安の仕事に意欲が持てなかったのが興味深い。このシリーズは、倉島が経験を積みながら次第に使命に燃...続きを読むえていく、成長記という側面がある。秘密主義の公安組織に属している割には、何だか人間臭く、猪突猛進的である。素人目にも、公安に向いているようには思えないのだが…。
日本の公安の司令塔である、警察庁警備局警備企画課。その情報分析室、通称「ゼロ」の研修から、警視庁公安部に戻ってきた倉島。公総課長に呼ばれ、早速命じられたのは… 同じ外事課の先輩・葉山の動向を探ること。
名誉の研修を終え、エース候補と目される倉島だが、相手はバリバリのエース公安マンである。顔も知らなければ、消息も不明。公総課長は、補佐の若手を2名つけるから、1週間以内にどちらかを選べという。最初、倉島はテストだと思っていた。
ところが、調べているうちに、大手新聞社の大物の転落死との接点が見えてきた。そちらの事案は刑事部が動いており、公安の捜査員がうろつくことに不快感を隠さない。やがて、葉山が苦境に立たされたことを知った倉島は、どうするか?
かつてより成長したとはいえ、やっぱり猪突猛進的なところは変わっていないし、葉山と比べると隙だらけな感は否めない。それでも、若手を的確に動かし、情報源に口を割らせ、刑事部との無用な対立を避ける手腕は、彼の人間的魅力の賜物なのだろう。
タイトルのアクティブメジャーズとは、積極的な工作活動を意味するが、リスクも孕んでいる。終盤の展開はややご都合主義だが、どこか公安らしくない倉島だからこそ、うまく幕引きできたのではないか。それは倉島の、公安捜査員としての武器かもしれない。
刑事とは180度違う、公安の流儀には、蠱惑的な魅力がある。倉島は、ますます面白さに気づいたようだ。でも、個人的には隠蔽捜査シリーズの方が好きかな。