Posted by ブクログ
2015年05月27日
―――それでも僕は語りたい。向田邦子の何処が特別なのか、何処が他と違うのか。―――
太田光の惜しみなく注がれる愛がすごい。
すきなものをかたるひとのきれいなことよ。
この本はまず構成が素晴らしい。
初心者にとっては、と前置きをつけておく。
向田邦子プレゼンが巧み。十分読みたいなという気にさせたあと...続きを読むに、短編の小説、エッセイをドドンと全文のっけちゃう。
個人的には、「ぼくはこんなふうに向田邦子を読んできた」でちょうどよく読みたくなってきたところ、小腹がすいた感のまま作品に没入したかったので、それぞれの小説やエッセイの直前の短文レビューは不要だったかな。
作品の感想すこしだけ。
備忘録程度に。
『かわうそ 』
亭主病気で妻活気づく話
包丁のくだり、秀逸。
『三枚肉』
不倫相手の結婚式に妻と出席する
「ダダダダ」はたしかに、すごい。
『男眉』
地蔵まみえの妹と男まみえの姉
トイレのくだりは何回か思いだした。
『大根の月』
庖丁を研ぐ癖が大事なものを傷つけてしまった
この話の恐ろしさ。
いやーーー、こわい。
『ごはん』
空襲、家族、さつまいもの天ぷら、孤児とカンパン、土足の畳
この本を読むと太田は女のなんたるかをすごくよくわかっているみたいに見える。
男と女の構造をよく理解しているようにも。ただ、理解しているから理想の関係が築けるかというとそれはまた別のお話なのだなあとも思うわけで、男女というものはなんとまあ複雑でムツカシイんだろ。
「少ないように思えるが噛みしめるほどに十分な作品を書いてくれた」と感謝して太田の向田邦子論は終わる。
「飾られ、眺められるだけの、“名器”になることを拒否し、毎日使われる“食器”になることを選び、その通りになった。どれほど美しくても、そこに生活がなければつまらない。」