Posted by ブクログ
2013年05月03日
正岡子規は、近代俳句の創始者で、司馬遼太郎「坂の上の雲」の主人公の一人として描かれた俳人。
「坂の上の雲」を読むまで、正岡子規のことはほとんど知らなかった。
学生時代に俳句の授業で「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」という句を習ったことがあるが、その句が以前の俳句と何が違っているかなど考えたこともなか...続きを読むった。子規の句には作者の主観の入らない素朴な印象がある。彼は従来の俳句とは違う写実的な俳句を作り、新聞に公表することで一般庶民の娯楽としての俳句を普及させた。
病気と闘いながら創作に励んだ子規は、常に自分の残りの人生を意識しながら新たな領域を開拓した。俳句に限らず、短歌や新体詩の世界でも従来の常識に対して様々な試みを行っている。
彼の人生を知ると、その句の意味するところがよく判る。自分の境遇を無念に思いながらも、自分の足跡を残したいという想いで生まれた句も多い。
この本では、彼の生い立ちから死に至るまでの人生と、俳句の世界を改革した功績、代表的な著作などを中心に正岡子規とはどのような人物だったのかを考察している。
子規の随筆(文語文)を多数紹介しており、それに現代文の翻訳もついて大変読みやすい。著者と翻訳者によるこのような配慮は、受験のためだけに俳句を勉強する人達にも、明治の日本文学と子規の人生を広く知ってもらいたいという著者の願いがあるように感じた。