Posted by ブクログ
2018年02月13日
内容(「BOOK」データベースより)
ある晩、酔った慎太がもらした話から、武一は日本に新たな危機が迫っていることに気付く。時代を超え、世代を超えて、沈みゆく国を救うために究極の凸凹コンビが立ち上がった。ページをめくるたびに、涙が止まらない。全国民に捧げる、鮮烈なラストメッセージ。
特攻隊の武一が戦...続きを読む艦に突撃する直前に現代にタイムスリップするという、料理人の腕次第では作家としての誤解を招きかねない題材だと思いました。名手永瀬隼介氏なので骨のある展開になるであると期待していました。特攻隊員という特殊な状況に置かれ、国の為に大事な人々の為にと命を投げ出してきた若者たち。そして図らずもそこから辛くも命を拾い現代まで生き残った者。そして現代を憂い、日本に新たな諍い火種を落そうとする者たち。過分に美化されていると思うものの、心に響いてくる話であり、素直に読むべき本であると思いました。そして何よりエンターテインメントとしての出来が素晴らしいです。武一が現代にたやすく馴染んでいるあたりに違和感ありますが、そんな事では揺るがない土台の堅牢さがあります。
タイムスリップし途方に暮れている武一を助けた(逆に助けられていますが)慎太はフリーターで頼りなく、ラーメン屋のバイトも首になるような男ですが、心優しく、芯では誰かの役に立ちたい、世の中を変えたいと思っている若者。選挙もいかない若者たちに比べるとなんとしっかり物事を考えている事か。彼と武一の心の交流がこの武張った話の中でじんわりと心を温めます。
ラストもとてもよかった。予想もしていなかったつながりが有って最後の大団円。すばらしい。