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江戸川乱歩賞を受賞したこの作品は、薬丸岳さんのデビュー作となります。ミステリー作家の登竜門として有名な賞なのですが、毎回、受賞作のレベルの高さは折り紙つきです。その中でもこの作品は、東野圭吾さん、高野和明さんらの受賞作を凌駕する圧倒的な完成度で興奮と感動を与えてくれます。
少年犯罪の被害者家族が主人公という、非常につらい設定にもかかわらず、犯人を憎みながらも強く生きようとする心の揺れに共感し、感情移入していくことになります。
どう考えてもハッピーエンドになり得ない展開なのに、さわやかな読後感を与える終幕は、この作家の今後に大きな期待を持たせる力強さがありました。そして、現在の薬丸岳さんの活躍がそれを証明してくれています。