Posted by ブクログ
2021年06月12日
感動したかと言われればとても感動した
そして話として読みやすいのに、学ぶところが多い。
ある企業再生のあらましと企業改革の要諦をギュッとまとめた小説で、実務者の厳しさと泥臭さを知ることができる。いわゆる「当たり前」のステップで企業を再生するのだが、その当たり前のステップを生身の人間が実現する空気感・...続きを読む温度感がなんとなく分かる。
当たり前というのは、改革のステップを抽象化すると、「理想を描き、現実認識をし、ギャップを捉え、改善する」という当たり前のステップになるという意味であり、細かな手法のことではない。また、生身の人間が実現する空気感・温度感というのは、その理想の描き方や現実認識の仕方、ギャップの捉え方、改善の仕方を、誰かが頭の中で考えるのではなく、組織全体が長期的に実行し続けるのに十分に耐えられるように試行錯誤していくプロセスのことである。言うは易し行うは難しそれ自体をテーマに実例を見せてもらったと言ってもいい。
興味深いのは、①経営的人間とはどんな人間かという観点と、②改革に対する組織内のスタンスの類型化、③危機感のない会社の特徴に関する観察である。
①責任を背負っているかか経営的人材の条件である。一貫して実行責任を負わない「野党」的立場に厳しく、批判だけでなく自らが行動する気概と能力のある者のことである。②傍観者ー更迭者ー抵抗者ー中立ー賛成者ー行動者などに分かれつつさらにその中でも類型化される。面白いのはここまで細かく分けているが、組織改革においては細かく人を観察して適切に対処しないと本当に改革が失敗する可能性がある空こそ、この細かい分類が本当に意味を持っていることだ。③時間感覚と戦略へのコミットへの厳しさ・責任感がなく「自由」がまかり通っていて、受益者の視点がない(プロダクトアウト的=自己中心的である)にもかかわらず当然だと思っているかそれを受け入れている。
1人の会社員として仕事への姿勢など学ぶべき点は多い。また人間としても「実行者として責任を負う」ということの厳しさを学び、こうなりたいと思う。こうなってはいけない、という自戒にもなる。