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【第35回小説すばる新人賞受賞作】
一九四一年、日本占領下の福建省廈門。
大阪松島遊廓から逃走して、上海、広州、香港と渡り歩き、廈門に辿り着いたリリーは、抗日活動家の楊に従い、カフェーで女給として働きながら諜報活動をしていた。あるとき、楊から日本軍諜報員の暗殺を指示され、その実行者として、琥珀色の瞳と蛇の刺青が印象的なヤンファという女性を紹介される。
中秋節の晩をきっかけに強くヤンファに惹かれていくリリーにとって、彼女と過ごす時間だけが生への実感を持てるひとときになっていた。
しかし、楊から秘密裏に課されていた指令は、暗殺に失敗した場合はヤンファを殺せというものだった……。
戦時下の中国・廈門を舞台に流転する女性たちの愛と葛藤を描く、圧巻の熱量を放つ第35回小説すばる新人賞受賞作。
Posted by ブクログ 2023年04月25日
今のところ今年No1。表紙や雰囲気に惹かれて購入したが非常に満足度の高い小説だった。
中国厦門でスパイ活動を行うリリーとヤンファを中心に描かれていく。掴みどころのない展開で進むが最終盤に全てが繋がる。
小説を貫くのは戦時下の「奪われた女性」たち。ヤンファを始めとする日本占領下の中国・台湾・朝鮮人...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年07月10日
1941年、日本占領下の福建省厦門。
リリーは日本人。日本人相手のカフェーで女給として働きながら、抗日活動家の指示により諜報活動も行っている。
ある時、指示役から日本軍諜報員の暗殺を命じられる。実行役として紹介されたのが、琥珀色の瞳で、腕には蛇の入れ墨がある楊花(ヤンファ)だった。中国・泉州出身との...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年09月01日
1941年日本占領下の福建省廈門。
この地でリリーはカフェの女給として働きながら諜報活動をしていた。
そこでヤンファと知り合い、惹かれていくのだが秘密裏に出された指令があった…。
この時代に生きた彼女たちは、自分の思うままの人生はなく常に不安定なはりつめた生き方しかできなかったようである。
何が正...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年05月30日
第35回小説すばる新人賞受賞作。新人賞作品にしてはずいぶんこなれた筆致だし、行き届いた調査がなされていると思ったら、『遊廓のストライキ』の著者の小説だったとは。深く納得。
リリーとヤンファの過去の因縁が明かされる第4部は正直言って余計ではないかと思ったが、これはジャンルとしての作法なのかもし...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年09月17日
感想
日中戦争の時期に運命を翻弄された二人の女性の物語。最後こそ良かったと感じたが、それまでの二人の人生を振り返って、歴史に翻弄され、理不尽に悲しい想いをしたのだ。そういう人がたくさんいるのだと感じた。
最後は予想通りというか、綺麗に収束した感じ。
あらすじ
元はお金持ちだったが、両親が亡くなり...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年08月18日
戦時下の中国で、共産党系の活動家のスパイとして生きざるを得なかった日本人女性の物語。
人が入り乱れる中国廈門では台湾朝鮮といろいろなルーツの人が生き抜くためにあらゆる手段を使っている。不幸は比べるものではない、とはいえ、戦時下の中国では日本人は占領し奪う側の人間。なにも恵まれているなどと思って生き...続きを読む
Posted by ブクログ 2023年06月17日
同僚に勧められて読んだ本。女性視点の一人称小説は初めてのような気がするが最初はそれに面食らい、1930〜1940年代の中国・日本史と絡むストーリーや歴史用語にほとんどついて行けず、章ごとに時代を行き来する描き方、物語上たくさんの固有名詞(同じ人に違う名前が付いている)が出てくる展開で、正直一度目はよ...続きを読む
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